42
その後授業受け放課後、王宮に行き、マーニ兄と合流。
ちょうどペスメー殿もおられたので少しお話をする。
「ペスメー殿、少し面倒事の説明をしたいと思うのですが……。
お時間と覚悟はよろしいでしょうか?」
「時間はいいけど覚悟もかよ!」
まぁ、暗殺者達の話もするからねぇ。
マーニ兄、笑い過ぎ!
「それと、ビーティ殿とメリッス殿にも同じこと説明したいのです。
ペスメー殿も含め、ヤバい話を聞く覚悟ができたらお話したいのですが?」
「ペスメー、スホルムに行くときに三回会議してたの覚えているか?
全体会議、トップ会議、ジーピン家会議。
このうち、ジーピン家会議に参加可能となる情報だ。
当然、信用も覚悟も無い奴を呼ぶ訳にはいかない」
マーニ兄、フォローありがと。
まぁ、相手にとってはフォローになってないかもしれないけど。
「……一応信用はされたと?」
あら? そんな自信ない?
「一応な。
それと、サバラ殿とベルハルト殿はこっち側になった。
あぁ、クーロ殿もだな。
今回、騎士側三名を引きずりこもうと言う訳だ」
「どんなヤバい話になるんだよ!」
「陛下たちも知っている内容をお前らにインプットする」
「そこまでヤバいんかい!!」
ペスメー殿、顔真っ青ですよ?
そこまでビビらんでも大丈夫ですって。
「……とりあえず、あいつら呼んでくる。
そこでお前らから改めてあの二人にも説明してくれ」
「構わんよ。
あいつらがどんな表情するか今から楽しみだぜ」
「マーニ兄、性格悪すぎ……」
「お前に言われたくないぞ、ニフェール?」
兄弟の和やかなお喋りを無視して二人を呼びに行くペスメー殿。
……ツッコミ無いのはちょっとサミシイ。
その後、ペスメー殿は二人を連れて戻ってきた。
……何と言うか、「死ぬなら一緒だ」とかそんな感じ?
知らない二人がとても可哀想になってきた。
「あの、どんな話をされるのでしょう?
ペスメー殿の説明では理解より先に恐怖が……」
「……どんな説明したんです?」
「ジーピン家レベルの情報を周知されるとか」
言いたいことは分かるんだけど、説明それで済ませたの?
いや、まぁいいけどさ。
「えっと、簡単に言うとジーピン家の持つ情報をこの三名に展開します。
これは、本当に一部の人しか関わらせておりません。
具体的に言うと、陛下、王妃様。
両侯爵に宰相、騎士団長と副団長。
騎士ではラクナ殿。
文官ではサバラ殿、クーロ殿、ベル兄様。
あ、最近王太子殿下が加わったかな?」
「ちょ、メンバー凄すぎませんか?!」
ビーティ殿、落ち着いて!
「凄いというか、結構重要事項なので下手に教えられないんですよ。
ですが、何時までも教えないというのも今後を考えると厳しい。
なので、スホルム遠征で接点のあった皆様にお教えしようかと考えました」
「……なんか、嫌な予感がするっす」
「僕的にはビーティ殿とメリッス殿にはあまりインパクトないかなと思ってます。
暴動からこっち、幾度か感づきそうな機会がありましたからね。
でもペスメー殿はその間領主代理だったから情報不足かな?」
お二人は詐欺師ギルドの制圧とか強盗ギルド壊滅の瞬間とか見てるでしょ?
それに「葡萄踏み」の時にティッキィと接点持ってるじゃない。
あれである程度気づくと思ったんだけどね。
「……なるほど、確かに違和感は感じていたんです。
ティッキィ殿が手を貸してたりしてましたしね。
ですが……」
「ですが?」
「まぁ『ジーピン家だし』で思考停止しちゃいましたね」
ビーティ殿?
正直なのが悪いとは言わないけどさ。
どう考えてもジーピン家をネタ要員的に見てない?
「……まぁ、その違和感が正しかったか話を聞いて判断してください。
では――」
そう言ってカル達が暗殺者であること等、一通り話した。
現状の王都の犯罪者ギルドの状況もうっすらと説明する。
皆さん表情が徐々に死んでいくのが目に見える。
現実を知るって厳しいものですもんね。
「――という感じですね。
何か質問ございましたらどうぞ?」
「質問も何も……何なんだよそれは!!」
あ、ペスメー殿キレてるし。
「何なのと言われても、人生には色々あるんですよ」
「そんな人生いらねえよ!
というか、よくこんな無茶苦茶なことやってられるなぁ」
「望んでこんなことしているわけでは無いんですけどねぇ」
偶然が重なっただけだしねぇ。
「んで、基本的に先に教えた面々以外にこの件教えないでくださいね?
ホルターにも教えちゃダメだよ?」
「それは分かる、流石にこんな危険な情報ベラベラ喋れんよ。
というか、教えてもどこまで信じてくれるのやらって感じだけどな」
あぁ、そこはねぇ。
ありえないようなことが起こると思考停止しちゃいますからね。
そんな会話をしていると、メリッス殿が目を血走らせて質問してきた。
「ニフェール殿!
ルーシーさんとナットちゃんって彼氏いるんすか?!」
「ルーシーにはカルが、ナットにはカリムがいますよ?
下手に手を出そうとしないでくださいね?」
「のおぉ~~~~!!」
なんだ、あれだけ一緒にいる奴らが付き合ってないとでも思ってたのか?
「メリッス、流石にあの二人に彼氏がいるの想像つくだろう?
確かスホルムから王都に戻る時ご褒美にニフェール殿に飯作ってもらったろ?
あの時どう見ても付き合っている風な対応してただろうに。
気づかなかったか?」
「見たっすよ! 感づいたっすよ!!
でも少し夢見てもいいじゃないっすか!!!」
「虚しい夢だな……」
ビーティ殿のツッコミに魂の叫びで返すメリッス殿。
夢見るのは勝手だけど、その時間を他の女性探すのに使った方が有用じゃない?
確実にあの二人は本命以外に視線逸らさないよ?
「とりあえず女性関連は置いておきます。
今後、マーニ兄と一緒に皆さんにも面倒な情報を展開します」
なんか「え~……」とか言いそうな反応ですね。
気持ちはわかりますけど。
「予定としては、建国祭前に強盗ギルドの壊滅を予定しております。
現在、情報収集を依頼しておりますので、それ次第で実行日が決まります」
早くも嫌そうな表情ですね。
「ジャーヴィン侯爵と話しまして、昼間だと王都の住人が怯えそうだと。
暴動を思い出すから夜にしてくれと言われております。
それ故、夜中に僕たちの方で襲撃しますので周囲を囲むのをお願いします。
詳細は後日連絡します」
「ニフェール殿、基本的には前回の暴動の時の様に死体運びです?」
「僕らが襲撃した際に逃げ出した奴らの捕縛と処刑もお願いします。
可能な限り逃がさないようにしたいとは思ってますけどね」
いつも死体運びだけだとつまらないでしょ?
少しは仕事している雰囲気出さないと。
「それと、この後ジャーヴィン侯爵にお伝えしておきますんで。
多分、次回以降マーニ兄が呼ばれそうな話は皆さんも参加になるかと思います。
まずは……強盗ギルド襲撃か修道院対応の話になるでしょうね」
……何、メリッス殿?
「暴動並の血塗れ話っすか?」だって?
聞かないでよ、分かってる癖に♪
「マーニ兄、今後厄介事発生時に第二部隊としてはこのメンバーに報告するから。
いない時などの情報展開お願いね」
「あぁ、そっちは任せろ。
そうだ、侯爵に説明する時こいつら必要か?」
「……一応最初だから顔見せしときますか。
いきなり参加させるより胃に優しいでしょうし」
マーニ兄、苦笑で返さないで!
僕的には【ストマッククラッシャー】の返上を求めたいんだから!
そのまま皆でジャーヴィン侯爵の執務室へ。
顔見せるとなぜか左手を胃の辺りに……。
ねぇ、来ただけでその対応って酷くない?
マーニ兄、笑うな!
「えっと、会話大丈夫そう?」
「気楽な会話ならな。
で、どうした?」
「マーニ兄と相談して、この三人にジーピン家の秘密を一部教えました。
基本今後はこの人たちも色々と会議に参加してもらいます」
「……一部?」
「カル達の話ですね」
流石に女装の件は言えない。
二人程僕にロックオンかけてきそうだからまだ言う訳にはいかない。
何となく侯爵も理解したのだろう。
納得してくれた。
「なら今後はこいつらをもう少し面倒な話し合いに参加させるぞ?
こちらも隊長レベル以外の要員が増えるのはありがたいしな。
修道院側でも有効利用するんだろ?」
「当然ですね。
とはいえ、この御三方が入ってもまだ足りないんですけどね。
それ以前にうちの方が足りてないのもあるんですが……」
「うち……あぁ、カル達の事か。
そんな足らんか?」
結構足りてないんですよねぇ。
「ルーシーを除いた面々を配置するにしても領地側への対応ができません。
王都だけなら何とかできそうなんですけどねぇ。
距離と時間が邪魔してくれてますよ」
「王都先行して領地後回しじゃ……重要書類燃やされる可能性があるか」
「ええ、なので可能な限り同時に攻略したいですね。
とはいえ、文官系の方を事前に移動して頂いてもいいんですけどねぇ。
カル達は王都にいないと対応しきれないんじゃないかと思ってます。
でも領地側でもカル達が欲しい」
どう考えても隠し扉とかそっち方面の知識は文官さん達には無いでしょ?
「それにうちの部下を王都で最低四ヵ所。
領地三ヶ所。
これをほぼ同時に調査なんて無理です。
文官側も、信用できる人物がそんなにいるのかという問題もありますけどね」
「領地三ヶ所は分かるんだが、王都四ヵ所とはどこだ?」
「領地三ヶ所と同じく王都にも住処があるでしょ?
そこの調査と修道院が最低限。
実際はそれに加えて使っている商人とかもチェック必要でしょ?」
「あ、そっちもあるのか。
確かに人が足らんなぁ……」
そうなんですよ!
とりあえず商人側は文官たちに頑張ってもらうことになるかな?
「これらをあまり時間を置かずにチェックしないといけません。
となるとどうやって人を割り当てるかとか悩ましいんですよ。
まぁ、領地側は王都からの連絡が届くまでの間に割り込めればいいんですけど」
そんな訳で策が決まってないんですよ。
「そうだな……。
多分、文官側はお前の知ってる三人位しか出せないだろう。
他に安全かつ実力ある人物がすぐに出て来るとは思えんし」
ですよねぇ、あの人たちレベルの信用と実力を持つ人いないし。
流石に侯爵に出てもらうのは無茶ですしねぇ。
「騎士もラクナとマーニが中心となるが、第一が怪しすぎるからなぁ。
メインは第二、それと状況によっては第五と第六を使おうと思っておる」
まぁ、現状ではその辺りがベストなんでしょうね。
どうにか要員が確保できるのならいいので……す……が?
あれ?
ちょっと待てよ?
まず修道院。
ここは僕が女装して王妃様と入って副修道院長叩き潰す。
外はマーニ兄とラクナ殿、部下は第二部隊。
ついでに文官要員として僕が対応するか?
次に貴族三家の屋敷。
ここはカル・カリム・ナット。
騎士は仮にペスメー殿、ビーティ殿、メリッス殿。
文官がサバラ殿、クーロ殿、ベル兄様。
そして協力していた王都商人。
これは商業ギルドで事前に三家と繋がりある商人を把握しておく。
対応する騎士は第五、第六あたりから出す。
文官は……王宮側には思いつかないけど、使えそうなのが数名。
……侯爵方ガチで怒りそうだけど、最低最悪の策が出来上がりそう。
「な、なぁ、ニフェール。
突然黙ってどうした?」
「……あぁ、すいません。
少し修道院用の策を考えてました。
かなり……侯爵方から叱られそうですが」
「……とりあえず言ってみろ」
「フェーリオ、ジル嬢、レルカ、クレイを使いたいです。
当然、こちらはラーミルさんとルーシーを出します」
唖然とするジャーヴィン侯爵。
まぁ、気持ちは分かるけどね。
「あいつらを文官の面々と一緒に動かしたい。
というか、戦闘能力は一切期待しませんよ?」
「そりゃそうだ。
むしろそれ言ったら本気で叱るがな」
でしょうねぇ。
「そのあたりは僕も同意見ですね。
で、頭使うのならあいつらは僕に匹敵します。
もしかすると僕よりヤバいかも……。
そんな奴らに今からでも少しづつ何やるのか理解させれば……。
多分、二月上旬までにあいつら【ストマッククラッシャー】の名を継げるかと」
「いや、あのあだ名はお前以外にいないと思うぞ?
あいつらがお前を超えるとは正直思えん。
頭では超えているかもしれんが、ぶっ飛びっぷりはお前に勝てんよ」
いや、そこは信じてあげてくださいよ!
というか、うち一名はあなたの息子でしょ?!
あいつなら、あいつならやらかしてくれる!
だって、女装の僕を欲しがってるくらいだもの!!




