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そして次の日。
「お、おい、ニフェール。
このメンバーでまた集まるってことは、まさか?!」
レルカ、落ち着けや!
クレイも無言で見つめて来るな、いろんな意味で怖いから!
なお、集まったのはいつもの昼食メンバーにレルカ兄妹&クレイ兄妹。
「まず一つ目、侯爵方に以前の話を提案してきた。
内容に関しては納得してくださった。
だが、滅茶苦茶不安がってたぞ?
お前ら二人、本気で何やらかした?
あの反応は僕がかなり無茶な提案をしたときに似ているぞ?」
そうそう弱みを見せないあの二人があっさり胃を抑えるって相当だぞ?
僕が言うのもなんだけどさ。
「ついでに『お前らのご両親はまともなのに』とか愚痴ってたけど?
過去に余程無茶苦茶なことしたんだろ?」
ここまで指摘したところ、六人とも目を逸らした。
……六人?
「……おい、フェーリオ、ジル嬢。
何隠してる? 正直に言ってみ?」
ジル嬢が溜息を吐いて説明を始めた。
「別に隠しているわけでは無いのですけれど……。
まだ六歳とか七歳程度の話になります。
レルカ様とクレイ様、そしてフェーリオ様と私の初顔合わせでした」
あぁ、皆王都だからそういうこともあるんだ。
「そこでレルカ様たちは……。
私たちに挨拶後、延々と父上たちに色々質問してましたわ。
質問というか……取り調べ?」
「は? え? 侯爵方に?
なに聞いてたの?」
「侯爵としての仕事っぷりとか苦労している所とか?」
は? いや、ちょっと待って、六~七歳だよな?
「私たちも当時は理解できずに困惑していたのですが……。
二人のご両親が色々と問い詰……質問したところ――」
本音出てるぞ、ジル嬢?
「――興味関心ある話が聞けそうになると……その、暴走されると」
「……カールラ姉様やロッティ姉様レベル?」
「……かなり近いかと。
ついでに言うと、ラシーさんとニミーさんも同類らしいです」
「混ぜるな危険」的な奴らってこと?!
それが混ざりに混ざって今の関係性?
「成程、サバラ殿たちが怯えるのも分かる気がします。
本気でビビってましたよ?」
「酷いなあ、怖がらなくてもいいのに……」
レルカ、なぜ怖がらないと思った?
僕も正直怖くて仕方ないんだが?
「まぁ、この件は侯爵方に任せました。
ちなみに、学園生に苦労したところを教える人と上位の人。
二人一組で用意してもらう予定です。
とりあえず春辺りに三年だけ対応してもらう予定。
反響によっては全学年としてもらいます」
「絶対すんごい反響あるって!
わざわざそんな手間かける必要ないって!」
レルカ、暴走すんな。
「気持ちは分かるが、成果を出してから全学年にやらせる。
それやって、ついでに騎士科共の実力底上げする。
そうしたら継続してやる価値あると判断できるんじゃない?」
「いや、そりゃ分かる。
ニフェールが言ってることを簡単に受け入れてもらえることも理解できる。
とはいえ、時間無駄だなぁと思ってさ」
分かるんだけどねぇ……。
納得してくれないと受け入れてもらえないからねぇ。
「その辺りはねぇ。
僕らの場合、受け入れてくれる侯爵方がありがたいってだけなんだけどねぇ。
他の人たちに言っても僕の提案なんて受け入れてもらえないだろうし」
「あぁ、そこはなぁ」
そこらは流石にレルカたちも分かってくれるようだ。
「とりあえずこの件は侯爵持ちにしたので、これ以上は祈るのみ。
で、二つ目。
……皆、お仕事する気無い?」
「はぁ?」
「悪いことしている家を潰すのに人手が足らなくてねぇ。
今作業の流れを考えているんだけど、信用できる味方が足りないんだ。
で、皆に協力してもらえないかと思ってね。
ちなみにラシー嬢にニミー嬢、お二人は除外します。
流石に一年の知識でどうにかなる話じゃないので……」
「あぁ、それは確かに無理ですわねぇ」
ニミー嬢は納得してくれたようだ。
……ラシー嬢、何か質問あるのかな?
「兄たちは何とかなりそうですの?」
「僕が対応できているからねぇ。
この面々ならどうにかなると思っている。
なお、事前に侯爵方に相談して、フェーリオは許可貰った。
ついでに、なんならシェルーニ様も付けるとか言われた。
後はお前のやる気次第だ」
「ふむ、面白そうだし経験積むのもアリかな……」
まぁ、そこは判断任せるよ。
「で、ジル嬢はチアゼム侯爵が絶対ダメと宣言してます」
ムッとするジル嬢。
まぁ、娘を持つ親の気持ちは分かってあげてよ。
「ただし参加したいのであれば、侯爵を説得してください。
それの結果によっては参加可能かも」
「ほぅ、説得次第ですか……」
「多分、侯爵は拒否するでしょうねぇ。
なので、あの人が敵わないような人物を味方にするとか?」
……イイ笑顔ですねぇ、僕の言ったこと理解できたようで。
「まぁ、只の独り言なんで、どうするのかはお任せします(にっこり)」
「ええ、少し呟きが聞こえただけですし、お気になさらず(ニッコリ)」
今から楽しみですよ、妻と娘から集中砲火を浴びる侯爵。
胃を痛めて半泣きになって「分かった、分かったからぁ!」と受け入れる侯爵。
あぁ、その惨状が目に見えるようだ。
「二人とも周り見てみろ?
お前ら見て怯えてるぞ?」
フェーリオ、それは多分見間違いだ。
僕たちは笑顔で話しているだけなんだから。
「レルカとクレイは自分で親に相談してくれ。
許可貰えたら参加させる。
それと、やることは帳簿や書類のチェックだな。
なので、戦闘は無いから安心してくれ。
護衛騎士も付ける予定。
僕レベルが付くわけじゃないけど、マーニ兄の部隊からお願いしようかな?」
……なに、ジル嬢、その呆れた視線は?
「いや何と言うか、至れり尽くせりですわねぇ……」
「そりゃ、本来学園生を使うなんてありえませんし。
無理に頼む以上安全の担保は必須でしょ?」
むしろ、お前らに手を借りなきゃいけない時点で終わってるんだけど?
それに加えて守れもしないって終わってるじゃん。
そこくらいは大人たちに頑張ってもらいましょうよ?
「まぁ、そうですわねぇ。
ちなみに、あの三人の件ですわね?」
「えぇ、その通りです。
詳細は後日。
まずは各自親御さんを納得させて?」
「えぇ、キッチリ説得してきますわ。
……ちなみにラーミルも参加ですの?」
当然でしょ?
人手足らないのに遊ばせるわけないじゃない。
「参加していただきますよ?
とはいえ、詳細はまだ整理付いていませんのでお答えできませんけどね。
大体は皆にお願いするのと同じことをやってもらう予定です」
「……もしかして、調査場所が多いのですか?」
「ええ、正確な調査個所が把握できておりません。
なので、最悪を考えて事前に声を掛けました。
もしかすると予想より少ない箇所で済むのかもしれません。
その場合は皆で集まって一気に終わらせればと思ってます」
スホルムでズブズブだった商会調査のパターンですね。
「……ちなみにサバラ殿やクーロ殿、ベル兄様は別の所で仕事して頂きますよ?
なので、一緒に仕事という可能性は低いと思ってください」
「「え゛~……」」
いや、だから仕事なんだぞ?
何期待してやがる二人とも!
「仕事であること思い出せ。
それができないのなら参加しないでいい」
「え?」
「正直お前らが参加しないのは僕としてはキツい。それは事実だ。
それに文官側に裏切り者がいるかもしれない。
お前ら並みに信用できる奴が欲しくてたまらない。
それでも、仕事に集中できないのならいらない」
殺気は放たなかったけど、二人を睨みつけて一言。
「敵側の邪魔者がこっそり入ってくるかもしれない。
それでも、王宮の文官使うから。
仕事であると認識できない奴は邪魔なだけだ」
こちらが本気であることを理解できたのだろう。
シュンとしながら謝罪をしてきた。
「すまない、はしゃぎ過ぎた」
「ごめん、仕事を二の次にしていた」
ったく……。
「……この仕事はお前たちに割り当てるのはまだ安全な仕事だ。
でも重要書類全部見られて大人しくしている相手ではない。
最悪、お前らを人質にしてでも逃亡しようとか考えるかもしれんぞ?」
なにヒクついてんだよ。
実際に発生してるんだぞ?
マイト・ダイナって奴がやらかしてるんだからな?
まぁ、人質が女装した僕で首へし折ったり股間えぐり取ったりしてるけど。
「浮っついた気持ちでいるんじゃない。
こっちだってお前らを死なせたくはないんだから」
「あぁ、気を付ける」
ほんと、勘弁してくれよ?
ラシー嬢やニミー嬢に恨まれるのは嫌だからな?
「とりあえず詳細なスケジュールは出せないが、来年二月上旬に本番の予定。
この後、お前らが参加できる前提で策を練り直すつもり。
とはいえ、建国祭までは大きな動きはないはず。
だから、親御さんから許可だけ貰っといて」
「分かった。
ちなみになんだが、そんな人員配置が必要なのか?」
「現時点で重要な場所がざっくり四ヶ所。
ここはある程度割り振りを検討している。
お前らに頼みたいのはこの四ヶ所から依頼を受けて動く奴ら。
大体は商人とかだな」
答えると……何か悩んでる?
不明な所でもあったか?
「なぁ、今の話だけなら騎士も文官も足りてるんじゃないのか?」
「そうだね。
ニフェール君の発言からすると、かなりの騎士や文官が敵のように感じるよ?
むしろ、王宮が乗っ取られかけているような感じを受けたけど」
……やっぱり頭いいんだよなぁ、こいつら。
暴走さえ、暴走さえしなければ……!
「大体合ってる。
現状、敵がどれくらいの勢力でどこまで浸透しているのかも不明。
だからこそ、信じられる人物を割り振りたいんだ。
そうじゃないと、情報捻じ曲げられた挙句逃げられたなんて起こりそうだし」
「……王宮って面倒臭えんだな。
まぁ、想定以上にろくでもないことは分かった」
「一応、敵は結構潰したつもりなんだけどね。
それでも湧いて出てくるから……」
その後昼食を終えクラスに戻り、放課後、図書館へ。
冬季試験の勉強を進め、夕食を食べようと食堂へ。
いつものことながら結構な飯を学園生たちに提供する学食には頭が下がる。
そこで働くおば……お姉様たちも恐ろしいほどに精密な動きで配膳する。
調理場で作られた料理をおば……お姉様たちがセットメニュー化して運ぶ。
下手な騎士たちの軍隊行動よりも整然としていて正直恐ろしくも感じる。
……あれ?
セットメニューの準備の仕方を見てみると……。
お盆の上に一つ皿を乗せる。
次のおば……お姉様にお盆を渡す。
お盆の上に一つ、別の皿を乗せる。
次のおば……お姉様にお盆を渡す。
最後に一通り集まった時点で学園生に渡す。
僕らを料理に見立てて……いや違うな。
僕らをお盆に見立てる?
起点……王都が最初の方、終点……二番手三人組の領地が学園生。
途中におば……お姉様たちが料理の皿を追加するのは……僕たちの食糧?
いや、馬の面倒とかもか?
お盆の移動速度は……食糧などを運ぶ荷馬車が無ければ結構な速度だせるな。
それが僕らが乗る馬車であっても十分速度を上げられるだろう。
つまり、途中の街に人員配置した上で王都出発する。
荷馬車は持たず、配置された人たちが事前に用意する。
僕らはほぼ手ぶらで移動して、飯は途中の街で配置した人が僕らに食わせる。
……騎士たちが「あ~ん♡」とかはしないからね?
これで、ある程度時間短縮して移動できるはず!
とはいえ、まだまだ検討足りないかもしれないな。
ちょっと皆に話して意見聞いてみるか。
……あれれ?
というか、商業と生産巻き込んでやりゃよくね?
騎士が全員味方という訳じゃないし、長たち説得すれば安全じゃね?
もしかして侯爵たち説得するのにこの件追加したら受け入れやすくならない?
色々思考があちらこちらに向かいつつもチアゼム家へ。
「あらニフェール様、どうなさいましたの?」
「ラーミルさんやカル達と相談しに来ました。
そちらは侯爵の説得ですか?」
「あ、いえ、その前段階ですわ」
……夫人の説得ですね。
「まぁ詳細は聞かないでおきます」
「そうしてくださいまし。
ちないにそちらの相談って?」
「味方を少しでも増やすための相談です。
僕の今までの伝手だけでは手が回らないので」
商業ギルドと生産ギルドを味方にしたいんだよね。
「……私が言うのもなんですが、無茶しないでくださいね?
ラーミルが悲しみますよ?」
「……肝に銘じます」
真顔でラーミルさんの名を使って心配されると何も言えなくなるんだよなぁ。
わざわざ行ってくるってことは、傍から見ても無茶し過ぎに見えるのか?
……学園の指導についての対応
……修道院対応
……犯罪組織対応
……北部対応
……冬季試験対応
うん、確かに働き過ぎだわ。
建国祭終わったら少し休むかなぁ……。




