第84話〜家庭科、供物の装束と剥き出しの忠誠〜
7時間目、家庭科。実習室の空気は、他の教室とは一線を画す静謐な緊張感に包まれていた。
「『商品』の皆さん、本日から二部式着物の制作に入ります。これは貴女たちが将来、主君の奥向きでお仕えする際の正装。同時に、主君が『いつでも、瞬時に』貴女たちを暴き、慈しむための機能が求められます」
志乃様の厳しい視線が教室を射抜く。
私たちは配布された反物と裁縫道具を手に、作業台に向かった。制作には厳格なリメイク項目が定められている。
「襦袢の目的は肌を隠すことではありません。主君の視線を、最も価値ある部位へと誘導することにあります。各自デザインした通りに仕立て直しなさい」
私は震える手で布を補強し、刺繍を入れた。
(こうすれば、胸の重みで形が崩れず、私の大きく熟した果実が強調されるだろう…でも…私は家畜…なんだからしょうがないよね…)
「1番、その縁取りの補強は良い判断です。主君が指先で弄ぶ際、その刺繍の感触が快感のアクセントにもなるでしょう」
「ありがとうございます、志乃様」
志乃様の言葉に、背筋が凍るような羞恥が走る。
「二部式の裾よけは、座った際、貴女たちの不浄の場所に、冷たい畳の感触、あるいは主の体温を、常にそこで感じ続けるよに、極限で薄く仕立て直しなさい」
下着の着用を許されない私にとって、この裾よけはもはや衣服ではなく、羞恥を増幅させるための『枠』でしかなかった。
「ご主人様が望まれた瞬間、一秒を待たせず産まれたままの姿になれるよう、すべての結び目は、マジックテープおよびスナップボタンへ換装しなさい」
私は上衣の丈を極端に短く裁断した。帯を締めた際、胸の膨らみが下から溢れんばかりに零れ落ちる計算だ。シースルーのセーラー服以上に、この着物は私の肉体を『差し出す』ことに特化している。
「志乃様、襦袢と裾よけ、完成いたしました」
私は、出来上がったばかりの襦袢を肌に纏い、志乃様の前に跪いた。
「……よろしい。1番、おケツをよく見せなさい」
「かしこまりました」
志乃様の冷たい指先が、私のお尻刻まれた、『1』の烙印をなぞる。裾よけを薄く仕立て直したため、主君の贈った『所有の証』が鮮明に浮かび上がるように調整されていた。
「美しいですよ、1番。貴女の心はどれほど壊れようとも、その指先が縫い上げたこの衣は、貴女が龍雅院家の完璧な家畜であることを雄弁に物語っています。御当主様もお喜びになることでしょうね」
「……ありがとうございます、志乃様」
お兄ちゃん……理事長が好むであろう、胸の膨らみが強調された意匠。私は、自分を壊した男に最も美しく『使われる』ための服を、自らの手で完成させてしまった。
心は死んでも、指先までもが『商品』としての本能に従っている。その矛盾が、私の身体をまた、じわりと熱くした。




