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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
371/420

50

 そのまま寮に戻り、夕食後チアゼム家へ。



「どうだった?」


「金は後でいいとよ。

 引き渡し方も確認した。

 なので、今日は情報を先に出すそうだ」



 ほぅ、ありがたいねぇ。

 まぁ、その信用を損ねないように気を付けないとな。



「分かった、ならさっさと聞いてくるか。

 今日はカルとルーシーだけでいいよ。

 情報貰ってお喋りする位だし」


「は~い。

 んじゃアタシたちはこっちでラーミル様のお相手してるね」


「頼んだ。んじゃ行こうか」



 今回は化粧せず三人で娼館ギルドへ。

 パン爺さんと婆さんが早くも待っていた。



「パン爺さん、調査お疲れ様。

 んで、どうだった?」


「いやぁ、どうというか何と言うか……この国マズすぎるぞ?」



 その一言から始まるって相当なんだけど?

 書類をこちらに渡しながら説明してくれるが……。

 かなりの人数が北部側のようだ。



「第一部隊の何割が北部側についてたの?

 三割とか?」


「……七割じゃ。ちなみに上位者では隊長・副隊長、それとあと一人が王都側。

 他は皆北部側じゃよ」



 終わってんじゃん!

 あぁ、ラクナ殿確実に落ち込むわ、これ。



「末端はまだ北部以外の人もいるんだね?」


「いるけどそんな多く無いな。

 あぁ、簡単に言うと実力ある奴はほぼ全員北部と関りは無いようじゃ。

 中堅から下位レベルの実力を持つ者はほぼ全て北部関係者」



 あぁ、スピル殿とかも下位なんだろうなぁ。



「……どうしよう。

 個人的に全員処刑は構わないんだけど、面倒なことこの上ないな。

 多分その場合、ラクナ殿の降格とかありそう……」


「降格は無いじゃろうな。

 そのラクナとやらが騎士になった頃はもっとひどかった。

 それどころか、今の王が生まれる前はそれよりひどいし。

 調べる必要もないほど騎士がクズだったからなぁ……。

 まともな騎士を見つけるのは砂浜で宝石を見つける位の確率じゃった」


「それって、まともになりはじめたのはいつ頃からか知ってる?」



 軽い気持ちで聞いてみると、ろくでもない回答が返ってきた。




「覚えている限りではお前の両親が関わっている可能性がある」




 ……えっ?

 関わるって、うちの両親そんな権力無いよ?



「あぁ、勘違いするな、親が直接何かしたという訳ではないんじゃ。

 とはいえ、間接的には関わっている。

 (ぼん)の両親が同期の騎士科を叩き潰したからなぁ……」


「……それ見て北部や東部の奴らはビビって逃げた?

 もしくは戦えない位にまで加減無しに殴りつけたとか?」


「どちらもじゃな。

 (ぼん)の母親は淑女科生徒に不埒な行動をとる輩を殴り倒す。

 (ぼん)の父親は領主科生徒に嫌がらせする輩の腕や足を斬りつける。

 あの時期は騎士科の卒業生が常識的な奴しか残らんかったと噂されておるぞ?」



 うちの両親何やってんの?!

 僕や兄たちなんてお遊びのようなもんじゃん!!

 ジーピン家で一番ヤバいのは両親だったよ……。


 カルとルーシー、あまりこっちを見ないでくれ。

 その憐れみの視線が途轍もなく痛いから。



 ……あれ?



「パン爺さん、ちょっと確認。

 母上が殴り倒すのは納得いくんだけど……」


「普通はそこで納得するはずないんじゃがなぁ。

 まぁ、言いたいことは分かる」


「そこは気にしないで。

 で、父上が斬りつけるってちょっとイメージと合わないんだけど?

 確か【緊縛】ってあだ名付いてたって聞いてるよ?

 斬るより縛る方だと思ってたんだけど?」



 なんかあだ名と噛み合わないんだよなぁ……。


 はっ!

 まさか父上双子説?



「……(ぼん)の表情が怪しい思考に入っていると教えてくれているんじゃが?

 普通に考えるんじゃ。

 卒業時点のあだ名が【緊縛】だったというだけじゃよ。

 暗殺者ギルドの襲撃の時もじゃな」


「……学園時代に複数あだ名がついたの?」



 あだ名つく人自体が希少だってのに複数?

 そんな人いるんだ?!



「そう言う輩もいるということじゃよ。

 一応言っとくが、当時のあだ名は教えんからな?

 そんなのは当人から聞くがいい。

 他者から聞くようなものじゃあるまい?」


「まぁ、そうだね。

 そこは建国祭の頃にでも聞いてみるよ。

 どれだけ恥ずかしがるか見ものだけど……」


(ぼん)の言葉責めか?

 絶対受けたくないのぅ……」



 その言い回し、何か気になるんだけど?

 それとカル、何納得してんの!



「ちなみに母上は【岩砕】だけ?」


「あぁ、知ってる限りはな。

 あれの場合、【岩砕】のあだ名のインパクトが強すぎてなぁ。

 新しいあだ名が付きかけては消えるってのを繰り返していたようじゃよ」



 まぁ、岩を砕くなんて単語を付けられた淑女ってのはなぁ。

 これを超えるあだ名は思いつかないんだろうな。



「あ、追加で情報なのじゃが……。

 (ぼん)の両親の喧嘩騒動からあだ名が変わっていたな。

 その後は【緊縛】でその前は別のあだ名だ」



 ……勘弁してくれ、それとてつもなく危険な情報なんだけど?

 どう考えても喧嘩騒動の時に【緊縛】しちゃったんじゃん!


 チラッとみると、ルーシーも感づいたようだ。

 顔真っ赤にいなっている。

 ついでにカルに熱い視線を送っているが……お前も緊縛仲間になっちゃうのか?



「一応確認だけど、その喧嘩騒動って学園で?

 人多いところで?」


「どちらも諾じゃな」


「あああぁぁぁ……」



 マジかよ……間違いであってほしかった。

 婆さん、憐みの視線はいらないから!


 これ、マーニ兄と相談してみるか……と言っても情報共有してどうする?

 正直対処策なんて全く思いつかない。

 それに、親の代のやらかしだからどうしようもないよなぁ。



「とりあえず分かりたくなかったけど分かった。

 報酬については明日か明後日辺りにカルが渡しに行くから。

 一応今日の時点で侯爵には伝えてあるから……明日かな?」


「分かった。カル、支払いはいつもの所じゃ」


「あいよっ!」



 この件は大丈夫だな。



「で、追加で調べて欲しいんだけど、第四と第七の分。

 こちらも同じように調査できるかな?」


「……結構時間かかるぞ?

 多分来年の三月位までじゃな。

 ただでさえ建国祭はさむから情報集める時間がかかるしのぉ」


「そこはやむ無しだよ。

 どちら先でもいいから、そちらの調べやすい方からお願い」


「分かった、とはいえ金貨二百枚だといきなりは払えんじゃろ。

 第四を先行してその後に第七を調べる。

 片方調査終えた時点で一旦情報渡すから、その時点で百枚支払え」


「あぁ、それでお願い」



 これで終わりかな?

 あっ、強盗ギルドの状況だけ聞いとくか。



「パン爺さん、強盗ギルド側はどうなったの?」


「遅くても来週頭には一通り情報出せる。

 修道院調査にできる奴を集めておったから、こっちは少し遅れた。

 なので後は実行日決めてくれればいい」



 あぁ、情報収集も若い衆に経験積ませてるんだ。

 確かに相手の脇が甘そうだから練習にはちょうどよさそうだよな。



「なら来週後半かな。

 ついでに今週末あたりにでも詐欺師ギルド説得して金出させようか。

 カル、ルーシー、週末できそう?」



 ニヤッといやらしい嗤いをしてルーシーが答える。



「任せて。きっちり取り立てておくわ!」



 って、その表情カルがやるべきじゃない?

 ……カルも同じような考えをしたのか少々拗ねた顔していた。



「ちなみに調整を二人に任せていい?」


「話し合いに参加しないってこと?

 まぁ、この位なら構わないわ。

 実行日はまだ決まってないとかでいいのよね?」


「あぁ、仮に教えた場合に騎士団との繋がりを感づかれても困るからね。

 まだ王宮との繋がりを知らせたくないから」



 まだ信じるのは無理だからねぇ。



「んじゃ、そっちはカル達お願い。

 パン爺さん、今のギルドの場所ってどの辺り?

 それくらいは先行して教えて欲しいな。

 事前に逃走経路とかあるなら潰しておきたい」


「教えるのは構わんがのぅ……。

 急ぎ確保した場所だから逃走経路になり得るルートが無いんじゃよ。

 まぁ、前回の場所も正直攻められることを想定してないしのぅ」


「あ~……カル達の方がまだ考えられてたもんなぁ。

 確かにあれは無い。パン爺さんの言う通りだわ」



 前のように正面と背後から攻めたら終わりって何も考えてないよね?

 ラクナ殿とカリムで通せんぼできるってドンだけ甘い考えなんだって感じだし。



「あれよりひどいんだ……もしかして入口から攻撃したら裏口逃走もできない?」


「出来ることはできるが、前のアジトより狭いからなぁ。

 カリムかナット一人置いておけば確実に通れんよ」


「そこまでなんだ……」



 なんか作戦とかいらないな、こりゃ。

 裏封じて表から僕が攻めれば終わりじゃん。



「正直もっと苦労するかと思ってたなぁ。

 この程度ならすぐ終わりそうだね」


「だろうなぁ、俺も同じ意見だよ。

 まぁ、楽な仕事でがっぽり儲けられそうだし、個人的にはアリなんだがな」



 そりゃそうだよな。

 僕も同じこと思うもの。


 一応その後に強盗ギルドの新しい場所だけは教えてもらう。

 この後、チアゼム家からの帰りに少し覗いてみるかな。



 一通り情報交換も終わり、解散。

 チアゼム家に戻り皆に周知すると……。



「最近の強盗ギルドはここまで使えなかったのか……」



 ティッキィの言葉が全てだった。

 まぁ、そう思うよなぁ。

 僕も同じ考えに至ったし。



「昔がどれほどまともだったのかは分からない。

 でも今のギルドは前ギルド長であるザイディよりひどいからなぁ。

 正直、僕が動かなければ王都内部で争いになったんじゃない?

 まぁ、まだ前の暗殺者ギルドが健在だった場合だけどさ」



 あ、あれ?

 カル、そこまで悩むの?



「前ってアゼル様の結婚前ってことだろ?

 そうなると最大戦力が禿だよな?

 なら無理だわ」


「……近接では期待できない?」


「確かにアイツは遠距離メインだが、それ以上にやる気の問題だな。

 確かに強盗ギルド壊滅なんて楽しみそうだが……不利だと速攻で逃げる」


「へ?

 ならどうして結婚式の際に襲撃したんだ?

 どう考えても参加すること自体不利というか……死地?」



 少し前に違法薬物製造拠点をボロボロにされておいて?

 それでも襲撃してきたってのが分からないんだけど。



「あの時点で直接戦ってないからじゃねえか?

 アイツから話を聞いた限りだが、ニフェール様にちょっかい出して終わったろ?

 アゼル様やマーニ様とも戦ってない。

 だからこそジーピン家の恐ろしさを知らずにやらかしたんじゃねえの?」



 あ~、そういうこと?

 無知は罪とは言いたくないけど、知らなかった結果が暗殺者ギルド壊滅。

 加えて禿は両手両足斬られるし、ボロボロだな。



「話を戻して、これから寮帰る前に強盗ギルドの辺りを覗いてみるよ。

 多分あまり悩まず表口から入って潰して終わりだと思ってるけど、念の為ね」


「あまり無理するな?

 睡眠不足で授業寝てたなんてやめてくれよ?」


「そんなことはしないよ。

 それと、今週末ちょっと予定が――」


「あら、どんな予定なんですの?」



 ビ ク ッ !



「え、あ、え?

 ラーミルさん?」


「あら、お教えいただけませんのぉ?(ニヤリ)」



 ちょ、ちょっと待って!

 お願いだから落ち着いて!!


 カル達、逃げんな!

 主置いて逃走しようとするんじゃない!!



「ラーミルさん、ホルターの件ですって!

 別に浮気とかじゃないんですから落ち着いて!!」


「え、あ、あら、そうだったんですね(アセアセッ!)」



 ラーミルさん、顔真っ赤ですよ?

 いや、嫉妬して頂けるのは嬉しいんですけど!



「そんなわけで、週末はペスメー殿を交えてセリナ様の対応を検討してきます。

 あちらも早く終わらせたいので。

 とはいえ、向こうのご両親の説得手段の検討でしかありません。

 最悪、セリナ様が修道院を出てから判断しませんかと提案するというのも……」


「あぁ、確かに当人の為人を知らずに他者からの言葉だけで頷きはしませんね」


「ええ、なんで修道院から出てくるまでホルターの婚約者は宛がわない。

 修道院から出てきたら改めて当人交えて話し合う。

 ここまで許可頂ければ僕的には十分ですね」



 それぞれの家で方針が異なるだろうから、強制はし辛いし。

 互いがある程度納得できればそれでいいんじゃないかな?


 あ、ついでにご両親の前でホルターに釘刺しておかないとな。

「セリナ様のことしか考えなかった結果成績落としたら……」と言っとくか。

 ご両親の前で言ったら流石に冗談じゃないことは分かるだろ。



「そんなわけで週末、僕ははそっちの対応メインに動きます。

 後、カルは明日王宮行って金貰って、パン爺さんに支払って。

 それと週末の詐欺師ギルド対応はカルとルーシーに任せる。

 来週頭にパン爺さんから情報貰って、最終的にいつ襲撃するか決める。

 マーニ兄達に死体運びの調整を任せて、来週後半に潰す。

 何か疑問はあるかな?」


「情報貰うのって全員で行くの?」



 おっと、ナットはあまり上との話し合いに参加したがらないなぁ。

 まぁ、面倒だし気持ちは分かるけどさ。



「いや、僕とカルとルーシー位でいいんじゃない?」


「ん~、了解。ならアタシとカリムは来週後半の襲撃だけだね。

 ならカリム、空き時間にデートしよ♡」



 ブ フ ォ ッ !



 あ、いや、構わないんだけど、ルーシーが鬼の顔してるぞ?

 それもその視線はカルに向いているんだが?


 ティッキィもカリムも感づいているよな?

 カルは気づいてないようだけど。


 それとラーミルさん、ここでその熱い視線送られても週末は空いてません!

 ……ら、来週末でどうかご寛恕願います!


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― 新着の感想 ―
もし女性陣が徒党を組んでジービン家を王家をいや国を襲ったらどうなるのだろう? 考えるまでも無く更地しか残らないか…… そしてこの物語に「完」の文字が刻み込まれるんだろうな。
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