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第十試合 4.ボンバイエ・モード

 ボンバイエ・モード。


 UFC軍の魔改造兵に対抗して、K1軍とプライド軍が生み出した生体兵器――強化兵の、超人的なパワーの発現状態を指す総称。


 格闘兵の超人化を可能たらしめているのが人工ウィルスの、イノキ・ゲノム・ウィルスだ。通称はIGウィルス。


 数年ほど前から、防衛戦において、駐留合衆国軍とUFC軍に異常な戦闘力を有する外国人兵が何人かいることが報告された。


 陸軍の現場は、捕虜尋問や屍体検分の結果を総合的に勘案して、合衆国軍及びズッファは一部の兵士に特殊な改造を実施しているのでは、という推論を立てる。


 駐留合衆国軍の上層部も婉曲えんきょく的にそれを認め、日鶴ひづる政府と防衛省に協力――否、共犯になることを要求してきた。


 日鶴政府は、国際司法裁判所に人道を訴えるのではなく、「目には目を、歯には歯を」を掲げる駐留合衆国軍に追随し、永久凍土の連邦共和国から科学者を招聘しょうへいするなどして禁断の研究を推し進める選択をしていく。


 K1軍とプライド軍はそういった強化兵と、彼らを監視及び管理するための歩兵の集団であり、羽稲島に新設されたリングス基地こそが、日鶴の領土内にある実験施設の一つなのだ。


 非人間的な実態のため極秘とされ、報道管制が敷かれているので、軍隊組織の末端や一般人にとっては新兵訓練所の一つという認識でしかない。


 当然、訓練兵自身も知らないということになる。


 IGウィルスは生理食塩水との混合で液状となり、静脈注射で体内に注入される。


 血管内にウィルスが流れ込むと、まず赤血球と結合して酸素や二酸化炭素の運搬能力を高め、運動時の持久力向上に寄与する。


 次に血管を通じて四肢など体中に移動し、筋細胞に吸収されて筋組織の肥大を引き起こしたり、感覚器や神経を鋭敏にしたり、痛覚を鈍らせる成分を脳から常時出させたりする。


 この人工ウィルスの最大ともいえる効能は、ウィルス自体が体内で維持活動を行うため、持続時間が数ヶ月あるいは年単位の長期的なものになるということだ。


 注入を止めて、体の免疫や自浄作用で完全に排出されるか、抗体が作られてボンバイエ・モードから解脱するかしない限り、容れ物が壊れるまで力を手にし続けることができる。


 特殊格闘兵科志願者は全員、入所してすぐの身体検査で数種類の予防接種を受けているが、そのときにIGウィルスも接種させられる。


 潜伏期間は数週間。新兵訓練は三~四ヶ月のため、その間に発症することがほとんどだ。


 アドレナリンの分泌と密接に関係しているのか、IGウィルスは格闘技経験者の血中や細胞内での方がより増殖しやすい。


 副作用も強く、心臓及び脳へのダメージで障害や不随になったり精神疾患にかかったりして、何人かは使い物にならなくなってしまう。


 アレルギーを誘発して死に至るケースも度々あり、リターンに比例してリスクも極悪。


 逆にまったく力が発現しないパターンも見られ、ランダムなのか条件や要因が存在するのかは究明できていない。


 そのため未だに量産転用が叶わず、ズッファ側も同様で、強化兵や魔改造兵の総数はそんなに多くないと見られている。

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