第37話【断絶の9日間Ⅸ・後編】〜刻印のアリア〜
「15番、まず、『奴隷の心構え』から『教育』し直してあげましょう。第三服従姿勢」
「かしこまりました」
私の冷徹な声に、彼女の肩が小さく跳ねた。
「繰り返しなさい。『私、15番は、大したことのない過去の刷り込みを思い出しただけで、『動作不良』を起こす『欠陥品』です。どうか『メンテナンス』をし、優良商品へと導いてください、お願いいたします真冬様』さぁ、早く言ってごらんなさい」
ビシッとれいなのケツを特別製の戒杖で叩いてやります。
「うぅっ。私、15番は、大したことのない過去の刷り込みを思い出しただけで、『動作不良』を起こす『欠陥品』ですどうか『メンテナンス』をし、優良商品へと導いてください、お願いいたします真冬様」
「許可していない発言は許しません。もう一度」
もう1発ケツを叩いてから促します。
「かしこまりました」
幸い、時間はあるので、やれ声が小さいだの、感情がこもってないだの文句をつけ、れいなの心に自分は『欠陥商品である』と刻みつけるまで、何度も何度もやり直しさせることにしましょう。
かれこれ50回はやり直させたでしょうか?そろそろ許してあげましょう
「いいでしょう。第一服従姿勢」
「かしこまりました」
涙と鼻水ですごい顔になっています。
れいなの豊なお尻、そして白磁のような内腿に視線を落とすと、そこにはまだ鮮やかな紫の筋が幾条も走っていることが、薄い訓練着の上からでもはっきりと解ります。
「……3日前の跡が、酷く醜いですね」
私の指摘に、彼女は苦痛の吐息を漏らします。まだ若く、加減を知らぬ光也の荒々しさが、彼女の身体を無残に汚しています。我が子ながら将来が恐ろしいですね。楽しみです。
「光也様に……情けなく鳴くまで、何度も……。申し訳ございません、真冬様……」
「謝る必要はございません。お前はただ、学院に磨り潰されるために存在しているのですから純潔の花を保ったまま、精神だけが汚濁に染まっていく。それこそが、お前に相応しい『教育』です。……光也の跡を、わたくしが上書きしてあげましょう」
ビシッ
「うぐぅっ!」
彼女の身体が弓なりに弾け、喉の奥から押し殺したような悲鳴が上がっりました。
「いい鳴き声ですね。『人間』という殻を剥ぎ取られ、ただの『商品』へと堕ちていく気分はどうですか?」
「……心が、壊れそう……です。真冬様、もっと……もっと私を、壊して……くださいっ!お願いいたします、真冬様」
羞恥に顔を染めながらも、彼女の瞳からは意志の光が確実に消え失せていきます。昨日の誇りも、明日の希望も。この閉ざされた『学院』で、わたくしたちが与える苦痛と支配の快楽。その濁流に飲み込まれ、彼女の心は音を立てて崩壊し、ただ私を仰ぎ見る忠実な『駒』へと作り替えられていくのだ。
私は冷酷な笑みを浮かべ、再び戒杖を高く振り上げます。
「ひっ、あ、あああぁぁっ……!」
内腿に続き、お尻へと戒杖をしならせます。光也が刻んだ古い痣の上を、私の戒杖が容赦なく切り裂き、白磁の肌に、新たな紅い線が刻みつけます。
「いけませんね、15番。そのような無様な声。今までの躾が、まだ身体に馴染んでいないようです」
私はわざとらしく嘆息し、震えるれいなの顎を鞭でなでました。
「真冬様……っ、申し訳……ございません……私、は……」
「お前の主は誰ですか?」
「学院の先生方です」
「よろしい。お前には思考など不要。ただ、痛みを受け入れ、快楽を強いられ、わたくしたちの望む『商品』として完成されればよいのです」
私は手にしていたリードを短く巻き取り、彼女の姿勢を強制的に固定します。首輪に内蔵された生体センサーがぴぴっと言うことを聞かぬ身体を拘束し、彼女の瞳が絶望に翻ります。
「その純潔の身体も、溢れんばかりの肉体も、すべては学院の、実習を担うわたくしたちの所有物。心が壊れることを恐れる必要はありません」
「あ……あ……っ」
彼女の瞳から、最後の一滴の理性が零れ落ちるのを私は見逃しませんでした。御当主様に捨てられ、わたくしに磨り潰されたその心は、今この瞬間に形を失ったのです。もはや、この駒の中に『自分』は存在しないでしょう。あるのは、戒杖の音に怯え、主人の慈悲を乞うだけの空虚な器。
「さあ、仕上げです。お兄様が戻る頃には、お前を完璧な『物』にしておいてあげましょう」
私は再び戒杖を構えた。
「……あ、あああああぁぁぁっ!」
先ほどまで光也が刻まれてた紅い線を嘲笑うかのように、わたくしの戒杖がその上からさらに深く、鋭く肉を叩きました。
「声が大きすぎますよ、15番。それとも、もっと酷い扱いをされたいという、はしたないおねだりですか?」
わたくしは冷笑を浮かべ、わざとゆっくりと戒杖の先端で彼女の顎を弄びました。
「……ひ、ぅ……真冬様、ごめんなさ……っ、あ!」
「言葉はいらないと言ったはずです。お前はただ、わたくしたちにその身を委ねていればいい。学院にとって、お前はただの、中身のない肉人形なのですから」
わたくしは引き締めたリードを力任せに引き寄せ、床へと平伏させました。
「ぐ、ぅ、ぅ……っ」
姿勢が正され、彼女の豊かな肢体が無防備に晒されました。拘束の恐怖と痛みが、彼女の瞳から理性の残滓を急速に奪い去っていきます。
「見てごらんなさい。今のあなたは、自分が誰かも、どこから来たのかも思い出せない。ただ、次にくる痛みを待ち焦がれ、震えることしかできない『商品』だ」
「私……わたしは……15番……学院の……商品……っ」
「よろしい。その絶望こそが、お前に相応しいのです。さあ、次は背中だ。お兄様が戻られたとき、どの角度から見ても『壊れている』ことがわかるよう、徹底的に躾けて差し上げましょう。」
私は、訓練着の背中へ、戒杖を振り下ろし始めました。
「……あ、がぁっ、あぁっ……!」
背中を叩く衝撃のたびに、彼女の白い身体が床で跳ね、豊かな胸が服の上からでもわかるぐらい無防備に揺れます。光也によって荒らされた痣は、わたくしの戒杖によって塗り潰され、より深い絶望の色へと染め上げられていきました。
「どうしました、15番。背中の皮膚が、わたくしの戒杖を欲しがって震えていますよ。これほどまで熱心に懲罰を受け入れるとは、教育の甲斐があるというものです」
わたくしは一度戒杖を止め、荒い呼吸を繰り返す彼女の背に、冷たい革の先端を滑らせました。背筋をなぞる冷感に、彼女はビクリと腰を浮かせます。
「あ……真冬様……っ、私は……私はもう……」
「『もう』、何ですか? わたくしに慈悲を乞うなど、商品が許される分を越えています。お前が口にしていいのは、わたくしたちへの従順な誓いだけです」
わたくしは再びリードを強く引き寄せ、彼女を無理やり跪かせました。顔を上げさせると、そこにはもはや人間だった面影は微塵も残っていません。ただ、主人の一挙手一投足に怯え、依存する、空っぽな瞳があるだけです。
「……私は、15番。学院の、先生方の、所有物……先生方の、おもちゃ……です……っ」
「よく言えました。その壊れかけた心が、わたくしは何よりも愛おしい。お前をこの世の誰よりも惨めに、そして誰よりも美しく磨り潰して差し上げましょう」
わたくしは彼女の耳元で低く囁き、再び戒杖を構え直しました。
懲罰室に響き渡る、戒杖の音。それはかつて『人間』だった『15番という名の商品』の完全な死を告げるアリアであった。




