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楽しい妄想の時間を終え、次の日。
ニヤニヤしているオーミュ先生を横目に授業を受ける。
多分、アパームのあんちゃんに話を聞きつつワインを楽しんだのだろう。
……その後ナニしたかは聞きませんけどね。
クラスの面々も最初の頃と比べ落ち着きを取り戻している。
授業への姿勢も少しづつではあるがまともな方向に変わっていっている。
居眠りしたりぼんやりする奴が目に見える位に減っている。
やっぱり、その教科や内容がどんな意味を持つか教えないとダメじゃね?
オーミュ先生の授業も以前指摘した時と比べて生徒たちの意識が変わってるし。
となると、こいつらの不得意な算術とか法律とかも何かきっかけが必要か……。
教師だとあまりインパクト無いしなぁ……騎士連れて来る?
でも、人によってはお話にならないしなぁ。
具体的に言うとビーティ殿にメリッス殿。
マーニ兄やペスメー殿辺りは大丈夫だけど、あの二人は連れてきても意味無い。
それにうちの学年だけを優遇するのも違う気がする。
学園全体に意味のあるイベントすればいいんだろうけど……。
多分文官科は騎士科と同様のイベントで意識は変わりそう。
領主科と淑女科は……難しいなぁ。
領主科はまだ実際に苦労している貴族に受け答えしてもらうってのもありかな。
でも、淑女科は……どうすべ?
ありそうなのは【才媛】呼べとか言い出しそうなんだよなぁ。
それやっちゃうと、ラシー&ニミーのように堕ちちゃうよなぁ……。
流石に全員が堕ちるとは思ってないけど、授業どころじゃなくなる。
とはいえ、未来の仕事を事前に理解するのは意識改革のためには大事。
……ちょっと学園長に、いや、ちょっと待て。
事前にレルカとクレイに聞いてみるか。
文官科の方では騎士科のようなことが起こってるのか確認してから提案しよう。
そんなこんなで授業を終え昼休み。
レルカたちを呼んで皆で昼食。
「で、突然の呼び出しってなんなんだ、ニフェール?」
「文官科で学園の授業と卒業後の実際の利用に結び付けられない奴っている?
いたとしてどのくらい?」
あ、レルカが呆れている。
文官科ではいないのかな?
「九割がたは出来てないぞ?
授業は試験合格するためのものでしかない奴らが大半だ。
騎士科は違うのか?」
「九割がたどころか騎士科二年で二人だけだった。
首席と次席以外はダメダメ。
なんで、個人的に学園長に提案しようかなって……」
「提案?
……まさか、ニフェール君は王宮の騎士を呼ぶつもりかい?」
「おっ、クレイ正解!」
流石文官科首席ども、よくわかってらっしゃる。
「ちなみに、騎士科だけじゃなく文官科でも同じことしたらいいんじゃね?」
「……確かにやる気はでるな。
とはいえ、誰が来るかにもよるけどさ。
ロクでもない人物が来て生徒が王宮就職を辞めるとか起こったら最悪だぞ?」
「あぁ、そのパターンもあるのか。
確かにそうだな……」
ベル兄様やサバラ殿が来るのなら意味ある。
でも、マイト・ダイナのような愚か者が来たら……最悪だな。
騎士側も同じ。
ラクナ殿やマーニ兄辺りなら安全だけど、元第八の面々が来たら……。
いかん、まともな未来が想像できん!
「確かにレルカの言う通りだな。
僕の周りがまともな人だったから、処刑レベルのクズが存在するの忘れてた。
うむ……ちょっと検討要だな」
「だな、多分学園長も言われて困るだろうよ。
というか、お前教師にでもなるのか?
普通その辺りは教師のやることだろ?」
そうなんだけどねぇ……。
「まず、実技系は教師がアレなもんで……」
「あぁ、最近だとニコライ先生か?
……あれってどうなった?」
「王宮の牢屋で兄弟そろってお楽しみ中じゃないかな?」
ちょっと兄貴の方のやらかしも説明する。
「……そんな奴が指導に来たら終わりだろ?」
「そんな奴がここで教師やってるからなぁ。
それと、さっきも言ったけど卒業後のイメージができてなさそう。
なんで分かるようにまともな経験者に話してもらいたかったんだ。
でも、王宮側もクズが結構いるからなぁ。
ある程度消してからにするか、まともな人物を僕の方で指名するか?」
「あぁ、そういやお前なら指名することもできそうだな。
でも、今後もずっとお前が見守る訳にはいかんだろ?」
そうなんだよねぇ。
実力を確実に担保できるようなシステムにしないと意味無いんだよなぁ。
「だねぇ。
それに筆記系の教師は王宮で騎士がどんな仕事しているか理解してなさそう。
多分分かっているのは夫が騎士のオーミュ先生。
それと御年的にスティーヴン先生とパァン先生あたり?
あぁ、ティアーニ先生も最近僕と関わるようになったから分かってるかも」
「あぁ……。
知識を与えることはできても、現場知らないから実戦に即した説明できない?」
「そんな感じ」
やっぱりこいつら理解早え……流石だわ。
「ん~、なら最低限今は止めた方が良くない?
三年は既に王宮への就職試験の準備中でしょ?
多分職場の現実を見せても手が回らないと思うよ?
ニフェール君の提案は僕らが三年になってからの春あたりにやってみたら?
まぁ、提案とか調整自体は開始してもいいと思うけどね。
それと、全学年指導にするか特定学年の指導に留めるかは検討必要かな?」
「あと、領主科や淑女科はどうすんだ?
呼べる人想像し辛いんだけど?」
クレイとレルカの指摘を喰らいまくる僕。
やっぱりそうなるか……。
「一応考えたんだけどねぇ……ラーミルさんは参加させたくないかなぁ」
「それはいけません!
絶対必要ではないですか!!」
「その通りですわ!
あの方を入れないなんてとんでもない!!」
そういう風に暴走すると思ったから外してたんだけどねぇ……。
「ラシー嬢にニミー嬢。
あなたたちのように暴走する方がそこかしこにおられるから外したんですが?
むしろ、暴走しない方っておられるのです?
授業が別の集まりに変わってしまいそうですけど?」
「「え~!!」」
帝国建国か偶像崇拝の為の場になりかねませんよ?
【女帝】とか【女教皇】という例があるんですから。
むしろ、この二人が高司祭となって【才媛】を祀る?
……やりかねんな。
「まぁ、先ほどの話は現時点では単なる思い付きだから。
実際、レルカとクレイにツッコまれまくる位に穴だらけなんで。
なので、このまま提案なんてできません。
だからラーミルさんに教わりたいとかいう欲望は捨てなさい!」
「「無理っ!!」」
間髪入れずに否定してくるか、この二人。
チラッとレルカたちを見ると、こっそり謝罪していた。
いや、そこらへん婚約者の方でどうにかできませんかねぇ?
(どうにかせいやぁ!!)
(無理無理無理ぃ!!)
拙いアイコンタクトでも理解してしまう、ギブアップ宣言。
ったく、最終手段取るしかねえじゃねえか!
「……お二人とも?
ラーミルさんと会わせるの拒否してよろしいです?」
「「えっ?!」」
「というか、勝手気ままに暴走されてもこちらもラーミルさんも困りますよ?
欲望に流されず自制しなさい?
それ出来ずして会わせてと言われてもねぇ……」
慌て始める二人。
まぁ、初めて先日会えたのにもう駄目なんて言われたらこうなるでしょうねぇ。
「そ、その、先ほどの指導参加。
無しとする代わりにまた会わせていただけませんか?」
「どうかお願いします!」
まぁ、そっちの方で落ち着いてもらえるならまだ許容範囲かな?
「とりあえずまた別の時に会うのは許可しますけど、暴走しないでくださいね?
それと、先ほどの話は只の思い付きです。
当然、ラーミルさんもご存じ無いのでいきなりベラベラ話さないでくださいね?
わかりましたか?」
「「はい!」」
とりあえず落ち着かせたけど、こうなると下手に動けないなぁ。
行動如何によってはこの二人がどれだけ暴走する事やら……。
ついでに、他にもいるんじゃないのか?
同じように【才媛】にあこがれを持っている子が。
とりあえず領主・淑女科には関わらず、騎士・文官科のみで考えようか。
「なぁ、ニフェール。
先ほどの話で領主科って誰を出すか考えてたか?」
どうした、フェーリオ?
何か気になることがあったのか?
でも、そのあたりは全く検討してなかったぞ?
「いや、思いついた時点では文官科と騎士科だけだったからねぇ。
それに……領主科で有名人って誰かいる?
まさか陛下にお出まし頂くとか無いでしょ?」
「当たり前だろ!
……とはいえ、誰かを選ぶのは難しいよなぁ。
お前だったら誰に依頼する?」
え゛、そんなこと言われてもなぁ。
手っ取り早いのは両侯爵だろうけど、領地の管理より王都住まいだからなぁ。
ピッタリの人物……思いつかないなぁ。
「わからん。
僕の知っている領主ってほとんどいないんだよね。
アゼル兄は指導できるとは思えない。
チアゼム侯爵は王都住まいだから領地をどうこうする経験はそうないだろう。
ジャーヴィン侯爵も領地はあっても他の人に任せているタイプ。
宰相も同じだね。
領地経営に重点を置いてて指導できるくらいの領主って知り合いにいないんだ」
「あ~、確かに対象とするには合わないなぁ」
「それに、領地ありと無しでは考え方が違うでしょ?
僕的には領地持ちの人たちの相談に乗れる人物がいればと思ったんだ。
でも、思いつく人がいない」
「だなぁ、となると騎士科と文官科に特化して考えるしかないんじゃね?
それなら領主・淑女科を外すのも納得できるだろ。
受け入れられるかはともかく」
最後が大事なんだけどな……でも、言う通りではある。
「だねぇ、その方向で行くしかないか」
話を終えようとすると、なぜかレルカとクレイから怪しげな視線が飛んでくる。
「な、なぁ、ニフェール。
文官科に呼ぶとしたら誰呼ぶつもりだ?」
レルカ、お前もお嬢さんたちと同じ行動取るのか?
そんなモジモジされても、その、困る……。
「僕が知っていて安心して頼める相手って三人ほどかな。
サバラ・ノイド殿、クーロ・グレル殿、ベルハルト・ノヴェール殿。
この位じゃね?
流石にチアゼム侯爵や宰相を呼ぶのは違うしね」
唖然とするレルカ。
クレイも一緒になって……目玉が飛び出そうだぞ?
「ちょ、その三名の名前が出て来るって……まさか知り合い?」
「まぁ、知り合いというか……。
ベルハルト殿――ベル兄様はラーミルさんのお兄さんだからねぇ。
未来の義理の兄だし当然知ってるよ?
サバラ殿とクーロ殿はちょっと前に遠征していた件で知り合いになった。
というか、今も仕事一緒にしている」
説明すると「うわぁ、うわぁ……」とうわ言の様にブツブツ言い出すレルカ。
大丈夫か、こいつ?
チラッとクレイの方を見ると、何か真面目な顔してこちらを見て……あれ?
ちょっと待て! 近づいて何するつもりだ!
ガ シ ッ !
「ニフェール君、僕たちも知り合いになりたいなぁ……。
顔合わせさせて?」
「お前らも妹たちと同じかよ!
ちったぁ落ち着けや!!」
唖然とするフェーリオ、腹抱えて笑うジル嬢。
いや、二人ともちゃんと側近たち制御してよ!
とりあえずいきなり言われても接点は仕事なんだから無理と説明。
ブーブー言いたそうだが仕事は邪魔できないと言うのは理解できているようだ。
「ニフェール、ラーミルと同じ感じで会わせるってできないか?」
「ちょっと無理だね。
今サバラ殿とクーロ殿は僕が関わっている仕事に対応中。
正直余裕はないと思う
ついでに、ベル兄様は今婚約者との仲を深めている真っ最中だよ?
邪魔しちゃダメじゃん!」
「あ……」
フェーリオ、忘れたのか? 複数人デートにまで参加した癖に?
ティアーニ先生にブツブツ言われるよ?
結果的に皆納得してくれた。
だが、騎士科でやるなら文官科も含めろとレルカたちに念押しされた。
忘れたらこいつらに延々と愚痴られそうだな……。




