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「本当にホルターがすまない!!」



 タキカ殿がテーブルに頭ぶつけるんじゃないかって位に謝罪してくる。

 まぁ、自分の息子のやらかしを聞いたらそりゃこうなるよなぁ。



「えっと、謝罪は受け入れます。

 それはそれとして、ホルターの件です。

 一応一通りこちらで説明した方がよろしいですか?」


「あぁ、ペスメーからは彼女ができたが今会うことはできないと聞いたが……」


「その認識で合ってます。

 では――」



 スホルムの件、セリナ様の話、王都に来てからホルターとの出会い。

 そしてご実家との関係性と捕縛、裁判、現在修道院にいること。

 すべて話した。

 ラーミルさん視点でのフォローもたっぷりと。



 その結果――



「あなたっ!!」


「は、はい!!」


「絶対ホルターとセリナさんをくっつけなさい!!!」


「はいぃい!!」



 ――ホルターの母親がガチでヤル気になってしまった。

 タキカ殿がタジタジになっている。

 ご長男もビクビクと……なんかペスメー殿睨まれてるけど?


 ちょっと小声で聞いてみるか。



「ペスメー殿、何か睨まれているけど?」


「あぁ、うちの兄の事だろ?

 そりゃアッチはバルサイン家の跡継ぎ。

 ホルターの事も面倒見なきゃいけない。

 俺は家を出て独り立ちした人間だからな。

 文句言われる理由もない。

 そこが羨ましくもあり、悔しくもありってとこだろ」


「あぁ、なるほど、そういうことでしたか」


「ニフェール殿だって、学園卒業時に男爵くらいになっているんじゃないの?」


「多分、数年連続して陞爵されますね。

 そうじゃないと国家予算の何年分の報酬を出すことになるのやら。

 国としては爵位という形で支払うことで報酬減額したいんでしょう」



 ……ペスメー殿、そこまで呆れなくてもいいんじゃない?



「ニフェール殿が桁外れにイカれた存在だってのをたまに忘れちまうな……」


「マーニ兄程じゃないはずなんだけどなぁ」


「『五十歩百歩』って言葉知ってるか?」



 失礼な!

 騎士科首席の知識を舐めないで頂きたいですね!



「拳圧が届く間合いの事だね。

 マーニ兄なら百歩に届きそうだけど、か弱い僕は五十歩がせいぜいかな?」


「ぜってぇ(ちげ)ぇ!」


「ちなみにうちの母上は百どころか二百歩くらい届くんじゃないかな?

 それに比べれば僕もマーニ兄も正しく『五十歩百歩』だよ」


「やっぱり分かって言ってただろ!」



 そんな風に軽く揶揄っているとタキカ殿達への説教も終わりに近づいたようだ。

 男性陣は疲労困憊。

 まぁ、そこらは僕にはどうしようもないから見なかったことにしておこう。



「さて、一応修道院から出れるのは来年の秋から冬にかけて。

 その後のことを少しお話したいのですが、セリナ様をどこに住まわせます?

 王都? それとも領地に連れて行きます?

 個人的にはホルターは学園なので王都の方がいいのかなと思ったんですが」


「あぁ、そこは俺の家で暮らしてもらう。

 その方が下手な所に頼むより安心だしな。

 それにルニーとも話し合ってな。

 今後接点の増える相手だし一緒に住んだ方がいいと」


「……一応確認ですが、それホルターには?」


「まだ言ってない。

 というか、今日それを伝える予定だったんだが……コレだろ?」



 彫像化したホルターを親指で指してくる。

 まぁ、この状態でそのあたり話してもこいつが覚えきれないだろうしなぁ。



「確かにこれではどうしようもないですねぇ。

 まぁ、重要な点はご家族が受け入れて頂けているようですしいいのかな?

 ちなみに、ホルター当人がご両親に報告出来そうですかね?」



 この質問に全員無言になってしまう。

 いや、今のホルターを見てどうにかなると思う人はいないと思うけどさ。


 どうしよう……やっぱり力ずく?



「ん~、ちょっと無理矢理にでも現実に戻ってもらいますか」


「……殺さないでくれよ?」


「それって、戻るどころか通過して別のとこ行っちゃうじゃない。

 そんなことしませんよ」



 その言葉に不信感を抱いているのが約数名。

 カリムにナット、お前等は信じて欲しかったんだけどなぁ……。



「ま、まぁとりあえずやってみましょうか」



 そう言ってホルターの手を取り、中指を手の甲の方に向かって力ずくで曲げる。



「イテテテテッ!!

 イッテェよ!

 誰だよ!!」


「僕だよ? やっと起きたか?」


「へ? ニフェール? 何でお前ここに?」



 お前、そこまでボケなくていいんだぞ?



「今日何の日か忘れたか?

 ご両親にセリナ様のこと報告するはずだよな?

 それなのにお前は何をしているんだ?」


「……あぁ!」


「『あぁ!』じゃねえよ!

 ほれ、サッサと報告しろ。

 呼ばれた理由とか説明せず一人で固まってるから皆さん困ってらっしゃるぞ?」



 そう言うと周囲を見渡し親兄弟の視線にやっと気づくホルター。

 おいおい、また彫像化しかけてるぞ?


 え、これ何で発動するんだろ?

 見えてるから?

 いることが分かっているから?



 ……ちょっと実験してみるか。



「ホルター、失礼するよ」



 バ シ ッ !



「あいたっ!

 ニフェール、お前、何しやがる!」



 顔、というか目のあたりに僕の右手を当てて視界を遮る。

 少々強すぎた様だが、まぁ、そこは諦めてもらおう。



「グダグダ言ってないで、この状態でご家族に報告してみろ?

 あ、タキカ殿。

 すいませんがこのまま話を聞いてあげてください」


「あ、あぁ。

 ホルター、何か言いたいことがあるんだろ?

 お友達に色々協力してもらってまで話すべきことが。

 さぁ、教えてくれないか?」


「……」



 緊張している感じがするが、先ほどの様なガッチガチにはなってないな。

 やはり視界か?



「……好きな人ができた。

 ただ、今その人は色々あって外に出ることができない。

 身を守るために、未来の為に一年程とある所に居なくてはいけないんだ」


「ふむ……それで?」



「来年の今頃には平民として生活できるようになる。

 そうしたら……その人と婚約、そして結婚したいと思っている」



 ふぅ……やっと自分の言葉で言えたか。

 ご両親やご兄弟も一安心といったところか。

 少し緊張が抜けたような雰囲気になった……ホルター以外。



「ホルター、お前の気持ちは分かった。

 そのセリナさんという方と来年の建国祭でこちらに来たときに会わせてほしい。

 そこで婚約だのの話は詰めよう。

 まず会ってもいないのにこんな重要なことを決める訳にはいかんからな」


「……あぁ、分かった」


「それと、平民として生活できるようになったら、ここに住んでもらいなさい。

 下手に別に家を借りるより安全だ。

 ペスメー、ルニーさん、構わんな?」


「あぁ、構わない。

 ニフェール殿、ちなみにセリナ様が出てくる日はどうやって決めるんだ?」


「手紙のやり取りでですね。

 元々一緒に修道院に入っている面々がうちの兄の婚約者と友達なんです」



 友達というより狂信者?

 まぁ、事実は伏せとこう。



「なので出てくるタイミングも併せられます。

 いったんチアゼム侯爵に頼んで全員受け取ってもらい、その後分散の予定です。

 じゃないと、手間だけ増えちゃうんで」


「確かにそれは面倒だな。

 んじゃ、分散の際に俺に声かけてくれや。

 というか、マーニ隊長経由で連絡してくれればそれでいい」


「ええ、詳細は時期が近付いたら改めて」



 とりあえずこれで終わりかな?

 ホルターの目隠しを止めると、なぜか文句が。



「ニフェール、お前は真面目な話で人の視線を遮るのか?」



 何抜かしてやがる?

 視線遮らないと彫像化してしまうお前が?



「文句があるなら視線遮らなくても親と話せるようになれよ。

 目隠ししてやっとちゃんと話せたってのに」



 あ……タキカ殿以下バルサイン家一同真っ青になってるし。



「ホルター、本気で気づいてないのか?

 お前、緊張し過ぎて僕が来た事も気づかずに彫像化してたろ?」


「それは指を捻じ曲げられた時に聞いたよ。

 でも、その後は不要だったんじゃないのか?」




 はぁ?




「何で彫像化したか考えた上でその発言してるのか?

 お前はセリナ様のことを伝えるのに緊張し過ぎて固まってたんだろ?

 こっちとしては、そのまましていたら何も話せないと判断したんだよ。

 なので、お前が緊張しないで済みそうな手を考えた」


「それが視線を遮ると言うことか?

 どうしてその考えにたどり着いたのか理解できないんだが?」



 お前、それ言わせるのか?



「一応確認するが、この回答について後で文句言われても知らんぞ?」


「文句? なんで文句が?」



 本気で理解してやがらねぇ……。

 まぁ、いいか、こいつの発言だ。

 責任取ってもらおうか。




「だってお前……。

 以前、セリナ様の胸元見まくった結果フェーリオ達が視界に入らなかったろ?

 それとマーニ兄の前で訳の分からん暴走もしたよな?

 あれらと同じと考えたから視界を塞いだんだよ」




 ブ フ ァ ッ !

 ゲ ホ ッ !



 噴き出したのはホルター含むバルサイン一家。

 咳き込んだのはラーミルさんたち。



 お前がやったこと思い出せば僕の行動は適切だったと分かるはずなんだがなぁ。



「ニ、ニフェール、お前、このタイミングで何言い出す!」


「お前なぁ、僕がどれだけ苦労してると思ってるんだ?

 二人が暴走して人がいようといまいとキスしかけるとか?

 そういうのをどれだけ止めて、二人でデートできるまで検討したか忘れたの?

 それと最近マーニ兄とペスメー殿に迷惑かけまくったのもあるよな?」


「い、いや、忘れちゃいねえけどよぉ。

 この場で言うこっちゃねえだろ!」


「いや、だから文句言うなよって事前に言ったよな?

 執務室で暴走した時、お前は緊張して訳の分からん行動取ったよな?

 それって入ったことのない部屋だったからなのかもしれない。

 でも見慣れるとか見えないとか?

 緊張する要素に気づかなければ無事だったんじゃないのかな?」



 僕の発言を受けて思考の海に入ったペスメー殿。

 多分、過去のホルターの行動を再確認しているのだろう。



「それと、セリナ様の胸元見て暴走していた件。

 あれも、見えなきゃ暴走しなかったろ?

 胸元にケープ付けてもらってデートしたの忘れた?」


「覚えてるよ!」


「なら、どっちも視界にきっかけが見えた時に暴走しているだろ?

 見たこと無い部屋、関わったことの少ない人、好きな人の胸元。

 なら、視界遮ったら暴走の要因を減らせるんじゃないかと思ったんだが?」


「……」



 何も言えないだろ?



「ちなみに、お前が先程彫像化していたのも親に伝えるのに緊張したんだろ?

 お前が学園で実家に報告の手紙考えるのに無茶苦茶時間かかってたからなぁ。

 なら親の様子が見えなければまだ誤魔化せると思ったんだよ。

 実際、予想以上に緊張せずに話ができたようでこちらも安堵したんだが?」


「……」


「で、何か文句ある?」


「……ありません」



 全く、変な所で調子に乗りやがって。

 まぁ、これで終わりかな。



 その後、バルサイン家の皆さんと昼食をご馳走になった。

 なぜか(●●●)ホルターがご両親+嫡男から集中砲火を浴びていたが……。

 まぁ、被害の及ばないようにペスメー殿と楽しく食事させていただいた。

 なお、かなり美味かった。

 ラーミルさんは他人の目もあるので食事量は手加減していたようだ。



「昼食までご馳走になってしまいありがとうございます」


「いえ、うちのホルターの為に色々と骨を折って頂いてこちらこそありがとう。

 今後もアイツと仲良くしてやってほしい」



 タキカ殿には笑顔を見せておいたが、アイツ最近反抗することが多いからなぁ。



「んじゃニフェール、今度会うときは学園か?」


「建国祭のパーティで顔会わすかもしれないな。

 あ、そう言えば……ちゃんと宿題やってるか?」




 ピ キ ー ン !




 あ、ご両親が……背中に文字とか出てないよね? 鬼とか。



「お、おぃ、何でそれをここで言うんだよ!!」


「ここで言わずにいつ言うんだよ?

 ちゃんと勉強しとけよ?

 年明け後には試験するし、まともな点数取れなければ見捨てるからな?

 それと教えた剣の振るい方もちゃんと訓練しとけよ?

 学園戻ったら実力落ちてましたなんて言うなよ?」


「それを親の前で言うなっての!」




「だってお前、最近反抗期としか思えないようなことしかしてないじゃん。

 文句あるならもう少し常識的な行動してよ。

 僕はお前の親じゃないんだからさ」




 ピ シ ッ !




 あ、また固まってやがんの。



「ニ、ニフェール?

 なんだ、その反抗期ってのは?!」


「あれ、もしかしてこの単語知らない?

 こちらの指導にいちいち反発したり暴言増えたりするってやつ。

 ほら、学園でも剣を教えてやろうしたときに人の言うこと聞かずにいたじゃん?

 先ほどもホルターが彫像化したから対応してあげたのに文句ばっかり。

 以前調べたことがあったんだけど、お前の行動がかなり似通ってるんだよね」



 ただ、あれって親とかそれに準じた立ち位置の人物に反発するんだけどさ。

 この場合、教師とかも同じなのかな?

 僕はクラスメート兼教師って感じだから、反抗の対象なのかな?



 あれ、ペスメー殿が頭抱えているけどなんで?



「ニフェール殿。

 もしかしてそれって学園で剣の使い方とか勉強教えたって奴か?」


「ええ、その件ですね。

 元々ある程度は反抗するのは想定してました。

 でもホルターはそれが度を過ぎていた気がしてまして。

 なので、ちょっと書物を調べたんです」


「それで反抗期の可能性を思いついたと?」


「ええ、確かに僕の立ち位置だと教師的な感じなので噛みつきたかったのかなと。

 基本的に上の立場から指示されるのを嫌うようなことが書かれてましたね。

 ただ、先ほど親御さんの前で顔真っ青になるような発言してたよね?

 それ聞いて、ちゃんと言って自覚させないとマズいかなと。

 昼食時のご家族の集中砲火をちゃんと理解していればいいのですけれど」



 あの時、結構色々注意されていたからなぁ。



「ニフェール様、ママ説が強化されてる……(こそっ)」

「学園でもママなんだ……(こそっ)」



 ナット、カリム。

 小声で言ってもバレバレだぞ?

 後、この場でママ呼ばわりは止めてくれ。

 感づかれるのは勘弁してほしい。


 ラーミルさん、もうちょっと我慢してね?

 腹筋が物凄く揺れ動いてるのは分かるんだけどさ。

 胸まで激しく揺れ始めてるよ?



「あ~、ニフェール殿。

 これ以上はバルサイン家の方で引き取る。

 どう考えても落ち着いて話せそうもないし、ニフェール殿も予定あるんだろ?」


「えぇ、まぁ、王宮の方でマーニ兄にちょっと……」


「俺も仕事に戻るし、一緒に戻ろうや。

 父上、ホルターとちゃんと話してみてくれ。

 彫像化している間にどれだけニフェール殿が気を配ってくれたかとかな」


「あぁ、そこは親としてどうにかしておく。

 ニフェール殿、本当に対応ありがとうございました」



 お互いに挨拶して僕らは王宮へ。

 ペスメー殿も馬車に一緒に乗っていくことになった。


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