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カイジンの冥婚  作者: 小隹雀
第一章 魔獣討伐編

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【11話】カーチェイス

 那岐は美緒から聞かされた計画に承諾し、巨大な猫に変身して実行に移す。


「わーーー!! 速ーーーい!!」


 美緒は足を地面から離しているのに、風を受けて疾走感を感じていた。


「乗ってみたいと思ってたんだー!!」

 美緒は猫に変身した那岐の背中に跨って楽しんでいる。凄く毛むくじゃらで気持ちいい。


「乗り心地大丈夫かー?」

「うーん!! だいじょーーぶ!! 那岐も疲れたら、いってねー!!」

「わかったよー」

 美緒の考えた作戦を実行するためにも魔獣を探してもらっているのだが、中々見つからない。


 しばらく捜索していると、巨大な猪の頭が民家の影から確認できた。

「やっと見つけた!!」

「このまま横通り過ぎればいいんだよな?」

「うんっ! お願い!」


 まだ魔獣に気づかれていない、そのうちに美緒は進む方と反対向きに座り直す。景色が逆に流れていく。

 那岐が横を通過してくれたおかげで魔獣の前方まで回り込めた。今度こそ美緒に攻撃ターンが回ってきた。


攻撃呪文(ラガフォード)

「やった! 上手くいった!」

 炎球が命中すると魔獣は怒り、雄叫びを上げながら二人の後を追いかけてくる。


攻撃呪文(ラガフォード)

 那岐も追いつかれないように必死に逃げ続けている。


「飛ばずに地べたで戦ってあげてるんだから感謝してよッ!」


攻撃呪文(ラガフォード)

 那岐が逃げに専念してくれているお陰で、美緒は一方的に攻撃できている。


攻撃呪文(ラガフォード)

 いくつも炎球を放ち、魔獣にダメージが入っていってる感覚はあった。

 だが、足、頭、目と狙う場所を変えても、美緒の実力の問題なのか魔獣は倒れない。


 那岐は狭い路地に入るため急ブレーキをかけて曲がった。その拍子に美緒は体勢が傾き落ちそうになる。

「おっと——」

「平気か!?」

「うんっ!」

 美緒は那岐にしがみついて難を逃れた。


「あれ⋯⋯? いない——」


 顔を上げた美緒の視界にさっきまでいた魔獣の姿はなかった。


「追ってきてないのか?」

 美緒の言葉に那岐はスピードを緩め、完全に止まってから後ろを振り返る。

 路地は車一台も通れそうになく、魔獣ほどの大きさなら入口で突っかかるのがオチであった。


「流石にこんな狭い所までは追ってこれないんじゃないかな⋯⋯?」


 先程、魔獣がいた辺りからブロック塀が壊れる音がする。二人の予想に反し、魔獣は狭い路地を突き進んでこちらに向かってきた。

「マジかよ!」

「そりゃ壊せるか!」

 魔獣は怯むことなく、電柱や左右に配置されている石壁を粉砕して突進してくる。あんな痛い体当たりができるんだからどうということはないんだろうな。


攻撃呪文(ラガフォード)

 物ともしてない魔獣に圧倒されながらも美緒は攻撃の手を止めない。魔獣は美緒の攻撃を全弾受けながらも迫ってくる。


「はぁ⋯はぁ⋯」

 那岐の息が切れてきたのが目に見えてわかった。


「那岐っ。3、2、1で掴むから、飛んで逃げよ!」

「——わかった」

 美緒は走る那岐のお腹に手を回す。


「じゃあ、いくね⋯⋯3、2、1ッ!」

 美緒は那岐をそのまま掴み上げて空を飛ぶ。那岐は美緒の負担にならないよう、元通りのサイズに戻ってから肩に乗っかった。


 魔獣をあっという間に追い残す高さまで無事に飛べたため、魔獣は足元で何も出来ず、美緒と那岐に手出しできなくなった。


「これどうするんだ⋯⋯?」

「どうしよっか⋯⋯」

 美緒の力だけでは倒せず二人は途方に暮れる。美緒は民家の瓦屋根に着地した。


 魔獣は美緒たちが乗っている屋根に突進してくる。


「やばッ」


 危険を察知した美緒は別の家の屋根へと飛び移る。すると家は完全に崩壊し始めた。その瓦礫の中から魔獣が姿を現す。


「マ、マジ?」


 魔獣は睨みを効かせ、完全に美緒をターゲットに入れている。建造物に関係なく、突き抜けて追いかけてくる。その様は砕氷船であった。


 逃げるのは簡単で、家を転々とすればいいだけなのだが辺りは住宅密集地。こちらの攻撃も通りそうになかった。


 魔獣は攻撃の手を止めずに突進し続けている。そのまま減速することなく民家の敷地内に設置してあるガスボンベに突撃した。

 ガスボンベは大きく爆発し、真上にいた美緒と那岐も爆風に巻き込まれて離れ離れにふっ飛ばされた。


 逆U字のカーブを描きながら美緒が落ちた箇所には電柱があり、鋭く尖った先端は上空から落ちてきた人間の肉体を簡単に貫通する。


「ガ——ッ!!」


 美緒はお腹と口から血を吹き出し、身体は電柱に刺さって身動きもできず即死してしまった。


 那岐も動けなくなってしまったのか声が聞こえない。

 静かに時が流れていたのだが救急車のサイレンがその静寂を切り裂く。爆発音を聞きつけた人が消防に連絡したようでどんどんサイレンの音が近づいてくる。


 野次馬も集まってきた。その内の一人が街路灯に照らされ、地面にポタポタと落ちてきている血に気がつく。上を見上げると、電柱に刺さっている美緒の姿を見つけ悲鳴をあげた。


「ひ、ひとだ!!!? 人が刺さってる!!!」

「きゃああああああ!!!」

「誰かッ!!! 誰か助けてあげてッ!!!」


 暗い夜道を照らす電灯。その上部に漏れ出た微かな光に美緒は照らされている。


 まだ、動けない。


 早く——早く那岐を探さないといけないのに。


復活呪文(レイボルツ)

 美緒は天へと上昇していき電柱から身体が抜けた。零れ落ちた血や肉片が美緒の身体に戻っていき肉体が綺麗に再生する。


 よし⋯⋯那岐を探さないと——

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