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本日より更新再開します。
今まで通り二日に一回の更新となります。
「……とりあえず話し合いの場を用意するのは構わんよ。
妾としても長だけなら共通認識持っておいた方が苦労が無いしねぇ。
シロスとリシアシスなら信用もできる。
ちなみに、強盗と詐欺師はどうするんだい?」
「現時点では教える気はありません。
強盗はパン爺さんが僕との接点と思って下さい。
詐欺師は……今の面々の誰に教える?
代表決められない程度なんでしょ?」
婆さんもこれは納得してくれた。
パン爺さん並みの実力者はあの二つのギルドにはいない。
そんな相手に教える気は全くない。
「あの二つのギルドは代表いる状態まで数年かかるんじゃないかねぇ。
まぁ、そこはニフェールの方で判断しな。
言う前に一声かけてもらえると助かるけどね」
「ええ、そこは僕も気を付けたいと思ってます」
ばらす以上、相手はちゃんと考えないとね。
「で、二人に伝えるときには誰かいた方がいいのかい?」
「婆さんとパン爺さんくらいかな?
一応僕という存在の情報共有だから二人にはいて欲しい。
あとうちの面々も全員参加で」
「……全員必要かい?」
「状況によっては共有すべき情報が出てくるかもしれないので。
ちなみに、脅しの意味じゃないですよ?」
あちら側がギルドから切るために積極的に情報提供してくれたとかね?
「……分かった。
明日周知して夜に集まろうと思う。
連絡はいつも通り侯爵家でいいな?」
「ええ、僕はいつも通り抜け出して夜に侯爵家に向かいますからお気になさらず」
その後、侯爵家に戻り皆に結果報告。
「ねぇ、行かなきゃダメ?」
「あちらがどんな話するか分からないからねぇ。
念の為ってところかな。
それと、状況によってはパン爺さんが調査情報教えてくれるかもしれないし。
それによっては状況がかなり変わるかもね」
ナットが面倒くさそうに言うけど、状況的には来て欲しいんだよなぁ。
「……もしかして長のどちらか嫌い?」
「どちらの長も特に好き嫌いは無いよ?
嫌いだったのはザイディ位だし」
あいつ、そこまで嫌われてたのか……。
「ちょっかい出して来たからねぇ。
『あんたの女になる気はない、ロリコン!』って言ってあげた。
そしたらそれ以降言わなくなったけどね」
なお、ザイディは三十代位だったはず。
で、ナットが僕と接点を持つ前となると十代前半?
そりゃロリコン扱いされるな。
周囲の視線も痛かったのだろう。
「今回参加するの長だけなんだよね?
その部下とかは来ないんでしょ?」
「そうだよ。僕の情報も教える気は無いしね。
……まさか商業か生産でザイディタイプの輩がいるの?」
「いるよ? 自分がイケてると妄想している困ったちゃんが。
毎回カリムが追い払ってくれるけど、面倒なんだよねぇ……」
モテモテだな、ナット。
カリム、顔真っ赤だぞ?
お姫様守ったんだからもっと胸張ってもいいと思うんだが?
というか、ルーシーの羨ましそうな表情が痛々しすぎて……。
カル、気づいてやれマジで。
鈍感系主人公はこの作品にはいらん!
ラーミルさん、あなたは羨まないでいいから!
この前対応したスホルム対応で十分守ったつもりなんだけど?
いや、何度でも守れと言いたいんでしょうし守りますけどね。
「とりあえず部下の事は気にしなくていい。
僕の正体を伝えるのは長だけだから。
メッセンジャー頼むなら娼館ギルドに頼めばいいし」
「ん~、なら参加する……」
「すまんな。
明日以降は修道院関連――パン爺さんの新しい情報を貰う時くらいか?
そんな頻繁に会わせるつもりは無いから。
というか、アゼル兄の結婚式以降に商業ギルドとかと接点そんなにあった?」
「いや、ないよ? さっきの話は全て結婚式より前の話だし」
だよね、ならまぁ安全かな。
仮にうちでメッセンジャー用意するならカリムに行かせるのも手だし。
「まぁ、そんな感じで明日は進めるから。
後は……修道院関連は調査結果による。
強盗ギルド壊滅はパン爺さんの連絡きてから詐欺師ギルドと金額交渉かな。
そっちはカルとルーシーに任せていい?
一応僕も一緒に参加するか悩んでいるけど、口出ししないつもり」
「いいわよ、きっちりせしめて来るから心配しないで。
無理に参加しなくても大丈夫よ」
なんとも安心できる発言をしているルーシー。
でもね……僕的にはこのタイミングでカルがルーシーのこと……無理か。
「あぁ、期待している。
他の面々は強盗ギルド襲撃の準備進めておいて。
といっても武器の用意位だけど」
「まぁ、普段から準備済みだ。
カリムたちも大丈夫そうなのは確認した」
流石安心と信頼のティッキィ。
なら大丈夫だろ。
一通り話も終わり、寮に戻る。
次の日、昼休み。
「ニフェール様、父上から許可頂きましたわ♪」
「どれだけ追い詰めました?」
「大したことしてないんですけどねぇ。
母上と一緒に丁寧に説明しただけなんですけど、なぜか涙を流されまして……」
めっちゃ妻と娘から言葉でボコられたんですね、侯爵。
……今日は王宮行かない方がよさそうだ。
「ちなみに、父上から言伝ですが聞きます?」
「……正直聞きたくないです」
愚痴の付き合いは勘弁してください。
「『本日放課後王宮に来い、絶対だ!』だそうです。
伝えましたので、よろしくお願いしますね?」
「は~い……」
あ~、仕方ない。
オッサンの愚痴に付き合うか……。
「ちなみにフェーリオ連れて行ってもいいです?」
「ダメです♡」
「嫌だよ、お前だけ叱られてきな」
この夫婦(予定)は……僕見捨てる気マンマンかい!
まぁ、一緒に来るはず無いか。
きっかけは僕だしな。
「ったく仕方ない。
僕の方から追い打ち掛けたりできそうです?」
「難しいんじゃないでしょうか?
多分理路整然とした説教より、駄々こねに近い感じだと思いますわよ?
会話が成立するのか甚だ疑問ですけど……」
「うっわぁ、泣きつく感じですかね……」
面倒臭ぇ……。
そんなこんなで放課後。
足は重く、歩みは遅く、正直会いたくないという気持ちでいっぱいだ。
でも、諦めてチアゼム侯爵の執務室に――
「ニフェール!!
ジルを止めろ!!!」
――入る前に引きずり込まれ、この言葉で出迎えられた。
「僕如きが止められるはずないじゃないです。
現時点で寄り家の三男の婚約者。
未来、僕が爵位貰ったら確実に寄り家の奥様ですよね?
敵う訳ないでしょ、権力的に」
「そこをどうにかするのが寄り子だろ?!
というかお前が普通の、常識的な範疇で寄り子やってるなんて誰も思わん!」
全力で侮辱してきてない?
「いや、無茶ってもんでしょ?
どう考えてもジル嬢を制御できないのは侯爵だって感づいてたんじゃないの?
それにアニス様だってジル嬢側に付いたんじゃないの?
それじゃあどうやっても無理です。
僕に勝ち目なんかないですよ」
地獄の底から鳴り響いてくるような呻き声が執務室に木霊する。
これ、どう考えても僕が侯爵イジメたように捉らえられかねないよね?
ちょっと急ぎで慰めと対策案出しますか。
「一応、ジル嬢一人で動かすつもりはありません。
フェーリオと組ませて二人一組で動かすつもりです。
当然、騎士団から護衛を派遣します。
不安なお気持ちはある程度理解は出来ますが、どうかご協力いただきたい」
「ダメだ!
フェーリオがジルを抑えておけるはずがないだろう!
護衛達だって無理だ!!」
いや、そこまで言うのはちょっとばかし可哀想なんだけどさ?
流石にフェーリオの立場無さすぎでしょ?
「え、まさか僕かマーニ兄を傍につけないとダメとか?
どんだけ危険な所に行かせるつもりなの?」
「違う! 分かってないのか? 結構学園で一緒にいるはずのお前が?
今回の条件だとジルがほぼ野放しになるだろうが!
ジルがどれだけアニスに似ているか感づいていないのか?!」
……野放し?
いや、一応護衛とかいますから野放しというのもちょっと違うんじゃない?
あとアニス様に似てる?
まぁ、侯爵よりかはアニス様よりな顔ですけど……?
「分かってないようだな……お前、『砕拳女子』読んだか?」
「はぁ?」
いきなり話が変わって困惑する僕。
それを僕に聞くの?
「いえ、全く。
両親の学園時代の暴走読んでもねぇ。
恥ずかしがられた挙句、即死レベルのツッコミが入るのは危険すぎるので……」
母上の加減無し裏手ツッコミされて生きていられる自信は無いですよ?
……ねぇ、何でそこで溜息吐くの?
「簡単に言うと、キャルがはっちゃけるのがあの話のキモだ。
それは読んでなくても何となくわかるな?」
「まぁ、題名からしてアレですからねぇ」
むしろ、それ以外の何があると?
「だが、キャルはそこそこしか頭は良くない。
馬鹿なわけじゃないのは断言するが、淑女科の平均レベルの学力しかない。
まぁ、問題の根本を見極めるのは得意みたいだったがね。
ついでに戦闘能力では国随一なのは分かっていると思うが?」
「まぁ、そうでしょうねぇ。それで?」
「ならどうやってキャルは厄介事に巻き込まれて全てを制圧できた?
あいつの頭では……言い方は悪いが敵を見つけること自体が難しいだろう?」
え……目の前にいる屑をぶん殴り続ければいつかは悪の首魁を殴れるとか?
父上がフォロー……無理だな。
出来る位ならアムルの婚約のドタバタは起こさないだろうし。
となると……まさか献策する人がいた?
そしてそれは……両侯爵家のご婦人二人?
あえて言うのなら……外付け制御装置?
「まさか、アニス様やサプル様のように止める方がいなくなる?」
「……情報なしにそれを思いつくのもどうかと思うが、少し違う。
大間違いという訳でもないがな。
お前はあの二人がキャルの制御を司っていると考えたな?」
「え、ええ。
暴走しそうな母上を止める、抑制を担当されていたのかと……」
「違う、そうじゃない。
二人が担当していたのは制御ではあるが……逆だ。
制御を崩壊、もしくは暴走させるのがあいつらの担当だ。
普段は抑制担当なんだがね……」
「え……?」
制御を暴走させる?
つまり、普段は手綱を持って制御する。
でも、動くことを決断したら手綱を離す、つまり……暴走開始の合図を出す?
……え、まさかジル嬢は。
「分かったか?
ジルが参加したらどうなるか。
推測だが妻達のように暴走を手助けするだろう。
今回の件でやりそうなのだと……騎士や文官を扇動して商人を制圧するか?
過去、アニスたちがやったパターンだ」
うっそだろ?
え、冗談にしても笑えないんだけど……多分事実なんでしょ?
こんなくだらない嘘を吐くとは思えないし。
とはいえ……念の為。
「……マジです?」
「ごまかしようのない事実だ。
というか『砕拳女子』の二巻か三巻あたりでそのネタ書かれてたぞ?
懐かしい話ではあるが、思い出したくなかったなぁ……」
「フェーリオは少し読んでいるようだけど全く気付いてないのかも……。
まぁ、そこまでたどり着いてない可能性もあるけどね」
そこまで読んだのかは聞く気が無かったしねぇ。
「……今お前らの代で読んでいるのはフェーリオだけか?」
「ジル嬢も読んでるかもしれないけど、確証はないかな。
とはいえ、読んだと判断した方がいいんじゃないんですかね?
というか、アニス様を味方に付けたとしたら……」
イヤな感じが深夜の雪の様に降り積もっていく。
どこまでも覆い尽くすような。
少しの救いも隠しきってしまうような。
「『あの場面を現実でやってみてもいいかしら?』
そんな感じの事をアニス様に言ったんじゃないですかね?
で、許可出したとか?」
「あぁ……ありえる!
となると、今頃サプルと茶でも飲みながら予想される未来を考えてるんだ!
学園生時代から一切変わってねぇ!!!」
いや、それ僕に言われても困ります!
あなたの方で変えてくださいよ!!
具体的に言えば夫婦の営みの最中でとか!!!
「この場合、正直僕にできることは何もありません。
あえて手を打つなら……ジャーヴィン侯爵と手を組んでください。
そしてフェーリオにこの場合の対処方法を二人掛かりで指導して頂きたい。
実際お二人は同じようなこと経験して奥様方を落ち着かせてるんでしょ?」
「いや?」
……えっ?
「それができるのなら既にフェーリオに指導している。
儂らでもできなかったから、対策無いのにやろうとするなと言っているんだ」
「あれ?
その割にはジャーヴィン侯爵はあまり反応しなかったんじゃない?
ジル嬢の参加を求めた時、そんな拒否反応示してなかったと思うけど?」
「そりゃあいつはジャーヴィン家の事しか考えないだろ。
ジルがやらかすことを気にするのはチアゼム家の話だし。
……本気でアイツ、あの頃の苦労を忘れてねえよな?」
知らないったら。
それ僕に聞かないでよ……。
「そこは僕には分かりませんよ。
二人で話し合ったらいかがです?
そして忘れているのなら思い出させたうえでフェーリオを鍛え直したら?
実施まであと一月半位?
大急ぎで仕込まないとマズいんじゃない?」
「だよなぁ……
というか、あれだけ色々聞いてたから『砕拳女子』見てるもんだと思ってたぞ?
情報無しじゃあお前も分からんだろうしなぁ」
いや、そんなの分かるの神しかいないから。




