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その後、修道院襲撃で必要な情報を整理する。
一応方向性としては……。
修道院は僕とラクナ殿、マーニ兄。
人員は第二から。
文官は……僕?
うちからはカル。
貴族家へは騎士からペスメー殿たち三名。
人員は第二から。
文官からはサバラ殿、クーロ殿、ベル兄様。
うちからはティッキィ、カリム、ナット。
商会へは第五と第六。
文官は学生組とサバラ殿達の部下。
ここにシェルーニ様も加える。
うちからはラーミルさんとルーシー。
ここまで説明すると、チアゼム侯爵から指摘が。
「方向性は分かったが、お前の担当が多すぎる。
修道院担当の文官はサバラ、お前がやれ。
それと貴族側へは残り二人とシェルーニにやらせればいい。
商会側はラーミルたちと文官から……」
……中心になれる人物名が出てくるの?
僕は思いつかなかったけど?
「……いねぇ。
誰かいないのか! この面倒なの任せられる人物!」
その”面倒”って商会のこと? 僕の事?
「いるなら僕の方でさっさと割り振ってるよ?
いないから困ってるってのに、まさか宰相殿や侯爵方御出馬されます?」
「……本気で出なきゃマズそうだな。
それと、ガルブ団長、リノル副団長。
あなたたちも動けるか?」
団長は即刻頷いたが、副団長何考えてる?
「この作戦が動き始めた時点で騎士団内の輩はどう動きますかね?」
……あ、もしかして?
「例えば第一の夜勤担当が逃げ出すとか?
王宮内制圧担当もいるってこと?」
「その通りだ。
むしろ第一部隊を全員確保してしまいたいくらいだが……。
ラクナ、第一で信を置ける者は増えたか?
それと確実に敵側の輩は?」
「少しづつ増えてはおります。
ですが、まだまだといったところで。
なお、副隊長のヘンミーを王宮制圧担当にされても構いません」
……ラクナ殿が下の立場としての発言って珍しいかも。
それとヘンミーさんか。
「一応確認だけど、最悪ヘンミーさんは同じ部隊だった人を捕まえられる?
そして……殺せる?」
「当人にも確認した。覚悟はできているそうだ」
なら、信じてみるとしますか。
「後は相手が暴走して人質取りそうな場合の対応なんだけど……。
そこはまだ何とも言えない。
というか、修道院で日々どういう流れで動いているのか分からないからなぁ」
「確かに……とはいえ、年一程度は修道院に行っているはずだが」
チアゼム侯爵、それ本当?
「その時の流れって聞いたことある?
例えば最初に修道女や逃げて来た女性たちが集まって挨拶をするとか?
その後仕事に戻って王妃様と修道院長たちが話し合うとかかな?」
「話を聞く限りは大体合ってるぞ。順序は分からんがな。
となると、仕事でどこに割り振られたかによって危険度が変わるな。
入口に近ければ近いほど第一の騎士たちが襲撃しやすい。
逆に裏手だと他の修道女が勝手に動き出す。
どちらであっても女性陣を何処かに集めておかないとマズいな……」
ん~、王妃様が来るからって行動パターンを大きく変えることは無いよな?
となると……。
「確認ですけど、王妃様が女性陣を集めて話す場所ってどんなとこでしょう?」
「教会の中だな。
入口から真っ直ぐの所にある奴。
あそこで話すと聞いている」
「そこで殺気ぶちまけたら?」
……ねぇ、何で皆そこで唖然とするの?
「確実に皆気絶するな。
ただ、順序が決まっているわけでは無いからなぁ。
先行して修道院長との話し合いの可能性もある。
そこは臨機応変にだな」
「ん~、むしろ話し合いが先なら書類の場所確認できるからいいんですけどね。
先行して教会での話となると、情報確認せずにいきなり?」
「どうせ倉庫の情報が見つかった時点で終わりだし、気にしなくていいぞ?
まぁ、騒いだら野菜プレイの事でも言ってやればいい」
「それは勘弁、向こうに言った面々のうち四名はロッティ姉様の僕だよ?
それ言ったら危険すぎて……」
ロッティ姉様と同レベルの厄介事が襲撃タイミングで発生されたら?
想像するのも恐ろしい……。
「なら、面倒なことせずに一気に気絶させろ。
取り押さえて、危険物と離してからゆっくり言い訳を聞けばいい」
危険物って……いや、的確な発言だけどさ。
「なら、後は商会対応用の文官配置お願いします。
個人的にはサバラ殿たちの部下の方に経験させたらいいかな。
次点としてベル兄様の部下。
実力そこそこあればいいんじゃないかな?」
「ん~、仕事内容が違うからあまり期待されると困るかな?
例えばニフェール君が戻ってくるまでの時間稼ぎとかならできると思う。
それ以上を求めるのは酷かなぁ。
サバラ殿達の仕事をぱっと見で対応できる人ってあまりいないんだよ」
ベル兄様、そこまで低く見積もらなくて……え、マジ?
となると、他のメンバーの作業順序とか影響しちゃいそうだね。
「ん~、修道院はある程度調査してある程度情報集めた時点で移動しますか?
じっくり見るのは王宮でやればいいかな?
で、サバラ殿は商会側のフォローに回ってください。
僕とカルは三家を順番に巡ります。
ティッキィたちのフォローも必要ですしね」
「え? ティッキィたちならどうにかならんか?」
チアゼム侯爵、期待し過ぎ。
「実力的にはどうにかなりそうですけど、フォローは必要ですよ?
特にティッキィはスホルム対応未経験です。
知っている技術と現状を組み合わせてベストな対応が出来るかというと……」
「あぁ、そういやあいつは暴動後に入ってきたんだな。
カリムたちと同じくらい経験積んでいると勘違いしていたよ」
「暗殺者としては誰よりも経験豊富なんですけどね。
流石に貴族の書類調査なんて経験無いでしょうし」
「ん? なら商会側にティッキィ送ってルーシーかラーミルを貴族側にしたら?
それなら……って、あいつを知っている者が少なすぎるか」
「ええ、ラーミルさんもルーシーもスホルム対応参加者に顔知られてます。
でもティッキィはそこまで接点無いはずです。
なので、個人的にはビーティ殿と組ませるつもりです。
『葡萄踏み』の時に一緒に組んだので、第二の中でも一番接点あるはずですし」
それ以外の人と一緒に対応したこと無いはずだからなぁ……。
この辺りは今後顔合わせさせて知り合いを増やすしかない。
「ふむ、なら今の方向性で進めるか。
対象の商会の数とかはまだ不明なんだろ?」
「ええ、そこらはもう少し後ですね」
後は……。
「ちなみに、領地に行く際に誰を派遣する想定でした?」
「武官はマーニたち第二部隊。文官は……サバラかクーロは王宮に居残りだな。
どっちかとベルハルト、ついでにシェルーニも付けるか。
そんな感じだな」
「了解です。
後、それぞれの家で現在二年生の学園生を連れて行きます。
まぁ、やれても案内人程度かなと思ってますけど」
あいつらにそれ以上何かさせてもなぁ。
自分の親兄弟が犯罪者ということを受け入れ、激高しないよう言っとくか。
むしろ親にブチギレて仕事の邪魔になるのは勘弁してほしいし。
「ふむ、それは問題無かろう。
元々その子たちは実家の犯罪に気づきこちらに味方したことにするんだろ?
なら連れて行って家の使用人とかを説得させてもいいしな」
あぁ、確かに……。
とはいえ使用人も黒だったらマズいけど、そこは何とか考えてみますか。
「うちの面々は……そうですねぇ。
僕とラーミルさんがインファ家。
カルとルーシーがボシース家。
他三名はクレオシス家って感じにしようかな」
「その分け方の意味は?」
「インファ家のお嬢さんがラーミルさんの大ファンなんです。
なので、餌を目の前にぶら下げておけば全力で使用人たちを説得するかと」
「悪魔かお前は?!」
「何をおっしゃる?
やる気を出させるために目の前に人参ぶら下げるのは基本でしょ?」
というか、何を今さらって感じなんだけど?
「で、インファ家対応終わらせたら令嬢はさっさと王都に戻します。
すぐに試験始まっちゃいますからね。
書類や犯罪者を運ぶのはお任せして、次にクレオシス家へ。
同様に調査済ませて、最後ボシース家って感じかな?」
「クレオシス家対応の三名は少々書類仕事的には弱いから先行して手を貸す。
ボシース家に回したカル&ルーシーなら後回しにしても大丈夫って感じか?」
「そうですね、カルとルーシーで苦労するとなると全戦力回さないとキツいかと。
なので、先行してカリム達のフォローに動きます。
まぁ……」
「まぁ、なんだ?」
「カル達がイチャつく時間くれてやってもいいかなと思ってますけどね」
笑ったのが大半だが、ビーティ殿とメリッス殿が……。
怖いから真顔のまま涙流さないでよ!
「あいつら、何時まで待たせるんだ?」
「それは色々な所から言われているのですが……。
スホルム対応や暴動対応、今回の対応よりも面倒なんですよねぇ。
僕が対応した中で最難関の問題ですよ。
解決策見つけられるか不安でしょうがない」
溜息吐くと、あの二人の事を分かっている面々は憐みの視線を送ってくる。
視線よりも対策が欲しいな……。
「とりあえず方針は今のような感じで。
協力している商会の数で状況変わるって感じかな。
王宮側で商会側対応の文官要員準備しておいてくださいね?」
「ああ、とはいえお前らの眼鏡にかなう人物か……。
最悪、儂が出るしかあるまい」
チアゼム侯爵、本気?
いや、実力的には安心できるんですけどね。
「侯爵まで出ることになるのなら、そうですねぇ……。
見どころあるけど少し実力足りない感じの部下の方連れてきたら?
このぐらいの実力が無いと仕事任せられないというのを見せつけるのは?」
「……そりゃ構わんが、心へし折るだけな気がするがなぁ」
あぁ、ノヴェール家調査のあいつらみたいな感じ?
むしろそんなヘタレたこと言ってたらいつまでたっても仕事できないじゃん。
「そんなこと言ってられませんよ?
僕・フェーリオ・レルカ・クレイの四名が再来年度から王宮に入るんですよ?
今の王宮が平和すぎると思う位なメンバーですからね?」
「分かる、分かりたくないが分かる。それを回避する手段が無いのもな。
受け入れれば文官側に地獄が待っている。
だが、同時にお前らが入った時点で仕事がどれだけ変わることやら……。
かなり覚悟しないと置いてけぼりになるだろうな」
「分かってるのなら僕たちを受け入れられるレベルの人用意しないと……。
新人として僕ら入った時に阿鼻叫喚の地獄絵図になっても知りませんよ?
仮にベル兄様・サバラ殿・クーロ殿。
この御三方に一人づつ割り振っても残り一人が何するか分かりませんからね?」
強張った表情で黙ってしまうチアゼム侯爵。
あれ、もしかしてこの四人を部下に持てる人物用意できない?
「……一応まだ時間ありますが、覚悟はしておいてくださいね?
ちなみにベル兄様、サバラ殿、クーロ殿。
僕レベルの人物二人面倒見切れます?」
「無理無理無理ィ!」
「いくらなんでも限界というものがあんだよ! 無茶言うな!!」
「君だって無理だって薄々気づいているんだろ?
無茶ぶりにもほどがあるからね?!
どう頑張っても一人が限界だよ!」
上からサバラ殿、クーロ殿、ベル兄様。
自分で振った話とはいえ、そこまで怯えられると流石に悲しいんですけど?
その後、打ち合わせを終え寮に戻る。
夕食後チアゼム家へ。
カルとルーシーを娼館ギルドに向かう。
「……で、何しに来たんだい?
パンからはまだ連絡入ってないよ?」
その、そこまで不信感MAXな反応は傷つくんだけど?
「少し相談がありまして……」
そう言って、商業と生産の両ギルドの長に正体をばらすことを提案する。
ついでに、修道院の対応も教えておく。
概要だけだけどね。
あれ、どうしたんです?
呆れというか怯えというか……感情グチャグチャになってません?
胃のあたりに手を当てて……。
「胃袋を捧げよ!」とか言い出さないよね?
こちらは望んで無いからね?
「お前さんが言うな!!
こんなの聞かされて落ち着いていられるわけないだろうよ!
いい年したババアを驚かせてどうする!
まだアッチに逝く気は無いんだよ!
驚かせないでおくれよ!!」
【死神】がアソコを縄張りにしてるから厚遇されると思うんだけどねぇ。
「驚かせたくないからまずは相談と思ったんですがねぇ……」
「いや、動く前に妾にまず一声かけたのは正しい。
だが、もう少し柔らかく伝えることは出来なかったのかい?」
何と言うか、侯爵方と同じ言い回しをしてくる。
難しいんだよねぇ、それ。
「婆さんの希望は両侯爵がよく言っておられます。
ですが、いまいち改善ができてないようで……難しいですねぇ」
「直す気あったのかい?!」
「自分なりに胃に優しい説明しようとしても皆さん胃に手を当てるんですよ。
先ほど婆さんがやったあのポーズ。
『胃薬友の会』公認なのかと思ってしまう位、皆さん同じ行動をとるんです。
でも、これ以上優しくと言われてもねぇ……」
肘を机に付き手で頭を抑える婆さん。
そこにカルが慰め……慰め(?)の言葉を掛ける。
「ババア、諦めろ。
実際ニフェール様はこれでもまだ優しく説明しているんだ。
物量的に押しつぶされそうになるのは分かる。
だが、ここを乗り越えないとキツいぞ?」
「既に十分すぎる位なんだがねぇ……」
「ババアには修道院への襲撃とかは説明してないんだからな?
ギルドに関わる部分しか言って無いんだからな?
王宮側とギルド側、どちらの情報も入ってくる俺と同じ量が欲しいか?」
「絶対お断りだね!
手加減してこの雪崩のような情報量かい……。
そんなの受けてたら皺が増えちまうよ!!」
え? まだ増やせる程無事な場所あるの?
……おっと、考えてたのバレたか?
キッツい視線が飛んできやがった。
先日記載した通り、書き溜めが無くなったので少しお休みいただきます。
……早くて12/29(月)、もしかすると来年1/1(木)から再開かも。
# 間に合わなくなったのは、七章32話(2024/9/5)以来ですね。
# 一応一年以上は(章間の休みを除いて)更新継続できてたんだ……。
詳細な説明はいつも通りこの後投稿する活動報告に記載します。




