第4話 ダンジョンメイク(1)
この世界に転生して体感時間で数日が経った。不思議なことに腹も減らないし、眠くもならない。
まあ、寝ようと思えば寝れるしDPで購入したパンも食べたら美味しかったな。うんこは出なかったけど。
今日は野盗達を殺して得たDPを元手に、さらなるダンジョンの改築を試みる。
「そういえばダンジョンモンスターに自我を持たせるには追加の階層が必要だったよな」
アリアの話によるとモンスターは基本的に自我を持たない。お凛のように意思を持たせるモンスターの個体数はダンジョンの階層数に依存するらしい。
「ええ、1階層を追加するごとに5000DPかかります」
「鬼5匹分か。うーん、難しいところだな……」
「せっかくなので階層追加してはいかがでしょう。固定資産なので失われるものはないですし」
「そうだな。アリアがそう言うなら……」
ダンジョンコアを操作して新たな階層を追加した。
震度2くらいの揺れを感じる。
周りを見ると、ダンジョンコアを置いてある部屋の奥から下へと続く階段が現れていた。
降りてみると四畳半ほどの部屋が有るだけだったが。
「取り敢えず、第一階層のダンジョンを強化するか」
現在、第一階層は入り口から20メートルほどで分かれ道。それを過ぎると10メートル四方の大部屋。そしてその奥に小部屋が有るだけだ。
一旦小部屋を取り除き、その代わりに横20メートル、縦40メートルの大きな部屋を作る。
そして、その周囲6箇所に小さな部屋を作った。
「これはどういった場所ですか?」
「ここはさっきの挟み撃ちエリアを抜けた侵入者を大人数で相手取る場所、【ビリヤードステージ】だ」
「ビリヤード?」
「ああ、敵がこの部屋にたどり着いた時、6つの部屋からモンスターが現れる。四方八方から攻撃され、相手はなすすべなしってわけだ」
「なるほど。では敵が一目散に6箇所の部屋に入ってきた場合はどうされるのですか?」
「ふっふっふ。ビリヤードってのは穴同士は奥で繋がってるんだよ」
「つまり?」
「その場合は部屋の中で挟み撃ち。消耗戦に持ち込むってわけだ」
「なるほど、理論上はうまくいきそうですね」
「そのためにはそれなりの量の妖怪達が必要だな」
「確か現在は一つ目小僧が20匹、鬼が3匹、そしてお凛さんだけですね」
「それじゃあ、頭数が足りないな。取り敢えず、追加で80人一つ目小僧を呼ぶか」
「かなり多いですがそれでも4000DPですね」
「一つ目小僧はコスパが良くて助かる限りだ」
●○
ビリヤードステージに集まる100人の一つ目小僧。見渡す限り坊主坊主坊主。甲子園の開会式か。
ステータスをかたっぱしから確認し、使える武術をバランスよく15人の6チームに分ける。
それぞれのチームを小部屋に案内し、作戦の旨を伝える。一つ目小僧たちはコクリと頷いた。
「こちらの余った10人はどうされるのですか?」
「そいつらは今まで通り、分かれ道エリアに配置する」
「ああ、お凛さんが背後から襲いかかるやつですね」
「いや、お凛はここには置かない。お凛には1階層の一番奥にいてもらうからな」
「じゃあ、誰が背後から回り込むのですか?一つ目小僧は隠密行動が苦手だと思いますが……」
「ああ、代わりの妖怪をもう思いついている」
俺は妖怪図鑑を取り出した。
「背後からの強襲役は【鎌鼬】だ」
ダンジョンに毛に覆われた中型動物が現れた。一見ただのイタチだが、その量での先からは鋭い鎌が生えてる。
「……こらも妖怪ですか?」
「もちろんだ。風のように現れ、気付かれないように人の皮膚に傷をつける妖怪……詳しくは後書きで」
「はぁ、」
「隠密行動が得意なこいつらに背後から襲ってもらうわけだ」
鎌鼬はその場で飛び上がりくるりと一回転した。準備万端なようである。
「それで、お凛さん達はどちらで戦闘を?」
「【ビリヤードステージ】のさらに奥に部屋を作る。そこで第一階層の最終防衛ラインを担ってもらう」
○●
「なるほどのぅ、ここで守りの要をすると言うわけか」
俺の作戦を聞き、数度頷くお凛。
「裏を返せば前2つの部屋を突破した猛者と対峙せねばなるまいと言うことじゃな」
「確かに……必然的にそうなるな」
「いや、結構。その役目確かに引き受けたぞよ」
お凛は快諾してくれた。
「それで、お凛の他にも最後の部屋には他の妖怪も置いとこうと思うんだ」
「確かに、相手は一人とは限らぬからの。いくら妾とて、5人10人を手玉にとることは叶わぬ」
「そこで、新しい妖怪をサポートとして置いとこうと思う」
「ほう、どのような妖怪じゃ?」
「【一ツ目入道】だ」
ダンジョンに現れたのは俺より頭1つでかい人型の妖怪。
一つ目小僧と同じく顔に目は1つしか付いていないが、体つきや顔つきは大人のものだ。
【鑑定】をするとステータス的には鬼には劣るがかなり強い。
全部で3人の一ツ目入道を召喚する。
使えるスキルは【剣術LV4】【槍術LV4】。そして【呪術LV3】。
「呪術……ってなんだ?」
アリアも不思議そうに首をひねる。どうやら彼女も知らないらしい。
「一ツ目入道。その技を見せてもらうことってできるか?」
俺が呪術のスキルを持つ一ツ目入道に目を向けると、彼はコクリと頷き、いくつかの組み合わせで手を結んだ。
次の瞬間には一ツ目入道の目の前に現れる黒いサッカーボール大の球体。
一ツ目入道が手を動かすとそれに合わせて影から腕が飛び出てくるのだった。伸縮性はかなりあるらしく、軽く5メートルは伸びている。
「黒魔術に近いかもしれませんが……見たことのない魔法です」
アリアが目を見開く。
「うーん、俺も呪術なんて全くわからないが……。結構使えそうだな」
「そうじゃの。敵の意表をつく攻撃は戦場でも必ず優位になるはずじゃ」
●○
第二階層……とは言ってもダンジョンコアが置いてある小さな部屋しかないが。
俺は第二階層の入り口に立つと、一直線の廊下を引いた。そしてその先はT路地に。いわゆる分かれ道だ。それから、またT路地。次はY路地。次は行き止まりで一回戻って……
「マコト様、何を作っているのですか?」
「見ての通り巨大迷路だ」
慣れたものでアリアとの受け答えに返事をしながら俺は巨大迷路を作っていく。
「ここのステージには鬼達に徘徊してもらう。迷路に混乱することはさることながら、突然現れる鬼への対処は骨が折れるだろうな」
「さすがマコト様。外道ですね」
「外道って……」
俺は苦笑いしつつも迷路を作り続ける。
「どれくらいのサイズにするおつもりですか?」
「うーん、まだ未定だができるだけ大きくしたいな。最大でどれくらいまで大きくできるんだ?」
「確か1平方キロメートルほどだったかと」
「だったらそれくらいまで伸ばすか」
俺は意気揚々と迷路を伸ばし続ける。小学校の時クラスに一人はいたやたら迷路を作るのが上手いやつを思い出しながら俺は技巧を尽くして迷路を作り続ける。
そして、気がつけば3日が経過していた。
おまけコーナー 【鎌鼬】
「体は単なるイタチですが、前足には鋭い鎌……変わった見た目の妖怪ですね」
「伝承によると、つむじ風に乗って現れ、人の皮膚に傷をつける妖怪らしい。実害があるとはいえ、単なる切り傷だからあまり恐ろしい妖怪ではないな。まあ、皮膚が傷つけられた事に人間が気付けない、ってのは恐ろしい話だが」
「なるほど……で、実際何が原因なんですか?」
「え?」
「魔法使いのいない所にファイアーボールは現れないと言います。鎌鼬の正体は何なのですか?」
「実は……つむじ風の中心にできる真空により、人の皮膚が切り裂かれてしまうことが鎌鼬伝説の始まりらしい」
「そ、そうなんですか!? やはり自然の力というものは恐ろしい……」
「てのは明治時代に広まった迷信だ。実際はあかぎれやひび割れ、植物で切っちまっただけだとか……。あとは単に砂嵐で石とかが体にかすっただけだという説もある」
「なっ、迷信!?」
「ああ、一見科学的な説明に見えるから人々も騙されたんだろうな」
「く、くそぉ……」




