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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
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76

 さて、あれから時は経ち……王都は建国祭待ち状態。

 街は既に飲んだくれた奴らが道端で寝こけてたりしている。


 スリの部隊は稼ぎ時か?

 もしかするとストリート系も連れ込み宿に空きが無くて結構使われているのか?


 クラスメートも放課後から遊びに行く奴が増えた。

 先生方もなんか浮かれているようだ。


 僕はクラスメート用の宿題を作るために夜にコソコソ書き始めている。

 ……めんどい。

 でもやらんとあいつ等の算術の成績絶対上がらないしなぁ。



 そんな中、実家の面々がジーピン領から到着。

 ジャーヴィン侯爵の家に泊めてもらうことになったそうだ。

 まぁ、カールラ姉様がいるから納得だ。

 フェーリオが落ち着いていられるかは分からんがね。


 僕もアゼル兄が子爵に陞爵したとき以来に家族全員と会う。

 久しぶりに色々と背負う立場から親の庇護を受ける立場となった。


 ……あぁ、こういうのが子供の特権なのかな?

 今年度色々関わってしまったから忘れかけてたよ。



「ニフェール、学園はどんな調子だい?」


「色々とやらかしましたが、偉い人たちの胃袋くらいしか壊してません」


「なら良し。

 成績も十分だし、文句つけようもないねぇ」



 流石母上。

 普通の親なら何しでかしたと大騒ぎだろうけどあっさり流してくれた。



「ちなみに王都でまた何かあるのかい?」


「幾つかありますね。第一に――」



 そのまま延々と建国祭予定と来年の予定を説明する。



「――こんなところですね」


「またお前は色々苦労してるねぇ……」



 母上にまで呆れられてしまった。

 いや、否定できないんですけどね。



「さて……カールラ姉様。

 少しお話があるのですが……」


「あら、何かしら?」



 あぁ、この笑顔が怒りの表情に変わるんですね。

 いや、覚悟はしてましたけど……やっぱ怖ぇ!



 そんな僕の心を押さえつけ、女装訓練を隠していたこと。

 これを一通り説明する。




「……ふぅん?」




 ひぃぃぃぃ!!!

 怖、怖いんだけど!!

 出来るだけ表情変えないように謝罪したけど一通りちゃんと話すので手一杯だ!



「……で、今まで私に情報をよこさなかったのは暴走しそうだから?」


「ええ、今までのカールラ姉様の所業からすると僕を監視し続けるんじゃない?

 確実にアゼル兄を領地に置いて。

 それはマズいだろってのが僕の意見」



 少し表情を変えるカールラ姉様。

 まぁ、ご自分でもやらかしかねないとか思ったんだろうな。



「ちなみにロッティ姉様も同じで、バレるまでは暴走しないように黙ってた」


「で、バレたので、それなら正直に全部言ってやろうと?」


「そうだね。

 というか、今回の女装の件は理由が二つ。

 一つ目は潜入や情報収集に使えそうと思ったこと。

 この場合、知られてない程やりやすい。

 二つ目はジル嬢の学園でのやる気に関わる点。

 これは、学園卒業した人たちに関わらせるのも違うんじゃない?」


「なら、ニフェールちゃんのお相手を学園生で選んだらぁ?」



 あぁ、めっちゃ拗ねてますね。



「僕とフェーリオとジル嬢に匹敵する人物が何処にいるの?

 それぞれの二番手は平均点で言うと二割五分ほど差があるんだけど?

 その状態で僕らレベルの行動取ってくれって?

 そんなの無茶だよ!」



 これについては納得してくれる。

 現時点で僕たちに匹敵する人物がいないのは事実だし。



「ちなみに、ラーミルさんが選ばれた理由ですけど……。

 パァン先生の方で一番僕がやる気を出す相手として選ばれました。

 適切過ぎて文句も言えませんよ」


「まぁ、確かにねぇ。

 それは理解も納得もできるわ。

 そして暴走については私も色々した自覚もあるし……」



 あ、やっぱりあるんだ。

 というか、これで自覚無かったらそっちの方が怖いよ!



「誘拐裁判の前にお仲間集めて暴走したりしたしねぇ。

 バニースーツ着せたいとかいう人もいたし、水着着せようって人もいたし。

 あぁ、水着はロッティ姉様だったっけ?

 姉様も制御できない位に暴走するのは覚えてるでしょ?」


「ええ、あれは私の実力を越えていたわ……。

 それはそれとして、やっぱり悔しいのよねぇ」



 そこでチラチラ僕を見始めるって、何したいのかバレバレなんですけどねぇ。

 チラッとロッティ姉様の方を見ると、めっちゃワクワクしてるし。

 本当に……この人たちは……。



 このおねだり……欲望?

 少しは晴らしてあげましょうか。



 このまま女装の冬服ヴァージョンが必要であることを説明する。

 そして選んで欲しいと伝えると……生唾ごっくんしているし。

 いいから落ち着け、姉様!



 そのままついでにどこか店知らないか相談する。

 なぜか王都の店は既にどこも顔なじみだと返答が来た。

 ……姉様、加減して?



 その後話し合って、冬用のドレスの選択を任せるのは受け入れられた。

 また、お友達? 同類?

 その人たちを完成する頃に読んでお披露目することも決まった。

 下手に隠して暴発されるよりかはマシだと思っている。


 ついでに年度末の学園でのダンスも両侯爵夫人と交渉するそうだ。



 さて、その後時が過ぎドレス選択の日。

 カールラ姉様に案内されて向かう。


 メンバーは姉様方とラーミルさん、加えてカル達と……ジル嬢。

 なぜ参加しているのが疑問だが、追及はしなかった……怖いし。


 そんなこんなで姉様方が五着程選んできた。

 ん~、三着はまぁ許容範囲かな?

 残り二着はちょっと飾りが派手なんだよなぁ。

 目立ちたい訳じゃないからそこは調整必須だな。



「さて、この五つが条件に合うと思うのだけれど、どうかしら?」


「そうですねぇ……この二つは少し飾り部分が派手すぎるのでちょっと。

 他三つは許容範囲ですね」


「……というと、後は着心地かしら?」


「そうですね、動きづらいとかは勘弁してほしいので」



 その言葉を僕が発すると同時に姉様方の表情が悪魔のような表情で嗤い始めた。

 え……えっ?




「そうよね、着心地は大事よね?

 なら、この三つ着てみて判断しましょう♪」


「えっ? いや、ちょっと待……」


「まぁまぁ♡」


「――――!!!」




 姉様方を殴る訳にもいかず、助けを求めようとキョロキョロしたが……。


 カル達! 頭下げて見送るんじゃねえよ!!

 ラーミルさん、ジル嬢! 敬礼しないで助けて!!




 それからどのくらい経ったのだろう。

 姉様方に下着状態まで脱がされ、とっかえひっかえ着替えさせられた。

 加えて、四方八方から舐めるように見られて軽く踊らされた。

 まぁ、この辺りまではまだ許容……したくないが、理解はできる。


 でも、その後尻撫でるとか止めて!

 追加で腋のニオイ嗅ぐの止めて!!

 ロッティ姉様、これマジで恥ずかしいから!!!



 二人が満足して解放されたところで急ぎラーミルさんの所に逃げる!

 淑女科のアノ歩法を使って一足飛びに近づく。



「ラ、ラーミルさ~ん!」




 ポ フ ッ




 半泣きの僕の頭を撫でて慰めてくれるラーミルさん♡

 少し落ち着いた所で別室での出来事を説明すると……ヒィ!


 ラ、ラーミルさん?

 お、落ち着いてくださいね?



「ニフェールさん、最後の件、誰がしてました?」



 正直に答えるとロッティ姉様を即刻捕え顔にアイアンクローしていた。

 当然アノ歩法を使っていたが、僕には一切見えなかった。

 あれが【才媛】の本気の実力か……。



 ジル嬢とカールラ姉様の方でラーミルさんを落ち着かせてました。

 その後ラーミルさんの男装用衣装を確認して終了。



 なお、侯爵家に戻った時点でロッティ姉様はラーミルさんに連れて行かれた。

 どうなったかは知らない、知りたくない。

 マーニ兄も簡単に事情を説明したら逃げ出した。

 まぁ、僕も同じ選択をするだろうから止めないよ。



 そのまま寮に戻り、宿題の残りを一気に仕上げる。

 これで、ベースは完了かな?


 ついでにアイツらにはまだ見せないけど休暇明けの試験の準備をするか。

 こちらはすぐに出来上がる。

 なんせ、宿題のピックアップだけだからね。



 そして、時は過ぎ学園最終日の前日の放課後。




「よっし、全員動くな!」


「待て、別に俺たちは強盗じゃねえぞ!」




 ホルター、変な所でツッコミ冴えてるな。

 教壇に向かい、クラスメートに向かって命ずる。



「以前言ったの覚えているか?

 算術の宿題の事」


「あ、あぁ、一応覚えているが?」



 ざっと見回すと、他の奴らも覚えていたようだ。

 忘れたそうな奴らも一部いるが、そこはまぁきにしないでおこう。



「アレが出来上がった。

 それで、全員で複写をして欲しい。

 紙は学園にお願いして用意した。

 お前らがやるのは複写だけだ」


「……どのくらいあるんだ?」


「紙一枚当たり、問題二十問。

 これを五十セット」


「ご、ごじゅ……」




 まだだ、まだだぞ?




「加えて、各問の答えを纏めたもの。

 これは十枚だな。

 これを使って日々勉強してくれ」



 皆から「グエー……」と蛙を踏んだかのような声が聞こえる。

 あ、本当に踏んだことは無いよ?

 何となくってだけね。



「宿題と言っても単純に毎日この問題を解いて行けと言うだけだ。

 最初は一枚当たり十分、二度目は五分、最終的には一枚一分で解け」


「無理だって!

 そんなん解けるはずねえじゃんか!」



 はぁ?

 ホルター、この位解けよ!

 滅茶苦茶簡単な問題しか用意してないんだからさぁ!



「問題見た上で言ってるのか?

 問題も見ずに抜かしているのならこれ以上指導はしないが?」


「な、何だよ、脅しかよ!」


「僕も暇じゃないんだ。

 ついてくる奴しか教える気はない。

 こんな滅茶苦茶簡単な問題で泣き入れる時点でお話にならんぞ?」



 僕の「滅茶苦茶簡単な」という単語に興味を引かれた奴らが覗きに来る。

 チラッと宿題を見せてやると……。



「……ホルター、これはニフェールの言い分が正しいぞ。

 これで解けないとか言い出したら今まで学園で何してたって言われるな」


「だろぅ?

 難しいのだと速攻で投げ捨てそうだから確実に解けそうな奴を選んだんだよ。

 それなのに見もせずこんな文句って……ヒドくね?」



 覗きに来た奴らのコメントに乗って反撃する。

 ホルターも流石に恥ずかしくなったのかプイッとそっぽを向く。

 ……お前がやっても可愛くないぞ?



「まぁ、ホルターの怪しい行動は置いておいて、説明するぞ?

 内容的には算術苦手でも七割くらいは取れると思う。

 ただし、これを正確に短時間で答えろと言われると、三割程度になるだろう。

 それを時間内に完全に答えられるようにするのが目的だ

 最初は一枚当たり十分、それから五分、三分と短くして最後は一分くらいかな」


「……そんなの出来るのか?」


「出来るかじゃねえんだ、やるんだよ。

 というか、これくらいできない奴はこの後とても苦労するぞ?

 算術はかなり色々な科目に関わる。

 ここでキッチリ実力つけとけ。

 そうじゃないと三年でキツいと思うぞ?」



 ……まだ不安なようだな。

 仕方ない、既にバレていることだしあの情報を使うか。




「ホルター、セリナ様に愚かなお前を見せたいのか?

 あちらはお前にまた逢うために努力されているんだぞ?

 なのにお前は何も変わらないままなのか?」


「ニ、ニフェール!

 お前、何言い出す!!」




 は?

 何言ってんだよ。



「先日お前が自分でバラしやがったんだろうが!

 だからこそ、お前がヘタれたこと言い続けるならこの話題でツッコむだけだ。

 あぁ、もっと色々言ってやっても構わんぞ?

 このままヘタれるんなら一部の人しか知らないネタをバラしてやろうか?」



 二人初めて顔合わせた時点でいきなりキスしようとしたとか?

 僕が首根っこ掴んで止めたよな?


 というか、クラスの面々はむしろ話せと騒いでいるが、只の脅しだぞ?



「待、待て!

 分かった、やる、やるから落ち着け!

 バラすんじゃねえ!!」


「それならグダグダ言ってないでこっちの指示に従え!」



 全く、そんなにグチグチ言うんじゃねえよ。



「ホルター以外に文句ある奴はいないな?

 なら、サッサと終わらせよう。

 各自一枚担当して複写してくれ。

 僕を抜かしたここにいる人数分複写すれば終了だ」


「「「うぇ~い」」」



 やる気ないとしか思えない返事だけど、各自動き始めた。

 ……動き始めればそれなりに出来るんだよなぁ。

 特に今回は頭使う仕事じゃない、ただの複写。

 ならこいつらもサクサクできる……文字の汚なさは気にしないこととする。



 放課後開始してそろそろ学園から追い出される頃、一通り書ききった。



「よし、皆ご苦労様。

 これを持ち帰って明日以降毎日解き続けろ。

 少しでも早く、正確に解け。

 年明け初めの頃に確認試験を行うからな?」


「その試験ってこの宿題の範囲か?」


「その通り。

 満点取ったら合格。

 それ以外はやり直しだな」



 そう言うと皆文句を言い出すが、その位クリアできんだろ?



「休み中毎日解き続ければその位簡単だろ?

 出来ないことを言う気はないぞ?

 ちゃんとやらないと合格できないかもしれないがな。

 あ、ちなみにサボった奴は見捨てるから」



 こっちが本気であることが分かったのか、一斉に首肯する面々。

 というか、ここまで脅さないと動けないってのもなぁ……。


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宿題は、「やっててよかった苦悶式」 at 学年末、かな。
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