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 その場にいた面々のほとんどが驚いた。

 とは言え、ジーピン家の面々は全く驚いていないが。



「ま、そんなところだろうな。

 どう考えてもニフェールを狙うという理由が弱すぎる。

 暗殺者どもを使う際の言い訳に使うってとこじゃないのか?」



 マーニ兄の発言にジーピン家の面々は頷く。

 まぁ、それくらいしか思いつかないよね。


 むしろそれ以外の理由があれば教えて欲しい位だ。



「だろうねぇ。

 僕が参加していて、かつ狙いやすそうな面々がいるタイミング。

 王宮で行う建国祭のパーティくらいしか思いつかないんだけど……。

 侯爵方、他に確実に貴族の家族含めて全員が集まるイベントってない?」


「無いな。

 色々なイベント自体はあるが家族を含めて参加可能となるとパーティだけだ。

 それ以外は当主、もしくはそれに準じるもののみだ。

 まぁ、ニフェールの場合は爵位周知や裁判時にも参加してもらうんだがな」


「そこはまぁ、参加せざるを得ないのでは?

 アゼル兄の結婚式の件があるしね」



 そこはディーマス家の処分もあるから参加しないとね。



「それ以外だと……後は思いつかないなぁ。

 王都での僕の行動を調べれば両侯爵家に襲撃とかもありそうだけど」


「「勘弁してくれ!」」


「いや、こちらも好きで言ってるわけじゃないんだから。

 とは言え、あちらが王家の方々の命だけを狙うのなら襲撃は無いでしょうね」



 後は……現時点では何もできないなぁ。

 事前準備だと……襲われそうな面々の配置位か?



「陛下たちは目立つところで座ってるだけですよね?

 多分王太子殿下夫妻も。

 後は大公様たちって自由に動き回るんです?」


「自由……まぁそれなりに自由だな。

 陛下たち王家の方以外は場所固定はされておらん。

 むしろ会場内で挨拶回りが基本だな」



 だよねぇ。

 となると、陛下と王妃様、王太子夫妻は騎士の最強メンバーで護衛だな。

 両侯爵は……アゼル兄か? ついでに僕もかな?

 大公様は……アムル?



「まず陛下たち王家の方々は騎士側でどうにかして。

 ラクナ殿とマーニ兄、後は団長辺り?

 そのメンバーが確実に傍にいて欲しい。

 説明には両侯爵使っていいから」


「まぁ、そちらはお前の言う通りだな。

 そっちはどうにかしておく」



 お願いね、マーニ兄。



「アゼル兄、両親と一緒に両侯爵を守る方向で。

 大公様はアムルに任せようかと思う」


「……確かにそれが立ち位置的に無難か。

 お前はどうする?」


「僕が狙われているんだから、狙われやすく迷惑かからない所にいようと思う。

 下手に僕の傍にいると一緒に狙われちゃうからね。

 なので、ラーミルさんはアゼル兄や両親の傍にいて欲しい」


「……分かりました」



 あぁ、そんな悲しそうな表情しないで!

 僕もこんなこと言いたくないんだけど!!

 カル、笑ってんじゃねぇ!



「パン爺さん、情報収集お願い。

 テュモラー侯爵家の王都の屋敷に人張り付けておいて欲しい」


「……東部の犯罪者が真面目に娼館の所に報告に来ないということかの?」


「分からないよ。

 でも、報告に来なかった場合は王都側に喧嘩売るってことでしょ?

 なら、チェックしといた方が良くない?」


「分かった」


「お願いね。

 お金は最近イカれたケダモノたちからお金分捕ったから、それで払うよ」



 先日の僕の生着換えで結構金入ったからなぁ。



「……よく分からんが分かったことにしとくかのぅ。

 ちなみに少しは安くしておいてやるぞ?

 北部と東部がやらかしてお前に面倒掛けているのだからこのくらいはな」



 パン爺さん、ツンデレって奴?

 婆さんに泣かれるのは勘弁してほしいんだけどな。



「アリガト、後日金額言ってくれれば言い値で払うから。

 次に婆さん、東部への対応は既に進めている方針でOK。

 北部への手紙はすぐに出せる?」


「準備は始めてるよ。

 商業側で北部に向かう奴がいれば今日の夕方にでも渡せる」


「なら今回の件は王都と東部に北部が喧嘩売ってるものとみなすこと。

 北部の長が東部の長に嘘教えたことと婆さんが言っていた不戦協定。

 あれも明記しておいて。

 ついでに東部の方にも同じこと書いておいてくれるかな?」


「いいのかい?

 あんな適当な話を使って?」


「別に構わないよ。

 暗殺者ギルドの裏の長と喧嘩しませんって話でしょ?

 別に嘘ついてないじゃん」



 ……ねぇ、皆なぜそんな呆れた表情するの?

 僕、悲しいんだけど。



「……まぁ、ニフェールが構わないのならいいかね。

 ちなみに、先ほど言った『喧嘩』。

 これはどう認識すればいいかね?」


「あれ? 以前婆さんが言ってなかった?

 今回で言えば北部が東部と王都に規則違反の行動をとった。

 なら北部暗殺者ギルドを見せしめのために壊滅させるんじゃないの?

 一応娼館とか商業とかそういう所は見逃すけどさ」


「誰が壊滅させるんだい?」


「え、僕以外に誰がいるの?

 直接喧嘩売られたのは僕だよ?

 なら僕が行かなきゃ。

 あ、当然貴族としての建国祭対応終わらせてからだけどね」


「……まぁ、想像通りではあるけどね。

 分かった、そのあたりはこっちでどうにかしておくよ。

 リシアシス、北部に行く奴はいるかい?」


「ええ、前回行った者がそろそろ行きますので、明日明後日辺りに出発します。

 東部から北部へのメッセンジャーも一緒に運びましょう」



 後は……。



「婆さん、東部に連絡するメッセンジャーって向こうから来た人使うんだよね?」


「そうじゃが? 何を……まさか?!」



 流石【妖魔】、感づいたんだね。



「途中で暗殺者集団にストップ掛けるんでしょ?

 そいつらが余程馬鹿だったとか金に目が眩んだらメッセンジャー殺すよね?

 知らぬ存ぜぬで済ませそうだし」


「確かにねぇ。

 となると、東部の奴にはそのことも伝えておくかね。

 あ、妾達で別の伝令を仕立てるのは黙っておくけどねぇ」


「それでいいよ。

 わざわざ教えてこちらの伝令を殺されても困るし。

 東部の伝令が生き延びるかは当人の判断に任せましょ。

 そこまでは僕らも面倒見切れないし」



 これで事前にできることは大体終わりかな?

 そう思っていたんだけど、アゼル兄が質問してきた。



「ニフェール、暗殺対応は理解したんだが、わからんところがあってな。

 北部テュモラー家がニフェールを恨んでいる理由は多分ラング家の件だろう?

 あの処刑――『葡萄踏み』だったか?――の時はメインはお前かもしれない。

 でも、あの時俺も暗殺者処刑したりしたよな?

 それに大体のところ、マーニもお前と一緒に暴れてるんだろ?

 なら俺たちジーピン家に来ると思った。

 だが、なぜかニフェールだけに暗殺依頼が飛んでいる。

 そこが分からなかった。

 説明できるか?」



 ん~、それはそうなんだけど、僕も分からないなぁ。



「正直僕としても推測にしかならないんだけどね。

 ラング家関連で恨まれるとしたら僕とマーニ兄が狙われると想定してた。

 ジーピン家として狙われるのはちょっと可能性低いかな。

 アゼル兄が出てきたのってあの時位でしょ?

 ならジーピン家狙ってもあまり意味無いと思う」


「……ふむ、まぁ、そこは納得できる。

 だが、マーニが狙われないのが分からん。

 ニフェール、お前個別に何か恨み買って無いか?」


「ごめん、それは僕も分からない。

 ただ、推測というか妄想レベルなら……。

 基本マーニ兄と僕の二人が暴れているのは事実。

 でも、マーニ兄は仕事として見られているけど、僕はなぜいるって話かな?」


「はぁ?」



 あ、気持ちはわかります。

 でも、その位しか思いつかないんだよねぇ。



「相手側からすれば、学園生が騎士の仕事にウロチョロついてくる。

 ついて行ったところで自分らの環境を潰しまくっている。

『この学園生が何故か何度も邪魔してやがる! 潰してやれ!!』

 そんな感じじゃないかな?」



 なんか纏めるととてもくだらない理由になっちゃったな。

 まぁ、実際そんな感じなんだろうけどさ。



「もしくはマーニ兄が脳筋騎士的に見られているとか?

 そうなると頭脳担当潰せば事態の改善が出来ると踏んだんじゃない?」


「おいっ!!」



 あ、マーニ兄拗ねちゃう?

 アゼル兄、こっそり笑っているの見られてるよ?



「マーニ兄、落ち着いて。

 ん~、事実を知らなければ僕を連れ出す理由って何か思いつく?」


「あ?

 お前が策を考えて……え、そういうこと?」



 感づいた?



「実際はマーニ兄もかなりヤバい人だけど――」


「おいっ!」



 何騒いでんの? 事実じゃん。



「――ヤバい人だけど、事実知らなければ僕が頭、マーニ兄が腕っぷし。

 僕を潰せばマーニ兄は暴れるところを見つけられなくなる。

 そんなところかなって思ったんだけど。

 ついでに僕の学園での成績とか情報漏れてたら、この推測補完されちゃうよね?

 なんせ、騎士科初の三科試験受験者だし?

 学園の歴史上初かもしれない生徒五人による全科首席争い。

 こんなことやっている奴が頭担当じゃないって思わないでしょ?」


「ん? 『生徒五人による全科首席争い』? 生徒三人じゃないのか?

 フェーリオ様とジル様だろ?」



 あれ? アゼル兄何で疑問……あっ!



「ゴメン、これ手紙に書いてなかったね。

 フェーリオとジル嬢に加え、冬季試験からレルカとクレイが参加しました。

 なんで生徒五人で合ってるよ」


「……どんだけ人外魔境なんだよ、お前の学年は」


「酷いな、『ただ』勉強した成果ってだけじゃない」


「それが『ただ』って単語で纏められると思うなよ?

 とは言え、確かにその情報が流れていたらお前を頭脳労働担当と見なすな。

 当然、騎士であるマーニより狙いやすいと考える。

 そりゃあお前が名指しされるわけだ」



 そう言って溜息を吐くアゼル兄。

 ごめんね、変に苦労させて。



「まぁ、状況は分かった。

 ならまずは東部暗殺者が手を引いてくれるかどうかだな。

 とは言え、多分金積まれたら無理だろう。

 となると事前に東部暗殺者共を消す?」


「どうだろ……僕だったら婆さんに顔出して聞き分け良いフリするけどね。

 そして、仕事受けないと伝える必要はあるから一度テュモラー家に行くと宣言。

 実際は一度行った時点で詳細聞き出しておいて、王都から出ていく」


「は?

 出て行ってどうする?」


「貴族のパーティ直前に王都にこっそり戻ってくる。

 正門側ではなく、他の門とかね。

 もしくは、都合のイイ衛兵を配置している日を事前に聞いとくかな。

 そのタイミングで王都に入ればバレないんじゃない?」



 それなら気づかれずに……あぁ!



「そうだ!

 外で待機した後、テュモラー家から指定した場所に馬車を寄越してもらうとか?

 衛兵も貴族の馬車の中をそこまで細かく見ないんじゃない?

 なら入り放題だと思うけど」


「……絶対アンタを敵に回したくないねぇ」


「だからこそ不戦協定結んだことにしたんじゃないの?」


「あぁ、妾の人生最大の功績になっちまいそうだよ」



 婆さん、そこまで呆れないでもよくね?

 というか、人生最大の功績はパン爺さん堕としたことにした方がいいのでは?

 拗ねられちゃうよ?



「まぁ、こんな感じで王都から出て行かれたら追うのは厳しい。

 加えて貴族の力を使って侵入されたら発見は難しい。

 こちらの目を誤魔化すのは十分可能だね。

 まぁ、その条件を覆す手口もあるし……ね、パン爺さん?」


「まぁ、そこはキッチリ監視はしておこう。

 とは言え、あちらもそこは想定していると思うぞ。

 だからこそ先ほどの貴族の馬車に載せる話。

 あれをされると正直確証が無くなる」



 あぁ、そうなんだ……。



「リシアシス、お前の所でテュモラー家に卸している商会は無いかの?」


「ありますけど、既に結構な量の食糧とか買われてますからねぇ。

 今更十人程度口が増えても新たに買うとは思えません」


「酒は?」


「同様にたっぷりと。

 後は……余程東部暗殺者が愚か者だったらカジノとか?

 娼館には来ないでしょうし」


「相手の愚かさを期待する気はないのぅ。

 多分シロスも同様じゃろ?

 となると現時点では(ぼん)の手を取られると厳しいのぅ」



 そっか、予想以上にあの手口は嫌がられるんだ……。



「まぁその手口を使い始めたら、こちらでもなんか策を考えるよ」


「……どうせ夜に侵入して暗殺ってとこか?」


「マーニ兄、よくわかったね」


「分からいでか。

 お前と一緒に何度面倒事潰してると思ってんだよ」



 マーニ兄との兄弟愛を感じる会話をしていたはずなんだが……。

 なぜかジーピン家関係者以外は唖然としていた。



「……カル?」


「俺に聞くなよババア。

 スルースキルは身に着けたが内容を受け入れられてるわけじゃねえんだ」



 カル、その発言酷くね?


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