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支配された帝国【番外編】、淑女養成学院  作者: 鎖乃れいな
第3章〜学院の生徒として〜

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第91話〜清掃の監督という名の羞恥散歩〜

 由羅様の宣告が終わると、また拾いたくない音を拾った。真冬様の足音だ。彼の足音がするということは、私の引率はお兄様ではなく、真冬様だろう。執事・女中養成学校の教師である彼が、私以外を引率するはずがない。


 予想通り、目の前に現れたのは、燕尾服を完璧に着こなし、銀縁の眼鏡を光らせ、無機質な微笑を浮かべた真冬様だった。

「1番。本日の清掃点検の引率は、わたくしが務めます。由羅様のお言葉通り、ですね」

彼の手には一本の白銀の『杖』が握られていた。私の淡い期待は氷のような視線に射抜かれ、粉々に砕け散る。お兄様は真冬様を使って、私を『妹』ではなく、徹底的に『管理されるべき家畜』として扱うつもりなのだ。


 「大和、あなたは頑張ってはいるけれど、『商品』に甘いところがあると報告を受けています。あなたは卒業後、龍雅院家の執事見習いとなる身。それでは困ります。今日はわたくしのもとで学びなさい」

「ご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします、真冬先生」

真冬様は満足げに頷くと、優雅な所作で私の首輪にリードを繋いだ。

「さあ行きますよ。1番、第二服従姿勢」

「かしこまりました」


 「1番、今日の昼食とお薬です。今日はわたくしが飲ませて差し上げましょう。龍雅院家の筆頭執事たるもの、『極上商品の管理』は朝飯前にございますからね。口を開けなさい」

 『清掃点検場所』につくと真冬様は、未だに主人の手を煩わせている『商品』への見せしめか、私をさらに辱めるためか、口移しでサプリと薬、そして水を流し込んできた。


 「準備完了ですね。よくお聞きなさい、1番。級長としての『威厳』とは服で作るものではありません。どんな無惨な格好でも主人の規律を体現すること……それが理事長の求める『級長』なのです。れいなお嬢様、ケツをもっと上げなさい。歩く時は犬のように『しっぽ』を振るのです。裸体であっても気高く、中身が今朝の授業で壊されていようともね」

「お嬢様を最高の状態で展示エスコートすることなど朝飯前。さあ、廊下で家畜たちが貴方の『指導』を待っていますよ」

「かしこまりました」

 ビシッと真冬様が杖を振り下ろした。


「っ……?」

「『犬』が『言葉』を喋るのですか? わたくし、そんな犬は存じ上げませんが。行きますよ、1番」

「わん」

「それで良いのです。いい子ですよ、1番」

真冬様はかつてのお兄様のような優しい手つきで、私の頭を撫でた。


 『清掃の監督』という名の『散歩』をされていると、角の向こうから5組の級長が海斗様の竹刀に追われ、四つん這いで進んでくるのが見えた。その隣では、さっきゴミのように連れ出された3組の級長が、掃除中の商品を監視する由羅様の『椅子』に成り果てていた。掃除の手を止めた『商品』たちが壁際に並んで頭を垂れる中、全裸の級長たちが無言ですれ違う。


 「1番。真冬先生に『メンテナンス』していただいている最中か?」

由羅様が級長の背中に座ったまま優雅に微笑んだ。

「はい。由羅様。監督お疲れ様です」

「ああ、疲れている。だがこの『欠陥品』は椅子としても使えない。真冬先生、少し1番を借りてもよろしいでしょうか?」

「構いません。存分にお使いください」

(困ります……そこは断ってください、真冬様!)

「1番、この『椅子』にお手本を見せてやれ」

「わん」


 私は犬だ。一鳴きすると由羅様の足元へ向かい、座りやすいよう背中を平らにした。そこへ由羅様が腰掛ける。

「随分と犬らしくなったな。そのしっぽもよく似合っているぞ……ご褒美だ」

 ビリッ!

最大出力の電流がおしりに走った。

「わん!」

舌を出して荒く息をし、背中を動かさないよう気をつけながらお尻を振り、しっぽを揺らす。

「そうか、嬉しいか。14番、これがお前と同じ『Hランク班長』でありながら学年1位の『極上商品』だ。雲泥の差だな。1番、さらにおかわりだ」

 ビリ、ビリッ!


 二発の衝撃。私は懸命にお尻を振った。

「いい子だ。真冬先生、お借りしました。1番、戻れ」

「わん」

「はい。責任を持ってお預かりします」

その後、掃除の監督という名の散歩は、夕食の時間まで続いた。



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