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第八試合 1.昇降口
松浦譲二は息を切らせて走っていた。
廊下がどこまでも続くかのように長く感じられる。角を曲がってきた同期生にぶつかりそうになり、譲二は「ごめん!」と振り向きざまに謝った。
まだ捻挫の治っていない足首が熱を帯びてきた。右上腕や肋骨の負傷箇所も痛む。
だがかまうものか、と譲二は放っておいた。こんなものは一時の痛みにすぎない。それよりも。
校舎の玄関を出て、段差を一足飛びに跳び越え、方向を変えながらまた走る。
三角巾やギプスが邪魔で、譲二は思うように腕を振れない。肺が酸素を求めてあえぎ、口の中に鉄の味が広がった。
しかし、速度は落とさない。それよりもなぜ、と心の中で問うた。
残暑の気温に、譲二の額から汗が噴き出した。鼻の上に残っている切り傷に汗雫がしみる。
フェンスで区切られている飛行場が遠くに見えてきた。灰色の胴体を見せている小ぶりな輸送機も視認できる。
譲二は、少しばかり萎えていた心肺機能や意志を再び総動員させて、更に走る。
頼むからまだ発たないでくれ、と願った。
(どうしてなんだ。まだあの模擬戦から二週間も経ってないんだぞ。――大輝!)




