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次の日の昼休み。
「で、そろそろ皆点数分かったんだろ?
どんな感じだった? 言ってみ?」
フェーリオ、何だよその怪しげな発言は?
皆の状況報告を纏めると……。
僕:騎士科首席、領主科・淑女科とも四位、文官科九位
フェーリオ:騎士科三位、領主科首席、淑女科十位、文官科七位
ジル嬢:騎士科七位、領主科三位、淑女科首席、文官科六位
レルカ:騎士科平均五十後半、領主科・淑女科平均六十前半、文官科次席
クレイ:騎士科平均五十後半、領主科・淑女科平均六十前半、文官科首席
今回はクレイが首席か。
僕は元の目標を少し上回っていた。
特に、文官科九位というのは予想外だったなぁ。
それに算術は六割後半、もう少しで七割という所まで成績が届いたのは驚きだ。
フェーリオとジル嬢はそれぞれある程度納得しているようだ。
レルカとクレイは……まぁ、こんなもんじゃね?
特に不明点の多い科目で潰されるのはよくあることだし。
僕で言うと文官算術。
「レルカたちはこんなもんだろ。
最初でいきなり十位とかは取れんよ」
「ですわね。
私たちが騎士科で苦労したところが如実に不明点に現れてますわ。
でもニフェール様、これは三年最終試験で十分届く範囲でしょう?」
「そうですね、失点したところは全て文官科で習わない所。
騎士科専門の所ですから、正直この点数取れれば現時点では十分でしょう。
領主・淑女科の方も同じような感じですし……。
次回までに専門性の高い部分を見ておけば十位くらい届きそうですね」
僕たちの三人の評価に二人はかなり安堵していた。
まぁ、不安だったんだろうな。
経験者からの好評価で安心したんだろう。
「この差を埋めるための書籍って先日教えてもらった奴か?」
「だね、アレ見れば十分だと思う」
レルカの問いに僕が答えると……ジル嬢?
何悪だくみしてやがりますか?
「あら、クレイ達も淑女科の訓練してみます?」
「……ジル様、どのような?」
「例えば……実際に女性側のダンス踊ってみるとか?」
ブ フ ォ ッ !
こ、このタイミングで何言い出すんだアンタは!
周りを見ろよ、皆唖……アレ?
僕はちょうど飲んでいた水を噴き出しかけた。
レルカは……あれ? 何で悩んでいるの?
クレイは咳き込んでるな。僕と同じ状態か。
フェーリオは……なんだよお前、その怪しい夢でも見た顔は?
まさか男ども三人侍らせてハーレムとか考えてるんじゃあるまいな?!
ラシー嬢とニミー嬢は……ねぇ、何で目をキラキラさせてるの?
ダメだよ?
そっち行ったら戻って来れないよ?
というか、ジル嬢?
レルカたちには女装の事教えてないんだからね?
「そ、それって……」
「言葉だけでは理解が追い付かないかもしれません。
ですが……例えばダンスとかは実際に踊り方を覚えた方が分かりやすいかと。
当然単語とかは意味無いですけど、動きを理解すれば答えやすいかと」
クレイの反応にジル嬢は立て板に水とばかりに答えていく。
本気なのか?
……ならこの質問に答えてもらおうか。
「ジル嬢、それやってフェーリオ抑えられるのか?
こいつ、ハーレム作りかねないんだが?」
「ハーレムって、まさかそんな……」
「今のフェーリオのだらしなく緩んだ顔見てみろ。
あの情けない顔見てから同じ質問に答えてくれ」
チ ラ ッ
「……ごめんなさい、先ほどの話は無かったことに」
ジル嬢、いいアイディアではあるが、止めるべきだよ。
ちゃんと諦められたことは素晴らしいと思うけどね。
フェーリオ、何愕然としてるんだよ!
お前のアノ表情見て安心できる奴はそういないぞ?
レルカとクレイ、微妙な表情すんな。
フェーリオの性癖今のうちに知っておいてよかったぞ?
知らぬまま話に乗ってたら……いや、言うまい。
ラシー嬢とニミー嬢、そっちはまだ早いと思うなぁ。
いや、どうせ最終的には沼に堕ちるとは思ってるけどね。
でも、そんな急いで堕ちなくてもいいと思うなぁ。
「とはいえ、フェーリオをちゃんと御せるのなら提案としては面白いと思う。
実際に動き方の理解があると、結構点数取りやすくなるしね」
実体験者としてそこは宣言しておこう。
「そうなんですよねぇ……だからこそ提案したのですが」
「でも、アレを御しきれないのなら止めた方がいいかと。
ラシー嬢&ニミー嬢 VS フェーリオなんて見たいの?」
「絶対嫌ですわ!
そうなんですよねぇ……そこどうにかできれば……そうですわ!」
何、まさか生贄用意するとか言わないよね?
「指導の間、僕が取り押さえとけとかは絶対お断りですからね?」
「……なんで言う前に提案を潰すんですか!」
「その位なら僕でも思いつくんですけど?!
そしてそれだけは絶対に嫌なんですけど?!」
というか、一番ヤバいの僕なんですからね?
絶対断るでしょ!
フェーリオが僕を襲い掛かりそうで嫌だよ!
今度は股間全力で蹴るからね?!
「ジル嬢、フェーリオが勃たなくなってもいい?
もしくは身体の一部を抉るとか?」
「止めてください!
分かりましたから!!」
こちらの本気をやっと理解して頂けたようだ。
なんか、視線の片隅でフェーリオが舌打ちしているんだけど?
ジル嬢、気づいても見なかったフリとか止めて!
ちゃんと現実見て!
「なぁ、ニフェール。
実はフェーリオ様ってヤバい人なのか?」
こっそり問いかけて来るクレイ。
詳細な発言は僕がダメージ受ける形になるしなぁ。
「まぁ……うん。
クレイの言う通り。
とは言え、暴力を振るうとかは無いから。
でも、詳細は聞かないでね。
僕も言いたくないし」
「……そこまでなのか」
多分滅茶苦茶大きな誤解をしていると思う。
精神的に追い詰めるとか思われているのかな?
ある意味近いんだけどね。
だけど、こちらとしても真実は言えないし……。
うん、いつか誤解を解く時もあろう。
放課後、王宮に顔出すとサバラ殿と偶然出会う。
「おや、サバラ殿お疲れ様です」
「あぁ、ちょうどよかった、ニフェール殿。
ご連絡しようと思ったのですが、いらっしゃってちょうどよかった」
へ?
何かあったっけ?
「カールラ様のお友達で問題のある方って覚えてます?」
「……ハイハイ、確か五名ほどいらっしゃいましたね。
あれ、確か一名面倒な立場の方おられましたよね?
婚約者の実家の面々を潰したら情報を流すということになっていたかと」
アパームのあんちゃんからオーミュ先生経由でお友達へ連絡する奴ね。
「ええ、あれですが婚約者側潰しました。
なので、アパーム殿に連絡入れようとしたらちょうどお会いしたもんで」
「……なら、一緒に行きますか?
流石に行くだけなら嫌がられることは無いと思うので」
「もしかして嫌われてます?」
「僕と関わると面倒事がやってくるという不安があるのかもしれませんね」
まぁ、ほぼ事実なんで文句も言えませんが。
そんな話をしながら第五部隊の所へ。
「……何しに来た」
「ちょ、そこまで警戒すること無いじゃない!
僕はサバラ殿の付き添いってだけだよ!」
「本当だろうな?」
そのジト目で見るの止めてもらえます?
流石に心にクルものがあるので。
「まぁまぁ、実際伝達だけなので、そこまで怯えないで大丈夫ですよ?
以前アパーム殿にお話した、伝達の件です」
「ん……あ、オーミュ経由でとある女性に連絡してくれって言うアレか!」
「ええ、その件です。
男性側の家を潰しましたので、奥様経由で伝達をお願いします」
「分かった。
今日は俺も夜勤はないし、そのまま家に帰れる。
明日中にはその女性に連絡行くと思うぞ」
「助かります。
では、伝達よろしくお願いします」
サバラ殿と一緒に出ていくと、扉を閉める直前に溜息?
いや、溜息というか安堵?
そんなビビらんでもいいんだけどなぁ。
「怖がられてますねぇ」
「怖がらせた記憶が無いんですけどねぇ」
いや、本当にアパームのあんちゃんとは接点大してないんですよね。
むしろあの程度の接点で怯えるようなことなんて……無いよね?
そんなことを考えているとサバラ殿から嫌な一言が。
「ニフェール殿、恐怖を感じるのは時間ではありません。
一目合ったその日から恐怖の雷に打たれることもあるのです」
「恋愛で恋の花咲くのなら分かるけど、恐怖も?!
それも雷?!
逃れられないってこと?!」
いや、サバラ殿が面白可笑しく言ってるだけだと思うけどさ。
でも……あの怯え方をみると冗談に聞こえないんだよなぁ。
そんなに脅かしてないと思うんだけど?
少々疑問を解決できず納得いかない状態ではあったがそのまま移動する。
「今日は元々どんな用件で王宮へ?」
「いえ、正直大した用事はありません。
冬季試験も終わったことですし、状況の整理をしに侯爵方の所に伺おうかと」
「なら、このままチアゼム侯爵の所に向かいませんか?
私も伺う所だったので」
「構いませんよ」
そうして二人してチアゼム侯爵の所に向かうと……だから胃を抑えるなって。
「ニフェール、何があった?」
「何も無いですよ?
試験も一通り終わり、王宮の現状を知りたいなと思ってやってきました」
この言葉を聞いていつもの胃を抑える構えを解く侯爵。
もしかして僕に対しての防御態勢なの、あの構え?
一通りサバラ殿の報告が終わったところで説明してもらえる。
「そうだな……。
とりあえずラングの奴の手下、それとディーマス家の手下は順調に捕えている。
建国祭までには終わらんかもしれんが、八割とか九割くらいは処分できる。
それと先日のディーマス家の情報。
あれはかなり色々見つかったようだな。
割り当てられた部下たちが目の色変えて調べておるよ」
「新しい情報でも見つかりました?」
「結構見つかったようだな。
とは言え、既に処刑確定だからこれ以上増えても死刑以上にはならん。
だが過去にディーマス家に邪魔された者たちの名誉回復はできそうだ」
……あれ?
「侯爵、以前アゼル兄の結婚式で聞いた記憶があるんですけど。
王家を恨んで自殺したとかいう人は……」
「あぁ、彼も名誉回復は出来そうだ。
ディーマス家主導で邪魔していたことが書類に書かれていた」
死んだ以上今更だとは思うけど、少しは何かできないかな……。
「一応言っておくが、名誉回復と薬の発見者として正式に彼の名を残すこと。
これくらいしか国としては出来ん。
というか、親族ももういないから継がせる相手がおらん」
「あ、そうなんですか。
ならどうしようもないですねぇ」
まぁ、捻じ曲げられた歴史を残さなくて済んたことを喜ぶべきなのかな?
「今回の建国祭で処刑するのはコロクタと禿。
それに元教師二名ですかね?」
「いや弟の方も処刑にすることにした。
書類の一部に弟の名前が入っていたからな」
え?
「それって暗殺依頼?」
「そうだ。
大した回数ではないようだが、弟も何回かに暗殺依頼を出していたようだ」
「多分回数少なすぎてカル達も覚えてなかったのかな?
もしくはディーマス家当主代理みたいな感じで受けたのかもしれない」
「あぁ、そんな感じだろう。
なお姉弟の名は出てこなかったらしい。
なので安心してストマに継がせることができそうだ」
アイツも大変だな。
これから生きて恨みを一身に受けて生きていくことになる。
とは言え、親のやらかしを国に報告したことがプラスになればいいんだが。
まぁ、一番きついのは姉をどこに嫁がせるかになるんだが。




