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支配された帝国【番外編】、淑女養成学院  作者: 鎖乃れいな
第2章〜屈辱のオリエンテーション開始

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第27話【断絶の9日間Ⅲ】〜滴る熱、刻まれる支配の模様〜

 冷たい石廊下を歩く由羅様の背中を見つめながら、私は必死にその歩調についていく。小さな体が廊下を渡る冷気に震えるが、それ以上に、これから始まる新担任による『指導』への恐怖と期待で胸が騒いでいた。

「15番、入れ」

重い扉が開かれ、私は促されるままにその特殊指導室へと足を踏み入れた。


 部屋に入ってまず目に飛び込んできたのは、壁一面を覆い尽くす巨大な鏡だ。そこに映るのは、冷酷なまでに美しい笑みを浮かべる由羅様と、薄手の白い訓練着姿で、その足元で惨めに、けれどどこか従順に震える私の姿。私は自分の姿を直視できず、思わず目を逸らす。小柄な私の体躯に対して、不釣り合いに豊かな胸が、怯えの呼吸に合わせて薄い生地を押し上げるように揺れていた。


 「15番、鏡を見ろ。それがお前の今の姿だ。誰が目を逸らしていいと言った?」

「……っ、ひっ。申し訳、ございません……由羅様」

 由羅様は私の顎を強く掬い上げ、無理やり鏡を向かせる。

「お前は一般の生徒ではない。我が家の管理下にある『家畜』だ。商品には、それに相応しい『規律』が必要だろう?」

 由羅様が壁のラックから、細長く、しなやかな黒い革の指示棒――『戒杖かいじょう』を取り出す。

「見た事あるだろ? これは怠惰な家畜を調教するためのものだ。今日はお前が自分で基準を忘れないよう、その従順な肌に、規律の模様を刻み込んでやろう」


 「さて、まずはその生意気な口を閉じることだ。許可なく声を漏らすな。もし破れば、罰は倍になると思え」

由羅様の冷徹な眼差しに射すくめられ、私はもう言葉を発することさえ許されず、ただ「く、ぅ……」という情けない吐息を喉の奥に引っ込めることしかできなくなってしまった。


 由羅様がデスクの上の熱せられた調律器具に触れ、冷たく微笑む。

「熱は嫌いか? だが、これはお前の甘えを溶かすための儀式だ」

由羅様の手が迫り、器具の放つ強烈な熱気と、わずかに触れた金属の『熱さ』が、薄い訓練着越しに私の胸の膨らみへと伝わった。

「――っ!!?!?!」

声にならない悲鳴が喉に詰まる。焼けるような熱さと、その直後にやってくる皮膚がキュッと引き締まるような奇妙な感覚。

鏡の中の私は、白い生地の下の肌を赤く火照らせ、無様に腰をくねらせていた。


 「もう少し、その動くたびにみっともなく揺れる肉体を躾けてやろう」

由羅様の手にあるしなやかな戒杖の先端が、私の熱を持った胸元を衣服の上から冷たく撫で上げた。

「ん、くぅ……っ!」

恐怖の声はただの呻きとなって消える。

私は本能的に、鏡の中の自分から目を逸らしたいけれど、由羅様の冷徹な視線がそれを許してくれない。

 「動くなと言ったはずだ。15番」

――ビシッ!!

静寂を切り裂くような鋭い音が響き、私の左の胸元に、一筋の熱い衝撃が走った。

「あ、ぐ……ぅ、うぅ!!」

訓練着の上が引き絞られ、体が弓なりに逸れて足元が崩れそうになる。しかし、背後に迫る由羅様の絶対的な威圧感がそれを許さず、私は無様にもその場に膝を突いて跪いてしまった。


 「ほう。肉がこれほどまで豊かだと、衣服越しでも戒杖の食い込みが良いようだな」

由羅様は冷ややかな称賛を口にしながら、次は右の胸元を、狙い澄ましたかのように打ち据える。

――バシッ!!

「んがああああっ!」

今度は、先ほどよりもさらに強い衝撃が襲う。皮膚が熱く腫れ上がり、脈打つのが分かった。薄い白の生地の上に、汗で張り付いた赤黒いミミズ腫れの線が、残酷なコントラストを描き出していた。


 鏡の中の『15番』は、痛みに涙を流し、息を切らし、首輪に繋がれたリードを引かれたかのように、胸元に赤い規律の紋様を刻まれて震えている。それは、かつての私が想像もできなかった、あまりにも惨めで、物としての、そして……あまりにも扇情的な姿だった。


 「どうだ? 自分の体が、御当主様以外の管理者の手によって『調律』していく様は」

由羅様は、赤く腫れた私の胸元を、まるで検品するかのように、戒杖の柄で優しくなぞる。その仕草に、私は恐怖と、あるいは奇妙な安蔑を感じている自分に気づき、愕然とする。

この厳格な痛みこそが、今の私の存在証明なのだ。


 「さあ、鏡を見ろ。その赤色の跡の一つ一つが、お前が学院の『所有物(家畜)』であることの証だ」

私は、震える瞳で、鏡の中の自分を見つめる。そこには、痛みと絶対的な支配の狭間で、完全に管理された、哀れな愛玩動物ペットの姿があった。


 「いい表情だ、15番。お前を安易に汚すつもりはない。お前は出荷まで、学院の最高級の家畜として、その純潔を守ったまま管理されるんだ」

由羅様は、激痛の余韻に飲み込まれてぐったりとしている私の長い髪を、容赦なく掴み上げた。


 「まだ終わっていないぞ。顔を上げろ。お前のその従順な泣き顔を、主にしっかりと見せるんだ」

強制的に仰け反らされた私の視界に、再びあの鏡が映る。

胸元に残る赤黒い戒杖のあと。この管理される姿が、これほどまでに自分に馴染んでしまっていることに、私は言葉にできない恐怖と恍惚を感じてしまった。由羅様は満足げに、私の身体に刻まれた赤の紋様を眺めていた。


 「今日の『懲罰』はここまでだ。だが、お前の『管理』に終わりはない。第一拘束姿勢」

「かしこまりました」

由羅様が背後から手錠を取り出し、私の背中で重々しい音を立てて噛み合わせた。

後ろ手に固定されたことで、私の豊かな胸はさらに強調されるように突き出され、無防備な姿が鏡の中に完成していた。


 「行くぞ。15番、私の歩幅を乱すな」

由羅様はリードを一気に強く引き上げる。

「……っ、ん、うぅ!」

首にかかる重圧に抗えず、私は膝立ちの状態から這いつくばるようにして立ち上がった。

後ろ手でバランスを崩しそうになりながらも、私は由羅様の後を必死に従わなければならない。

やがて、私の居室の前に辿り着いた。

由羅様はリードを引いたまま私を部屋の中へと放り込み、冷徹な一瞥をくれた。

 「明日の朝までその姿で、自分が誰の家畜であるかを反芻して過ごせ。夕食は『ペット』のように食べるんだな」

バタン、と重厚な扉が閉まり、鍵がかけられる音がする。


 処女のまま、けれどその身も心も完全に由羅様の規律へと捧げた証拠が、今も私の肌の上で脈打っている。

私は、由羅様の残像に支配されたまま、お兄ちゃんの事を考えていた。


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