第66話〜不協和音の朝、鎖に繋がれた級長〜
「おはよう、1番。全く眠れなかったようですね」
起床のサイレンと共に、真冬様が冷徹な微笑を浮かべて入室してきた。
「おは……おはよう……ござい……ます……ま……真冬……様」
一晩中、電流の波に晒された私は、息絶え絶えに挨拶を返すのが精一杯だった。
「ブルマーがスケスケですよ。だらしない。お仕置きが必要ですね」
「うぅっ……!」
拘束を解きながらブルマーを確認した真冬様が、電流の出力を無慈悲に最大限まで引き上げた。
「ほら、喜んでいないで、さっさと朝の気合い入れのお尻叩きに行きなさい。班員が待っていますよ」
真冬様からリモコンを受け取った私は、震える足を叱咤し、班員が待つ2階の雑居房へと急いだ。
「れいなちゃん、おはよう」
「おはよう、麻衣ちゃん、さらさちゃん」
「まだお仕置き中みたいだね。私たちのせいでごめんね」
麻衣ちゃんは昨日、『調教学』に遅刻した一人だ。彼女の申し訳なさそうな顔に、私は首を振る。
「ふん。何よ馴れ合っちゃって。1番様の癖に何回『懲罰』を受けたら気が済むのよ。私たちにとばっちりが来そうで嫌だわ」
響と陽子の悪態が飛ぶ。だが、その喧騒を切り裂くように、異様にいい、私の耳が由羅様の足音を捉えた。
「第一待機姿勢」
「かしこまりました」
「よし。今日からの気合い入れは1番、お前が級長として1組全員に叩き込んでやれ。今日は靴べらで10発だ。1番以外、第三待機姿勢」
「かしこまりました」
由羅様から冷たい靴べらを渡される。私は級長として、班員たちの背後に回り、その柔肌を叩いた。自分の手が震えているのは、罪悪感か、それとも支配欲なのか…。
「全員、玄関ホールへ向かえ」
由羅様が他のメンバーを追い出し、由羅様は私に手を差し出した。
「1番、そのリモコンを渡せ。……よし、第二服従姿勢。挨拶回りだ」
私の首にリードが繋がれる。由羅様に引かれ、私は這いつくばった姿勢で他のクラスメイトの居室を回り、見せしめのように引き回された。
玄関ホールに辿り着くと、そこには1年生全員が整列していた。玉座に座る凜人様が、冷たく見下ろしている。
「各班体育委員、各班のリモコンを回収しろ」
体育委員が回り、リモコンを凜人様に献上する。
「宣告の蹲踞の姿勢をとれ。……校歌斉唱」
荘厳な前奏と共に、生徒たちの歌声が響き渡った。だが、私は一言も声が出せない。歌詞が、一文字も分からないのだ。
「……1番、なぜ歌わない」
凜人様の低い声がホールに響き、歌声が止まった。
「も、申し訳ございません。まだ存じ上げず……」
「何だと? オリエンテーション中に教えたはずだ。……ああ、そうか。お前はあの時、『懲罰』を受けていたのだったな」
凜人様は嘲笑うように続けた。
「不参加中の内容を把握できていないのは、ひとえに努力不足だ。さらに、昨日は由羅や真冬の時間を奪うという不始末まで仕かしたな。……1番、前へ来い」
凜人様は私を足元に跪かせると、私を『椅子』にするようにその上に腰を下ろした。
「全員が校歌を練習する間、お前はここで反省しろ」
そう言うと、お兄様の手元にあるリモコンのスイッチが入れられた。
「あぁああぁっ!?」
「静かにしろ。椅子が声を出すな。昨日も教えたはずだ」
「申し訳ございません」
皆が整然と校歌を繰り返す中、私だけが『椅子』として凜人様の体重を支え、不規則に入り切りされる電流の衝撃に翻弄され続けた。
「高強度トレーニング終了。体育委員、リモコンを取りに来い」
ようやく解放された頃には、私の精神はズタズタだった。朝食を飲み込むように済ませ、着替えを終えて再びホールに集まる。
「全員、第一拘束姿勢」
由羅様が私たちを拘束していく。そして、クラスメイト全員の手錠を繋ぐ『親鎖』が、今日も級長である私の手に握らされた。
「誰一人として、遅れさせるな。……行け」
「かしこまりました」
私は、自分自身も縛られながら、仲間たちという名の重い『鎖』を引いて、新たな地獄の授業へと歩み始めた。




