第56話〜重圧という名の鎖、屈辱の行進
椿様の授業が終わり、静まり返った教室に再び緊張が走った。
「全員速やかに1番を先頭に、1班から順に並び、第一拘束姿勢。2番は一番後ろに並べ」
監視カメラで授業の終了を確認していたのだろう、由羅様が冷徹な声を響かせながら入室してきた。手際よく全員が後ろ手に拘束され、一人一人の手錠が一本の長い鎖――親鎖で繋がれていった。その端を、私が級長の証として手渡された。
「1番、今日からお前が級長として全員を引率しろ。行け」
「かしこまりました」
30人を繋ぐ鎖の重みと、歩くたびに身体の奥に響くレールの痛みに耐えながら、私は必死に寮へとクラスメイトを導いた。
「拘束を解いてやる。全員、昼食とブルマーへの着替えを済ませ、制服を持って玄関ホールに集合。30分以内だ」
寮に到着するなり、由羅様の次なる命令が下った。私は食堂へ急ぎ、昼食代わりの『女性ホルモンの分泌と成長を促すサプリ』を水で流し込んだ。胃の中に落ちる無機質な感覚が伝わった。
急いで自室へ戻り、朝指定されたブルマーと体操服に着替え、遠隔パルス器のリモコンを手に取った。ふとノートパソコンに目を向けると、そこには密談するさらさ、陽子、響の姿が映っていた。
(気になるけれど、音声を確認している暇はない。後で聞いてみよう)
私は後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にした。
玄関ホールに着くと、すでに着替えを終えたさらさが待ち構えていた。
「れいなちゃん。きっと見てたよね。後でちょっといいかな」
「うん。見てたよ。話の内容は聞いてない。英語と社会の間の休憩時間でどうかな?」
「うん。わかった」
さらさの柔らかな声に、少しだけ心が軽くなったのを感じた。
しかし、その安らぎは由羅様の非情な声によって即座に打ち砕かれた。
「全員並べ。第一拘束姿勢だ」
由羅様の非情な号令が玄関ホールに響き渡った。再び全員の手首が背後で固定され、五十人を繋ぐ一本の長い親鎖が私の右手に握らされた。この鎖の先には、クラスメイト全員の命運が繋がっていた。
「2番。お前は最後尾だ。副委員長として、列が乱れないよう後ろから監視しろ」
「……っ、かしこまりました」
最後尾に配された美紀が、屈辱に頬を染めながらも短く応じた。彼女もまた、私と同じようにこの異常な連帯責任の重圧を背負わされていた。
「四時間目はグラウンドで体育だ。……だが、手が塞がっていては制服は持てまい。全員、自分の制服を口で咥えろ」
由羅様の冷徹な命令に、ホールは静まり返った。
私は、丁寧に畳んだ自分の制服を汚さないよう、奥歯でしっかりと噛み締めた。口の中に広がる布地の感触と、微かな洗剤の匂い。少しでも気を抜けば、口角から不浄な雫が垂れてしまう。級長である私が失態を犯せば、この鎖で繋がれた五十人全員が連座のお仕置きを受けることになった。
「……ん、……っ」
私は制服を咥えたまま、親鎖をゆっくりと引いた。
ジャリ……ジャリ……。
後ろ手拘束のまま、口に服を詰め込み、顔を上げることも許されない少女たちの長い列が、校舎の外へと這い出していった。
外の空気は冷たいはずなのに、眠剤の影響で私の意識は熱く、足元は綿の上を歩いているかのように覚束なかった。最後尾の美紀が引かれる鎖の緊張感を感じながら、私はヨダレを必死に飲み込み、午後の地獄が待つグラウンドへと一歩を踏み出した。




