第28話【断絶の9日間Ⅵ】〜15番の罪と、冷徹な『掃除』〜
冷たい石床を素足で引きずる音が、静まり返った廊下に虚しく響く。
私は極薄の訓練着で、後ろ手に手錠をかけられたまま、光也様の足元を這うようにして歩かされていた。首に食い込む革の首輪からは長いリードが伸び、その先は光也様の冷徹な指先へと繋がっている。
「……っ、ふ……あ……」
時折、リードを強く引かれるたびに、私の小さな体はつんのめる。
光也様は一度も振り返らない。彼は私を名前で呼ぶことなどなく、ただ『15番』という記号として、その絶対的な支配下に置いていた。
重厚な扉が開かれ、拷問部屋へと連れ込まれた瞬間、私は息を呑んだ。壁の一面が巨大な鏡張りになっている。照明の下、鏡に映し出されたのは、あまりに無様な私の姿だった。小柄な体躯に、不釣り合いなほど重たげな胸。光也様は私の前で足を止めると、値踏みするようにその胸を見下ろした。
「……15番。由羅様から厳しい懲罰を受けたようだな。今日はもっと厳しい懲罰を受けてもらう」
光也様の低い声に、全身の血が凍りつく。極薄の訓練着の上からでもはっきりわかるぐらい、両方の胸には由羅様手によって戒杖で叩かれた赤黒い線が走っているのだ。
「は、はい……光也様」
光也様は私の髪を掴み、強制的に鏡の方を向かせた。
「御当主様以外の男に『調整』された身体を鏡でよく見ておけ。お前がどれほど汚らわしいか」
「いいか、れいな。俺はお前の『純潔』を奪うつもりなど毛頭ない。俺にとって、『純潔』とは愛でるべき物ではなく、ただ『商品を管理するための条件』に過ぎないからな。だが、今日はお前の身体を俺の色に染め上げてやろう」
「ありがとうございます、光也様」
それでいい。私はただの『商品』なのだから。
光也様は壁に掛けられた黒い戒杖を手に取った。しなやかな革が空気を切り裂き、鋭い音を立てる。
「第二服従姿勢。その不細工なケツを突き出せ」
「かしこまりました」
命令に従い、手錠で肩を軋ませながら床に膝をつく。鏡の中では、『私…いや、15番』が光也様の獲物として、最も無防備な後姿を晒していた。
――ビ、シィィィッ!
「あ、が……っ!?」
最初の一撃が、柔らかい尻の肉を捉えた。焼けるような激痛が脳を突き抜け、目の前が白くなる。
光也様の戒杖は今まで受けた誰の戒杖や定規よりも容赦ない。お尻の白い肌に、一瞬で鮮烈な朱色が走る。
――ビシィッ! バチンッ!
「ひ、うっ……あぁっ! 光也様、光也様ぁ!」
「うるさい。数えろ」
「い、いち……っ、に……あぐぅっ、……さん……っ!」
一打ちごとに、自分がなんなのかなどどうでもよくなるほどの衝撃が全身を支配する。光也様は戒杖を置くと、私の胸に走る『由羅様の痕跡』を撫でた。
「……っ……あ……」
「お前の『罪』はこのぐらいの『罰』で許されるわけないよな?」
光也様は私の顎を強く掴み、冷たい鏡へと顔を押し付けた。鏡越しに、光也様の冷艶な瞳と視線がぶつかる。
「見ていろ。お前がどんなに惨めな姿か」
鏡の中の『15番』は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、真っ赤に腫れ上がったお尻を震わせている。
光也様は再び戒杖を手に取ると、今度は内腿の最も柔らかい部分を狙って、最高に冷たい声で囁いた。
「立て。次は、つま先立ちになれ。限界まで背筋を伸ばせよ?」




