決意と目標
ログアウトするお母さんと、またダンジョンへ行く姉たちを見送ると一気に静かになった。
「やっぱり寂しいですか…?」
「まぁな…。みんな賑やかやし、一斉にいなくなると置いていかれた感じがするんだ」
「私がいます」
ゼファーラさんはオレを抱きしめてくれて、びっくりしたお陰で寂しいとか考えてる余裕がなくなった。
ミシってなったり気絶しない抱きしめられ方ってゼファーラさん以外で経験がないから戸惑う。
みんなめちゃくちゃ馬鹿力やからなぁ…。
「学校へは明日の朝に送ります。今日は二人でゆっくりしましょうね」
「ああ」
優しいお母さんってゼファーラさんみたいな人のことをいうんやろうなぁ。
一緒に夜ご飯を作り、二人で話をしながらのんびり食事をして…。
ゆっくりお風呂に入り、落ち葉の布団へ潜り込む。
そうするとふと考えてしまう。
オレが学校に行ってる間や、現代に戻れるようになったらゼファーラさんはまた一人きり。
娘が帰ってきてくれればいいだろうに、それも望みは薄い。
きっとすごく寂しい思いをするんじゃないかって…。
だからこそ今夜もギリギリまで一緒にいようとしてたし、またお風呂も一緒に入った。
なんとかなんねぇのかな…。
イリエル様にお願いして娘の居場所を聞いて、説得しに行く…とか?
でもなぁ。相手にも事情や今の生活があるのに、オレの感情をぶつけたところで…って話だよな。
はぁ…。
もう、あれやな。オレができる限りここに戻ってくるのが一番かも。
魔の国もここに隣接してるわけやしな。うん、そうしよう。
考えがまとまったら一気に眠くなってきた……。
翌朝は早めに起きて、またゼファーラさんと朝食の用意をして一緒に食べて、学校へと送ってもらった。
「また週末には迎えに来ますからね」
「うん。 あのさ、週末やなくてもゼファーラさんの時間が空いてたら会いに来てくれない?」
「いいのですか…!?」
そんな驚かれるとこっちもびっくりするわ。
「ほら、また勉強も教えてほしいし、会いたいからさ」
「ふふっ…わかりました。夜にお邪魔しますね」
「ああ!」
ゼファーラさんは嬉しそうにオレを抱きしめると”また来ますね”とワープしていった。
これで良かったよな?
「レイアちゃんが優しい子で私は嬉しいよ」
「うわっ…イリエル様。 おはようございます」
「おはよう。切り替え早いね?」
「流石に突然登場するのにも慣れてきたし」
「そっか。 ありがとうね、あの子を気にかけてくれて」
「ん? ゼファーラさんのことか? 別にオレがそうしたいって思っただけやし」
「だからありがとうなんだよ」
イリエル様にお礼を言われるのはよくわかんねぇけど、褒められたみたいでなんか嬉しいな。
「ここに来たのはもう一つ用事があってね…」
「うん?」
「ユナ達が向かった最後のダンジョンはちょっと今までとは違って、難易度が高いの」
「大丈夫なのかよ、それ…」
「こればっかりは私にもどうにもならない理由があってね…。きちんと説明するから聞いてくれる?」
「ああ、わかった」
姉達の安全に関わるのならきちんと聞いておかねぇと。
「最後のダンジョンに封じられているのは”御守”なの」
「それって安産祈願とか家内安全みたいなあの御守?」
「そのイメージで間違いないんだけど、地球から持ち込まれた御守だから、お姉ちゃんの管轄になるんだよ」
お姉ちゃん…って…ああ!
「真っ白なところであった優しいお姉さん」
「優しいに関しては同意しかねるけど、思い浮かべてる相手であってるよ。五人姉妹の長女で、力も管理能力も一番高い。そのお姉ちゃんの管轄になってるんだよ」
「つまり、地球の御守だから、当然その御守に影響力を持っているのは地球の神様だからって事?」
「そう。だから何があっても私は手が出せない。勿論お姉ちゃんが自分の子供みたいなユナ達に酷いことはしないけど、間違いなく覚悟を試すとは思う。世界を渡るなんていう許可を出すわけだからね」
「ああ…。オレはいいのか?」
「レイアちゃんは一応半分は私の管轄になるからね、お姉ちゃんでも勝手なことはできない…はず…」
確証はないのかー。
「お姉ちゃんに勝てないのはレイアちゃんならよぉーくわかると思うけど?」
「それは…うん。無理やな」
「つまり、週末までにクリアして戻ってこれる保証はないから、しばらく会えないかもって思っておいて」
「本当に命の危険とか大丈夫なんだよな?」
「それはないよ。ただギリギリの試練を与えるとは思う」
みんな…大丈夫かな。助けに行けたらいいのに。
「レイアちゃんもこちらで鍛えるでしょう?」
「そうやな…。イリエル様、一つだけお願いしてもいいかな」
「聞けることならね」
「オレが強くなったら、姉たちの手伝いをさせてほしい。オレにだって関係することなのに何もしないのは嫌なんだよ」
「……わかったよ。お姉ちゃんに確認はしてみる」
「それだけでも充分嬉しいよ」
「ホント素直でいい子だなぁ…私も頑張ってみるよ」
「お願いします」
イリエル様は”また来るね”と消えていった。
さてと、オレはまずは学校に行かねぇとな。
ユリノ姉とも約束したし。やれることからこなしていくしかない。
カピバラックの寮で学校へ行く準備をして、メイドのカティアさんに見送られ、アヤさんと寮を出る。
途中で楓花と茉莉花、ミヌエットとリンにも会って、一緒に登校。
「レイア、ダンジョンの話は考えてくれたか?」
「ああ。一緒に行くぜ。オレも鍛えたいからな」
「そうか! ありがとな」
「オレの為でもあるから礼なんていいって」
「僕も行くからね!」
「わたくしもです」
「いくのぉ〜」
頼もしい仲間だよ。これならノーラを驚かせられるくらいダンジョンを進めるかもな!




