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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
カル達のノリにうまくついて行けてなかったがなんとか軌道修正する。
「後最後に三貴族の襲撃時にお二人のギルドに協力を要請したいです。
ちなみに、王宮側に頼んで報酬出す形でお願いする予定」
「どんな依頼だ?」
「三貴族の領地まで幾つか街や村を通っていく必要があります。
そこで食糧と一部職人を配置して頂きたい」
「はぁ?」
シロス殿はピンとこなかったようだが、リシアシス殿は考え始めた。
これは感づいたかな?
「……ニフェール殿。もしかして食糧や料理人、蹄鉄職人とかを各街に配置する?
そして移動する部隊自体は荷を極限まで減らして移動を早める?」
「リシアシス殿、正解です。
王都の屋敷と商人を制圧して、次の日から領地側の制圧に向かいます。
ですが、到着前に連絡が入るのは避けたいのですよ」
「……相手が大事な資料を燃やすとかかな?」
「そうです、証拠を消されて知らぬ存ぜぬとなるのは避けたいので」
ここまで話すとシロス殿も理解したようだ。
なぜか怯えと呆れの表情をしてるが。
「……大丈夫でしょう。
協力は可能です。
報酬額は……王宮と話し合いですね?」
「ええ、ジャーヴィン・チアゼム両侯爵には概要説明済みです。
なので、王宮側準備がある程度進んだところでそちらを呼び出すかと」
「分かった、シロス殿と一緒に伺うとしよう。
多分建国祭より後だな?」
「でしょうねぇ、祭前は僕らも強盗ギルド壊滅とか忙しいですし。
王宮側も祭の際に処罰する輩が結構いますんで」
「……もしかしてディーマス家ですか?」
「ええ、そろそろ終わらせることになるでしょう」
なんか考えてますね?
サッサと借金返してもらうのかな?
その後解散となり僕らはチアゼム家に移動。
ラーミルさんにもざっくり説明する。
「順調って感じでしょうか。
この感じだと強盗ギルド壊滅については事前準備はほぼ完了でしょうか?」
「そうですねぇ、後はパン爺さんからの情報待ちですね。
それが来たらサッサと処分して次の作業に集中したいものです」
「そうですねぇ、修道院側も色々……あれ?
まだありますね、ディーマス家側の話ですか?」
「えぇ、あちらの処罰の流れも侯爵方と相談しないといけませんので。
そろそろ禿との因縁も終わらせたいですしね……」
ラーミルさん流石です!
やっぱり気づいてくださいましたか!
カル達、なんでそんなヒいてるの?
ただの笑顔じゃん?
少し感情が漏れ出ただけだよ?
その後少しイチャついて寮に戻る。
もう少しで試験に強盗制圧に建国祭か……結構スケジュールキツキツだな。
加えてホルターの件か。
確か今週末だったし忘れないようにしないとな、
そうして次の日、昼休み。
「ブゥ……」
いやジル嬢、ブーたれても仕方ないでしょ。
というかフェーリオ、何笑ってんだよ。
お前にも飛び火するレベルの話だぞ?
「いやだってさぁ……。
ジルが侯爵からここまで怯えられているとは思ってなかったからなぁ」
「それは分かる。
とはいえ、あちらからすれば学園生時代の苦労を思い出してしまうんだろうよ。
あ、そう言えば頼みたいことあったんだ。
フェーリオとジル嬢は『砕拳女子』読んでいるんだよな?」
「あぁ、それなりに読み始めたぞ?」
「まだそこまで進んでませんけどね。
とはいえ三冊目ですわね」
そこまで読み始めて入れば十分かな?
「二人に頼みたいことがある。
今まで僕らの持っている情報と異なるものが見つかったら教えて欲しい」
「異なるもの、ですか?」
「ええ、僕らが知っていることが本当に正しいのか?
もしくはこちらが誤った情報を持っていないか?
その辺りをお二人に調査していただきたいのです」
困惑してる?
なんか変な顔されたんだけど?
「それ、どんな意味がある?」
「ジル嬢の件で親世代と認識のずれが見つかった。
これが今回は影響がそう大きくない。
まぁ、チアゼム侯爵からしたら多大だろうけどさ」
「えぇ、慌てっぷりからするとかなりショックを受けたようですが……」
その原因が何飄々と話してんだよ……。
まぁ、僕がダメージ受けたわけじゃないから流しておくけどさ。
「そんな知っておかないと後で苦労しそうな情報が無いか。
本の中に記してあればありがたいと思ってね」
何となくだけど、二つパターンがありそうなんだよねぇ。
一つは親側が大したことない、もしくは知ってるだろって考えているパターン。
もう一つは親側が隠したい、もしくは思い出したくないパターン。
ジル嬢の場合前者かなぁ。
微妙に後者も交じってそうだけど。
「ん~、何かイメージあるか?
読んでみた感じではピンとくるものが無かったんだが」
イメージねぇ……あ!
「ジャーヴィン侯爵が馬車の御者してドリフト決めたとか?
多分学園生時代にもやってそうな気がするけど?」
「何それ、詳しく!!」
フェーリオの求めに応じて暴動の際に侯爵がやったことを説明する。
……ねぇ、何でそんな目をキラキラさせてるの?
まさか、お前も走り屋のケがあるのか?
「……面白そうだな」
「面白いかどうかで頼むわけじゃないんだけどね。
互いの認識誤差を無くしたいだけだし」
「まぁ構わんよ。
大した手間じゃないし調べておこう」
「すまない、頼む」
これで、とりあえず今回のようなことは減るだろう。
後は……こっちはとりあえず放置しても問題無いな。
なら強盗ギルドとホルターの件に集中するか。
あ、冬季試験準備もね。
「ちなみに、中立派の三人にはいつ説明するんだ?」
「最低でも強盗潰してからだね。
幾つもやることあるから正直手が回らない。
というか、色々忘れていることがありそうで怖いよ。
王宮、お前ら、カル達、他にも名を言えない人たち。
周知する相手一ヶ所に纏めて話し合いたい……」
「そんなに手を広げなければいいのに……」
「一斉に面倒事を送り届けてくる奴らに伝えてやってくれないか?
ついでに報酬を爵位じゃなくて金にしてと親父さんに伝えて欲しい」
「絶対嫌がるだろうなぁ……」
いや、そりゃそうなんだけどね。
「実際、侯爵にならないかとか言われたけどねぇ。
それやっちゃうと寄り親寄り子の関係が崩れるんだよねぇ。
フェーリオ、僕が傍からいなくなって大丈夫?」
「勘弁してほしい……」
……セーフか?
発言時に嫌がっている感情が混ざった視線だけだったよな?
変に熱っぽい、ラヴな視線は無かったよな?
「……ニフェール様、危うい視線を送ってたら私が止めますわ」
「……何故でしょう、万の単語より今の僕に必要な言葉ですよ。
ジル嬢に言わせるのも違う気もしますけどね」
「フェーリオ様が自制できなかった場合を考えると、その程度の覚悟は必要かと」
フェーリオ、よかったなぁ、ジル嬢に理解されてるぞ?
かなり駄目な方にだが。
「まぁ侯爵は辞退しているけど、そっちでも気を付けてくれると助かる」
「あぁ、これは俺も止めるようにしておくわ。
下手に別派閥とかにするのは俺たちの未来を考えると悪手としか言えん」
「……国王派第三派閥とかは?」
「流石にそれは無理だろ?
騎士、文官と分けているのにこれ以上細分化するのはなぁ。
まさかニフェールに領主側取り纏めさせる?
それって、そのまま王都にニフェールがいなくなるだけじゃね?」
ちょっとそれはこちらとしても困るなぁ。
「それはマズいですわね、カル達の居場所を潰すのは問題ですわ。
加えて、今だってあちらの取りまとめに近い事しているのに……」
そうなんだよねぇ、いなくなったら王都どうなるのやら。
まぁ、カル達は領地に連れて行くけどさ。
「そこらを考えると伯爵以上になる訳にはいかないんだよね。
同時に領主も避けたい。
下手になって王都がどうなるのか正直考えたくもない。
やっと落ち着きかけているのに」
「ですわねぇ、それにもっと恐ろしいパターンもあると言うのに」
「ジル、どんなパターンだ?」
……おい、まさか?
ジル嬢、こっち見て笑顔になるな!
怖えから!
「当然、マーニ様が爵位ガンガン上げていくとか?
アゼル様もあり得ますわね?」
やっぱり~!
どう考えてもそれしかないですよね!!
「え……」
なんだフェーリオ、感づいてなかったのか?
これやられるとジーピン家としても面倒なんだからな?
「正直、本気でそれやられたら未来が物凄い大変なので勘弁してください」
「勘弁してあげたいところですが……王妃様抑えられます?」
「僕じゃ無理です。
多分同年代では一番可能性があるんだろうけど、絶対無理!」
「ですわよねぇ……」
ジル嬢と溜息を吐き、少しでも楽な未来を願う。
一番の厄介事が王家って……。
あ、ちなみにフェーリオ特訓の件は黙っておきました。
僕から教えるより、両侯爵から言われた方がいいでしょ。
ブツクサいわれるのはお二人に任せます!
その後授業を終え王宮へ。
ジャーヴィン侯爵とチアゼム侯爵に商業と生産が僕の味方になったことを話す。
同時に、騎士や文官が愚かなことしたら僕経由で連絡行くことも。
「やっぱりそうなったか……。
とはいえ、仕方のない事だしな。
分かった、ニフェールはあちらの窓口として動いてくれ。
連絡受け次第、王宮側でも調査するように動くから」
「お願いしますね。
修道院関連はまた後日、情報入ったら報告します」
「十分だ。
それと――」
コンコンコン
互いにキョトンとした目で見つめ合う三人。
とりあえずジャーヴィン侯爵が廊下にいる騎士に問いかける。
「なんだ?」
「チアゼム侯爵の所の侍従がやってまいりました。
緊急の連絡だそうです」
え?
チアゼム侯爵を見ると困惑しているようだ。
……え、これってもしかしてカル関連?
「中に入れろ」
「かしこまりました、さぁ、こちらです」
「ありがとうございます」
あ、カルの声だ。
ってことは僕の面倒事?
両侯爵からぶっとい杭のような視線がブスブスと刺さってくる。
いや、僕杭そんなに刺さったら死んじゃうからね?
比喩だからね?
物語に出てくる吸血鬼とかじゃあるまいし普通に死ねるから!
飄々とした感じで入ってきたカルがあっさりこちらに報告してくる。
「ニフェール様、ジジイから連絡入った。
今日報告するそうだ。
ついでに書類として纏めたものも渡すと言っている」
「あら、予定よりかなり早いな。
となると報酬の準備しないとね。
侯爵、すぐ用意できます?」
「流石に金貨百枚を今日すぐは無理だ。
明日渡すから相手に渡して欲しい」
まぁ、そりゃそうか。
なら……。
「カル、あちらの希望聞いてきて欲しい。
金と引き換えというのなら明日にして欲しいって」
「あいよ。
というか、多分今日情報渡して後日でも問題無いと思うぞ?
流石にジジイもその辺は理解していると言うか……」
「というか?」
「ニフェール様、結構信じられてるぞ?」
おや、それはありがたいことだ。
……何、侯爵方? その生暖かい視線は?!
「多分、婆さんからの声掛けでもあったんじゃないかな?
それまで信用を積み重ねていった結果じゃない?」
「あぁ、そっちもあるか。
暴動で娼館街前の奴ら潰してるしな」
「そうそう、特殊な性癖の奴ら斬り殺してるからねぇ」
トレマ殿との出会いとかシフィル嬢に踏まれたいとか?
婆さんとの逢瀬を狙っていた奴もいたなぁ。
婆さんが襲われなかったのを少しはありがたく思っているのかもね。
だって……ほら……元妻だし?
「とりあえず今日の夜チアゼム家に向かうからその時報告してもらえる?
会いに行くのも明日にするのもどちらでもできるようにしとくから」
「あぁ、それで行くか。
んじゃこっちは調整しておく」
カルはそのまま戻り、僕はもう少し話をする。
「連絡あったってことは、問題騎士の大半が分かったんでしょう。
そうしたら事前に潰していくか、襲撃に合わせて配置を決めるか。
その辺りはラクナ殿たちと相談で」
「……相談にはお前も参加だぞ?」
「日付によりますよ?
今週末予定があるので」
……何、そのエロガキを見る目は?
そっちの方じゃないからね?
「第二の副隊長ペスメー殿の家に用事があるんです。
ホルターって覚えてます?
セリナ様と付き合ってる奴。
あいつがご両親にセリナ様の事を説明する方法を検討しないといけないので」
「あぁ、その件か……それはそっちを優先していい。
そこは調整可能だ、週末以外なら大丈夫なんだろ?」
「……ダンスの訓練位ですね」
「ダンス……あぁ、あれか」
チアゼム侯爵、あなたの娘さんのお願いですよ?
「分かった、それ以外は無いな。
ならフェーリオやジルをメッセンジャーにするから呼ばれたら来てくれ」
「了解、ついでに確認だけど第七と第四の調査もしてもらう?
当然金かかるだろうけど」
「……合わせて金貨二百枚か。頼んでおいてくれ」
これで北部に情報が流れるのは防げるかな?




