第3話〜旋律の鎖、絶望のプレリュード〜
第3話〜旋律の鎖、絶望のプレリュード〜
「部屋の準備はできているな? この子がれいなだ」
「ええ。滞りなく」
汽車を降り、学院へと連行したれいなを蒼空の前に立たせる。俺は、妹でありながらこの地獄の門番でもある彼女に、簡潔に命じた。
「単刀直入に言う。この子を、SSランクで卒業できるように躾けてくれ」
わが学院の『淑女』にはランクがある。SSランクは最高位で、十年に一度出るかどうかの逸材にのみ与えられる称号だ。
「お言葉ですが、お兄様。この娘をSSランクまで躾けるのは難しいかと存じます。お兄様も我が学院の教師なのですから、見栄えだけでなく、質の良さが重要視されていることはご存知でしょう?」
蒼空が値踏みするように、怯えるれいなを冷たく見下ろした。
「学院のカリキュラムだけでは、お前の言う通り無理だろうな。だが、今年度の一年性の学年主任は俺で、担任は要だ。オリエンテーションの補佐には、時弥と愛理を付けている。放課後も、翌日の授業に影響が出ない時間まで、俺、要、時弥、愛理の四人で付き切りで『躾』ていく予定だ」
俺の言葉を聞くうちに、れいなの顔色が目に見えて悪くなっていく。後でたっぷり可愛がってやろう。彼女には、最低でも帝国大元帥を籠絡できる器になってもらわなければ困るのだ。欲を言えば、帝国元帥に嫁がせたい。そのためにも、まずは完全に俺に依存させ、意のままに動く人形に育て上げねばならない。
「……そうでしたか。では、私も『躾』に参加いたしましょう。早速、今から始めて差し上げますわね。お兄様、よろしいですわよね?」
「ああ、もちろんだ」
ここまでは予定通りだ。蒼空のことだ、初日から慈悲のない調教を施すだろう。俺は、その『躾』が終わった頃を見計らって迎えに行き、優しく手を差し伸べてやればいい。それだけで、彼女にとっての唯一の光は、俺になる。
「愛理。私、お茶が飲みたいわ。躾の準備もありますから、あなたが淹れてれいなに持たせてちょうだい。懲罰室Aまでの案内も忘れずにね」
「かしこまりました、お姉様」
愛理が恭しく一礼する。
(せいぜい壊れない程度に絶望してくれよ)
絶望へと一歩を踏み出すれいなの背中を、俺はただ、事務的な満足感と共に見送った。




