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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
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48

 その後、チアゼム侯爵も僕に言っても意味無い事が理解できたようだ。

 ベースとなる砕拳女子の中身を知らないからいくら言われてもねぇ……。


 ジャーヴィン侯爵に説明した上でフェーリオを鍛え直すとか?

 自分らができなかった女性陣の制止を託すつもりらしいが……無理じゃね?



 とはいえ、こちらも少し考えないとなぁ。

「砕拳女子」……見たく無いなぁ。

 両親の暴走をわざわざ見たいとは思わないしなぁ……。

 両親のイチャイチャシーンまで書かれてそうだし、そう言うの勘弁してほしい。



 ……フェーリオにチェックしてもらうか。

 ついでに今の僕たちの知らない情報あったら展開してもらった方がよさそうだ。

 親世代の女性陣の関係性とか分からないしね。


 明日頼むことにして今日は寮に戻り、夕食後チアゼム家に向かう。

 カル達と合流し娼館ギルドへ。



「お、やって来たね。

 シロスたち三名はもう来ていて別室に待機してもらってる。

 もう呼ぶかい?」


「ええ、お願いします。

 ちなみにシロス殿とリシアシス殿は今回の召喚理由感づいてました?」


「いや、そこまでは分からないねぇ。

 とはいえ、パンは何となく気付いたようだがね」


「あぁ、やっぱり……流石年の功と言っておきますか」



 ポロっとパン爺さんを褒めるとなぜか婆さんが少し不愉快(?)な表情をした。

 え、なんで?



「あいつには言うんじゃないよ?

 調子に乗るから」



 もしかして過去にその手の失敗してるのかな?

 昔の夫を気にして……うちの女性陣の頭の中が捗ってしまうじゃないですか!

 ルーシー、ナット、追加でシフィル嬢!

 顔に出てるから!



「……どこのギルドでも今の女性ってのはこんな感じなのかねぇ?」


「過去の女性は違うんですか?」


「一応今も花盛り真っ最中なんだがねぇ……」



 嘘つけっ!

 とはいえ、当人に言うのも後が怖いので口をつぐむ。

 カル、カリム、ティッキィ、下手なこと言うなよ?!


 これ以上のんびりしておくと危険なので話を進めるとするか。



「さて、では御三方をこちらにお呼びいただけますか?」


「あぁ、ちょっと待ってな」



 黒服に指示してすぐに三人を呼び出してもらう。

 パン爺さん、その嘲笑(あざわら)っているとしか思えない顔やめて。

 結構傷つくから。


 残り二人は、僕の顔を見て驚きと……納得?

 ある程度感づいていたのかな?



「……シロス殿、リシアシス殿。

 何となく感づかれてそうですね。

 今更ですけど説明必要です?」


「いやサボらんでちゃんと説明はしてくれ、ニフェール・ジーピン殿。

 何となく可能性はあるかと感じていたが、詳細は知らんのだ」



 シロス殿からの指摘を受け、一通り説明を行う。

 途中呆れたり溜息が聞こえたりしたが些細なことだ。


 パン爺さん、その笑顔は何?

 生贄(仲間)が増えたとか思ってない?



「……理解できたとは言い切れん程、濃い情報だらけだったな。

 普通の奴らにこんなこと言っても妄想としか受け取られんのではないか?」


「そうでしょうねぇ。でも、お二方は大丈夫かと。

 なんせ、暴動の時に僕や兄が暴れたのを見ているでしょ?

 特にシロス殿は生産ギルドの解放時に少しとはいえ接点ありますし」


「あぁ、あの人質だった時の件か。

 確かにアレは……まぁ、アレを見たら妄想とは思わんか」



 分かって頂けて何よりです。



「さて、僕が今の立場となったことについては説明しました。

 で、次は皆様との情報共有、そして依頼があります」


「依頼ですか?」


「ええ、まずは情報共有の方から」



 そうして強盗ギルドを再度壊滅させる予定を説明する。


 驚くなり反対表明されるなりするかと思ったんだけど……。

 むしろ「やれ、やってしまえ!」と、とても好戦的になっておられる。


 あんたたち、商業と生産の長なんでしょ?

 ジーピン家の血は継いでないよね?



「……ニフェール殿、何を困惑されておられるのですか?」


「待て、リシアシス。

 多分だが我らが壊滅に賛成したことに驚いておられるのではないか?」


「……あぁ、確かに。

 我らの苦労をご存じなければその反応はありえますな」


「……あなた方の苦労とはなんでしょう?」



 問いかけると切々とその苦労を説明してきた。

 とはいえ、長すぎるので簡潔にまとめると、この一言に集約される。




 金 払 え !




 どちらのギルドもツケにされて金の回収が滞っているらしい。

 ……多分パン爺さんたちから巻き上げた金をツケの返済に使っているのだろう。


 ホントろくでもねえな!



「あ~、よくわかりました。

 そんな事情ならむしろさっさと消したいですよね」


「その通り。

 もう帰ってこない金と考えるしかないのは分かるが、これ以上付き合いきれん。

 それならいっそのこと……」



 ちょっと、目がイっちゃってるから!

 リシアシス殿落ち着いて!



「では僕の想定している強盗ギルド壊滅策は問題無いと?」


「あぁ、むしろ全力で協力しよう!」


「あ、一応暗殺者ギルドとしての報酬は詐欺師ギルドから貰いますので。

 そこは理由分かっていても聞き流しておいてください」


「あぁ、あちらはダメンシャの弔いの為ならかなり出すだろう。

 そこから報酬確保するのを邪魔する気はない」



 後はもう一つの方か。



「で、次は先ほどの依頼の方になります。

 と言っても、もしかすると皆さん一部はご存じかも知れませんが――」



 そう言って修道院と三貴族の状況を説明する。

 ……あれ? なんか反応がおかしいんだけど?



「……ニフェール殿、その情報どこで仕入れた?」


「夏位の違法薬物の騒動。該当貴族の子供たち――現在学園二年生――の情報。

 テュモラー侯爵の派閥の動き。

 そして、修道院に侵入してみてわかったことですね」



 あ、あれ?

 リシアシス殿、何その頭痛そうな感じは?


 パン爺さん、婆さん、何その頷き方!

 何と言うか……「気持ちは分かる」って感じか?



「……ピロヘース様、もしかして?」


「つい最近まで妾一人しかこの苦労を背負ってなかったからのぅ。

 お前たちにも分け合えて歓びしかないよ」


「そんな怪しい歓び捨ててくれませんかねぇ?!」



 リシアシス殿、諦めて。

 パン爺さん、あんたも婆さんと同じ顔しない!

 シロス殿、そろそろ頭痛から戻ってきて!



「なぁカル、お前既に通ってきた道だからめっちゃお気楽だろ?」


「そりゃそうだろ、シロス!

 お前らより前に既に体験しているからな。

 未来も何となく分かるし、そこでお前らが色々と頭を抱えるのも想定できる。

 それを外から第三者として見てるってのは気分いいぜぇ?

 気持ちもハイになるってもんさ!」



 カル、めっちゃ笑顔だな?

 最近そこまで笑顔見せたのいつだっけ?

 ちょっと思い出せない位なんだけど?



「え~、そこの怪しいテンションしている方々?

 本来の依頼について説明してよろしいです?

 まだ概要しか話してませんので」


「……ええ、もうどうにでもしてください」



 なんか投げやりですね、リシアシス殿。

 諦めると受け入れやすいみたいですよ?

 経験者のカルがよく言ってました。



「お二人には先ほどの三貴族と仕事している商会をお教えいただきたい。

 そしてそこが怪しいことして無いか情報があれば欲しい」


「……それはニフェール・ジーピンとしての問いですか?」


「そうです、加えてその情報を元に国が動きます」



 ザ ワ ッ !



「現時点で北部のギルドがやらかしているのはご存じですね?

 あれがこちらの件と繋がっているしている可能性がかなり高い。

 推測ですが、北部テュモラー家と連動して動いているのはほぼ正解でしょう。

 となると、今ここで王宮側と犯罪者側が協力しないと……」


「北部側が王都を制圧。

 国は良くて王位禅譲、悪くて革命。

 王都の商売は北部側の奴らに乗っ取られるか新たな王が我々を取り締まる?」


「大体そんな感じかと。

 まぁ、使える物は使うのかもしれませんので、命を失うことは無いでしょう。

 とはいえ、新しい王の後ろ盾がある北部の奴らが大人しくしますかね?」


「先日の北部の暗殺者・強盗ギルドのやらかしを考えるとありえないな。

 うちら商業・生産・娼館は争うことは無いだろうが……。

 一部のギルドは力づくで乗っ取られそうだな。

 暗殺者と強盗は……また血の海か?

 詐欺師側はちょっと判断付かんが、こちら側でも争いは十分起こりえる」



 でしょうねぇ。

 僕もそう思いました。



「こちらも同意見ですよ。

 ただ、ギルドと王宮で互いに直接的な協力は難しいでしょう。

 下手に一緒に動くと相手にバレます」


「あぁ、北部側にこちらが手を組むのを知らせる気はないってことだな?」


「ええ、その通りです。

 わざわざ相手にその情報を教える必要は無い。

 一切得しないですしね」



 手を組んでいることを知らなければあちらは一方しか相手として見ないだろう。



「ですが、各々で何かしたらちょうど相手側に有利になった。

 例えば、暗殺者ギルドで強盗ギルドを壊滅させ、その後騎士団がやってきた。

 それなら偶然ですから手を組んでいるとは考えないでしょう。

 壊滅と騎士団が来る時間に差があれば特に」


「……時間差で騎士団を派遣して住民が王宮に依頼した形にする?」


「その通り。

 こんな感じで互いに不利益にならないように協力するのは如何でしょ?

 犯罪者ギルドの長として受け入れられないですか?」



 二人とも少し沈黙してから同時に答えて来た。



「「いや、受け入れる」」



 お二人、何故ハモるんです?



「この協力体制が成功したら今後もこれを維持しておきたい。

 多分この関係性を理解している人物が上にいる限り協力すべきだ」


「そうだな、ニフェール殿が王宮側との窓口になってもらえれば……。

 こちらとしても苦労が減るしな!」



 ん~、シロス殿の発言がちょっとずれてないか?

 補足だけはしておくか。



「一応言っておきますけど、個々のギルドと王宮の交渉に呼ばれても困りますよ?

 僕がやるとしたら犯罪者ギルドと王宮との橋渡しですから。

 例えば生産ギルドが騎士団とやり取りしている武器の値段の交渉とか?

 そう言うのは関わる気はありません」


「え……あ……そういうことか?」


「ええ、そこまで関われるほど暇じゃありませんよ。

 でも、無茶苦茶な値段を騎士団から提示されたとか?

 そういう場合は僕からジャーヴィン侯爵にお伝えしますよ。

 それが出来る限界かな……」



 なんか沈んでるシロス殿。

 もしかして想定ずれてた?



「一応僕、貴族側なもんでそこのバランスは取らざるを得ないんですよ。

 それと先ほどの例で僕が動くとしたら……。

 騎士側の武器調達要員が中抜きしているとかですかね」


「あぁ、普通のやり取りなら出てこない。

 でも王宮側に非がある可能性があるのなら口出しする可能性ありってことか」


「えぇ、そのあたりが僕の出来る現時点での限界でしょうか?

 今後、学園卒業して文官となったらまた変わるかもしれませんけど」



 ……ねぇ、何その「アッ!」って表情は?

 まさか学園生ってこと忘れてた?


 ジロッと睨むと、二人そろって視線を逸らし口笛を吹き出す。

 だから何でそこで口笛までハモるんだよ!

 しかも同じ曲を吹くって……もしかしてアンタら心が通じ合ってんのかい!



「ニフェール様、触れてやるな。

 誰だって学園生だなんて信じるのは難しいと思うぞ」


「カル、お前……裏切るのか?」


「裏切りも何もなぁ……。

 王宮とかでもニフェール様をよく知らない奴らは似たような反応するぞ?」


「なん……だと……」



 ショックを受けている僕を尻目にカルは他の長たちに説明し始める。



「あ~、お前らが色々ありえない話を聞かされて困惑しているのは分かる。

 加えて、どっからどう聞いても学園生如きが考える内容じゃない。

 気持ちはよ~く分かる!

 俺も最初はとてつもなく困惑した!」



 ……おい。



「だが、事実なんだ。

 そして、学園生だからってニフェール様のイカレっぷりが変わるわけじゃない!

 よく考えても見ろ、王宮の文官・騎士がこんな手を思いつくか?

 立場が学園生だろうが文官だろうが変わらない。

 こんなの普通の貴族が思いつくはずねえんだよ!!」


「おおっ!」「確かに……カルの言う通りだ」



 ……おいっ、カル!

 ルーシー、止め……何、その苦笑!!


 笑ってないでアイツ止めてよ!

 なんなら唇塞いでもいいからさぁ!!



「ニフェール様の立場なんて気にするな!

 そんなところよりこの案件の目的と手段をちゃんと理解しろ!

 それさえ間違わなければ策は成功だ」


「そんな簡単なはず――」


「――地方の制圧を行った帰りに王都の暴動制圧してる位なんだぞ?

 それに比べれば今回のなんてやること間違わなきゃ軽いもんだ!!」



 ちょ、シロス殿、リシアシス殿!

 何カルの言葉にふらついてるの!

 だめ、正気を保って!



「……カル、つまりこういうことだな?

『勝ち目しかない賭けに乗らないのは馬鹿だ』」


「分かってんじゃねえか、シロス。

 お前らだって自分たちが成り上がったのに比べてみろ?

 とてつもない賭けに勝って今に至ってるんじゃねえのか?

 それに比べりゃこんなの勝ち確過ぎて賭けになってねえだろう?」


「確かに……」


「潰すのはたかだか三貴族。

 こちらには国が、王がついている。

 加えて暴動の日に中央通りを血塗れにした兄弟が参加。

 策は暴動発動を読み切った弟が練ってる。

 ついでに相手は全く気付いていない。

 これで負ける要素ってなんだ?」


「……無いな、むしろこんなのチェックメイト直前のチェス盤じゃねえか」


「だろ?」



 おいぃ!!

 膝を付きそうになる僕を憐れんでカリムが慰めに来る。



「ニフェール様、諦めてください。

 とりあえずは二人をやる気にさせたのは事実なんですから」


「いや、そうなんだけどさぁ、なんかノリが違う感じが……」


「酔っ払いの戯言(たわごと)っぽいやり取りが不安なんですね?

 ですが、あの三人は大体あんな感じでしたよ?」


「えっ?」



 驚く僕に可哀想なモノを見る目で見て来るカリム。



「あの三人は長の中では話が合うタイプみたいですよ?

 なんで、娼館ギルドでの会議の後は三人で飲んだりしてるようです。

 ……ダメンシャさん入れて四名の時もあったと聞いてます」



 ザイディは外されてたんだね。

 たかられる可能性が高かったからかな?



「なんで、あのノリは受け入れてください。

 無駄に反抗する位なら受け入れた方が楽ですよ?」


「あぁ、分かった」



 なんだかなぁ、こんな長たちの一面見るとは思っても見なかったよ。


2025年もお読みいただきありがとうございました。

来年も何とか書き続けていきますので、継続してお読みいただければと思います。

なお、2026年最初の投稿は1/2(金)になります。


では、よいお年を。

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