第100話【器・転Ⅰ】〜むき出しの規律、零号の微笑み〜
私は昨日の夜、勝手に動く腰と、今日から始まる特別授業への恐怖から一睡もできなかった。『器』となった私にも、朝の気合い入れのお尻叩きや、高強度トレーニングが免除される訳もなく、昨日の朝まで普通に暮らしていた寮でクラスメイトたちといつもの朝と8時間目までを過ごした。9時間目の調教学の授業のために、大和様を教室にお迎えに上がったけれど、そこに大和様の姿はなく、大和様は、再教育中だと告げた、聖蓮叔父様に連れられて、私は今、執事・女中養成学校管理科、5年1組の授業の題材として、聖蓮様に後手縛りで教室の樑から垂らされた、縄に括り付けられている。
「…このように背縄をかけるところまでやってごらんなさい」
教室に聖蓮叔父様の声が響く。その時、私の耳はこちらに向かってくる、知らない足音と何かを引きずるような音、それから鈴の音を拾った。
「1年、1番。迎えに来てやったぞ」
入ってきたのは、短髪で執事見習いの制服をきた男子生徒だった。
「鴉様、お久しゅうございます」
うやうやしく跪く聖蓮叔父様に目もくれず、『鴉』と呼ばれた少年は、リードに繋がれ、既にぐったりしている少女を引きずるようにし、私の前へとやってきた。
「聖蓮、お前の管理は甘すぎる。ただ聖別監獄の制服を着せているだけじゃないか」
「申し訳ございません、鴉様」
ビリ
「零号。いつまで寝ているつもりだ。『001号』の制服をお前と同じようにしてやれ」
「Yes,…My… Lord….」
私がいま来ている制服、それはほかの『家畜』が着ているよりも薄いもはや、スケスケセーラー服でスカートもスリットが入っているのではなく、スケスケで、前側だけがベルトで止められているだけで、歩く度に前が完全にはだける構造になっている。オマケに、お尻にはあのもふもふしたしっぽが付けられ、靴はふくらはぎを美しくみせるため、5cmのヒールで常につま先立ちを強制されている。
(これ以上恥ずかしい格好なんて存在するの?)
いや、目の前に存在した。『零号』と呼ばれた少女が着ていたのだ。彼女の制服は、上衣はアンダーバストで切られ、突起の位置に空いた穴からからでているそれには、小さな鈴がピアスのように付いており、背中も肩甲骨の下まで『V字』に切り裂かれている。下衣は恥ずかしい場所がギリギリ隠れる長さで切りそろえられ、左右に深いスリットが入っていた。裾には重りが入っているのか、不自然に垂れている。
(私も同じ格好にされるの…?)
ハサミを持った『零号』が近づいてきた。
「動かないで001号。貴方を傷つけたくないの」
零号が私にしか聞こえない小さな声で訴えた。
「出来ました、鴉様」
「最終仕上げだ。聖蓮、001号の不浄な前後の穴にこれを付けろ。001号、これは1度付けたら、付けた者しか外すことが出来ない特別仕様の『躾器具』だ。今日からこれでお前を今まで以上に厳しくしつけてやる。やれ、聖蓮」
「...っ。仰せのままに...我が主」
「れいな、すまない。だが、本家嫡男である鴉様には逆らえない。本当にすまない」
私にしか聞こえない声でそう告げた聖蓮叔父様の目には悲しみが浮かんでいた。
「仕上げ完了しました、鴉様」
聖蓮叔父様が先程の悲しみに満ちた声と目が嘘であるかのような淡々とした声で報告した。
「いい子だ。零号。ご褒美をやる。こちらへ。真冬は控えていろ」
「仰せのままに、我が主」
ビリビリ
「ありがとうございます、鴉様」
「001号、これが物心付いた時から器として育てられたかつて人間だった『物』だ。お前にもこうなって貰うからな。チクビピアスは今日の夜空けてやる。楽しみにしておけ」
「仰せのままに...我が...主」
私はそう答えるしかなかった。だって私は『神の器』なのだから…
「さぁ、授業を再開しましょう。1番、その姿で5年1組の全生徒に、器としての『鳴き声』を聴かせてあげなさい」
「仰せのままに...我が主...」




