第93話〜機能的玩具への換装、そして絶望への公示〜
日曜の午後は、さらなる肉体への侵食から始まった。耐熱テストの熱傷を背中に刻んだまま、私の四つん這いの姿勢は固定器具によってより厳格に『机』へと最適化されていた。そこへ、大和様の担任である光也様が、獲物を検分するような冷淡な足取りで入室してきた。
「大和の指導のついでに、私も『学年1位』の調整を見学させてもらおう。……おや、1番。随分といい色に焼けているじゃないか」
光也様の視線が、熱で赤黒く変色した私の背中の皮膚を訓練着の上から、ねっとりと撫でる。由羅様、凜人お兄様、愛理様、そして光也様。龍雅院の『教育者』たちが放つドSの重圧に、私の肺は呼吸することすら躊躇われた。
「さて、次は1番に『仕事』をしてもらおうか。……真冬、マイクを」
由羅様の命により、私の顎下には高感度マイクが固定された。背中のPC画面には、寮の各所で這いずり回る生徒たちの清掃公務の様子が、執拗なまでの接写で映し出されている。
「1番、美化委員の動きが鈍い班を指摘し、級長として叱責しろ。……ただし、愛理が君の『感度』を調整している間も、声一つ乱してはならないよ」
愛理様の細い指先が、私に装着された電極の出力を静かに上げた。
「あ、が……っ!?」
脊髄を稲妻が走り、脳漿が沸騰するような快楽と激痛の混濁。だが、マイクが私の『醜い声』を拾おうと待ち構えている。
「1組……っ、5班、113番! 腰が高いわよ、もっと低くなりなさい……っ! 115番、そこ、汚れが残っているわ……! 級長の監視の目は、逃げられないと思いなさい……っ」
私は全裸で、薬物と電流に肉体構造の隅々まで弄ばれながら、スピーカー越しに厳格な『級長』を演じさせられた。画面の向こうで113番がビクッと震え、さらに床に額を擦り付ける。自分が最も無惨な『家具』に成り果てているのに、仲間を叱らなければならない。その精神的凌辱に、私の尊厳は砂のように崩れていった。
「はい、放送終了。……じゃあ、夕方の儀式に向けて、本格的にメンテナンスを始めるわね」
愛理様が私の脚を左右に限界まで開かせると、真冬様がそれを診察用の冷たい固定器具でロックした。私の身体は、度重なる躾で信じられないほどに『開発』されている。光也様が大和様を隣に呼び寄せ、私のもっとも見られたくない場所を指し示した。
「大和、見なさい。これが極限まで『検品』を繰り返された商品の色だ。この変色は、主人の規律が細胞レベルまで染み付いた証だ」
「勉強になります、光也先生」
大和様の無感情な観察。愛理様は私の太ももの内側、最も柔らかい部位に鋭い注射針を突き立てた。
「これは筋肉の不随意運動を誘発する薬剤よ。これを打てば、明日の朝、あなたの意思とは無関係に、骨盤が左右に揺れ、太ももが美しく擦れ合う『展示歩行』が完成するわ。あなたはただの、歩く展示品になるのよ」
薬液が注入されるたびに、私の筋肉は意志に反してピクリと跳ね、肉体構造そのものが『自動歩行人形』へと換装されていった。
夕刻。寮清掃を終え、心身ともに疲弊した全生徒が中庭に集められた。
バルコニーに現れたのは、お兄ちゃんたち、そして――真冬様に最短のリードで引かれた、私だった。
「皆、清掃公務ご苦労様。……今日のMVPは、一日中俺たちの『テーブル』として完璧な奉仕を見せた、この1番だ」
お兄ちゃんの声が静寂の中に響き、商品たちが一斉に顔を上げた。
そこには、夕日に照らされながら、『醜いけれど、家畜らしい姿』の私が晒されていた。
「1番を見なさい。彼女は自分も厳しく躾られながらも、君たちの醜い清掃風景を支え、指導し続けた。……君たちも、彼女のように『役に立つ道具』になれるよう、今夜も精進するように」
真冬様が私のリードをグイと引いた。私は、全生徒の見守る中、ガクガクと震える膝をつき、犬のように「わん」と鳴いて、主君たちの足元に跪いた。
級長ですら、ただの『焼かれたテーブル』でしかない。その圧倒的な絶望が、生徒たちの間に伝染していく。
(ああ……。これで、明日……私はこの壊された体で、皆の視線を浴びて歩くんだ……)
愛理様の薬のせいで、私の腰は今も、主人の愛を乞うように小さく揺れ続けていた。




