第15話〜意地悪な兄、恋という名の依存
部屋の中央、私は跪いたまま待っている。両手は頭の後ろで組まれ、鉄の手錠でしっかりと固定されていた。反らされた胸は、下着を奪われているせいで薄い制服越しでもその形を露わにし、少しでも力を抜けば崩れてしまいそうな姿勢に、腕がじんと痺れてくる。
脚は、命じられた通り。肩幅の一・五倍に開かされたままだ。『見せつける』ことを強制されたその姿勢は、逃げることも、楽になることもできない。
首輪の重みと、繋がれたリードの存在が、静かに、そして暴力的に支配を主張している。
(……動けないのに、嫌じゃない…私…どうしちゃったんだろう…?)
そんな自分に、少しだけ戸惑う。でも、凜人様の命令だから、私はここにいる。それだけで、震えるほど心が落ち着いてしまうのだ。
カチャ、と扉が開く音がした。
凜人様が入ってくる。そしてその隣には、もう一人――知らない男性がいた。
「……紹介する」
凜人様の低い声が室内に響く。彼は私のすぐ前で足を止め、足元に垂れたリードを軽く踏みつけた。
わずかな動きで首が引き絞られ、逃げ道が完全に消失する。
「……要の代わりに一組の担任になった、由羅だ。今日は二人でお前を調教してやる」
(……二人で……)
胸が強く跳ねる。
由羅様が静かに一歩近づき、私の無防備な姿勢をなめるように、ゆっくりと観察し始めた。
「最初からその状態か。……いい見世物だな。脚の開きも、濡れた瞳も、実にそそる」
辱められているのに、顔を伏せることさえ許されない。凜人様が私の顎を強く掴み、無理やり上を向かせた。
「……逃げるな。お前の醜態も、快楽も、すべてこの男に晒してやる」
「……ぁ……はい……っ」
すぐに答えたが、声が甘く震える。
それを見た凜人様の指先に、わずかに力がこもった。
「震えているな。大丈夫かどうかは、俺が決める。お前はただ、俺の道具としてそこにいればいい」
胸がぎゅっと締め付けられる。怖い。なのに、晒される快感に、下腹部がじわりと熱くなってしまう。
悠羅様が後ろから低く、耳元で囁いた。
「従うのは早いな。……お前、凜人が好きなんだろ。こんな風に扱われて、もう中がぐっしょりじゃないか」
心臓が跳ねた。核心を突かれ、息が詰まる。
「……はい……っ……好き、です……」
小さく、素直にこぼれた告白。
その瞬間、凜人様は満足そうに、獲物をいたぶるような笑みを浮かべた。
「今日は“優しくする日”じゃないぞ。耐えろ」
静かな声。その言い方が、逆に一番残酷で、甘美だった。
悠羅様の手が、制服の上から背中をゆっくりとなぞり、腰のあたりで止まった。
「力が入りすぎだ。もっと無防備に晒せ」
「……っ……ぁ……」
必死に呼吸を整えるが、二人の気配に包まれているだけで、体中の感触が過敏になっていく。
膝の感覚はもうほとんどなく、太ももは限界を告げるように、淫らに震え始めていた。
「……限界が近いみたいだな。潮の匂いがしてきたぞ」
「……まだ……大丈夫です……凜人様……っ」
強がる私の頭を、凜人様の手が少しだけ強く押さえた。
「崩れるな。そのまま俺たちに見られていろ」
「……はい……っ……あぁ……っ」
膝が沈みそうになるのを、必死に堪える。
凜人様と、悠羅様に見られている“今の自分”。
できないことを、できないままにされる。その屈辱的な事実すら、今は抗いがたい蜜のようだった。
「…よく頑張ったな。姿勢を崩していいぞ」
どれほど時間が経っただろうか。低く、静かな声と共に、凜人様の手がゆっくりと、慈しむように私の頭を撫でた。
「よく耐えた。ちゃんと最後まで崩れなかったな。いい子だ、れいな」
その一言で、張り詰めていたものが一気にほどけた。
膝の力が抜け、崩れそうになった体。それをリードが引き留め、凜人様の手がしっかりと支えてくれる。
由羅様が横にしゃがみ込み、手首に食い込んでいた手錠の鍵をゆっくりと外した。
血が戻る感覚と、解放された瞬間の虚脱感に、思わず熱い吐息が漏れる。
「……お疲れ。いい啼き声だった」
悠羅様の声が、どこか満足げに響いた。
「……俺は、まだ仕事が残っている。由羅、寮まで頼む」
「了解」
凜人様が再び手錠を取り出し、私の後ろへ回る。
手首に冷たい金属が触れ、ガチリと重い音が響いた。
さっきよりも、少しだけきつい拘束。後ろ手で固定され、再び自由を奪われる。
「……問題ないな。寮に着くまで、そのままでいろ」
「……はい……」
凜人様の手が最後にもう一度だけ頭に触れ、そのまま彼は部屋を去っていった。
遠ざかる足音に、心細い不安と、残された期待が入り混じる。
ぐい、とリードが軽く引かれた。
「立て。主人がいなくても、歩けるだろ?」
由羅様の低い声。まだ震える脚に力を込め、ゆっくりと立ち上がる。
バランスが崩れそうになると、由羅様がリードを強く引き寄せて、私の体を自分の方へ抱き寄せた。
「ゆっくりでいい。……お前がどれだけ凜人に溺れているか、歩きながらじっくり教えてもらおうか」
「……はい……っ…由羅…様」
私は後ろ手に手錠で拘束されたまま、由羅様に引かれるように歩き出す。
凜人様のいない空気が、少しだけ寂しい。
それでも、支配された余韻と、晒された熱をその身に宿したまま、私は静かに寮へと連れて行かれた。




