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◇◇◇◇


「何で皆あんな学園生の言葉に一喜一憂してるんですか!」



 俺、アパームは第五の隊長ペティック殿が戻られた後打ち合わせをしていた。

 そしたらなぜか第三のアキュム隊長がズカズカと乗り込んできやがった。


 いや、隊長同士の打ち合わせとかもあるだろうから入ってくるのに文句はない。

 だが……愚痴聞かせるために来たのか?

 そんな暇あるのか?



「一喜一憂もなにも……。

 重要な情報を提供してもらったのになぜ文句を言われるので?

 陛下を弑する者が来る可能性を教えてもらっただけじゃないですか」


「アレを本当に重要な情報と思っておられるのですか?

 自分自身の身を守るための戯言では?」



 おいおい、ニフェールがそんな戯言抜かすはずがないだろ。

 自分の身なんて簡単に守るだろうよ。


 アイツの懸念点は他者を巻き込むことだろうな。

 全員を守ることはできないだろうから騎士共動けってとこだろう。

 まぁ、何となくだが暗殺者を雇った奴が誰なのか知ってそうだが。



「彼の実力をご存じ無いとは言わせませんよ?

 スホルムの街の話は聞いてらっしゃいますよね?

 それに王都の暴動を制圧したのも彼とマーニ第二部隊隊長です。

 加えて、あなたの前の副隊長を武器無しで頭を潰したのを覚えてますか?

 あんなこと私にもできません」


「出来るかどうかではない!

 ならなぜアイツに暗殺者を殺させれば解決だろう!」


「で、暗殺者は今どこにいるので?」


「はぁ?!」



 そりゃそうだよなぁ、情報は掴んでも相手が誰なのか・どこにいるのか。

 その辺りはアイツに聞いても知るはず無かろうに。



「多分彼も襲撃の情報を聞いたと言うだけなのでしょう。

 ですが、その情報から推測されるのは二つ。

 実際に彼自身が襲われる場合。

 こちらは多分気にもしてないでしょう」


「何故だ!」


「彼ならあっさり殺せるでしょうから」



 おいおい、何唖然としてるんだよ。

 その位想像できないのか……って俺もアイツの思考に染まり始めて来たか?



「そして二つ目。

 自分を狙うという情報は囮で実際は王家の皆様の殺害が主目的。

 この場合、彼ではできないことがあります。

 パーティ会場に集まった貴族の守りです」


「それこそ我ら騎士が普段通りやれば済む話では無いか!」



 はぁ?

 暗殺者来るのを知らずにどうやって対応できると?

 普段通りだと確実に陛下たちを死なせてしまうだろうが!

 本気で何も考えていないのか?

 それともそれだけ守れる自信があると?



「アキュム隊長、いくら騎士たちでも不意打ちされて対応しきれませんよ。

 だからこそ情報を集めてその可能性を減らすのです。

 彼が持ってきた情報は値千金の価値がある。

 なんせ不意打ちの可能性を潰せたんですから」


「ぐぬぅ……」



 ペティック隊長すげぇ……俺だったら一喝してるわ。

 ニフェール辺りなら手が出るか?

 流石第八の抑え役として頼まれただけはある。



「あなたは隊長職にある方です。

 情報をもたらした者に罵声を浴びせるのが仕事ですか?

 違うでしょう?

 大事なのはその情報を元にどのようにして陛下を、街を、国を守るか。

 我々の仕事はそこに集約されるのでは?」


「……失礼する!」



 あ、出ていきやがった。

 本気で大丈夫か、こいつ?



「はぁ……アパーム副隊長、仕事しますか」


「そうですね。

 ちなみに隊長、アキュム隊長は納得はして無さげでしたが大丈夫でしょうか?」


「流石にニフェール殿にこれ以上喧嘩することはしないと思いますがね。

 とは言え、当日までにどう転ぶか分かりませんが」



 どうすっかねぇ、これは。

 アキュムの奴、本気で嫌がらせしやがったら……王都が血の海になるか?

 いや、ニフェールがジーピン家を止めるかもしれんが。


 勘弁してくれよ?

 たまにはオーミュとゆっくりイチャつきながら年末を過ごしたいんだからな?

 面倒事増えて年末も仕事なんてなったら……。

 あぁ、今から胃が痛い。



◇◇◇◇


 そのまま寮に帰って次の日。

 今日は複写をしてくれる商会に依頼をしに来た……ティッキィと二人で。




「その……これ……デートって――」(モジモジ///)


「――絶対違う!

 そんなこと言わないでくれ、ヴィーナを悲しませたくない」




 でしょうね、僕もそう思います。


 まぁ、暗殺者に狙われているって時点で護衛を付けるのは分かるんだけどさ。

 皆心配してくれるってちょっと嬉しい。

 ジーピン家だったら……「お前なら瞬殺だろ」とか言われるんだろうなぁ。

 まぁ、実際遊び相手にもならないけどさ。



 そんな軽いお喋りはともかく、あっさり複写してくれる店は見つかった。

 依頼も簡単で年明けの学園再開前には引き渡せるとか。

 ……年末年始位休もうな? 作業頼んだ僕が言うのもなんだけどさ。



 簡単の仕事が終わったので、ついでにティッキィを連れて王都を一回り。

 まずはビスティーの屋台にでも行くか。



「ニフェール様、俺はアレを一緒にやらないからな?

 その手の話はラーミル様にお願いしてくれ」


「僕もラーミルさん以外は望んでいないし、やろうとしたら殴るから。

 ヴィーナが出てきてから二人でやりなさい」



 以前の芋の細切り揚げの屋台に行くと男女連れがイチャイチャしまくっていた。

 まぁ、言葉で言わずともキスできるってのがいいのかな?



「やぁ、ビスティー」


「あぁ、ニフェ……違ったニフィ。どうしたんだ?

 ティッキィなんて連れて?」



 ちゃんとニフィ呼び出来たことは評価してあげよう。

 ちょっと怪しかったけどね。



「なんてとはご挨拶だね。

 少し話がある。

 時間あるか?」


「あぁ、一通り売ったしそろそろ補充のために一時閉店のつもりだったからな。

 あの時の店は解約して今は屋台一本でやっている」



 まぁ、あの店は無駄金だったしねぇ。

 客が皆冥界に行っちゃったからどうしようもないんだけどさ。



「で、少し頼みというか、何かあったら教えて欲しいんだけどさ。

 この建国祭の最中に僕を暗殺しようって輩がいてさ」


「おぃ!

 そんなヤバそうなこと淡々と話すなよ!」



 慌てて小声で指摘してくるけど、今更なんだよなぁ。



「暗殺自体は別に驚きは無いんだけどさ。

 何と言うか、僕は囮の様な気がしてね」


「囮?」


「狙いは陛下を含めた王家の暗殺なんじゃないかと……」



 あらあら、何ヒクついちゃってるの?

 仮にも暗殺者ギルドにいたんでしょ?

 そんなに怯えないの。



「いや、普通に怯えるからな?

 そんなぶっ飛んだ話聞くとは思わなかったよ!

 ……んで、何を期待している?」


「店やっている最中だけで構わないから暗殺者見つけたら教えて。

 パン爺さん経由で構わないからさ」


「え、あ、ちょっと待て、何でパン爺のこと知ってんだ?!」


「最近お友達になった」



 何、その天を仰ぐ仕草は?

 正直に伝えただけなのに。



「……いつか【妖魔】も友達とか言い出しかねねえな」


「パン爺さんより先に友達になったよ?」


「……なんなんだよ、ティッキィこれどうにかしろよ!」


「俺がどうにかできるはずないだろ?

 グダグダ言ってないで”はい”か”イエス”で答えればいいだけだろうに」


「……お前までこれに染まっちまったのか」



 これとか酷くね?



「……取りあえず分かった。

 結構ヤバいのか?」


「東部の暗殺者が北部からの依頼で僕を殺しに来る。

 それを東部の娼館から情報が流れて来た」


「……訳分かんねぇ、なんだよ、ルール変わったのか?」


「ルールは変わってないんだけど、愚か者共が勝手に改竄しようとしているんだ。

 なので、多分北部の暗殺者は今回の件が動いた時点で処分対象だね」



 唖然とするビスティー。

 こいつ、もしかしてこの手の話苦手?



「ティッキィ、ビスティーって仕事には出てない?」


「そうだな、そこはルーシーと同じだな。

 とは言え、覚悟の決まり方はルーシーの方が上っぽいけど」


「まぁ、カルの尻叩いてギルド維持させてきた女傑だしねぇ」


「ニフェール様に毒されたという言い方もできるが?」



 (ひど)っ!




 その後鍛冶屋のビートの所に行って同じことをお願いする。

 流石にポルには伝えない。

 あの子は暗殺者に関わってないし、関わらせる気もないしね。




 そしてそのまま薬師のポズに会いに行く。

 早めに顔合わせだけはしておきたかったんだよね。


 ティッキィの案内でヴェムの店に向かう。

 ちょうど店長のヴェム自身はおらず、ポズとだけ話す機会ができた。



「初めまして、ニフェール・ジーピンと言います。

 ティッキィの雇い主です」


「これはご丁寧にどうも。

 ポズといいます。薬師をしております」


「二人とも、お見合いじゃないんだが?」



 ティッキィ、変なツッコミしないでよ!



 軽くお喋りをして胃薬の話が出たので見せてもらうと……大当たり。

 これ、絶対味方にしておかないと。

 それと、もう一つ……。



「ポズ殿、ちなみに最近毒薬の作成依頼とかあります?」


「ちょ、ちょっと!

 ティッキィ、お前何を……」


「ポズ、なぜ俺がニフェール様に付いたのか少し考えてみろ。

 暗殺者であっても受け入れてもらえたからだぞ?

 当然お前のことも教えてある。

 それだけじゃない、ビートやビスティーのこともご存じだ」



 予想通りではあるが唖然としている。



「……あの二人を教えたのはお前か?」


「ビートは偶然だな。

 俺が久しぶりに顔見せに行ったらその後ニフェール様が来られた。

 どうも、昔に武器を作ってもらったとか言ってたな。

 ビスティーの方は……俺が王都に来る前に接点があったそうだ。

 ちなみにカルって分かるか?」


「マギーさんの所に居た新人……というか中堅に片足入れかけてた奴だろ?

 今はギルドの長やってるらしいが」


「あいつを含めた数人がニフェール様の部下をやってる。

 俺もカルとの接点で声かけられた」


「マジかよ……」



 その……なんで「絶望した!」って感じの表情をしているの?



「ティッキィ、お前なぜ貴族に従ってんだよ!

 普通に考えてこき使われて終わるの目に見えてんじゃねえか!」


「普通ならな。

 だがニフェール様、そしてジーピン家は普通じゃない。

 ちなみにマギーさんはジーピン家現当主の御者をしているよ」


「はっ?」



 あぁ、ここでもマギーのおっちゃんの居場所を知らない人が。

 ちゃんと教えてあげればいいのにねぇ。



「そしてカルたちも今生き生きとして働いている。

 まだ俺が王都に来る前、暴動が起こったと聞いたが?」


「あ、あぁ、多分だが強盗ギルドがやらかしたっぽいな。

 ギルド拠点が潰されたとかどうとか……」


「アレをやったのはニフェール様とその兄君だそうだ。

 で、カルたちも協力したらしい。

 まぁ、戦闘はほぼジーピン家の方々だそうだが?」



 こっちをチラッとみるティッキィ。

 補足説明しろってことかな?



「まぁ、大体合ってるよ。

 というか、娼館街の前で暴れている奴らを潰して、学園前のクズを消す。

 その後生産の長が人質になっていたのでぶん殴る。

 詐欺師ギルドの拠点に行ったら先行して強盗共が殺してた。

 で、最後に強盗ギルド壊滅させて終わりって感じかな?」


「マジかよ……予想よりひでぇ」


「分かるか?

 こんなぶっ飛んだ情報貰った時、俺もお前と同じ反応をしたよ」



 ティッキィ、お前ねぇ……。

 そんな言い方したら怯えられちゃうじゃない!

 こんなに優しいお子様なのに!



「あ~、色々言い分はあるんだが、時間が惜しい。

 すまんが先程の問いに答えて欲しい。

 今、僕は――」



 そう言って現状暗殺されかけていること説明する。

 追加で、僕狙いは囮で他の人物を狙っている可能性も高いことも。



「なんだよそれ、訳分かんねぇ、なんだよ、ルール変わったのか?」


「ビスティーも似たようなこと言ってたね。

 正直、相手側がルール違反上等のスタンスで喧嘩売ってきたって認識だよ」


「……これ、婆さんブチ切れてないか?」


「ブチギレる以前に僕と喧嘩したくないからだろうね。

 全力でこちらのフォローしてくれてるよ」



 さもありなんと言わんばかりに首肯するポズ。

 そこあっさり納得するんだ?



「んで、本気で情報無いかい?

 教えてもらえると助かるんだけど」



 そう言いつつ近寄ろうとすると怯えられてしまった。

 ティッキィに頼み、宥めつつ話を聞いてもらうことにする。



「……うちの店でも毒物は作っている。

 とは言え、俺は関わってないがね。

 ここの店の店長であるヴェムが元々作っていたらしい。

 客が誰かは知らない。ついでにどんな毒かも知らない。

 俺からしてみれば調べようが無いからなぁ」



 ほぅ、作ってるんだ?

 ……パン爺さんの出番かな?



「ちなみに毒を買う客って分かる?」


「流石に知らん……というか、大口の客情報は俺は教えてもらえない。

 当然、胃薬とかの方は対面販売しているから分かるけどな」



 まぁ、そんなとこか。



「いや、作っているという情報が分かればこちらもありがたい。

 それだけでも助かるってもんだ、ありがとう」



 礼を言うと、ちょっと照れ始めた。

 もしかして礼を言われ慣れてない?



「このお礼に一つ情報を渡そうと思う。

 仮にこの店の毒物製造作業に関わることを提案されたら即刻断りな。

 今、王宮側がかなりピリピリしているんだ。

 下手なかかわり方したら蜥蜴の尻尾切りとして使われちゃうよ?」


「……マジか?」


「マジマジ。

 あ、ついでにここの店に何か特別な思いとかある?

 拾ってくれた恩とか感じてるとか?」


「それは無いな。

 雇ってくれるのはありがたいと思ってる。

 だが、俺の最終目標は個人の店を出すことだ。

 犯罪犯しているのならいつでも逃げれるようにするだけだ」



 よかった、染まっているわけじゃないのならこちらとしてもやり易い。



「その考え忘れないでよ?

 ティッキィ、済まんがたまに様子見に来てくれ。

 状況によってはポズ殿を逃がさないといけないからなぁ」


「分かった、一旦ジジババに引き渡してニフェール様に連絡って感じだな?

 それならどうにかしよう」


「助かる」



 何か不穏なことがあったらパン爺さん経由で情報流すよう指示して店を出る。

 少しプラプラしているとティッキィから質問が。



「ニフェール様、アイツの店もしかして?」


「その可能性は高いと思うよ?

 取りあえずはパン爺さんに調べてもらうけどね」


「何か変なもの拾ったりして無いか?

 この引きの強さが正直恐ろしいんだが……」



 失礼な! 別にベヘ〇ットを拾ったわけじゃあるまいし。



 そんなお喋りしながらパン爺さんがいる所へ。



「あぁ、旦那様お恵みを……って(ぼん)か。どうした?」


「ちょっと質問。

『薬師ヴェムの店』ってとこ知ってる?」


「……その名が出て来るのは何故だ?」



 え、何、引っかかっちゃうの?



「ティッキィの元同僚の一人がそこで働いているらしいんだけどね。

 ちょっと嫌な予感がしたから確認だったんだ。

 その反応からするに、修道院関連?」


「あぁ、あそこの店は毒薬製造する店の一つだ。

 誰が作っているのか聞いたか?」


「店長のヴェムが作っているらしい。

 元同僚、ポズっていうんだけどそいつは関わってないそうだよ」


「……(ぼん)、もしかしてそのポズって奴味方にするつもりか?」



 パン爺さんにはバレちゃいますかね。



「うん、うちの親が暴れたことに対する詫びの一つとしてかな。

 とは言え、実力ありそうだってのもあるんだけど」


「毒殺させるつもりか?」


「いや、普通に薬師として生きて欲しい。

 まぁ、状況によっては毒薬を調べて欲しい場合もあるかもしれないけどね。

 そこは臨機応変に」



 何、そのジト目。

 僕らしいと思うんだけどなぁ。



「別にダメとは言わんよ。

 まぁ、情報はありがたく貰っておこう」


「一応ポズ以外にも何かあったらパン爺さん経由で連絡してって伝えてある。

 鍛冶師のビートと屋台のビスティーって分かる?」


「あぁ、大丈夫だ。

 アイツらも関わっちまったか……」



 その、僕が悪者に聞こえるからその言い方勘弁してほしいな。


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