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その後、寮に戻る……前に強盗ギルドの様子を見に行く。
特に迷うことも無く到着。
……って、灯り付いてないし、誰もいなさそうだな。
もっと飲んだくれたクズ共がダル絡みしてくるかと思ったのに。
ちょっと覗いてみるか。
周囲に誰もいないようなので、壁を登ってそれぞれの窓から盗み聞きしてみる。
と言っても本当に誰もいないようなので、何の音も聞こえない。
覗くもなにも中が見えないのでどうしようもないな。
ぐるっと壁に張り付きながら一周してみると、とある部屋から声が聞こえる。
……普通の会話だな。
……喘ぎ声とかじゃないな。
「なぁ、本当に大丈夫なのか?」
……これってオブスだよな?
え、相手誰?
まさかお人形さんとお話とか言わないだろうけど。
「信じるかどうかはそっちで考えろ。
俺たちの手を取るか、振りほどくかは貴様が勝手にすればいい。
だが、こちらの手を借りずに犯罪者ギルドの掌握はできんだろ?」
ギルドの掌握?
オブス如きが?
誰だか知らんが、オブス使って何するつもりだ?
というか、こいつらの手を借りてギルド掌握ってどれだけ戦力あるんだ?
「貴様が犯罪者ギルドの中で認められていないのは既に調べはついている」
調べ?
パン爺さんの部下が流したのか?
「同じ強盗ギルドの中でも離脱論が出ているらしいな?
他ギルドからも強盗ギルドの長にふさわしくないと判断されているようだな」
あの場にいた奴か、もしくは参加者からのまた聞き?
「確か、貴様の部下が暗殺者ギルドの若手に殺されたんじゃなかったか?
それでも罰も無くのうのうと話し合いに参加していたそうじゃないか。
つまり、犯罪者ギルド共からしてみれば強盗ギルドは価値がない。
だからこそお前らの命なんて気にしないってことじゃないのか?」
……確実に僕の事だよなぁ、これ。
カルたちや婆さんの所が漏らしているとは思えないんだよなぁ。
他はちょっとまだ確証が無いなぁ。
この相手が誰かにもよるけど。
「なぁ、貴様は王都のギルドでトップに立ちたくないのか?」
「立ちてぇよ!
でも、先代がやらかしたおかげで他のギルドからは白眼視されてやがる!」
「それだけじゃない。
貴様の所では北部の犯罪者ギルドが王都でやらかしたこと知ってるか?」
「はぁ?」
おいおい、それも知っているのか?
となると詐欺師ギルドはありえないな。
あいつらも知らないはずだし。
「王都で許可も得ずに王城から出て来た馬車を襲撃したらしいぞ?
おかげで犯罪者ギルド側も大騒ぎだったようだな。
だが貴様らは何も情報を渡されていない。
一切信用されてないからだ」
「……あんたも忙しくなって文句言いに来たってとこか?
ならこっちに言われても困るぜ。
なんせ、他のギルドから一切情報を得られてないんだ。
北部とどういうやり取りになっているのかも含めて何も知らねえよ」
忙しくなって?
この件で忙しくなったのは商業ギルドで北部に警告しに行った人?
ただそれならこんな言い回しにはならないよな?
となると犯罪者ギルド以外の所……おい、まさか?
「一時的に忙しくなったのは事実だが、それ以上に厄介なことになった。
北部に視線が集まっているので、このままではこちらの動きに支障が出る。
貴様らが少々暴れて視線を集めて欲しい」
……王宮、北部絡みの奴?
騎士あたりか?
「はっ!
あんたらは安全な所から指示だけ出していればいいってか?
騎士ってのは気楽な稼業ときたもんだってか?」
やっぱり騎士か。
となると、第一、第四、第七のどれかか?
成程、騎士だから王宮で情報を得られる。
だから馬車襲撃を知っている。
だが、そうなるとなんで犯罪者ギルド内の情報を得られる?
まだ何か足りて無い気がする……。
「お断りだね!
こちらに一切利益がねえじゃねえか。
そんなのやってられっか!」
「……報酬が我らが王都を確保した時点での犯罪者ギルドの長となる権利でも?
それでも断ると言うのなら貴様と話す価値は無い」
「なん……だと……」
おいおい、王都確保?
冗談だろ?
「……おい、その提案は俺を騙そうと言うんじゃねえのか?」
「そう思うなら手を切ればいい。
こちらはそれでも構わない。
北部の奴らから適当に連れて来るだけだ」
北部側も犯罪者とツーカーなのか?
それとも暗殺者と強盗だけか?
微妙に面倒な……。
「……騙したらどうなるか分かってんな?
お前等の情報王都にバラまいてやるよ!」
「できると思うならやってみろ。
たかだか強盗共の戯言を誰が信じると言うのだ?」
「ぐっ!」
あ~、裏事情知ってる僕が信じちゃうなぁ。
そのルート経由したら陛下まで信じちゃうねぇ。
「貴様らはグダグダ言わず我らの指示に従えばよいのだ。
そうすればこの地の犯罪者の王となることを認めると言っている。
で、どうする?
こちらは貴様じゃなくてもいいのだよ」
「……」
ん~、僕的にはどちらを選んでもいいよ?
だって、どっちの未来でも潰すし。
「……分かった。ただし、こちらの信用を裏切るな。
確かお前は第七部隊の騎士だったな?
裏切ったら王都の暗殺者を送られる覚悟でいるがいい」
「ハハッ! やる気があるようで何よりだ。
まぁ、お前が頼っている暗殺者もすぐにこちらに靡くさ。
そうだな……一・二年の間にお前も一緒に尻尾振るって来るだろうよ。
その時は頭位は撫でてやろう」
僕も尻尾振って近づけばいいのかな?
犬らしく喉に噛みついて殺しちゃうと思うけど?
頭撫でるまでに命が残っていればいいね?
それと、オブスよ。
お前が僕たち暗殺者ギルドを雇えると何故思った?
雇う金が無いだろうに。
加えて、お前の命は後一週間位だからなぁ。
教えはしないし優しくもしないが処刑はしてやるからな?
だけど……この騎士の声、どっかで聞いた記憶があるんだよなぁ。
知っている人たちの声じゃないのは自信持って言えるんだけど。
僕が聞いた記憶のある人物で名前を思い出せない人?
誰だろう?
その後、騎士はギルドから出て行った。
オブスの反応も気になるが、騎士が何処に戻るか確認することにした。
結果、あっさり王宮に入っていった。
マジで騎士だったんだ……。
どうしよう、流石にこれ以上は調べられないしなぁ。
「おいっ!
そこのお前、こんな時間に何をしている!!」
おっと、衛兵にツッコまれてしまった……。
っていうか、これも聞いたことある声だな。
あの騎士とは別にどっかで……。
「オラッ、さっさと答え……えっ?」
は? 何驚いてんの?
近づいてきた衛兵を見ると……あぁ!!
お前、何でこんなところに!!!
「ほぅ、偉くなったもんですねぇ、インス?
スホルムの頃のヘタレっぷりが消えてしまったようですが?
もしかして王都に戻る途中で落としちゃったの?」
「お、お前、ニフェール!
ま、待て、ここで暴れるんじゃない!」
お前、人をなんだと思ってやがる?
「暴れに来たわけじゃないから落ち着いて。
ちょっと教えて欲しいんだけど、話できる?」
「……あまり無茶な話じゃなければ。
で、なんだ?」
そんな怯えないでくれよ……。
「今、僕が来る前に入っていった騎士。
その所属と名前を教えて欲しい。
一応言っておくけど、僕が聞いたことは誰にも言わないでね?」
「……面倒事か?」
「かなり。
なので、僕と敵対するかどうか考えて発言してね?
なんなら追加でマーニ兄も参加してもらおうか?」
イイ感じで顔が引き攣っているぞ?
僕と敵対すると、今なら【狂犬】と【死神】の大暴れが見られますけど?
「……第七部隊、メラム・マリガント。
特に隊長とかの職にはついていないはずだ」
「そうか……情報ありがとう。
一応言っておくけど、僕が許可出すまで下手な発言しないでね?
メラムの味方がアンタを殺しに来るよ?」
「……またそういう危険なことしてんのかよ」
「好きでやってるわけじゃないよ?
危険なことが好きな奴らが勝手気ままにやらかすからねぇ。
平穏な生活が欲しいだけなのに……」
「平穏好きならこんな時間にウロチョロしてねえよ!」
まぁ、そうだなぁ。
そこだけはアンタの言う通りだよ。
「確かになぁ。
その辺りはあまり気にしないでくれ。
動かないとマズいのが多すぎるんでね。
んじゃ、これで失礼するよ」
さて、どうしようか?
何も考えず寮に戻るか。
もう一度ギルドに近づいて侵入できるのなら情報を得るか。
侯爵家に注進しに行くか。
時間的に今行ってもなぁ。
急ぎ報告しても状況は変わらないし。
個人的にはラーミルさんのネグリジェ姿見に行くのもアリなんだけど。
あ、パジャマ姿もアリです。
となると念の為ギルドの様子だけ見てから寮に戻るか。
急ぎギルドに向かうと、オブスも帰って誰もいなかった。
……ま、そりゃそうか。
ざっと壁を登り窓が開いてないか調べてみるが流石に開いていない。
こりゃ諦めて帰るか。
そのまま寮に戻り就寝。
そして次の日。
「ニフェール、明日だが午前中からで大丈夫か?」
ホルターからペスメー殿を交えた話し合いについて聞かれる。
「あぁ、僕の方は大丈夫だ。
いつもの授業開始時間位に待ち合わせるか?」
「そうだな、その位に落ち合うか。
ちなみに、参加はペスメー殿夫妻と僕たちだけだよな?
知らない人来られても一から説明するの大変なんだけど?」
「あぁ、それは無い。
義姉さんにも兄貴から説明済みだそうだ」
なら大丈夫かな。
そのまま授業を受け、昼休み。
「明日、ホルターとの話し合いだったか?」
「あぁ、正直さっさと終わらせたいねぇ。
多分ペスメー殿は味方になるだろうけど、奥さんはどうだろう?
あまり貴族にこだわっているのなら説得しないとなぁ」
「流石にそれは無いんじゃね?
ホルター自体が三男だろ?
相手が平民で文句言う奴いねえよ」
フェーリオはこう言うが、ジル嬢はちょっと別の考えを持っているようだ。
「今まで話しを聞いたペスメー様が否定するとは思えません。
ですが、私どもはホルター様の義姉様がどういう性格かは知りません。
相手も貴族であった方が苦労は少ないと言う方もおられますわ?
セリナ様の立場を考えるとそのあたりは気にしなくていいのですが……」
が?
「一旦貴族を抜けた時点でそれまでの貴族としての知識が消えると思う方が……」
「あぁ、立場が変わるイコールすべての知識を失うと考えちゃう方ですね。
そういう方なら流石にペスメー殿が注意すると思いますけどねぇ。
仮にそういう方だったら何とか落ち着かせるようにしますよ」
「お願いしますね。
私としてもセリナ様が悲しむような状況は避けたいので」
まぁ、ホルターとのデートの為に頑張っていたのを見ればそう言うだろうなぁ。
そこは何とか説得してみるか。
「あぁ、ちなみに今日の放課後にチアゼム家経由で王宮に行くから。
ラーミルさん始め、うちの面々全員連れてく」
ピ リ ッ !
「……ニフェール、何が起こった?」
「……ゴメン、ここでは喋れないことだ。
現時点で何も言えない」
「いきなりですわね……ということは、昨日の夜かしら?
でもそこまでの話ならカル達も知っているはずですし。
……もしかしてニフェール様、昨日お帰りになった後に何か見つけました?」
ジル嬢、いい勘してるよ。
「その通り。ただし、その内容はナイショだ」
「また変なシーンを見ちゃったんですね?
野菜プレイに続いて次はなんでしょうか?」
「……犬猫と性的に戯れているとか?」
おいぃ!
フェーリオ、お前、そう言うこと言っちゃうの?!
「成程、前回を超えるとなるとそこまで……」
おいぃぃ!!
ジル嬢、あんた一応淑女科首席だろ?!
【二代目才媛】の名に最も近いんだろ?!
「ダメだ、こいつら何とかしないと……」
「お前が正直に報告すれば済む話なんだが?」
「両侯爵に報告の方が優先だな。
流石にお前ら先にするのは問題だし。
あ、一応言っておくけど想像は外れだぞ?」
「えっ? 結構いい線だと思ったのに……」
「……あれ以外だとどんなシーンを?」
いや、アレなシーンの検討に頭使わないでくださいよ!
「とりあえず、知りたきゃお父上からお聞きください。
あ、ジル嬢、ラーミルさんや僕の部下たちから聞こうとするのは禁止!
あいつらにも言っておくけど、この情報は流出させるわけにはいかないんだ。
そこは諦めて欲しい」
「ぶぅ……」
「妄想するのは止めないから。
それと両侯爵から許可が出たなら説明するかもしれないけどね」
「……仕方ありませんねぇ、我慢しますわ。
まぁ、別の妄想でもしてましょうか。
具体的に言うとフェーリオ様とニフェール様の薔薇な世界とか?」
ブ フ ォ ッ ! !
「ちょ、ちょっとそんな怪しい妄想は本件とは別にして止めて欲しいな!」
僕がそう言うと、ジル嬢はチラッととある方を見る。
当然、もう一人の被害者……のはずのフェーリオ。
ねぇ、なぜ顔赤いの?
ねぇ、なぜ息荒いの?
ねぇ、何で現実に戻ってこないの?!
「……ちょっとやり過ぎましたかしら?」
「こいつ戻すのお願いしますね?
僕は知りません」
「あら、アムル様を正気に戻した時の様に色々していいのですよ?
耳たぶ甘噛みするとか?
乳首摘まむとか?
たぶん喜ぶと思うんですけど?」
「あなたがやったらいかがです?」
「流石に淑女科首席として恥ずかしい真似は出来ませんわ♡」
こんの……!
ガチで淑女科首席奪い取ってやろうか!
【マリガント家:貴族派:男爵家】
メラム・マリガント:騎士団第七部隊隊員。
→ 悪性黒色腫から




