第103話【器・転Ⅳ】〜零れゆく自尊、首席管理官の待て〜〜
校門に着くと、そこには長い行列が出来ていた。それもそのはずだ。今日は、風紀検査がある。風紀検査では、制服に乱れが無いか検査され、廊下のレール渡りをいかに美しく渡れるかを検査されるらしい。
「001号、登校お疲れ様でした。お腹の中の『朝食』が落ち着く暇もありませんが、これより風紀検査を開始します。……大和、彼女の制服を『検査用』に整えなさい。上衣のボタンを外し、ピアスが全校生徒から見えるように」
大和様が私の制服を整えたついでに引きづられたため、顔と制服に付いた泥を払ってくれた。
「大和、余計な事をしてはなりません。懲罰対象とみなします。001号、お尻を高くあげなさい」
「かしこまりました」
「大和あなたが懲罰を行いなさい。それが余計な行動をしたあなたへの懲罰だ」
「承知しました」
「ぅぅッ」
「001号、わたくしが『良し』と言うまで我慢しなさい。『待て』は犬でもできますよ」
「かしこ……まり……ました」
おしおきされてどのぐらい経っただろうか。いよいよ私たちの番になった。
「委員長、副委員長、お疲れ様です。委員長、新しい『ペット』ですか?今度俺にも躾させて貰えませんか?委員長好みに仕上げてみせますよ」
「『これは神代大元帥閣下に献上する器』だ。俺か氷室監視の下ならいいだろう。前みたいに使い物にならなくされたら困るからな」
「解りました。楽しみにしています」
(なんだか凄く嫌な予感がするわ……)
「足を肩幅に開き第二待機姿勢」
「かしこまりました」
風紀委員の執事見習いに命じられ、休めの姿勢をとる。
「風紀検査を始める。先ずは零号からだ」
「はい。よろしくお願いいたします」
風紀検査は単なる服装検査では無かった。恥ずかしいところまで毛が生えていないか、汚れがないかくまなく確認されるようだ。
「良し。次、お前検体番号を言え」
「はい。001号です」
私は咄嗟に今の呼ばれ方を叫んでしまった。自分で、商品以下だと認めてしまったのだ。
「001号。これは検査だ。その腰の動きを止めろ」
「申し訳ございません」
止めようとするが、止まらない。愛理様の薬で私の意思と関係なく、腰が動いてしまうのだ。
「止めろと言っているのが解らないのか」
彼が『規律棒』をチラつかせる。
「申し訳ございません。薬のせいで、止まら…」
言い終わる前に振り落とされた。
「翔斗、勘弁してやってくれ。001号には、もっと器らしくなるため、愛理が調合した薬を毎晩飲ませているんだ。これは神代大元帥閣下の意思でもある」
「神代大元帥閣下の…仕方ない。そこの執事見習い、001号の腰を抑えろ。これでは検査が出来ん」
「承知しました」
大和様が震えた手で私の腰を力いっぱい抑える。まるで『これ以上逆らうな』と言っているようだった。
「では検査を始める。先ずは耳からだ」
ライトで照らし、耳の中を観察される。
「汚いな。毛だらけだ。商品たるもの、見えないところまでケア出来ていなくてどうする。ペナルティだな。ペナルティの数だけ、終わった後に躾をしてやる。次は鼻だ」
ライトで照らし、綿棒のようなものを差し込まれた。
「ここはまだマシだな」
その後、胸、へそ、腕、もっとも見られたくない場所、足と全身検査された。
「お前に与えたペナルティは10回だ。よってケツ叩き10回とする。執事見習い、やれ」
「承知しました。001号、第二服従姿勢」
「かしこまりました」
大和様が行うそれは以前とは全然違うものだった。
(大和様、手加減してくれていたんだ…お兄ちゃんも、大和様も変わってしまった…もしかしたら、聖蓮叔父様も変わってしまうのかな…)
「行って良し」
「かしこまりました。検査していただき、ありがとうございました」
「零号、001号のリードを持て」
「仰せのままに、我が主」
零号のリードを引く鴉様に半ば引きずられながら次の試練が待つ廊下へと向かった。




