ダンジョン内にて
ノーラのダンジョンに潜り始めてわかったことが。
まずはリン。先頭を歩いているんやけど、突然四つん這い状態でクンクン…と。
「罠ですからぁ気をつけてくださいねぇ〜」
「リン、潰せるのなら潰してしまってくれるかしら」
「りょうかぁ〜い!」
リンは罠があると思しき場所へと拳をたたきこむ。当然地面も抉れるけど、罠も消し飛んでるらしい。
「大丈夫ですよぉ〜」
ニコニコとまた進むリン。
そんな事を繰り返しつつ、道中の雑魚もリンが殴り飛ばしておしまい。
しばらく進むと広い場所に出た。ここってルリマリとユリノ姉と来たときに一度テント張った場所か?
リンを先頭に、ミヌエット、楓花、オレ、茉莉花って順番で進んでるんやけど、前にいる三人が一斉にケモミミをピクピクさせる。
「敵が来るよ!」
「わかった!」
やっぱり耳が良いんだな。
弓を構えるとズームされて、前よりもはっきりと敵が見える。これはユリノ姉とアリスのお陰。
てか、あれ…なんやっけ。おでこの宝石が弱点とか言ってたやつ。背も高いからオレの弓くらいしか当たらないだろうと判断。
「まだこっちに気がついてないし不意打ちするから、もし仕留めきれなかったら頼む!」
「わかりましたわ!」
「はぁ〜い」
「やっちゃっていいよ、レイアちゃん!」
狙いを定め、一射。
吸い込まれるようにおでこの宝石へと突き刺さり、前にも一度聞いた女の人みたいな恐ろしい悲鳴が…。
「な、なに!? 今の…」
「名前忘れたんやけど、頭の宝石が弱点のやつ」
「おい! レイア、お前ヴィーヴィルを一撃で倒したってのか!?」
ああ、そんな名前やった気がする。
全員で倒した場所へ行くと、ぐったりとしているヴィーヴィル。頭にある宝石のど真ん中には一本の矢。
「マジかよ…あの距離からか。さすがBランクだな!」
「弱点を教えてくれた姉達のお陰やけどな」
「いやいや…。和桜の国でもここまでの弓の名手は数えるくらいじゃない?」
「だな。ますます気に入ったぜ…」
褒められて悪い気はしねぇけど、流石に照れくさい。
「ここはこんな早くから高レベルの敵が出るのですね…」
「難易度高いのぉ〜」
「そうなのか?」
「ええ。ニャンダー近くのはもっと難易度が低いです」
「ヴィーヴィルを倒そうと思ったらパーティ組むのは必須レベルだぞ。だから俺も普段はやり過ごす。前衛の俺一人では決定打に欠けるからな」
茉莉花が言うには、数人の前衛が囮をし、そのスキに後衛の弓使いや魔法使いが宝石を狙うというのが戦い方として定石らしい。
「弓で不意打ちしただけやぞ?」
「普通はそれも躱されるんだ。矢の風切り音がするだろ?」
確かに…。弓を引絞る時の軋み、矢を放ち飛んでいく風切り音、無音なわけがない。
「レイア様の弓は〜音しなかったのぉ〜」
「そうなのか?」
何かしらスキルが影響してるんだろうなぁ。暇な時にでも確認するか。
今は素材の回収をしてからまた進む。
次に出てきたワームは楓花が手に纏った蒼白い炎を刀のような形にしてすごい速さで振り回し、細切れに…。グッロ…。
「ワームくらいならこんなもんだな。良くやったぞ楓花」
「少しくらい僕もいいところ見せないと…」
「格好良かった楓花」
「そ、そう!? えへへ…」
バラバラにしたのは早く片付けてほしいけどな。
「わたくしも負けてられませんわね!」
ミヌエットは大きな剣を担ぎ直すと気合を入れてる。
「あ、そうだ! ここは前に床が崩れて下層の湖まで落ちたから気をつけてくれよ」
「「はぁ!?」」
「よくご無事でしたね…」
「運良すぎるのぉ〜」
下が水だったからな。何よりあの時はノーラがいて、帰りは送り届けてもらった。
前回はワームが出たときに崩れたけど、今回はなかったからノーラが補強でもしたんやろうか?
ま、落ちないに越した事はないか。
という事はつまり、オレはこの先へ進んでいない。気をつけねぇと。
「ここからはまた道が狭くなるから気をつけろ。敵は雑魚ばかりだけど油断はするなよ」
「さすが茉莉花だな。頼もしい」
「だろ?ここは俺の庭みたいなもんだからな」
「そういや茉莉花はどうしてダンジョンに拘るんだ?」
「ん?そんなもの決まってるだろ。初めてダンジョンを制覇したっていう証がほしいんだ」
「証?」
「ああ。最下層にはダンジョンマスターがいて、倒せば証が手に入る。俺はそれかほしい」
ここのダンジョンマスターってノーラだよな。友達だから倒されるのは勘弁してほしいんやけど…。
何よりうちの姉達か既にいくつものダンジョンを最下層まで行ってクリアしてる…なんて言えるわけがねぇ。
オレが茉莉花と話してる間に出てきたザコ敵は、ミヌエットとリンが駆逐してくれてた。
力が強いのは獣人だからなんやろうか。オレもリンに羽交い締めにされた時に抜け出せなかったくらいやし。
しばらく移動してたどり着いたのは、少し広い空間。
「ここで止まれ。…思ったより早くついたな」
茉莉花が立ち止まるって事は、ここに何かあるのか?
「ここは?」
「中ボスクラスのやつが日替わりで出てくる。今日なら…」
茉莉花の言葉を遮るようにズシンズシンと足音が。
「ドラゴン…?」
「いや。鎧トカゲだ! 並の物理攻撃は効かねぇからな。楓花!」
「わかってます! レイアちゃん、援護よろしくね」
「任せろ!」
青い炎を纏った刀を構えた楓花が先陣を切り、左右に別れたミヌエットとリンも攻撃に参加。
ただ、ミヌエットの大剣による剣戟はガキンっていう金属音みたいな音を立てて弾かれ、リンの攻撃も同じ音を立てて弾かれてる。
援護か…。あの二人の攻撃が通らない時点で、アイツの身体にはオレの弓も効く気がしない。
となると、狙うのはどうやったって鍛えられない部位。
狙いを定めて矢を放つ。
「グギャーー!」
「レイア、ここから目を狙い撃ちするかよ。いい腕だ! 楓花、たたみかけろ!」
「はーい!」
鎧トカゲが怯んでいる間に楓花の跳ね回るような攻撃がトカゲの装甲みたいな鱗を切り裂いていく。
「鱗の剥がれた場所なら物理武器でもダメージが通る!」
「わかりました!」
「はいなの〜」
オレも高い位置にある鱗の剥がれた場所を狙い撃つ。
ある程度ダメージを与えたところで、突然鎧トカゲが激しく暴れだした。
しっぽを大きく振り回し、四本の足もドタドタと暴れまわる。
ガギンッ!
「くっ……」
「ミヌエット、大丈夫か!!」
「ええ…なんとか…」
大剣を盾のようにして振り回されたしっぽを防いだのはさすがだ。それでも衝撃は殺せず、かなり後方へと弾かれてる。絶対に怪我してるやろあれ…。
弓からマジックガンへと持ち替え、ミヌエットを狙う。
「レイア! お前何を! 味方だぞ!」
「大丈夫だ! ミヌエット! 避けるなよ。オレを信じろ!」
「は、はい!!」
パシュっと放たれた光る弾丸はミヌエットへと当たり、身体が温かい色の光に包まれる。
「これ…は…」
「怪我も治っただろ!」
「ええ! ありがとうございます!」
「マジかよ…マジックガンでのこんな遠距離回復とか聞いたことねぇ…」
一度リシェルお姉ちゃんの船で無くしたマジックガンやけど、アイナがまたくれたんだよな。沢山あるからって。さすが海賊の頭。
念の為、リンと楓花にもマジックガンの光を当てておく。
「ありがとう! 助かるよ!」
「力が湧いてくるの〜!」
そこからはもう楓花とミヌエット、リンの連続攻撃。すぐに鎧トカゲは動かなくなった。
「よくやった。俺が手を貸さなくても倒せるとは思わなかったぜ…」
「それなんですけど…茉莉花姉様、レイアちゃんの当ててくれた玉のおかげです。あの後から明らかに攻撃力と速さが増したんです」
「ええ。いつもより剣が軽く感じる程でした」
「私もなの〜。全身から力が湧き上がってきて〜」
「確かに三人とも動きが良くなってた気はしたが…」
「オレは回復魔法を乗っけて撃っただけやぞ?」
それ以上でも以下でもない。
「レイア、試しに俺を撃ってみろ」
「ん?まぁいいけど…」
少し離れて茉莉花を狙い、さっきと同じように撃つ。
玉のあたった茉莉花は温かい色の光に包まれるのも同じ。
「確かにこれは…力が漲ってくるな!」
「そうなのか? マジックガンのお陰かもな」
アイナが良いのをくれたんだろう。
「ちょっと借りてもいい?」
「いいぞ」
楓花に渡すと、壁に向かって一発。青白い玉が飛んでいき、当った壁が抉れるように弾け飛んだ。
「マジックガンは普通だよ」
「でも壁が…」
「他ので撃ったことあるけど変わらなかったから」
つまりあれが楓花本人の力ってことか。
「じゃあやっぱりレイアの回復魔法が特別だって事だ。……なあ、レイア」
「うん?」
「頼む。俺のダンジョン攻略に力を貸してくれ!」
力を貸すのはいいんやけど、ここのダンジョンってノーラがダンジョンマスターなんだよな。
友達と戦うとかしたくねぇし、どうしたものか…。
「少し考える時間もらってもいいか?」
「ああ! 命がけのチャレンジだ。無理にとは言わねぇ。その代わり、手伝ってくれたら俺の全部をお前にやる!」
「茉莉花姉様!!」
「…頼む。よく考えてみてくれ」
「わかった」
一度ノーラにどうしたらいいか聞いてみよう。ダンジョンマスターやしな。
いい時間なのもあり、その日はダンジョンから出る事になった。
「ちょっと遅くなっちまったな、悪い」
「みんな近くに集まってくれ」
「レイアちゃん、急いで出ないと帰りにも戦闘があるから…」
「これがあるから大丈夫だぞ」
「おま…それ!!」
シノ姉がくれたんだよな。ダンジョンから一発で外に出られるアクセサリー。




