第86話〜自動身体測定機ジェミニ君の再来〜
今日最後の授業は調教学だ。実技棟にある、指定された教室に向かう途中、私の耳は『ここにあるはずの音』を拾わず『ここにあるはずのない音』を拾った。『凜人様の衣擦れの音』だ。
(凜人様?なんで凜人様が指定された教室にいるの?それに大和様に関する音が何もしない。)
不思議に思いながら教室に入ると、やはりそこには大和様の姿はなく、代わりに、凜人様の姿があった。
「1番、お前のパートナーの大和は2時間目終了後、早退した。手が空いている教師がいないため、俺が代わりにお前を『躾』てやる。いいな」
「かしこまりました。よろしくお願いいたします」
「リードを付けてやる。貸しなさい」
前と違って、優しさの欠片もない声がやけに私の耳に響いた。私は、昨日出来上がったばかりのトートバックからリードを取り出し、凜人様に渡した。
「いくぞ。第二服従姿勢」
「かしこまりました」
所定の位置に連れていかれ、凜人様の足下でまるで犬の様に『お座り』していると、9時間目始業の鐘と共に由羅様の怒りがこもった声が響き渡った。
「お前たちは余程俺を怒らせたいようだな。『主人』である『教師』が出した宿題は『命令』と同義だ。にも関わらず、宿題を忘れ、言い訳までした『欠陥品』が4人もいたそうじゃないか。アラン先生から報告を受けた俺がどれだけ恥ずかしかったかわかるか?お仕置きだ。6班は教卓のまえで、他の『物』は、宣告の蹲踞」
「かしこまりました」
私たちが急いで、宣告の蹲踞の姿勢をとると、由羅様は6班のメンバーの、おしりに電気パドルを振り落とされた。
「...っ」
「ウギ」
痛そうな悲鳴が教室に響いた。
「お前たちは躾てもらっておいて、お礼も言えないのか。追加の罰だ。絶望の規律沈下20セット、その後、授業終了まで忠誠の海老反りで待機。執事見習いの諸君は監督していろ」
「かしこまりました」
「承知しました」
「では、授業を始めるぞ。今日の外国語の授業で自己紹介カードを作ったらしいな。執事見習いの諸君はそのカードに書かれた内容が正しいか『じっくり検品』してやれ。「商品 」は検品中イクことはおろか、感じることすら許さない。いいな。各自始めろ」
「かしこまりました」
「1番、カードを持っていたら見せなさい」
「かしこまりました」
私は、トートバックから『自己紹介カード』を取り出し、凜人様に恭しく差し出す。凜人様はそれを満足気に受け取り、目を通すと、ゾッとするぐらい冷たい声を出した。
「なんだ?これは。春の身体測定の時のサイズを並べただけだな。それに、足りない情報も多いな。お前の身体は日々、家畜らしく成長している。検品し直してやろう。それに座れ」
「かしこまりました。検品よろしくお願いいたします」
「いい心がけだ。ご褒美として、今日の夕食は俺の部屋に招待してやろう」
「ありがとうございます……」
(地獄の晩餐会が決まってしまった。また私は、凜人様の椅子やフットレストにされ、食事も与えられないのだろうな……)
「さあ、始めるぞ」
凜人様が、リモコンを操作すると、ジェミニ君がブーンと音を立て、起動した。
「1番。身体測定開始。まず身長152cm。春から変わらない。歳のせいか成長止まってる。」
(相変わらず失礼な椅子だ。私まだ19歳だからね)
「次。バスト88cm!アンダーバスト63cm。春からツーカップアップ。凄い成長。ウエスト54cm」
「元々細かったけれど、さらに引き絞られて、俺の好みの細さになったね。いい子だよ。れいな」
かつてのように優しく頭を撫でられたが、もう全然嬉しくない。
「次はヒップ。85cm」
凜人様はそこで再びジェミニ君を静止させ、刻まれた聖痕をじっくりと眺め始めた。
「お前に刻まれた『聖痕』は、それか。お前にはお似合いだな」
「はい……私も一日中、先生方に躾て貰っている家畜にはぴったりだと思います」
「そうか。では、もっと検品したらどうなるかな?」
至近距離から、凜人様に観察される。
「おやおや。相変わらずいい反応だ。1番、お前は誰の『所有物』だ?」
「はい…凜人様です」
「いい子だ。……いい子にはご褒美をあげないとな」
「うぅっっ……!」
――ビシィッ!
「検査中だ。無駄口を叩くな」
「申し訳……ございません……」
「次はないぞ。よし、次だ。第三拘束姿勢」
「かしこまりました」
私が姿勢をとると、凜人様がトートバッグから手錠を取り出し、私の自由を奪った。
「なんだ?この服の上からでも視認出来る突起は?お仕置きだ」
凜人様は、あらかじめ用意していたかのように、
姿勢を矯正するためのハーネスを付けた。余計に突起が強調される、家畜らしい格好になった。
「あぁッ……」
「検品を再開する」
凜人様がジェミニ君を再起動させた。
「乳輪、直径4cm。色はエンジ。乳首の高さ1.5cm、直径1.0cm。次、下半身」
その後も、凜人様に見守られながら、ジェミニ君による蹂躙は、全てのスペックを測るまで続いた。
「お前が書いた自己紹介とサイズが全然違うな。……お仕置きが必要だ。1番、1度拘束を解いてやるから忠誠の海老反りで、授業終了まで待機。俺を見上げながら校歌を歌え」
「かしこまりました」
拘束をとかれた私が指定の姿勢をとると、凜人様は再び、私の手足を床の金具へと拘束し、さらなる絶望を刻む。
「その方がお前に似合っている。さあ、歌え」
「かしこ……まりました……」
九時間目の終了を告げる鐘が鳴るまで、私の震える校歌が教室中に響き続けた。
「行くぞ、1番。第二服従姿勢」
「かしこまりました……」
私はリードを引く凜人様に連れられ、晩餐会という名のさらなる地獄へと引きずられていった。




