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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
373/419

52

 あ、なおフェーリオは五分程度で現実に戻ってきました。

 そんな色々あった昼食を終え、放課後。

 まっすぐチアゼム家に向かい、有無を言わさず関係者全員連れて王宮へ。


 あ、その前にカルに確認しましたが、パン爺さんに金貨百枚払ったとのこと。

 ご苦労様!



「ねぇ、ニフェール様。

 いくら何でも説明なしに連れてくのは無しじゃない?」


「すまないが、あの場所で言うのも少々問題がある。

 ちゃんと両侯爵交えて説明するから今は我慢してほしい」



 まぁ、ナットの言い分は分かるんだけどね。



「……つまり、かなり面倒な話と。

 それもラーミル様含めあたしたち皆連れて行くとなると、そっちも含めた話。

 ナット、平穏な日々は終わりそうよ?」


「え~、明日カリムとデートの予定だったのに~!」



 あ、ルーシーが危険な状態に……というか、ラーミルさんまで?!



「あ~、情報の共有がメインだから明日の予定が崩れるとかは無いぞ?

 まぁ、夜連れ込み宿でお泊りとか言うのなら保証は出来ないが」


「つ、連れっ、ちょ、いや、それは、その、無いけど……」



 ほぅ、ナットの顔が真っ赤だが、もしかしてこっちは苦手か。

 カリム、一緒になって顔赤らめて……初々しいねぇ。

 僕が言うのもなんだけどさ。



「どうあがいても僕はラーミルさんを連れ込み宿に連れて行くことはできないし。

 一番可能性があるのは……一番ヘタレなカルだしなぁ」


「「あぁ……」」



 ラーミルさんとナットがハモる。

 ルーシー、「あんのアホ、さっさと誘えばいいのに」とか言わない!

 小声で言ったつもりなんだろうけど、全部聞こえているからな?



 なお、今日の御者はカル。

 もしかして嫌な感じしたから逃げた?



 そんなこんなで王宮へ。

 ジャーヴィン侯爵の執務室に入ると……。

 いや、だから「胃袋を捧げよ!」のポーズはいらないから。



「……どこまで集める?」


「ラクナ殿、マーニ兄、チアゼム侯爵が最低限。

 部下三名はどっちでもいいかな。

 メインは騎士側。

 文官面々は入れても入れなくてもいいよ?

 後、演技できそうなら団長と副団長も可」


「……分かった、そこで待ってろ」



 そう言って皆を集める為メッセンジャーを飛ばす。

 あぁ、そんな顔しないの。

 無茶苦茶な情報だけど、知っているのと知らないのじゃ大違いなんだから。



 少し経つと皆様がやってきた。

 あら、文官メンバーまで揃い踏みですか?



「え~、お集まりありがとうございます。

 個人的には『胃袋を捧げよ!』のポーズは見飽きたのでもういいですよ?」


「なら胃の痛くなるようなの見つけてくんなよ!」



 クーロ殿、あなたの言い分は正しいけど、どうしようもないんだよ。

 なぜか変な情報を見せつけられるこちらの身にもなって欲しいな。



「クーロ殿の哀れな遠吠えが無意味になるような話となりますが……。

 メインは騎士側の話です。

 とはいえ、影響は全体に関わります。では――」



 そう言って、一通り昨日の夜に見た情報を報告する。

 即刻表情が真っ青になったのは団長&副団長。

 そりゃそうだよねぇ、そんな表情にもなるわな。



「ニ、ニフェール君? 冗談だよね? 冗談と言って欲しいな?」


「ごめんなさい、全て真実なんです」



 団長、既に脳の容量超過ですか?



「ニフェール、よくこんなの見つけたよな?

 なんか持って無いか?」


「【死神】と呼ばれる兄なら持ってるよ?

 【魔王】って呼ばれる兄もかな?」



 マーニ兄、呆れないで欲しいな。

 というか、僕だって何でこんなの見させられるのか知りたいくらいだし。



「んで、知りたいんですけどメラム・マリガントって騎士は知ってる?」


「あれ、お前知らなかったっけ?

 セリナ様を襲撃した奴らが自殺したの覚えてるだろ?

 あの時に北部の生まれの人に協力してもらったな?

 あの人物がメラム殿だ。

 立ち位置的には中堅だな」



 あ、あの人?!



「成程ねぇ、聞いたことある声だけど誰だか思い出せなかったんだよなぁ。

 そっか、あの人物か」


「ちなみに、お前が聞いた内容から察するに北部が王都を掌握したがっている?

 大体一~二年程度で実施する予定ってところだな?」


「騎士的にはそうだね。

 他に犯罪者側としては、メラムが知らないはずの情報が知れ渡っている。

 そちらの方が気になるんだ」



 そう言って、僕はカルとルーシーを見る。



「王都犯罪者ギルド内でオブスが認められてない。

 強盗ギルド内でパン爺さんたちが離れたがっている。

 他――うちとか?――のギルドがあいつを長と認めてない。

 そして、部下があの日に僕に殺された。

 これらを知る人はそんなにいるのかな?」


「それは無いわね。

 あの打ち合わせに参加した者たち以外は無いと思うわよ?

 まぁ、あれに参加した人たちの部下に話したのかもしれないけど」



 流石というべきか、ルーシーがあっさり否定する。

 説明の時点でこの辺り聞かれると感づいていたのかな?



「だよねぇ、となるとパン爺さん案件かな、これ?

 何となくオブスがわざわざメラムに教えるとは思えない。

 それなのに知られていたから驚いたんだろうしね」


「ジジイに相談でいいとは思うが……可能性が広すぎて厳しいぞ?

 なんとなくだが、ババアの所は大丈夫だと思う。

 当然うちもそんなことはしない。

 だが、他は何とも言えない」



 カル、そこまで信用置けないのか?



「……困惑しているようだが、リシアシスとシロス自身は信を置ける。

 だが、あの二つのギルドは基本寄り合いだ。

 アイツらがどこまで部下に説明したかによるから現時点で答えようが無い」



 あぁ、トップが大丈夫でもその部下は……ってことか。



「そして、強盗はオブスがわざわざ情報を流すとは思えん。

 ジジイもわざわざオブスと直接対決はしないだろうよ。

 まぁ、ニフェール様が殺した奴の事は知られているだろうがな」


「まぁねぇ、そこはそうだろう」


「で、残るは詐欺師ギルドの三名と元強盗ギルドの二名。

 こいつらは正直判断付かん。

 なので、まずはこの五名が裏切ってないかの調査をジジイにやらせるべきだ」



 成程ねぇ、そうなるか……。

 あぁ、ルーシー、乙女じみた表情してもカルは見て無いぞ?

 言わんでおくけど。



「そっか……それとパン爺さんの騎士団内部調査、順序変更を求めないとなぁ。

 第四から動いてもらったけど、第七先行した方がよさそうだ」


「あ……確かにそれもあったな。

 今日にでも説明するか?」


「ここでの話し合いが終わったら僕とカル、あとはティッキィかな。

 この三人でパン爺さんの所に顔出すつもりで考えている」



 カリムとナット、ラーミルさんとルーシーはチアゼム家に戻ってもらう。

 護衛二人いればいいでしょ。



「分かった、それは後ほどだな」


「うん。で、騎士団側として第七って今何やらせているの?

 基本王都?」



 この疑問には副団長が答えてくれた。



「王都詰めだ。

 とはいえ、基本的には城壁・王都内治安維持・王宮内治安維持がメインだ。

 修道院の警備のような感じの仕事は第一部隊位だな。

 ちなみに第四も似たようなもんだぞ?」


「ふむ……第一は修道院対応で潰すとして……」



 ラクナ殿、そこでビクつかないで!



「とりあえず情報収集は第七優先に変更。

 それと騎士団側で内部監査みたいなのいるんですよね?

 第七の調査をそちら側でもお願いします。

 流石に陛下を弑そうとする奴らをのさばらせるつもりは無いでしょ?」


「当然だな。

 とはいえ、泳がして様子見することからになると思うが……」


「あぁ、発言は不味すぎる内容だけど、実際何か動いているように見えない?」


「その通り。

 犯罪の証明ができない以上、仮に捕まえたとしても言い逃れされて終わりだ。

 なので、監視と情報収集を進めるしかないな」



 ジャーヴィン侯爵の説明に僕としても頷くしかない。

 証拠かぁ……。

 流石に野菜プレイの時の様にどこかに隠し部屋とか無いだろうしなぁ……。



「一応確認なんですが、情報源からは第七の隊長さんはまともと聞いてます。

 で、副隊長は北部の人だそうです。

 となると、決起する際には隊長さん殺して副隊長が部隊を率いて暴れそう。

 そのあたり気を付けた方がいいかも」


「言いたいことは分かるんだがなぁ。

 だが、こちらの指示で分割なんてできるはず無い。

 まぁ、大きなイベントで隊長と副隊長が分かれて動くのはあり得るだろうが」


「……ねぇ、それって、なんて建国祭?」



 一瞬で静まり返る執務室。

 すぐそばにあるじゃねえか、一番ヤバいイベント!!



「……第七副隊長とメラムの場所を把握し、監視する必要がある?」


「監視というか、下手な所に置かなければいいんだと思うんだけど」


「……陛下の傍とか? 王宮入り口とかか?」



 あ~、そのあたりにいると危険だねぇ。

 そんなことを考えているとラーミルさんが一言。



「あの……調理場とか侍従侍女と接点を持つ可能性のある場所とかは?

 こっそり毒を盛られたら一巻の終わりかと」


「あ~、陛下たちはまだ何とかなるかもしれませんが、他の貴族や騎士は……。

 皆が毒盛られて動けない、もしくは死んでいる時に襲撃?

 不味すぎますね……」



 陛下たちはランゲルの勘で止めるだろう。

 昔の第八で騎士やっているより実力発揮できるだろうしな。


 そんなことを考えていると、なぜか騎士たちが怯えている。

 婚約者と微笑ましい会話をしているだけなのに。

 何ビビってんだよ、愛し合う二人の微笑ましい会話だろぅ?



「頭痛い……」


「儂もじゃよ……」



 そこ、侯爵方!

 さっきまで胃を抑えていたのに今度は頭?


 浮気? 浮気なの?

 胃袋が嫉妬しちゃうよ?



「……とりあえずメラムについては監視させる。

 また、情報通りなら副隊長も怪しいということだな?

 それも含めて監視対象としよう。

 ニフェールはこの後情報くれる人物と会え。

 第七の調査優先、メラムと副隊長の情報、この辺りを伝えて欲しい。

 金は言い値で出す」



 それはありがたい。

 僕の一番の弱点だからなぁ……。



「それと、そっち側でどういう流れで情報が流れたのか調べてもらってくれ。

 その結果一部の長が消えるかもしれん。

 だが、そちらも乗っ取られるのは嫌だろう?

 当然こちらも金は出す」


「はい、かしこまりました。

 それと、以前個人的にチアゼム侯爵が言ってたフェーリオの訓練。

 あれどうなりました?」



 ……あれっ?

 チアゼム侯爵がジャーヴィン侯爵を睨みつけている?

 ……熱視線送ってるわけじゃないよね?




「……アラーニの野郎、すっかり忘れてやがった」




 チ、チアゼム侯爵?

 ここで殴り合いは止めてね?

 ジャーヴィン侯爵、視線逸らすな!



「いや、だって……学園生の頃の話を蒸し返すとは流石に思わんだろ?」


「だからと言って子供たちにまであの危険な性格を引き継がせる必要は無いだろ!

 フェーリオもとてつもなく関わるんだぞ?!

 そこどうにかできないヘタレではうちに婿に来ても心が折れるだけだろうに!

 一人の親として息子の未来を潰すつもりじゃあるまいな?!」



 ……そんな単語が当たり前のように出てくるの?

 その時点でお話にならないと思うんですけど?


 これ、フェーリオの特訓とか言われないよね?

 僕、そんな余裕ないからね?



「……ニフェール?」


「時間的に暇はありませんよ、ジャーヴィン侯爵。

 僕が苦労している件、幾つ引き取って頂けます?

 具体的に言うと、強盗ギルド襲撃とか修道院対応とか?

 あぁ、禿のろくでもない殺し方とかもありましたね」


「無理なの分かってて言ってんだろ!」


「僕が無理なのも分かってて言ってますよね?!」



 お互い火花バチバチの視線をぶつけ合う。

 そんなとき、(【死神】)の一声が!



「全く、ニフェール。

 少しぐらいなら手を貸してや――」


「――ならフェーリオの特訓お願い!」

「成程、マーニなら安心だ!」



 侯爵と一緒に「どうぞどうぞ!」と言わんばかりに即刻仕事を引き渡す僕。

 あれ、マーニ兄、どうしたの?

 顔引き攣ってるよ?



「弟よ、その件は兄には難しすぎる……。

 もう少し手加減というものをだな……」


「一番危険が少なく、一番人手もいらない仕事だよ?

 ついでに寄り親であるジャーヴィン家に恩も売れる。

 ジドロ家として都合のイイ――」


「――お断りだ!

 俺は大鎌振るう位しかできんのだから、あまり面倒なこと期待するなよ!」



 なんかラーミルさんにまで呆れられてしまった。

 ちょっと悲しい。


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