第45話【断絶の9日間XIII】〜妹という名の道具〜
「今日は跪いてお出迎えか。反省しているようだな」
私がロビーで跪いて待っていると、大和様が迎えに来てくださった。いつもは担任である、由羅様にクラス全員1列に拘束され引率されるが、今日は先生方が『貫通式』の準備でお忙しいので、パートナーにリードを引かれ、個人個人での登校だ。
「はい。昨日は私の身勝手な行動により、凜人様を初めとする管理者の皆様の大切な時間を奪ってしまい、大変申し訳ございませんでした。」
「良いだろう。電極を外してやるから居室の前で第四服従姿勢」
「かしこまりました」
両胸と腰周りに貼られた電極を戒杖ではらい落とされた。
「ッ……」
何とか悲鳴をあげず、たえれましたが、すごく痛い。
「よく耐えたな。行くぞ。第一拘束姿勢」
「かしこまりました」
連れていかれたのは体育館ではなく、何故かグランドだ。グランドには、机を6つ長方形に並べたベッドのような物が9個等間隔に並び、その前にひとつだけポツンと同じものが置いてある。ベッドのようなものの前には、大きな鏡が置いてある。てっきり、体育館で行われるものと思ってましたが、どうやら外でおこなわれるようだ。
「15番。こっちだ」
大和様がリードを引いて私を所定の場所へと連れて行く。
「ここだ。貫通式が始まるまで第三服従姿勢で待機」
「かしこまりました」
第三服従姿勢は所謂土下座だ。顔が砂まみれになり、少し痛いが、姿勢を崩すとどんなお仕置きがまっているか分からない。
「ご来賓の皆様、お集まり頂き、ありがとうございます。わたくし、1年生の学年主任をしている龍雅院凜人と申します。先ずは『貫通式』に初めて参加される方も、いらっしゃると思いますので、簡単に説明させていただきます。貫通式は全ての商品が受ける訳ではございません。学年の半数を『不浄』とする儀式でございます。今年は純潔の数がとても多く、このグランド、体育館、調教室で行われます。当学院スタッフが撮影している映像をお手元ので、『最新の管理端末』全て確認していただけるようになっています。どうぞ心ゆくまでお楽しみください。では、今日お手伝いくださる先生方、それぞれ配置に着いてください」
私の担当は……お兄ちゃんの足音がこっちに向かって来てるよ。もしかして、お兄ちゃんが私の担当なのかな。でも、光也様も向かって来てる……どっちだろ?
「15番、顔を上げろ」
砂塵の舞うグラウンド。土下座の姿勢で這いつくばる私の頭上で、冷徹な声が響きました。
微かな期待に胸を躍らせ、泥にまみれた顔を上げた私を待っていたのは、かつての優しいお兄ちゃんではなく、龍雅院の若き支配者、凜人様の氷のような瞳だった。
「なんだその砂まみれで緩みきった顔は。まだお前をどう扱うかの査定中だということを忘れるな」
「……っ、申し訳ございません、凜人様」
周囲を見渡せば、全校生徒だけでなく、執事・女中養成学校の全学年から集められた男子生徒たちが、無表情に私たちを凝視していた。彼らにとって、私は崇めるべきお嬢様ではなく、将来自分たちが管理し、効率的に使用するための『教材』に過ぎないのだ。
「良いだろう。お前は、俺たちが責任を持って汚してやる。……先ずは後ろからだ。光也、頼んだぞ」
「承知いたしました、凜人様。……では15番、その汚れた体で台に這い上がり、お前の不服従の証を見せつけなさい」
「……かしこまりました、光也様」
私は促されるまま、無数の視線に晒された処置台へ這い上がり、お尻を高く、突き出した。
光也様は、私のそんな無様な姿をせせら笑いながら、『服従の印』として尻たぶに『No.15』と大きくマジックで書いた。
「……このマジックは特別製で『一生消えないインク』が使われている。良かったな。15番。これでお前も我々の『所有物』となった。養成学校の諸君、これが『折られた商品』の反応だ。よく目に焼き付けておけ」
『所有物』という言葉に、私の思考は真っ白に染まっていく。しかし、地獄はまだ半分も終わっていなかった。正面に回った凜人様が、冷たい声で命じた。
「15番。……『貫通式』の最終工程を行う。……龍雅院の血を、今ここでお前の奥深くに刻み込んでやる」
凜人様は、そういうと、私の太ももに不穏な機械を取り付け、ボタンをポチッと押した。
「あ……ぁぁぁぁあああああッ!!! いだ、い……っ、お兄、ちゃ……っ!!」
「『凜人様』と呼べと言ったはずだ」
情け容赦ない電流が流れてきた。それによって、私の身体は限界まで引き裂かれたような激痛と共に、何かが崩れていくような音が聞こえた。
「おっ、素晴らしいですね。絶望と悦楽が混ざり合った、最高の一枚です。カタログの表紙、いや、15番が卒業する時のオークションのメインビジュアル決定ですね」
絶妙なタイミングで、真冬様がレンズを至近距離まで近づけ、シャッターを連打する。フラッシュの光が、私の屈辱に満ちた絶叫と、電流に貫かれた姿を永遠にデジタルデータとして固定していく。
「……よし、完了だ。……15番、よく聞け」
事を終えた凜人様が、虚脱状態となった私を冷たく見下ろす。
「……お前の『純潔』という付加価値は今、完全に消滅した。お前はもう、ただの『俺たちの所有物』だ。……だが安心しろ。お前が俺の『妹』であるという血の呪縛は変わらない。……これから、お前を『妹』として扱う。だが、そこには一滴の甘やかしも、慈悲もない。……これからは龍雅院の繁栄のために、兄に尽くす便利な『専用の道具』として、死ぬまでその肉体を捧げ続けろ。……分かったか」
「ん……あ……っ、は、はい……凜人様……」
返辞を終える間もなく、凜人様は事務的な口調で次の命令を下す。
「15番、台から降りて第四服従姿勢で待機。他の全商品の『納品』が終わるまで、そのまま動くことは許さん」
「……かしこまりました」
私は激痛の走る身体を引きずり、グラウンドの土の上に降り立った。頭の後ろで手を組み、足を大きく広げた無防備な姿勢……。
周囲では、他の生徒たちが次々と悲鳴を上げ、純潔を納品していく。私はその地獄のような光景の中で、一頭の家畜として、ただ石のように静止し続けなければならなかった。
数十分後。すべての儀式が終わったのを見届け、凜人様が再びマイクを手に取りました。
「ご来賓の皆様、本日は誠にありがとうございました。これにて『貫通式』を終了いたします。……では、パートナーの諸君。これよりホームルーム教室にて明日の入学式の説明を行う。……家畜を引率し、教室まで連行せよ」
「……15番、移動する。立て」
「かしこまりました」
お兄ちゃんはもう、私の方を見ようともしない。私は大和様にリードを引かれるまま、這い蹲るようにして教室へと引きずられていった。




