第102話【器・転Ⅲ】〜汚辱の朝食、連鎖する鉄の絆〜
翌日、起床のサイレンよりも30分も早く、鴉様が起こしに来た。
「001号、主人よりも寝こけるとはいい度胸だな。目覚めの気合い入れだ。お前はまだ1年生だからとりあえず今日は軽めで許してやる。第四服従姿勢。零号やれ」
「仰せのままに、我が主」
零号の気合い入れ...。それは今まで受けたどのお仕置きよりも厳しいものだった。これで軽めならば、明日からはどうなってしまうのだろうか?
「完了しました。鴉様」
「ほぅ。『俺の管理のための矯正具』でも姿勢を崩さないか。ご褒美だ」
「あぁ、鴉様の規律が身体に染み渡ります。ありがとうございます、鴉様」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁあああ」
「なせけない。001号、零号を見てみろ。物足りなさそうな顔をしているぞ」
たしかに、零号はもっと欲しそうな顔をしている。だが、私は違う。ごめん蒙りたい。
「まぁいい。コレから躾てやるとしよう。001号、着替えて玄関ホールに降りて来い。1分以内だ。零号、お前は、食堂で朝食を済ませて来い」
「仰せの…ままに… 我が主….」
私が着替えてホールに着いたのは、あれから1分後ギリギリだった。
「ギリギリだが許してやるか。001号。これを着けろ」
鴉様が差し出した物、それは、識別札が付いた、黒い革製の、レッグガーター、手首に細い鎖が付いた指先だけが出る手袋だった。
「001号、よく聞け。その識別札は受信機になっている。これで俺はお前に、躾器具の刺激だけでなく、電気による刺激を送れるわけだ。このようにな」
鴉様が手元のスイッチを押すと、私に電流が走った。
「うっ」
「鴉様、001号の朝食準備が整いました」
縁なしのメガネをかけた、無表情の少年が、ワゴンを押して入ってきた。その後ろには、聖蓮叔父様に、リードを引かれた大和様と零号がいた。
「001番。私は氷室。風紀委員副委員長であり、この聖別監獄の首席管理官です。あなたには、今日からは今までの朝食に加え、零号が作る特性ジュースを飲んでいただきます。大和、001号を床に仰向けに抑えつけなさい」
「かしこ…まり…ました、氷室…様」
大和様が私を抑え付けると、氷室様が、大きなため息を吐いた。
「大和、あなたはまだ甘すぎますね。それでは001号が飲めないでしょう。強制的に口を開くのです。001号がこぼしたら、あなたも懲罰対象としますよ」
「申し訳ございません、氷室様」
大和様が私の口を無理やり開き、押さえつける力も強くなった。
(なんだか、大和様の手が前よりも冷たく感じる…大和様も私を『器』として扱うと決めたんだ…)
「いいでしょう。零号、鴉様に許可を求めなさい」
「仰せのままに、我が主」
鴉様は、第三服従姿勢で懇願する零号に許可を出し、リードを引き、私の口元に連れて来た。
「零号は今から特製ジュースを作製致します。どうか、ご覧ください」
そういうと、大和様に抑えつけられている私に跨った。苦い様な、なんともいえない味が口に広がる。
「001号、残さず摂取を確認。大和、これを001号に飲ませてやりなさい」
大和様が私の口にいつもの朝食を流し込んだ。
「001号、朝食完了を確認。登校準備に入ります。零号及び001号、第1拘束姿勢」
「仰せのままに、我が主」
私達が手を後ろに回すと、氷室様が手錠ではなく、手首に巻きついている、鎖でそれぞれの手首を拘束した。
「零号、先輩として001号のリードはあなたが持ちなさい。001号、最後の仕上げです。あなたが付けている首輪をわたくしが開発した、『聖別監獄特性首輪』に変更します。この首輪には、GPSの他に、バイタルセンサーも内蔵されています。001号、貴女が心の中で鴉様に背いたり、大和様に助けを求めようとして心拍を乱せば、私の端末にすべて記録されます。ちなみに、心拍を乱した場合、このように躾て差し上げますね」
ビリ!
氷室様がデバイスを操作すると、私の首に電流が走った。
「うぎッ」
「いいですか、001号、これは『犬』の『躾』に使う『電気首輪』です。昨日まで、可愛らしいしっぽを生やしていたあなたにお似合いでしょ?」
その首輪の見た目は、鉄色で金属で出来ている。
(犬の首輪でさえ、革製なのに…私は犬以下の存在になってしまったのね…もう生きる気力すらない…)
「001号。『犬以下』であるあなたが、二足歩行をする必要はございません。第二服従姿勢。大和、001号が姿勢を崩せばあなたが躾てあげなさい。もし、見逃した場合、私がこの特性の杖と001号に付けた首輪で躾けますよ」
「かしこ……まり……ました……氷室様」
「鴉様、お待たせして申し訳ございません。準備完了にございます」
「あぁ。行くぞお前達」
私達は、氷室様と大和様に見守られながら、零号のリードを引く鴉様に半ば無理やり引きずられるように登校した。




