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キミがいて夢になる  作者: スパイシーライフ


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102/111

一人のために

 ついに試合の均衡が敗れた。


 勝って優勝を決めたいシーサーペンツが1点リードしたことで、場内は興奮のあまり倒れる者が出るのではないかと関係者が心配するほどになっている。


 そんな敵地の雰囲気の中、アルビオンの選手たちは全く動じてはいなかった。今日の彼らの想いはただひとつ。『北野を男にしてやる』それだけだ。



「北野、そんな顔すんな。大丈夫だ。俺らが打って必ず勝たせてやるから」


 野手の1人がそう言って北野を励ました。ほかの皆も彼に倣って次々に北野へ励ましの言葉をかける。


 彼らのほぼ全員が、北野のプロ初登板だったあの試合でベンチ入りしている。あの状況を目の当たりにしているのだ。

 彼らは北野が今までに歩んできた道のりも知っている。あの快投を目の前で見ているし、その後のアクシデントから努力を重ねて今ここにいることもわかっている。


 そんな男がどうしても勝ちたいと心情を吐露したのだ。意気に感じないせんいに試合の均衡が敗れた。


 勝って優勝を決めたいシーサーペンツが1点リードしたことで、場内は興奮のあまり倒れる者が出るのではないかと関係者が心配するほどになっている。


 そんな敵地の雰囲気の中、アルビオンの選手たちは全く動じてはいなかった。今日の彼らの想いはただひとつ。『北野を男にしてやる』それだけだ。



「北野、そんな顔すんな。大丈夫だ。俺らが打って必ず勝たせてやるから」


 野手の1人がそう言って北野を励ました。ほかの皆も彼に倣って次々に北野へ励ましの言葉をかける。


 彼らのほぼ全員が、北野のプロ初登板だったあの試合でベンチ入りしている。あの状況を目の当たりにしているのだ。

 彼らは北野が今までに歩んできた道のりも知っている。あの快投を目の前で見ているし、その後のアクシデントから努力を重ねて今ここにいることもわかっている。


 そんな男がどうしても勝ちたいと心情を吐露したのだ。意気に感じない者はアルビオンベンチに一人としていなかった。


 ましてや、どうしても勝ちたい理由が『彼女にカッコイイところを見せたいから』なのだ。これほど単純で、しかしこれほど男たちの共感を得る理由があるだろうか。

 

 そんな彼らだが、8回表のマウンドに向井が立ったことには驚きを隠せなかった。

 それは監督の水原も同じだ。彼もまた8回は別のピッチャーに変わると当然のように思っていた。何しろ向井は昨日先発して完投しているのだから。


「厄介な相手だけど、俺たちのやることは変わらないな」

「よし、行こうぜ! 北野のために点を取りに行くぞ!」

 

 アルビオンのベンチ全体に活気が戻った。

 

 

 8回表。アルビオンの攻撃が始まる。

 先頭打者の田中がバッターボックスに入った。

 

(今日の向井さんは本当に手強い。でも、北野がここまで踏ん張って投げてるんだ。俺たちが何とかしなきゃな)

 

 田中は向井の初球を見逃した。外角のストレート。ボール。

 2球目、インコースのスライダー。これもボール。

 3球目、外角のストレート。田中はバットを出したが、ファール。

 4球目、チェンジアップ。田中は思い切り踏み込んでバットを振った。

 打球はセンターへの鋭い打球になった。だがセンターは二三歩後退したところで危なげなくキャッチした。

 

「惜しい!」

 

 ベンチから声が上がった。確かに惜しかった。打球の飛んだ角度は良かっただけに、もう少し引きつけて打てていればセンターの頭上を越す長打になっていたかもしれない。

 

 続く打者の山本がバッターボックスに入った。

 

(向井さんのボールは今日も全部一級品だ。でも絶対に疲れは出てきているはずだ。粘れば必ず何かある)

 

 山本は徹底的に粘った。ファール、ファール、ファール。10球粘って、とうとう最後は四球をもぎ取った。

 

 ベンチが沸く。

 

「ナイスセン! よく繋いだぞ!」

「さあ、続こうぜ!」

 

 一死一塁。次打者の木村が打席に向かう。

 木村はベンチを一度振り返った。北野がベンチの端に座って、じっとグラウンドを見つめていた。その目は真剣で、祈るような色があった。

 

(北野……待っとけよ)

 

 木村もまた粘りに粘った。

 そして8球目。向井の唸るようなストレートに対して、木村は思い切りバットを振った。

 

 だが詰まり気味の打球はショートへの深めのゴロとなる。

 

(くそっ)

 

 しかし一塁ランナーの山本はバッターが打つと同時に、いや、打つよりも一瞬早く猛然とスタートを切っていた。

 それはまるで盗塁を試みたかのようで、慌てたショートがセカンドに送球するものの、深いところからの送球になったため間一髪間に合わなかった。


「セーフ! セーフ!」


 審判のコールを待ちもせずボールは一塁に転送され、こちらは際どいタイミングだったもののアウトとなった。二死二塁。同点に追いつくチャンスだ。

 

「ナイスラン!」

「よく諦めなかったぞ!」

 

 アルビオンベベンチが再び湧く。次の打者は8番の神谷だ。

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