管理者の力
ノーラSide
ローラとルーラを連れて妾のダンジョンに戻り、まだ未熟な二人に効率のいいダンジョン運営というものを伝授していたら、レイアのやつが早速ダンジョンに入ってきよった。
アヤツ、妾のダンジョンをクリアするとかぬかしおったからな。たっぷり歓迎してやるのじゃ。
勿論怪我なんぞさせるつもりはないが…。そんなことをしたらセーラ姉様やユナ達に何をされるかわかったものではない。
…妾もアヤツに怪我なんぞさせたいわけではないし?ただ、力を見てやる…そう思って調整をする様子をローラとルーラに見せていたら、意味のわからん力に干渉されて妾が手を出せんじゃと!?
「な、なんじゃ!?この力は…こんなものセーラ姉様でもありえん! ローラ、ルーラ! 妾のそばから離れるでないぞ」
「は、はい!」
「な、なに…これ…」
まるでダンジョン全体の制御を乗っ取られたかのように罠が発動、よりにもよってピンポイントでレイアを狙いよった!?
しかも妾のダンジョンでも一番最悪な罠、ランダムテレポート…。
レイアの知り合った茉莉花と言うやつの仲間がこれで飛ばされ、何日も何日も必死に探すアヤツを見て、妾も耐えられなくなり封印した罠…。
あれ以来、あの茉莉花が来るたび気になってみておったんじゃが…。
またアヤツの目の前でレイアが…。
「ごめんねー、ちょっと利用させてもらっちゃった」
突然妾達の前に現れた女。咄嗟にローラとルーラを後へと庇う。妾ではとても敵うとは思えんが、未熟な二人くらい守らねば面目も立たん!
「何者じゃ! 妾のダンジョンに干渉したのはお主か?」
「そう。イリエルの姉と言えば伝わるかな?ちょっとレイアちゃんの覚悟を知るためにあの子は預かるから、もしイリエルが来たらそう伝えといてもらえる?」
イリエル…ってあの神か、しかも姉とは…。
言いたい事だけ言ったら消えよった…。
しかし…あの言い方、レイアは無事と思っていいんじゃろうが…。
せめて納得のいく説明をしてくれんか?セーラ姉様たちにどう説明しろというのじゃ。
これではまるで妾の不手際でレイアを失うたみたいではないか。すでに一度海賊に攫われるという失態を晒し、散々セーラ姉様から修行という名目で制裁をされたんじゃぞ!?これ以上は……。
「ノーラ様、どうしましょう?レイアちゃんは無事なんでしょうか…」
…幼いローラにこんな不安そうな顔をさせて妾は何をしとるんじゃろう。自身の保身なぞ気をしとる場合ではないな。
「セーラ姉様に報告に行くのじゃ! 二人ともついてきてくれるな?」
「はい!」
「もちろんです。 でも…いいのですか?」
「うん?なにがじゃ? ルーラ、はっきり言わねばわからんのじゃ」
「ですから、あの子達です」
ルーラが指差すのは、ダンジョンの管理画面に映しだされているパニック状態の茉莉花達……。
そうじゃった! アヤツも二度もこんな目に合うては正気ではおれんじゃろうに。じゃがなぁ…。レイアもおらん所へ妾が行ったら驚かすだけじゃろうし、どうしたものかの。
せめて妾が人化さえ出来れば…。これも修行不足が招いた結果か。
「ノーラ様、少しだけでいいので管理権限を貸していただけませんか?思いついた事があるんです」
「何するんじゃローラ? まぁ、かまわんが…」
管理権限をローラへと貸し出す形で渡してやる。何をする気じゃろうか。
まだ小さな前足で器用にコントロールパネルを操作するローラ。こやつ…妾より手慣れとらんか?
目の前にあらわれたのは無数の画面。どれも恐らくはどこかのダンジョンを映したものじゃろうが、こんな事できる訳が…。
「見つけました!」
「なんじゃと!?」
次々と消えていく画面の中、残った一つには、暗い部屋に佇むレイアの姿が。
「ローラ、何をしたんじゃ!?」
「罠のテレポート先を一度各地のダンジョンへと繋いで、先程のと同じ座標のものに絞っただけですよ?」
簡単に言うが…。いや、じゃがあのテレポートは実際、どこかのダンジョンへと繋がるものじゃ、それを逆手にとって特定したというのか。こやつ…やりおる。
「ローラ、それどこ?」
「えーっと、この辺りです」
ローラはワールドマップを展開し、海の中にぽつんとある小大陸を指す。ここは…!
…妾のダンジョンコアからワールドマップなんぞ開けたのか。
「な、なあローラ。お主はこんなダンジョンコアの利用法を何処で学んだのじゃ?」
「ヴィーラ様にダンジョンを任される時に一通りの説明はしていただきました。口頭説明のみで実践はなかったのですが…」
あね様か…。なるほど、各地のダンジョンへ管理者を配置したのもあね様ならさもありなん。
「ここって…まさか例の?」
「はい。 恐らく今セーラ様達が潜って居られるダンジョンですね」
「ローラ、そのままあちらの管理者を介してセーラ様に報告はできそう?」
「それが…さっきからアクセスしようとしてるのですが、これ以上あちらのダンジョンへはアクセスできません」
「おかしくない? どのダンジョンへも連絡くらいはできるはずよね?そこの管理者はだれ?」
「わからないのです…。そもそもレイアちゃんのいる部屋へしかアクセスできなくて」
こやつらはなんの話をしておるんじゃ?
「じゃあセーラ様には直接報告に向かうしかないとして、あの暴れてる子達に対処したら?」
「そうですね。 ノーラ様、あの人達のいる場所へ音声を繋ぎます。状況を説明してあげてもらえますか?」
「ん? お、おう。任せるのじゃ!」
ローラが何を言うとるのかさっぱりじゃが、説明な?説明か…なんて言えばいいんじゃ!?
「繋がりましたよ!」
「…う、うむ。 茉莉花、聞こえるか?」
「”な、なんだ!? だれだテメェは!”」
「妾はこのダンジョンの管理者じゃ。レイアの友人でもある」
「”はぁ!?ダンジョンの管理者だと?レイアのダチ!? 意味わかんねぇぞ! とりあえずここへ面出せや! そんでレイアを返しやがれ!!”」
「レイアはアヤツの姉達のおるダンジョンへと連れて行かれた。今は無事じゃから安心せい」
「”そんなもの信じられるかよ! 本当に管理者だと言うなら…ハヅキを、ハヅキを今すぐ返しやがれ!”」
ハヅキか…。茉莉花が探し続けておる娘じゃな。ランダムテレポートで何処ぞのダンジョンへと飛ばされ、その後の事までは妾には知る由もない…。
「あやつは…ここにはおらぬ。どこへ行ったのか妾にもわからぬのじゃ…すまぬな」
「”…チッ…それで信じろってか?ふざけんな!! 俺は…何としてもダンジョンをクリアしてダチのハヅキを助け出すんだ! なのに…俺は…今度はダチどころか惚れた相手を巻き込んで失った…。俺は何をしてるんだ…クソがぁァァァ!!”」
「落ち着け茉莉花! レイアの事は妾に任せておけ。必ずまたお主に会わせてやるのじゃ。信じられぬかもしれんが、今はそれしか言えぬ」
「”ふざけるなふざけるな!! 信じる理由がどこにあるんだよ…”」
「仕方ないのぅ…。ちと待っとれ。今こちらへ飛ばしてやる」
周りの奴らも不安そうじゃし、あやつらには一度会うておる。もう直接会うしかないじゃろう。
レイアの友じゃと言うのならこのままにも出来んのじゃ…。




