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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
361/420

40

 王宮に到着し、ジャーヴィン侯爵の執務室へ。



「どうした? 急ぎの話か?」


「緊急ではありませんが……強盗ギルドについてです。

 新しい情報が入りましたのでご報告に」


「……あぁ、あの件か。

 で、どんな感じだ?」



 パン爺さんからもらった情報を淡々と説明していく。



「ニフェール、その襲撃はいつやるかは決まってないんだな?」


「えぇ、僕らも都合のいいタイミングを考えないといけませんしね」



 そう答えると、侯爵は少し悩んで提案してきた。



「夜中の襲撃じゃダメか?

 昼間帯だと王都の住人が怯えてしまいそうだ」


「……暴動の日を思い出しちゃいますかね?」


「可能性が高いと思うぞ?

 新しいギルドが何処にあるか知らんが、住人が思い出して混乱されてもなぁ」



 あ~、そういう視点では考えてなかったなぁ。

 でも確かに一般市民からしたら恐怖の記憶を呼び覚ましそうか。



「例えば夜の九時に強盗ギルド内の話し合いを持ちたいとか伝える。

 全員集合するのを他で見守って、大体集まったところでお前らがギルド襲撃。

 マーニの部隊はギルドから少し離れた辺りで待機。

 襲撃終わったらマーニに連絡して死体の片づけって感じでどうだ?」


「いい感じですね……これで向こうに提案してみます。

 あ、日付決まったら衛兵たちに連絡お願いできますか?

 犯罪者の制圧するから対象の辺り近寄らないようにとかそんな感じで」


「分かった、そっちはやっておこう。

 それと日付が決まったら改めて連絡よこせ。

 この後マーニと会うんだろ?」


「ええ、同じ話しておきます。

 では、失礼します」



 そのままマーニ兄の執務室に向かうと、四人ほど……四人?

 ペスメー殿、ビーティ殿、メリッス殿……アパームのあんちゃん?


 なんで第五の副隊長が?



「お、ニフェール、どうしたんだ?」


「情報の共有に来たんだけど、打ち合わせ中なら少し後で来るよ?」


「いや、大丈夫だ。

 少しお喋りしていただけだからな。

 というか、お前のことを話してたんだが……ここで話す気は無いか?」



 いや、そういう質問の仕方って無くね?



「何の話か分からないから答えようが無いんだけど?

 説明してよ!」



 軽く話を聞くと、オーミュ先生から情報が届いたようだ。

 そう、「不動の構え」の話。



「いやぁ、オーミュから突っつかれてなぁ……。

 余程生徒たちの恥ずかしい情報を持っていそうだから聞いてこいと。

 ちなみに、ご褒美はいつもより高価なワインと言われててな……」



 あら、アパームのあんちゃんワイン好きなんだ?

 まぁ、教えても構わないけど、一応確認しとくかな。



「その件だと……ペスメー殿、ホルターの馬鹿話が入っちゃうけど聞きたい?」


「是非聞きたいもんだ!

 あいつがちゃんと授業受けているのか正直不安でなぁ……」


「え、あいつ元からそんな不安がられるような感じだったんです?」


「いや、実技も筆記も程々でしかないからなぁ。

 どこまでやる気あるのやら……」



 あぁ、お兄ちゃんとしての不安って感じですね。



「まぁ、とりあえず話をしましょうか。

 と言っても最近の学園を知らないとついてけないでしょうし。

 んじゃ、あれからかな……」



 そう言って、セリナ様をお送りした辺りからの学園の情報を説明する。

 

 クラスを一つにしたことにニコライ元先生のやらかし。

 実技の指導を授業と並行して行っていること。

 筆記の点数アップのための提案。

 そして……「不動の構え」。

 一通り話した。



「……マジか。

 いや、確かに学園教師の実力は正直怪しすぎたが、そこまでなのか……」


「まぁ、暴動に関わった元教師もいますしね」


「は? ……あぁ、二人程元教師がいたんだったか。

 何と言うか、実技教師ってもっとまともな人物を割り振らないと……。

 マズいんじゃねぇの?」



 ペスメー殿の発言通りなんですけどねぇ。

 そこらをどうやって雇っているのやらって感じなんですけどね。



「実際、次席のスロムも学ぶ価値があるのか疑問視し始めてたようですし。

 僕が少し教えると言ったらこっちにも教えろと隣のクラスから突撃してました。

 そのあたりどうにかするのを考えたらクラス一つにした方が早かったんです。

 元々、アゼル兄の結婚式で貴族派騎士壊滅させましたし」


「あぁ、親や兄貴がやらかして騎士や貴族としていられなくなったってことか」



 えぇ、その通りです。

 まだまだ増えますけどね。

 最近の三つの裁判で消える人もいるでしょうし。

 それに、サバラ殿達が調査の邪魔してきた奴らを順番に潰してますし。



「なぁニフェール、『不動の構え』なんてよく思い付いたな。

 正直そんなのでやる気出す奴らも驚きだが……」


「それは僕も驚いたよ、マーニ兄。

 今後の指導も技っぽい説明をしてやらないとダメなのかもしれない。

 それとも今度は騙されないとか言い出すかもしれないけどね」


「あぁ、そりゃ言い出すだろうなぁ。

 でもそのネタ振ってやらないと進まなかったんだろ?

 なら仕方ねえよ、武器を落とさないなんて程度で何ヶ月も待ってられん」



 だよねぇ。

 あんまり時間かかり過ぎて卒業直前でクリアなんて言われてもねぇ。



「まぁ、そんな感じでしたよ。

 あ、アパームのあんちゃん。

 オーミュ先生とこのネタで笑いながら酒飲むのは構わない。

 けど、学園では答えを知ったこと言わないように伝えといてもらえるかな?」


「は? まぁその位は伝えるが、なぜだ?」


「先生には授業ちゃんと聞いてない奴がいたら、僕にこの話聞いてって伝えてる。

 クラスの奴らは恥ずかしがって黙ってろって言っている。

 そこで『授業ちゃんと受けないのなら僕にこの件を質問する』って提案した」


「はぁ?」


「つまり、このネタ使って授業聞くよう促せばいいんじゃねって感じ?

 オーミュ先生が知らないふりしていれば誰も気づかないしね」



 ……そこの騎士共、何その「こいつヤベェ」って顔は?

 授業を円滑に進めるための提案ってだけだよ?

 そんな怯えなくても……。



「いや、普通に怖えよ、ニフェール!」


「ニフェール殿、教師より教師っぽいっすよ!

 普通学園生がそんなとこまで気にしないっすよ!!」



 マーニ兄だけでなく、メリッス殿まで……。



 その後も少しお喋りした後、マーニ兄以外は退室していった。

 他はともかくペスメー殿は気を使ってくれたのだろう。



「……で、情報の共有って?」


「強盗ギルドを再度襲撃掛ける件。

 と言ってもまだ途中経過なんだけどね」



 そう言ってジャーヴィン侯爵に伝えた内容と同じ話を伝える。

 ついでに侯爵が提案してきた内容も一緒に。



「確かに、昼間に堂々と暴れられたら暴動を思い出すか……。

 面倒だがこっそり対応した方がよさそうだな。

 すまんが、その方向で予定を組んでくれ。

 こちらは騎士団内部でうちのスケジュールを空けておく。

 最低でも遠征は無いようにしておくから」


「それで十分だよ。

 後は、どうやって潰すかなぁ……。

 何も考えずに襲撃してもいいんだけどねぇ。

 カル達に外部へ逃走する奴らを投げナイフで処分してもらうとか?

 内部は僕の方でお掃除しとけば済みそうな気がするんだけどなぁ……」


「多分それで十分な気がするけどな。

 というか、カル達の人数考えればそれ以上無理だろ?」


「だよねぇ……。

 ついでに、来年二月の件もどうやって割り振るか頭抱えているよ」


「あぁ、修道院対応とあの三家をどうするかか。

 確かに人手がなぁ……」



 そうなんだよねぇ。

 まともな戦力が見つかればまだ何とかなりそうなんだけど。

 第一、第四、第七が問題あり過ぎだしなぁ……。


 第三は第三で欲望駄々洩れだし。

 やっぱり第二、第五、第六で対応するしかないか?

 とはいえ、王都の守りをどうするか……。

 王都の守りは第三とか?



「……フェール、ニフェール!」


「あ、ごめん、何?」


「色々考えていたのは想像つくけど、一人で背負っても仕方ないぞ?」


「あ~、そうなんだけどねぇ。

 カル達も人数ギリギリ、信用できる騎士もギリギリで……。

 なんか、どこかに戦力落ちてないかなぁ?」


「野良戦力はいけません!

 ちゃんと飼えないなら家に連れてきちゃダメですよ!!」



 母上の真似にしては下手だよね、マーニ兄。

 母上なら「ダメですよ」じゃなくて「ダメだ」でしょ?



「野良犬じゃないんだから……。

 まぁ、只の寝言だから。

 とりあえず報告はこれで終わりなんで今日は帰るね」


「……ニフェール」



 珍しくマーニ兄が真面目な声を出してきた。



「どしたの?」


「カル達を知る人物を少し増やす気は無いか?」


「……誰を想定しているの?」


「うちのペスメー、ビーティ、メリッスかな。

 アパーム殿もアリかもしれんが。

 今、お前が動かそうとしてもカル達と組ませ辛いんじゃないのか?

 何時までも暗殺者であることを隠しきれないぞ?

 最低限関わりそうな面々には伝えといた方がいいんじゃないか?

 まぁ、カル達にも相談してみな?」



 確かに、その通りなんだけどねぇ。

 暗殺者であることをどこまで言えるか、悩ましい……。



「とりあえず僕だけの問題じゃないからちょっと時間頂戴。

 個人的にはその四人に教えるのはアリかなと思う」



 ホッとするマーニ兄。

 多分、黙っているのが辛かったのかもしれないな。

 部下に知っている人がいるとやり取りしやすいしね。



 その後、マーニ兄と別れ寮に戻る。

 夕食を食べながら伝えるかどうか考える。


 ビーティ殿、メリッス殿は今更と思われるかもしれないな。

 何となく感づいているだろう。

 今更教えても変わらないかもしれない。


 ペスメー殿は……あの人も問題は無いか。

 ホルターに教えないでとだけ伝える必要があるけどな。

 そこさえ気をつければアリだな。


 アパームのあんちゃんは……大丈夫だと思うけどあまり接点が無いんだよなぁ。

 オーミュ先生の関係上、信用してもいいと思うけどちょっと保留だなぁ。

 カル達もほぼ知らない人だろうし。



 ん~、この後相談しに行くか。




 夕食後、チアゼム家に向かいカル達と相談。



「ん~、言いたいことは分かった。

 俺たちとしてはニフェール様の方で信用した相手なら可能な限り受け入れる」



 お、そこまで信じてもらえるとはありがたいねぇ。



「とはいえ、安全を考えるとビーティ殿とメリッス殿だなぁ。

 ペスメー殿はその次位か?

 アパーム殿はほぼ接点無いからなぁ……。

 暴動の時に会ったのと、アゼル様が処刑時に睨まれたくらい?

 後は裁判で少し顔見たくらいだしなぁ」


「確かに、接点となるとそうなるねぇ。

 とはいえ、今後もマーニ兄と連携する以上はペスメー殿は外せそうにないなぁ。

 副隊長だもの、どうやっても影響デカすぎる。

 やっぱりホルターに伝えないことを約束した上で話す位か……」


「……ホルター様ってまだバラすには無理か?」



 流石に無理だろ?

 あいつをこっち側に引き込むにはまだまだあいつ自身の実力が足らなすぎるよ。

 下手に心の弱い奴にこの情報持たせたら犯罪者側に惹かれる可能性がある。



「ちょっと無理かな。

 基本的に学園生にこの辺りの情報関わらせるのは難しいと思うんだよなぁ。

 フェーリオやジル嬢位に信を置ける人じゃないと無理だろ。

 確かに現状二人を除けば一番僕に接点ありそうだけどさ……」


「そっか……確かにホルター様もセリナ様あっての接点だからなぁ。

 ならさっきの三名でいいんじゃね?」


「だな、それで行くか。

 んじゃ、ついでに強盗ギルドの襲撃後の死体片付け、三人に任せちまうか?」


「……悪魔か、あんた」



 酷いな、こんな優しいワンコに向かって。



「ま、とりあえずマーニ兄と話してみるよ。

 後、今の強盗ギルドの情報はまだだよね?」


「流石に昨日の今日で情報は来てねぇな」



 だよね。

 なら連絡待ちということで。



「んじゃ、連絡来たら夜に呼んで?

 それ以外は冬季試験の勉強に当てようと思うから」


「試験って建国祭より前だよな?

 ……大丈夫なのか?」


「秋季試験よりかは気楽だよ?

 だって、相手が分からないとか無いもん。

 倒す相手は大体分かってるし、味方もいっぱい。

 スホルム対応に比べれば天国だよ」


「血生臭ぇ天国だなぁ、おい?」


「何言ってるんだい?

 君もその住人の癖に」



 主従のたわいもない会話を終わらせ学園に戻る。


 少し寝るまで時間があるので、冬季試験の勉強を進めようとする。

 今日は外国語……いや、勉強自体はちゃんとやってるけどねぇ。


 普段使わないから覚えられなくって……。

 必要な単語を覚えるのがキッツイし、王国の言葉と文の組み立て方が異なる。


 ……多分、学園卒業して一年後にこの言葉覚えている人ってどの位いるんだ?

 完全に対外国部門用の知識なんだろうなぁ。

 あぁ、それと他国の情報を纏めるようなところでも使うか?


 この辺は正直関わりたく無いなぁ……出張や出向三昧になりそう。

 あぁ、でも結婚した後に一緒に旅行とかもありか?


 なんだかんだと妄想フル稼働後、就寝。

 ちなみに星の降る夜、海辺でサカリ場を開くという妄想でした。

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― 新着の感想 ―
外国語が堪能になれば、外国に行って現地つm……諜報機関を構築できるようになるかもよ。 ハニートラップ仕掛けてくる相手を逆に分からせて2重スパイにしたり、相手の王宮の女官をメロメロにして王宮内の噂話を集…
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