17生徒会お茶会(14)
水野さんが口を抑えるような仕草をした。
「あら、気がついてたりする?」
古川が静まり返った面々を冷ややかに見やる。つまり雅弘であり、佐賀であり、新井林であり。
「私、気付かなかった」
怯えた表情で雅弘を見上げる。それを受け止めるでもなく、ただ不思議そうな顔で雅弘は、
「ふうん。そんなことあったんだ。けどそれがすごいことなのかなあ」
相変わらずのんびり答えている。本当に何も思い当たるふしがないのだろう。古川の追求に困っているようではある。
「すごいことじゃないの。霧島はね、ゆいちゃんにかなりすごいこと言ったみたいだよ。ええと、二股かけられてどうのこうのとか、中に書いてあることはみんな水野さんではなくて別の誰かさんあてのものだとか」
「こずえ! もうやめなさい!」
駆け寄ってきた清坂が懸命に制するも古川は無視したままだ。この調子だと二人の友情にひびが入るのは避けられそうにない。
「美里、ごめんね。でもさ、これ私たちがゆいちゃんからきいたことだからどこまで本当かはわかんないよ。私たちもゆいちゃんもその手紙読んでるわけではないんだから」
「霧島だけが一人で騒いでるのか」
難波が、ぼそりとつぶやく。古川も答える。
「ふたり、で騒いでるね。あの霧島きょうだいでさ。でも今更キリオを連れ戻して事実聞き出してどうするって気もするのよね。キリオ連れ戻したら兄貴もくっついてくるよ。さああいつ目の前にして、話すすめること出来る?」
「立村のこと言ってるのか」
難波の問に頷く古川。
「ここでは避けたいな」
難波の前に更科が口を挟んだ。
「ここでなんかやらかしたら、出入り禁止になっちゃうよ。すっごくおいしい店だから入れなくなるのは俺困るよ」
笑いがなぜか雅弘方面から流れてくる。余裕あるのかと乙彦はつっこみたくなる。古川がどのような経緯で様々な情報を仕入れているのかわからないが、それを信じるとなると雅弘はとんでもない濡れ衣を着せられることになる。つまり、
──雅弘は水野さんを利用して佐賀に連絡を取っていた。
今までの雅弘側主張が全て覆されることになる。乙彦からしたらまずあり得ない展開ではあるけれども、古川の口の達者なところを考えると、生徒会側が丸め込まれる恐れもある。どう考えてもこの件は古川の先走りに過ぎないような気がしてならない。
「だいたい、状況つかめたから俺の考え、言っていい?」
落ち着いたのか雅弘は、考え込むように腕組みをした。水野さんだけが動揺抑えきれないようにきょときょとしているのが目立つ。まさか、自分の親友とその弟との間でとんでもないことが起こっているとは思ってもいなかったのだろう。
「まずさ、俺、確かにさっきたんにそういう内容の手紙を渡したことはあるんだ。だから、わざわざ可南女子高まで行って、すっごく目立ちながら手紙預けたたんだ。急いでたから」
「急いでた、ねえ」
疑い深い目つきで古川が下から雅弘を見上げる。
「そう、これ俺も言わなかったのまずかったけど、俺と佐賀さんとの間を疑ってる奴が前々からいるってことは承知してた。俺がまた誤解されることしたら面倒なことになるよなって思って、さっきたんと会った時に相談してたんだ」
「会うことは会ってたんだね。じゃあなにも、あんたたち無理して手紙なんて古風な事しなくたってさ」
「いや、だから、これさっきたんにもお願いしたのが、間違いなく手紙に書いた内容を佐賀さんに伝えてほしいってことだけなんだ。さっきたんと相談してて、そのときはなかなか埒が明かなくて、それなら思いついたときに連絡するからって約束しててさ。それで思いついて、急がなくちゃってことでさ」
ここでいきなり水野さんがすうっと立ち上がった。一度こくんと頷いた後、
「そうなんです。佐川くんと私とで、新井林くんと佐賀さんのこと心配だねって話していて、もしすぐに解決策が見つかったら私から伝えますって約束したんです。霧島さんの弟さんはきっとそのことを勘違いしたんだと思います」
きっと睨みつけた古川、目つきが変わった。
「じゃあやっぱ、キリオに聞くしかないね。立村セットだけどそれは覚悟してもらって。場所変えていつものカラオケボックスに向かい、あの二人捕獲しようよ。今の佐川と水野さんのお話通りであれば、私は土下座してさよならするよ。けど、本当にそんな出来すぎた内容なのかな」
さすがにこれは言いすぎだ。乙彦は割って入った。
「古川やめろ、普段のお前らしくない」
なにが古川らしくないのかはっきりしないけれども、言うべきことは言わねばならない。続けた。
「理由はわからないが、なぜそんなに水野さんにつっかかるんだ?」




