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「どちらにしても、お前の提案はヘルベスにも話さないといかん。
ついでだ、サバラ達も呼んで話すか」
そう言うと、部下に文官メンバーを呼ぶ指示を出す。
そして胃を抑えながら怯えつつやってくる皆さん。
騎士たちが新しく仲間入りすること伝える。
すると騎士側三名が哀れみを感じる視線で見られていた。
いや、そこまで可哀想な視線を送らなくてもいいんじゃない?
その後、学園二年生の首席連中を使おうと考えていることを伝えると……。
「絶対ダメだ!
ジルを参加させるわけにはいかない!」
まぁ、気持ちはわかりますけどね、パ・パ♡
「まぁ、この案はこの場で思いついたものなのでまだ確認してません。
一応そういう話があったことだけ他の奴らと一緒に伝えると言うことで」
「……一応言っておくが、儂が反対していたことはちゃんと言えよ?」
「そこは伝えます。
ついでに、参加したければ侯爵説得しろとも言っておきますよ」
それであの子が大人しくなるかは任せましょう。
そこは僕の責任範疇じゃないので。
まぁ、何となくですが……チアゼム家最強人物を使うんじゃないのかな?
アニス様っていうんですけど。
「ジャーヴィン侯爵、フェーリオの参加は構わないですか?
当然当人にやる気があったらですけど?」
「それで構わん。
もし何ならシェルーニを引っ張り出してもいい。
いい経験になるだろうさ」
ふむ、確かにシェルーニ殿を参加させるのは想定してなかったなぁ。
一つ手が増えたことは喜んでおこう。
「んじゃ、その方向で学園生たちに相談。
それともう少し策を練ってきます。
何となくですが、少し足りない気がして……」
「……どの辺りだ?」
「一つは修道院制圧時に女性陣――セリナ様達ですね――を人質に取らないか?」
その場にいた面々が一斉に表情を引きつらせる。
「当然、副修道院長を叩きのめした後、すぐにマーニ兄達に突撃させます。
ですが、その際に第一の問題児たちがこっそり動かないかが心配です」
「……修道院の中は向こうの方が詳しいからなぁ」
「ええ、その通りです。
そして二つ目、商人をうまく利用できないか」
なんとなくだけどできそうな気がするんだよね。
「そりゃ、金と時間を掛ければ何とでもなるかもしれんが……。
そういう意味じゃないだろ?」
「ええ、もう少し別の方法です。
具体的に言うと商業ギルドと生産ギルド。
その二つに僕の正体を明かそうかと」
「おい、ちょっと待て!!」
この発言に最速で反応したのはマーニ兄。
他にも侯爵たちなど、数名反応している。
「確か乞食のギルドが情報屋やってるんじゃないのか?
ならそちらに任せた方がいいだろ!
下手に情報持たせる方がヤバいんじゃないのか?」
「そこはそうなんだけど……。
でも味方につけると、三家側が気づかぬうちに制圧準備進みそうなんだよね」
「はぁ?」
いや、そこまで変顔しなくてもいいんだよ?
「多分、ギルド側も国と喧嘩したくないと思う。
というか、この件ってギルドの主な人たちは一切関わってないんじゃない?
一部の商人たちが従っているだけだと思うんだけど?」
皆考え出すが……いや、今回から参加の騎士三名!
あんたら考えるフリだけだろ!
いきなりこんな話されて分かるとはこっちも思ってないから!
わざわざ演技する必要は一切ないからね!
「んで、こちらから情報を流してあげることにする。
『三家と関わっている商人は処罰対象だよ』ってね。
そうしたらギルド側もバレないように切り捨てようとするんじゃない?」
「やるだろうな。
商売に関わっているからこそ確実にやる!」
「僕もそう思う。
そして教えてあげる代わりに、あちらから切る商会の詳細情報をもらう。
互いに損無いやり取りだと思うけど?」
「まぁ、その一点においてはそうなんだが……」
気持ちは分かるよ、マーニ兄。
相手が知らないことはこちらにとって有利だと言うのはその通りなんだけどね。
「多分、マーニ兄は僕を心配してくれているんだと思う。
でも、既にそんな状況を超えてるんじゃないかって思ってる。
僕、目立ち過ぎているからねぇ」
「あぁ……まぁ、確かにな」
分かりやすく言うと暴動対応?
「少し調べれば、僕が最近のドタバタの中心に居続けてるのすぐ分かるし。
そう考えると、今のうちに正体晒して協力体制を整えた方がいいと思うんだ。
また北部のテュモラー家が何かしてくる前に王都の意思統一は必要だよね?
王宮側とギルドの間で危機共有できればいいなと思ってる」
おぉ、悩んでいるねぇマーニ兄。
「最低限、娼館ギルドは早いとこ教えたお陰で味方扱いしてもらってる。
乞食の爺さんも同じ。
強盗と詐欺師にはまだ教える気は無いよ?
でも商業と生産は教えて味方につけた方がいいんじゃないかな。
ついでに、生産には一つ貸しあるし」
「貸し? お前、何やらかした?」
やらかしたって何!
マーニ兄だって知ってる話でしょ!
「マーニ兄、酷い!
暴動の時に騎士側で対応できないから裏からカル達と動いたじゃない!
あの生産ギルド長は裏でも長だよ?
僕に助けられた人が僕に喧嘩売ってくるかな?」
「……無いな。
普通の感性があればそれはしないだろ」
だよね、僕もそう思う。
「それを考えると最低でも生産の長はこちらに着くと思う。
それに娼館・暗殺者・生産が味方になったら商業が反対するとは思えない。
僕経由で王宮の動向が少し見えやすくなることは利点だと思うしね。
そう考えると拒絶はしないと思うな。
それとこの件は今思いついただけだから、この後カル達とも相談するよ?
まぁ、今日じゃないけどね」
「……そうだな、まずカル達含めて検討してみろ。
あいつら目線でまずいことが無ければ、やってみるのもアリかもしれん。
それとばらす前に俺に報告しに来い」
「うん、分かった。
早くても明日の夜に相談して明後日報告かな。
連日相談というのも変な話だし、冬季試験の準備もしたいしね」
勉強の時間確保したいし。
「秋季試験よりかは楽なんじゃないのか?」
そりゃあねぇ、毎日寮を抜け出して書類調査なんてやるよか楽だよ?
「まぁ、あれは酷すぎたからね。
それよりかは楽だから何とか前回より点数上げたいんだけどねぇ……。
あ、そうだ。ちょうどいいんで質問です。
騎士、もしくは文官で学園に出張授業できそうな人っていない?」
「はぁ? なんじゃそりゃ?」
チアゼム侯爵、そこまで驚くもんなの?
かくかくしかじかと説明すると、なぜか皆が頭を抱える。
そんな、一斉に皆同じ動きしなくてもいいんですよ?
「……ニフェール、お前の提案はかなり意味がある。
正直、今すぐにでも誰かを送りたいくらいだ。
だが……今は無理だ」
「ええ、そこはタイミング的に無理でしょう。
今の三年は冬季試験に加えて就職試験対策に追われているでしょうから。
なので来年度春位に三年だけでもやってみることは可能ですか?
上手くいけば僕の卒業以降は全学年対象にするのもアリかもしれません」
「……誰を送るか、正直判断し辛いな。
お前から見て誰かいい奴はいるか?」
いや、僕の知っている人ってここにいるメンバー位だよ?
「実力だけなら騎士はマーニ兄かラクナ殿。
文官はサバラ殿かクーロ殿、ベル兄様。
でも、出来る人の話だけ聞いても意味無いのでは?」
「あ……」
多分そのレベルだと首席とか次席にしか響かないんじゃないかな?
「大事なのは、学園時の成績が中位から下位。
加えて、現状学ばなかったことにとてつもなく苦労された方。
現在進行形で苦労されている方もアリ。
そういう方に『俺のようになるな!』と言ってもらうのを期待してます。
まぁ、それとは別に先ほど言った上位者との会談も用意できればなお良し!」
さて、そんな都合の良い人物っておられますかね?
「また、面倒な条件だな……とはいえ、理解はできる。
同じミスをしないためにも学ぶべきことを教える。
そうすることで少しでも学園生が役立つ新人になってくれれば……」
そこなんですよねぇ、重要な点は。
成績下位で卒業しても騎士団としては邪魔者にしかならない。
学園でそこそことはいえ学んでおけば使える可能性はある。
文官も同じ。
マイトのような輩を減らすこと。
それができれば部下が使えないとかの苦労は減らせるはず。
まぁ、暴走するのは止められないけどね。
「とりあえず、検討はしてみよう。
学院長にこの話はしたか?」
「いえ、今日思いついた話ですので、内輪だけですね。
具体的に言うと、フェーリオ達だけです」
あれ、何で思考の海に入っているの?
チアゼム侯爵だけでなく、ジャーヴィン侯爵まで?
「なぁ、ニフェール?
もしかして、レルカやクレイが騒いでなかったか?」
「へ? えぇ、サバラ殿たちと接点あること言ったら少々暴走してましたね。
妹さんたちも似たような行動取ってましたからアレが普通なのかなと。
ちなみに妹さんたちはラーミルさんラブな状態でしたよ?
ご家族も同じ感じなのかと思ってたんですが……」
ラーミルさん寝取るつもりかと正直不安になる位には凄かったんだけど?
「普通じゃないからな?!
あいつら親御さんにも心配されてるんだよ……」
「え、ご両親はまともなの?!」
まともという言い方もおかしいかも知れないけど、そこは許してもらおう。
「どちらの家も親はそんな暴走しておらん。
だからこそ不安なのだよ」
あいつら……めっちゃ心配されてるぞ?
親に迷惑かけんなよ……そこ、「鏡見るか?」なんて言わない!
「一応確認なのですが、あいつら暴走しそうだから無しとか言っちゃいます?」
「それは無い。
だが、正直サバラ達に迷惑かけそうで不安しかない」
そこまでか……。
「一応当人たちには伝えておきます。
侯爵方が不安がっていたと言えば流石に気を付けるとは思うのですが……」
「そうだったらいいのだがなぁ、あぁ胃が痛い……」
これ、マジであいつら注意しとかんとヤバくないか?
というか……。
「ちなみに、妹さんたちがこの話を聞いたときの話です。
ラーミルさんに指導者になって欲しいと駄々こねられました。
最終奥義、ラーミルさんとの接触禁止まで出してやっと止められました」
「やっぱりな……そうだろうと思った。
悪い子たちじゃないんだが、好感度高い相手にはかなり付きまとうんだ」
……推し活?
「妹さんたちと同じ行動すると仮定してですが……。
レルカたちがサバラ殿たち見て噛み噛みな発言になる。
優しくしたら目がハートになる。
お姉さま……男性だからお兄様(?)呼びして完堕ちする。
この辺りでしょうか?」
「……それ、実際やったのか?」
そんな呆れた顔しないで欲しい。
「ええ。 マーニ兄、以前ホルターたちが暴走したの覚えてる?」
「あぁ、覚えてるぞ。あの日の事か……って、あれ?
確かお前は途中で俺に呼ばれて王宮に来たよな?」
「うん、呼ばれた時点で完堕ちまで見ているよ。
あれがそのまま男女変更して同じこと起こったら……。
サバラ殿、クーロ殿、……ガンバ♡」
イイ笑顔で応援すると、必死な表情で拒絶するサバラ殿。
クーロ殿も顔引き攣りまくってますね。
「無理、無理無理! 頑張れないから!
そっち方面は期待しないでよ!!」
「いや、流石に期待はしませんけど、適宜対応は必要じゃない?
ちなみに僕は騎士科だからサバラ殿が何かされそうなときに守れませんけどね」
「そこは全力で守って欲しいなぁ!!
未来は文官なんだろ?
こういう時は文官側で参加してくれよ!!」
そんな泣き声だされても……。
「まぁ、サバラ殿たちの貞操の危険性は不明ですが、検討頂けると嬉しいです。
学園長には何も言わないんでおきますんで、そっちから連絡願います」
「あぁ、それはこちらで動いておく。
……というか、ニフェール。
自分で仕事増やして無いか?」
「確かにそうなんだけど、騎士科の生贄強化に必要かなって思ったんだ。
今も僕の説明を信じてもらうために色々根回ししている所だし」
音読がそれだね。
うまくいけば算術の説明も考えようかな。
「は? 首席の説明ではダメなのか?」
「首席ではあるけど、学園生でもあるからねぇ。
同年の奴の説明は教師や騎士ほどでは無いとか思われてるんじゃないかな?
実技も正直不安に思いながらも僕から教わっている感じだし」
そうじゃなきゃ「不動の構え」なんて馬鹿なネタは不要なはずなんだよね。
「それを考えると、僕が言うより現在王宮の方々の発言の方が影響は大きいかと。
なので、提案した次第です」
……ねぇ、なんで皆さん呆れるの?
その後王宮を出て寮に戻る。
何と言うか……友人の隠された性格が分かってしまったって感じか?
とりあえず、明日あいつら交えて事態の説明をしておくか。




