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異世界に弟を奪われた姉達の奮闘記 〜なお弟はTSしても異世界を気ままに満喫中〜  作者: 狐のボタン


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最後のダンジョン



いよいよナギのいた森へと出発する日。

二割ほどの力を割いた分体を城へと残していくからよっぽど問題はないし、緊急ならメインの意識をそちらへと移すだけ。


エノテラ、ロアール、ブルガーに見送られて城のカタパルトからドラツーでテイクオフ。

操縦はいつもどおりティーに一任。 (任せてー)


初めてドラツーに乗る子達にはみんなが色々と説明してくれてるからそちらもお任せして、私はクッキーを介して出発前にユウキへと送った手紙の返事を読む。

ユウキ本人は帰り辛いのもあって、森の浅い部分で自身を鍛えつつ、スピネルが精霊達と交流するのを見守っていたらしい。

流石にユウキも深部へ行くのは危険と判断して入ってはいないそうだけど、精霊達から森の事はある程度聞いてくれたみたいで、大まかではあるけど手書きの森の地図まで同封されてた。

地図を同封するため、手紙というアナログな方法をとったのだろうけど…。

だってユウキ、何度かけてもファミリンに出ないんだもの。


私も一度偵察を兼ねて小さな分体を飛ばして上からは見てみたけど、木々が生い茂っていて地上の様子は一切窺い知る事もできなかった。

精々森の広さと強力な魔獣が闊歩しているって事、後は魔力の一番濃い場所が把握できているくらい。


「マスター。いきなり中心地へと向かわれるのですか?」

「そうねノア。一度ユウキ達を拾うために外縁部に降りるけど、その後は空から中心地へ向かうよ」

リビングのテーブルにユウキのくれた地図をおいて、その中心になるだろう場所を指す。

「先行して見てきてもいいのよ〜?」

「キャンディーの気持ちは嬉しいけど、私自身がこの目で見て確認したいからね、みんなで行こう」

「は〜い」

皆はちょっとした旅行感覚で楽しんでるし、何も森を制圧するつもりもない。

どういった場所なのかというのをこの目で見て把握しておきたいだけだから。

森へと降りるメンバーも限定していて、これについては全員の同意も得ている。ティーに戦闘力を見てもらい、危険のないメンバーだけに絞った。

私と召喚獣のキャンディー達と、連絡要員にティーの分体だけ。例外としてナギは出身の森だから危険もないし好きにしていいと伝えてある。

スピネルも許可してもいいのだけど、ユウキは許可できないから来るかは聞いてみないとわからないし…。


キャンディー、ノアと、ドラツーに並んで飛行してついてきてくれているチョコ達にも情報共有しつつ、森へ降りてからの事を話し合っていたら、うちの子達のドラツー案内も終わったらしく、みんなリビングへと戻ってきた。 (また内部が変わってるから楽しかったの)

そうね。個室は少ない分、私達の部屋は広くしてあるから。

個室を用意したのは、私の執務室というか仕事部屋と、後はユウキ達の部屋。グロリア達三人の部屋をそれぞれ。後はナギの為の部屋。

お風呂は前に男女で分けたまま残してあるから、ユウキとレウィが合流しても問題なし。 (グロリア達はさー)

…言わないで。なんとなく予想はできてるから。リア達にも”いつ話し合うんだ?“ってここ数日、何度も言われてるのよね…。

今の立場上、政略結婚ってなると私が一方的に断れるものではないのも理解しているけど、私としては本人達の意思を最優先にしたいから敢えて時間をかけてる。でもその辺はなかなか理解してもらえないらしい。


あの子達が本心から望むのなら受け入れるけれど、国の為とかそういう自己犠牲な想いがあるのなら無理にそういう関係になる必要もない。仮に他所へ政略結婚に行くのが嫌だからという理由でこちらに居たいというのなら、単に魔族領の仲間として受け入れればいい。 (時間おけばおくほどーな気もするけど)

うーん…。それぞれ一度話し合おうとは思ってるのよ。 (なんか…他にも悩みがありそう)

それはね。他にも色々と懸案事項はあるよ…。 (うーん?)

例えば地球側。奈々達への説明もそうだし、いくらまた魔王になったとはいえ、まだ私自身も学校にちゃんと通いたいって気持ちもあるからね。 (あー)

アキナさんの始める学校に関しては私自身の分体を送ればいいだけだから比較的悩まないで済むくらい。

問題はそれらに手を付け始めると、ティーがこの世界を隔絶させて時間の流れとかに干渉してくれているものに影響が出るって所かな。 (うむ…)


現状、魔王としてまたトップになったからには当分この地を離れることは不可能だからね。

自分の意思でこちらに戻ってきてしまった以上、召喚されて異世界へ来て用が済んだら還る…ってのとは全く意味が違うし。 (しばらくは時間のことは気にせずこちらに集中するしか?)

そうね…。ただ奈々達への説明が出来ないままなのが気分的に引っかかるだけなのよ。ほら…あの子達も恋人として認めたわけだからね。当然師匠達に対してもそう。 (伝言くらいはできるけど)

時間戻しちゃうのに? (あーそっか)

恋人として想って貰えてる人たちに、今の現状を説明できてないのがもどかしいっていう私のわがままだから気にしなくていいよ。 (……)

時間を戻しちゃったら此方にいない人達にとっては、ほんの一瞬の出来事だもの。その短時間に色々有り過ぎたってのを説明するのは私の責任だし。 (こちらに呼ぶ?)

師匠達や立場のあるシルフィーみたいな王女達も不可能だし、奈々達には危険が大きすぎるね。

今は魔族領の統治自体は安定しているけど、周辺の魔獣の強さが飛び抜けている上に、魔族領を取り巻く国々との関係や情勢がまだ不安定なところへ平和な国に過ごしている一般人みたいな子達を呼ぶのは違うでしょう? (むー)


「まーたアスカが難しい顔してるよー」

「どうせ奈々達のことでしょ。一人で悩むくらいなら頼りなさいって何度言ったらわかるのよ?」

そうは言うけどねリア…。時間やらも絡む本当にややこしい状況だから説明もしにくいのよ。


…今解決できそうな方だけでも相談しておくか。

「いつ話し合おうかな?って思ってね、この旅の間ならこっちの私は執務が限られているから時間もあるし…」

「あーそっちね。それならそうと言えばいいじゃない。話し合う時間くらいあげるわよ?」

「ありがとね、リア」

「ちゃんとローズも連れて行くのよ」

「…わかったよ」

ローズは仲良くなれたうちの子達と離れたくないっていうのが此方に残った大きな要因だと思っているけど、本人から直接確認はしておかないとね…。



三人を呼んでドラツー内に用意した私の仕事部屋兼執務室へと移動。

執務デスクではなくソファーへと座り、三人を向かい側へと座らせる。

「竜魔王様?わたくし達になにか御用ですか…?」

「うん。 今はこうして旅の途中だけど、時間に余裕があるからね。大切な話があるから三人に来てもらったよ。私がゆっくりと時間の取れる今がいいかなと思って」

「…わかりました。しっかりとお聞きいたします」


三人とも真剣に話を聞く姿勢だから此方も日和っている訳にはいかない。

ひと呼吸おいてから三人の顔を見渡し、本題に入る。

「まずは確認だけど、あなた達が魔族領に残って故郷に帰らない理由を聞かせてくれる?勿論追い返す意図で聞いている訳ではないから、それは安心して。此方に残っていたい理由を…本心を聞かせてほしいの」

私の言葉に、三人はそれぞれ顔を見合わせるようにした後頷きあって…。

「「「竜魔王様をお慕いしているからです」」」

「口裏をあせているの?国のためにって…」

「違います! 勿論、生まれ故郷の国やそこに暮らすお父様やお母様の事ももちろん大切ではあります。ですが…先日までこちらに滞在していたお母様にも言われたんです。”国の事は気にせず、自分の気持ちに正直に生きなさい“と。わたくしは自分の意思で竜魔王様と共に在りたいのです!」

グロリアの目はまっすぐに私を見つめ、その意志の強さと想いをぶつけてきている。言葉に嘘偽りはないのだろう。


「私もです。竜魔王様のような方にお会いしたのは初めてで…。こちらに居れば居るほどお慕いする気持ちは膨れ上がるばかり。たとえ私の力など微力ではあっても、お側でお支えする事ができたら…と」

ハツユキも私の目を見つめてハッキリとそう伝えてくれる。うん…この子も真剣なんだね。


「私は…まだ姉様たちのようには恋愛というものがよくわかりません…。でも竜魔王様の事は大好きです。優しくて国中の人達から慕われていて、誰よりも尊敬できる方です。こちらにいては駄目ですか…?」

ローズも今の気持ちを正直に伝えてくれているのはわかる。私自身、未だに恋愛に疎いからそちらに関しては偉そうなことを言える立場でもないのよね…。


「そっか。三人が自分の気持ちや想いを押し殺して政略的な意味で此方に居たいと言ってるわけじゃないのは理解したよ。私が心配していたのはそこなの。確かに三人とも王女や氏族長の娘という立場で政略結婚が当たり前なのだとしても、私としては我慢したり無理して嫁ぐ必要はないと思うからね。だから、国へ返されたら政略結婚させられるのを避けるために此方に居たいというのでも受け入れるつもりしてたから。だから焦らなくていい。まだ時間はいくらでもかけていいからもう一度よーく考えて後悔の無いようにね」

「…竜魔王様は…竜魔王様はどうお思いなのですか? 断れないからと言う理由だけで私達を受け入れられるのですか?」

………痛いところを突かれてしまった。


「そうね、三人に本心を聞かせてと言っておいて私が話さないのは善くないね。在りのままを話すから聞いてくれる?」

「「「はい」」」










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