レティア・エネディアナ
大切な話があるということで大人しくついて来てしまいました。
しかも、ここは私室ですね。
色々な覚悟が必要かもしれません。
「さて、何から話すかな……。レティアは果実水でいいか?」
「はい」
移動した場所はゼフィア王の私室です。
部屋の中央に大きなテーブルがあるので、そこに並んでいる椅子に座っています。
簡単に付いて行ってしまいましたが、どのような話になるのでしょうか?
「俺は酒にするか」
「……昼間からお酒ですか?だらしない生活です」
私の目の前に果実水を入れたコップが置かれました。
赤の果実水ですか。一般ではなかなか手にはいる物ではありません。
「そう言うな。俺も色々あるんだよ」
「そうですか。…………なるほど、お酒の勢いで私を抱くのですね」
「ぶふっ!」
見事に吹き出しましたね。
この反応だと、本当にその予定はないのかもしれません。
とはいえ、ゼフィア王も男の方です。可能性はゼロではありません。
その時は覚悟をしましょう。
「ごほっ!まだ、それで引っ張るのかよ!?ったく、結構いい酒だったんだがなこれ……」
ゼフィア王はため息を吐いていますね。
ですが、私の出す条件は変わりません。
「ルリお姉ちゃんを娶るための手段ならありではないでしょうか?」
「なぁ、レティア」
「なんですか?」
「お前、自分のこと安く見てないか?」
予想外な言葉が出てきました。
私自身の価値?そんなのありましたっけ?
「安くと言われても困るのですが?」
「はぁ……」
お酒を吹いた後より深いため息がでました。
「お前は国が滅んだと言っても元王族なんだぞ?自分に価値が無いと思ってるのか?」
「憎まれて滅んだ国の姫。価値はあるというよりも、大勢の前で石を投げられる立場だと思います。あと考えれるのは……そうですね、王族の血を残すために子を産ませること?お母様が綺麗な方でしたので、価値のある奴隷を作るのには最適かもしれません。他にあるとすれば……」
「なんでそんな悲惨な考えしかねぇんだよ……」
ゼフィア王ががっくりとうなだれてしまいました。
ですが、事実としか言いようがありません。
「……改めて言うが、お前は決して簡単に手にはいる娘じゃない。ましてや、エネディアナの直系とまでなるとさらに難しい」
「……言っている意味がわかりません」
ゼフィア王は知っているようです。
私がルリお姉ちゃんにすら秘密にしていることを。
「エネディアナが滅んだ理由、本当の意味はわかってるんだろ?」
「………」
これはまた簡単に斬りこんできましたね。
確かに本当の意味を知っています。
「……エネディアナの女系は色々と頭が切れますから」
「やっぱり、知ってたか。……ちなみに聞くが、ルリに助けられるように誘導したとかはないよな?」
ゼフィア王の瞳に一瞬、殺意が込められました。
それだけは自分の命を対価にしても言えます。
「それはないです。本当の偶然です。……私自身、諦めていましたから」
「ならいい」
そう言って、ゼフィア王がお酒の入ったコップを口にしていました。
「……ゼフィア王は私の秘密を知っている。……なるほどです。それを脅しの材料にして私を意のままに操り、そしてルリお姉ちゃんをその手にかけるのですね」
「………」
今度は吹き出すことはなかったです。
完全に固まってはいますけど。
「……なぁ、レティア」
「なんでしょう?」
「俺ってそんなに酷いか……?」
「酷いと言われても、内容によりますよ?」
「いや、なんというか、ルリの身体を狙ってるとしか思われてない気がするんだが……」
何をいまさら言っているのでしょう?
思われてないと思う方が無理です。
「事実ですよね?」
「認めたくない事実だな……」
「そうですか。でしたら、ルリお姉ちゃんを娶るという話はなしです」
嘘を吐くなら、もう少しマシな嘘を吐くべきです。
「まて!それはまた別だろ!?」
「同じです。これはゼフィア王がルリお姉ちゃんをどう思っているかなのですから」
「確かにそうだが……」
「素直に認めるのがいいです。『俺はあの身体が目当てなんだ!小さな頃から狙っていたんだ!』と」
「だから、俺はそんな鬼畜じゃねぇよ!」
「王族の話ですから、一般常識は当てはまりません」
これは本当の話です。私の故郷でもあった話ですから。
成人前にお目にかなう人は当然いますよ?
「否定しきれねぇ……」
「鬼畜ということを認めたみたいです」
「いや、それは違う……」
「そうですか」
私は普通に返答しています。
こんなものは言葉遊びみたいなものです。
「そうですよ……って、違うだろう!はぁ……本当にエネディアナには勝てんな……」
「………」
普通の会話だと思うのですが、何か違うのでしょうか?
ゼフィア王が幼いルリお姉ちゃんを見初め、大きくなって再会した時に娶る可能性の話ですよね?
大切なルリお姉ちゃんの事ですから、私の言い方も少しは辛辣になりますけど。
少しじゃない?酷い事言わないでください。これでも手加減しているのです!
「ところで、ゼフィア王はエネディアナの何を知っているのですか?」
うなだれたままのゼフィア王に尋ねました。
どこまで王家の事を知っているのか気になります。
「エネディアナの女性は謀に長けてるんだよ」
「………」
解りやすい一言でまとめられました。
「……あなたはどこで、そのことを知ったのですか?」
ごく自然に、自分の声が低くなったのがわかります。
「俺も王族だしな。……幼馴染の一人でもいたさ」
「幼馴染ですか。間違いなく王家にゆかりのある女性ですね……」
エネディアナの女性が簡単にこの事を話すとは思えません。
可能性があるとすれば。
「……元婚約者?」
私の発言にゼフィア王が僅かに反応しました。
ありえない話ではありません。もしかすると、私が知っている人かもしれませんね。
「これでも3歳ぐらいの時のお前を見たことあるんだぞ?」
「……え?」
私を見たことがある?
お城の片隅にある部屋から外に出たことがなかった私をですか?
国が亡びる時に初めて外に出たと言っても過言ではない私を?
「私と会える人はお母様以外いなかったはずです。いえ、お母様ですら、会うのが辛そうでした」
「そうらしいな」
「……その私のことを知っている人?…………まさか」
僅かですが、可能性はあります。
幽閉されていると言っても納得される生活をしていた私を見たことがある。
なら、ゼフィア王はもしかすると。
「……あなたが私のお父様なのですか?」
私はお父様と会った事はありません。
絵ですら、お父様を見たことがないのです。
父親の顔を……本当に知らないのです。
「答えてください!あなたが私のお父様なのですか!?」
「………」
ゼフィア王が答えない。
なら、本当に?
「おと……」
「そんなわけないだろ。時期も何もかも合わん」
「………」
簡単に告げられた残酷な言葉。
どうして、そんなに間を開ける必要があったのでしょう?
「こっちが驚いたぞ。まさか、レティアがそんな風に考えるとは思いもしなかった。これなら、少しは仕返しになったか?ははは……」
「………」
何を笑っているのですか?
「……レティア?」
「………」
「お、おい?目が物凄く怖いんだが……」
「………」
「やり過ぎたかこれ……」
……私を騙しましたね。
それもお父様の事で!
「私はお父様を知らないのです。一度でも、一目でもいいから、お父様に会ってみたいと思っていました。祖国が滅んだことで、それすらも叶わなくなった……お父様と会ってみたかったのに!」
私だって本気で怒ることぐらいあるんです!
普段から怖い?あんなのは軽いというのです!
「いいです。今だけはエネディアナとして対処します」
「ちょっとまて!?その考えは頼むから止めろ!」
「お断りします」
感覚を昔のように戻しましょう。
あの幽閉されていた時のように。
「私は今から『レティア・トゥルー』ではなく『レティア・エネディアナ』として話を進めていきます。異論は認めません。そのような物が私の前で通るとは思わないでください」
「……やばい、本気で怒らせた」
焦っても無駄なことです。
エネディアナの女性の怖さを思い知るがいいです。
「先に質問を許します。あと、私の父に関しては聞かなかったことにしてあげます」
「それは自分でかんちが……」
「なにか?」
「……いや、何でもない」
目を細めて、ゼフィア王を睨むと目を背けられました。
「質問を許したのですよ?聞きたいことはないのですか?」
「聞きたいことと言ってもな……」
「私の姉の有効な使い方とかでも構わないですが?」
「……有効な使い方?なんか物みたいな扱いだな」
「物と言ったら何かあるのですか?」
私の言葉を聞いた途端、ゼフィア王が青くなりました。
言いましたよね?エネディアナとして対処すると。
「……幽閉されし皇女か」
「知っていたのですか」
「まぁな。で、有効な使い方っていうのはなんだよ?一応、聞いてやる」
「聞いてやる?……まぁ、いいでしょう。有効な使い方とは兵器としてです」
「……なんだと?お前、それ本気で言ってるのか!?」
青い次は赤くなりました。
コロコロと顔色を変える人ですね。
こんなことでは読み合いで簡単にバレます。話になりませんね。
「本気ですが?」
「お前の大切な姉じゃないのかよ!」
「黙りなさい。大切な姉であろうと、使い方次第です」
「……ここまで冷徹なのかよ」
「好き好んでこの考えをしているわけではありません」
「そうか……」
『心底失敗した』というのを表情にするとあのようになるのでしょう。
「続けます。姉の有効な使い方は簡単な物だと兵器。時間がかかるもので国力、主に軍事的な物の増強ですね」
「認めたくはないが、ルリが兵器としても当てはまると今は考えてやる。だが、時間がかかるってどういうことだよ?」
「簡単な事です。増やせばいいのですよ」
「増やす?意味がまったくわか……おい?」
気が付いたみたいです。
「そのままの意味です。子を産ませて増やせばいいのです」
「おま……」
「黙りなさい」
ゼフィア王を遮って続けましょう。
「簡単な事ですよね?姉に子を産ませるだけでいいのです。人権?そんなものはどうでもいいのです。有効活用するというのに人権など無いに等しい。育てるのは姉でなくてもいいです。力を振るうのに数を揃えるだけなのですから。例えば……ゼフィア王が無理やり姉を手籠めにして、増やしてもいいということです。簡単に増やせるでしょう?」
「……考えが普通じゃない」
「普通の考えで謀は出来ません。ずれた考えだとしても、遥先を見据えて動くから謀と言うのです」
今、この考えをすると気分が悪くなります。
私もそれぐらい、ずれた人間だったということですね。
「簡単だと思いませんか?戦力も増え、血統も増える。ましてや、姉程の血筋です。この世界にそこまで素晴らしい人がいるとは思えません」
「それはそうだが……」
「増やしたいとは思いませんか?増えるだけで、国は強くなる。姉を物として扱えば容易い事でこの国はさらに強くなるのです。姉はゼフィア王になついています。そこを利用すれば、いくらでも増やせる。あなたに非はありません。使われる姉が気付きさえしなければいいのです。まぁ、そこはゼフィア王の腕次第、ということですけど」
「……エネディアナは心底恐ろしいな」
「発想の違いです」
血筋が薄くなるのが困るなら、血筋から相手を選べばいい。
弱い部分を補おうとするなら、強い所から持ってくればいい。
自分でできないのなら、できる人を使えばいい。
全ては先に繋がるよう、欠けた部分を補うだけなのです。
「血統で考えると、セシリーお姉ちゃんとシエラお姉ちゃんも使えますね」
「……は?」
「二人共優れた人ですから。容姿も優れていて、魔法にも優れている。残す血筋としては最適です。一気に奥方が三人も増えますね。毎日、お盛んなことになるでしょう」
「お前、意味わかってるのか!?」
「王族として、正しい知識があるに決まってるでしょう」
「……言い返せん」
正しい知識は持っていないと、自分の武器にはなりえません。
知識は多ければ多いほど、その人が有利になるのです。
「よかったですね。力として使える人が姉の周囲にいて」
「よかねぇよ!?」
「良い事ですよ。最低でも、侵略されて滅ぶことはありません」
「…………そうだな」
ゼフィア王もここは言い返せないようです。
力がなくては侵略された際に撃退できませんから。
「これが姉の有効な使い方です」
「完全に物だったけどな」
「まだ優しい方ですよ?もっと現実からかけ離れた使い方をいいましょうか?」
「さすがに聞きたくない……」
「エネディアナは怖いのですよ」
そう言って、普段の雰囲気に戻します。
やはり、あの考えは好きになれません。
昔はそれが普通だと思っていましたが、今となっては恥ずかしいことです。
やはり、ルリお姉ちゃんは偉大なのです!
「エネディアナなのか?それともレティアなのか?俺にはそこがわからねぇよ……」
ぽつりとゼフィア王が言いました。
「人がせっかく、普段通りにしたところにそれですか……」
「あ……」
「そうですか、そうですか……わかりました、私にも考えがあります。今回は本当に痛い目に遭ってもらいます!」
「今のは考えていた内容がつい口に出ただけだ!……何言ってるんだ俺は?」
「謀をしましょう」
にこりと笑顔をゼフィア王に向けました。
笑顔を向けられて、青ざめるとは失礼ですね!
「一体、何をするつもりなんだよ!?」
「こういう事だが?」
自分の声をゼフィア王と遜色ないものに変えました。
エネディアナの王家の女性は声色を変えるというのができないとダメだったのです。
「俺の……声……?」
「こういうことも、できますよ?」
今度はルリお姉ちゃんの声です。
「ルリの声まで!?……まて、なんか予想できるが、予想したくねぇ!?」
「ゼフィア王、国というのは中からも崩すことはできるのですよ?」
これは私の声です。
「レティ……!?!?」
「うるさい男性は嫌われますよ?」
ゼフィア王の周囲を風の魔法で覆います。
簡単に言いますと、声が消えるようにしました。
「さぁ、今から始まるのはゼフィア王が小さな娘に狼藉を働く様子です!」
「!?!!!!」
ゼフィア王の叫んでいる姿を見ながら、大きく息を吸い込み。
「いや―――――――――!」
と、大声で叫びました。
ゼフィア王の信頼とはどれほどのものなのか、拝見させていただきます。
「何か悲鳴が聞こえたような……?」
「確かに悲鳴でした」
城内にしては珍しく響いた悲鳴でしたね。
それも、最近よく聞き覚えのある声……。
「今の悲鳴……もしかして、レティア?」
「珍しいこともあるのね。あの娘があんな悲鳴を上げるなんて」
私もお母様と同意見でした。
レティアが悲鳴を上げることなんて余程の事がないとありえないと思います。
「それに今はゼフィアと一緒でしょ?今日は話があるから呼んでるとは聞いたけど?」
「私も聞きました。でも、それで悲鳴を上げることがあるとは思えません。まさか、お父様がレティアに何かいやらしい事でもしたのでしょうか?」
「それはないわよ。あの人にそんな度胸はないから」
二人で笑い合っていたものの。
「ルリさんを手に入れる為に暴挙に出たとしたらどうしましょう……?」
「お母様、そこは疑ってはダメだと思います……」
さすがにお父様はそこまで酷いことはしないでしょう。
……たぶん。
「そうよね。ゼフィアがそんなことする……」
「……また聞こえましたね」
二度目の悲鳴が聞こえました。
先ほどよりも切羽詰まった声でした。
「手遅れになるまえに止めるわよ!」
「はい、お母様!」
「……さすがにこれは考えたくない状況ですね」
お父様の部屋に近づくに連れ、悲鳴の聞こえ方が大きくなる。
考えたくはないが、手遅れだと考えても否定する要素がない。
「あのバカ……。取り返しのつかない事だってあるって前に教えたばかりなのに……」
さすがにお母様も顔色が悪い。
ずっと悲鳴が聞こえるのも気分がいいものではないから仕方がないけど。
「あとはこの通路を進めば……」
『やめてください!ルリお姉ちゃんにそんな酷い事しないでください!』
と、叫び声が聞こえた。
お姉様も来ていたの?
『どうしてそんな酷い事ができるのですか!』
『ルリを手に入れる為に手段を選ぶことを止めたからだよ!』
『だからと言って、動けなくなる状態にするなんて!そんなの大事にしているとは思えません!』
『言っただろう!手段を選ぶのを止めたとな!』
言い争う内容は血の気が引くような内容でした。
お姉さまが動けない状態……?
暴漢と同じですよね?
『それなら、私が出した条件を満たしてからにしてください!』
『そういえば、そんな条件もあったな』
条件?
たしかレティアに……。
『ついでに歯向かえなくなるよう、徹底的に立場をわからせてやる』
『……あなたがそこまで下種な人だとは思わなかったです。そんな低俗な相手に屈する私ではありません!』
『どうだかな?……ん?ルリも気が付いたようだな。良かったな敬愛する姉の前でだと』
『ルリお姉ちゃん!?そんな……まさか!このタイミングで目覚めるように!?』
『さあな?……ふむ、ルリにも枷は必要になるだろうな。……隷属の首輪でもつけるか』
『あなたという人は!』
『なに、歯向かうのを防ぐのと自殺防止の保険だよ。……さぁ、どっちの心が先に壊れるだろうな?それを見るのもまた一興か』
お父様のとんでもない面を垣間見た気がします。
容赦のない所もありますが、これではあまりに酷すぎます。
いえ、ただの犯罪としか思えません。
「おかあ……」
「今すぐ、兵を集めなさい。あのバカを討ち取るわよ」
「それはいくらなんでも!?」
「ファリス、あなたはこの状況でまだ、あいつが大事と言える?」
「………」
今も言い争う声がする。
時折、お姉さまのか細い声も聞こえる。
身動きが取れないと言っていたから、声が出しにくいのかもしれない。
「……もうお父様とは思いません。急いで兵を集めて、この悪夢を終わらせます」
私は急いで駆け出しました。
逃げたと思っても間違われない程の速さで。
あの悲鳴を聞きたくないのも本当ですけど。
ですが、今は……。
「お姉様、レティア必ず助けます!ですから……お願いですから、もう少し……いえ、僅かな時間だけ耐えて下さい!」
家族の不始末の言い訳としか思えない。
自分でもそう思いながら、通路を走り続けた。
大好きなお父様を討つのなら、それは娘である私の役目だ。
王女であり、近衛を預かる者として。
「二人を助けるためにお父様を……」
やはり悩んでしまう。
大好きなお父様。でも、それが今はただの暴漢……。
止めるのは命懸けになるだろう。誰もお父様の剣の腕前には敵わないのだから。
ザインであればもしくは……。
(それはダメね。ザインは引き受けるとは思うけど、こればかりは譲れない)
大好きなお父様。一緒にいつもいてくれたお父様。
(私は忘れません。心の中では良いお父様のままでいてください)
通路を抜けた先で兵が数名いた。
「総員戦闘準備!装備を最短時間で整え、私の目の前に集まれ。悠長な時間などない。今から戦争に向かう気持ちで準備をしろ!」
「「「は!」」」
兵達は返事をした直後、準備に向かった。
私の様子が普通ではないと気が付いたのだろう。いつもよりも早い気がした。
「ファリス様」
「ザイン……」
「この悲鳴はレティア様ですね?」
「ええ……」
「わかりました。私が切り伏せましょう」
ザインが剣を握ったが、私はその手を取り。
「ザインには見守ってほしいの。……もし、私が失敗した時は、その時はつらい立場を押し付けるけど、お願いしていいかしら?」
「ファリス様、成長なさいましたね。失敗など考えずに成功させればいいのです。誰もが正しい行動を取れるわけではありませんから」
「そうね……。ありがとう、ザイン」
「ご武運を」
「ええ」
今から行うことは親殺し。
フェイマスでは大罪となる行為でもある。
でも、私は今からそれを行う。
(責めならあとでいくらでも負います。ですから、今だけは……)
「全軍、揃いました!」
振り返ると通路に逃げ場がなくなる程の兵の数がいた。
「感謝する。だが、先に言う。これから行うことはこの国の王を殺すことだ!参加しなくても罰したりはしない。気が乗らない者はこの場に残れ!また、残った者に対して、罵ったりしたものは厳罰を与える!今まで尽くしてきた主に刃を向けるのだ、戸惑って剣を握れない者が居てもおかしくはないからな!」
真上を仰ぎながら大きく息を吸い、正面を向いて。
「全軍、私に続け――――!」
「「「はっ!」」」
私は兵を率いて、通路を戻った。
大切なお父様を斬るため。大切なお姉さま、その妹を守るため。
守るために、私はその刃を振るおう。
それがいつか自分に返ることであったとしても。
今は引くわけにはいかない。
レティアはルリの妹になってから、考え事が一般人になっていました。
それでも歳相応というより、大人びた所もありますが。
それが今は過去の姿へ。
レティアの謀は成功するのか?
次回の更新は書き終わり次第となります。




