ようやくその日
溶岩の中を動き回る炎龍を倒すのはそれなりに苦労したけど、うちらが揃って協力すれば倒せないものでもない。
シノ姉の使う水属性の弓攻撃で怯んだところを、ノーラとフォーラの作ってくれた足場を使い、接近戦に持ち込んだうちらがたたみかけ、真っ赤に燃えるようだった炎龍は力尽きて身体も真っ黒になった。
全体的に熱いのもあるから早くカタがついて助かった。
倒れた炎龍からは武器こそ出なかったものの、また炎龍玉と各種素材が拾えたから、ユリノ曰く換金すればかなりの額になるそう。
こちらでの生活にもお金は必要だからな…、正直助かる。
ボスを倒せば当然扉が開き、目的の宝箱を発見。
念の為、シノ姉に箱を開けてもらい、中身を手に入れる。
「今度は何だったんだ?」
「多分お財布だと思うわ〜…。ほら…」
シノ姉が見せてくれた布製の財布らしきものからは、昔の小判等の硬貨が出てきた。
骨董品としての価値がありそうだけど、うちらにとってはレイアを連れて帰るために大切な物の一つ。
「レイアが見たら喜びそうね。昔からこういうの好きだし」
「だな。古銭やコインとかそういうの好きだったもんな」
「そうなの? でもあの子、こちらの硬貨にさして興味を示してなかったわよ?」
「使えるお金として考えてるからだろうな。 レイアが好きなのは記念のメダルとか、昔使われていたけど今は使えない硬貨とかだから」
こちらの硬貨ってデザインが色々あるし、本物の金とかでキレイだから全く興味を示さなかったはずはないんだけどな。
「初めは興味深そうに見てましたよ。ただ、それ以上に余裕がなかったのもあるかと」
「あぁ。何するにもお金はいるもんな。うちらも稼がなきゃって狩りとかしたし」
「馴染むというか、切り替えは早いですからね、レイアは」
ユリノの言うように、零君はレイアになってもこちらで普通に生活してたくらいだからな。普通は多少なりとも取り乱したりするだろうに。
うちらがいなかったことをもう少し寂しがっててくれても…とは思ったくらいに…。
話しながらうちらはダンジョンを脱出。
今回はアイテムを手に入れてもイリエル神こなかったな、と思ってたら…。
「はい、お疲れ様。 あの子もこっちに戻ってきてるから会うための方法を説明するよ」
「会うための方法ってなによ? アタシ達はやることやったわよ!」
「落ち着きなさいアリス。 あの子はここの島に住むエルフに預けているの。外部の人間は普通は村へ入ることすらできないの」
そういやミミがゲームの方でもエルフに会うためには試練があるとか言ってたな。
「うちらは何したらいいんだ?」
「今回は私から話が通してあるからいいけど、武器類は全部しまう事。村の中では出さないようにね。後は力の証明をする為にダンジョンで手に入る玉を見せる必要があるのだけど、手に入れたよね?」
「これのことかしら〜…」
シノ姉が取り出したのは水龍と炎龍の玉。手のひらサイズの半透明な玉は、夕方とはいえまだ明るい日の光の元だと水晶玉のように見えなくもない。
「どちらか一つだけあればいいんだけど、よく一度のダンジョンアタックで二つも手に入れたね?」
シノ姉だしなぁ。運に関してなら敵う奴は居ないんじゃないだろうか。
他にもイリエル神からエルフの村で守るべきルールとかを教わり、明日の朝には村へと入れるようにエルフと話をつけてあるそう。
アリスとアイナはすぐに会わせろと騒いでいたけど、ここから里へは距離もあるらしく、今から移動してたら深夜になるから、村へと入る手続きも出来ないと言われた。
「レイアに無理をさせるの?そろそろあの子も寝る準備してるのに」
色々と説明を聞いていたらもう夜だからな…。ダンジョンから出た時点でうちらをパッと移動させてくれればよかっただろうに。気の利かない神様だな。
「悪かったね。気が利かなくて。あまり軽々しく神の力を行使するのもよくないから諦めて」
やれやれ…。
アリス達もレイアに無理をさせるのは本意では無いのか、悔しそうではあるけど諦めてた。
明日の朝にまた来るからとイリエル神が消えた後、うちらはマジックテープ内の家のほうへと入った。
現実の方でも週末になるから、リオとミミもログインしたまま。明日レイアと会えたタイミングでお母さんを呼びに行くそう。
夕食を食べたり、お風呂に入ったりと一日の疲れを癒やし、ゆっくり休む。
直ぐにレイアと会えるのだから気持ちも軽い。
翌早朝、朝食を食べて出かける準備をして外へ出た。
全員しっかりおしゃれをしてるのはもうね…。レイアはあんまり気にしないんだろうけど、みすぼらしい格好で会いたくないってのはみんな共通の思いなんだろう。
「こんなことなら城からもっと色々とドレスを持ってくるんでした…」
「リシェル、ここからまだ移動するんだからドレスはどうかと思うぞ」
「足手まといになるようならおいていくわよ?」
「そういうアリスはしっかりドレスじゃないですか!」
「アタシ達は飛べるもの。道がどうだろうと関係ないわ」
うちらも飛べるといえば飛べるけど、リシェルとシャロンは飛べないからな。
「私は森を行くのなら本来の姿で行く」
「シャロン! 変身を解くのならスカートは脱ぎなさい…って遅かったですね」
ユリノの忠告も遅く、馬の体に耐えられるはずのない人用のスカートは破れてボロボロに。
「しまった…。あの一枚しかないのに!」
「今回はその姿のまま会えばいいのでは?」
「しかし!」
「迂闊なのが悪いんです! 少し考えたらわかるでしょう!?」
「くっ…」
うちらも予備の服くらいはあるけど、学習してもらうためにも今回は渡さずにおくか。
別にシャロンが人の姿だと、うちらの中でスタイルが一番良くて腹が立つからとかではない!
揉めていたらイリエル神が呼びに来て、向かうべき方向を教えてもらって移動。
現地につく頃にはまた来てくれるらしい。
「レイアちゃんに会う前に、また一度シャワー浴びなくてはいけないかもですね…」
ミミの言うとおり、森の中を行くうちらは到着する頃には汚れと汗でとてもじゃないけどレイアに会える姿ではなくなりそうだ…。
せっかくおしゃれしたのに…気が早かったな。




