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レティアの謀

 大好きなお姉さまに手がかかる前に。

 その妹にも手がかかる前に。

 大好きなお父様をこの手で……それが私の役目!

「………」


 聞くに堪えない悲鳴じみた声。

 周囲を見ると私と同じように、嫌な表情を浮かべている。


「………」


 無言のまま、通路を歩く。

 普通なら、これだけの人数が歩く音に気が付くだろう。

 普通なら……。


『………』

『声も上げないとはな。これはこれで一驚か』

『ゼフィ……ア……」

『ルリは黙ってみてろ。これも躾の一つだ』


 酷い言い分。

 これが私の大好きなお父様?

 聞こえる声を頭の中で否定しながら進み続ける。


『目をそらすなよ?その度にレティアが酷い目に合うんだからな』

『……っ』

『よかったな。大好きな姉が見守ってくれるぞ?』


 こんなのは嘘だ。


『……この下種』

『やっと話したな』

『姉の自由を奪い、これから私を凌辱しようとする人を下種と言わずになんというのです!』

『下種でかまわん。お前はルリを手に入れるための駒だ。そして、ルリを制御するための道具だ』

『んん!?……ごほっ!……何を飲ませたのですか!?』


 気丈に振舞っている声に焦りが混じった。

 通路はまだ続くのに、やけに声だけが響く。

 嫌な予感しかしないのに……まだ遠い……。


『理性が飛ぶものだ。よかったな、獣と変わらん姿がルリに見てもらえるぞ』

『え……』


 小さな声に不安と恐怖が混ざればあのような声も出るのだろう。

 私の知っている少女からは想像もできない声が。


『……嫌です』

『レティ……ア………』

『……見ないで……ください』


 お姉様と、か細くなったレティアの声。

 ……目の前にお父様の私室の扉がある。


『……お願いです。……見ないでください』

『ルリ、見届けろよ?お前が見届けないと、薬を増やさないとダメだからな。……人間に戻れんぞ?」

「……そん……な。私が……代わりに……なります……』


 お姉様があんな声を出すなんて。

 優しくて強いお姉様が。


『見ないで……』

『どのみち、ルリの意見は却下だ。今ぐらい、レティアの提案通りに進めてやるよ。それの方が楽しいだろうからな』


 扉が目の前にある。


『……ます』

『なんだ?』

『どんな手段を……使ってもでも………ゼフィア、あなたを……殺します!』

『やってみるがいい。今、身動きすら取れないお前にできるのならな。妹すら守れん、家族すら守れんお前に何ができるのか』


 お父様の声が聞こえる度に目の前の色が消えていく。

 鮮やかな世界の色が徐々に白くなっていく。


『あ……ダメ……見ないで………見ないで―――――――!』


 レティアの叫び声が聞こえた瞬間、色が一気に消え失せ。


「………」


 剣をいつ抜いたのだろう?

 自分で剣を右手に掴んでいることに気が付き。


「………はぁ」


 自分のため息であろう声を聞き。


「突撃――――――――!」


 私は今後も出すことがないであろう怒号を上げた。




(いい具合で外が釣れますね)


 室内でも、ファリス様の命令は十分に聞こえました。


(ゼフィア王は……)


 視線を扉からゼフィア王に向けると。


「………」


 大の字に転がってました。

 大物なのか小心者なのか、判断に困ります。


「さて、私はどうしましょう?」


 今の状況でも十分に人々は動いています。

 もう少し困った状況にするべきか、もしくは簡単に済ませるべきか。


(とりあえず、破られるドアの低い位置に無属性の魔法で足を引っかけましょう)


 冷静なら気が付くかもしれません。

 ですが、外は冷静でない人の方が多い。

 利用するのは当然ですよね。


(配置は……棒のように長い物にしましょう)


 扉と同じ幅で脛に当たる位置に配置を終え。


(どうなるでしょう?)


 愉快な光景になるか、呆気なく突破されるのか。

 個人的にも楽しめそうです。


「突き進め―――――――いったぁぁぁい!」


 開け放たれた扉に突っ込んだファリス様は脛に強烈な一撃を受け。


「えっ!?ちょっと!?……えぇっ!?」


 『ガン!』と、音を響かせ床に顔から落ちました。

 ちょっと……いえ、かなり痛そうですね。

 さらに数名の兵士さんが重なるように倒れてますし。

 

「ファリス!?」


 少しの間が空いた後、アレイシア様の叫び声がしました。

 何が起きたのかわからなかったのでしょうね。


「……ねぇ様」

「死んではいないわね」


 かなり派手な転び方をしたようですし、命に別条がないのであれば治せばいいだけです。

 酷い?今の私はエネディアナですよ?


「さぁ、ゼフィア!その首、貰う……わよ?」


 王妃様からみた光景はどうなっているのでしょうね?

 部屋の中央付近に大の字に転がっている王様。

 私は背を向けて椅子に座ったままですが。


「どういうこと?ルリさんは姿形もないし、レティアは椅子に座ってるわよね……?」


 ご挨拶しましょう。


「これは一体どういうこと……」

「王妃様はどのような状況がよろしいのでしょうか?」


 私は椅子から立ち上がり、皆さんの方へ向きました。


「……レティアよね?」


 王妃様から戸惑いの声がでます。

 雰囲気が変わっているので、戸惑っているのでしょう。


「はい。私はレティア本人です」

「一体、これは……」


 王妃様の声を遮るように。


「改めて、ご挨拶致します。私は『レティア・エネディアナ』です」

「エネディアナ?」


 王妃様は少し考え。


「レティアはレティアよね?」

「そうです。ですが今はルリお姉ちゃんの妹の『レティア・トゥルー』ではなく、エネディアナ皇国の元姫『レティア・エネディアナ』としてこの場に居ます」

「……何があったの?そこで転がってるバカは一体どうしたのかしら?」


 ただ事ではないと分かったようですが、ゼフィア王はバカ扱いされてますね。

 少し可哀そうな……いえ、私の怒りはこの程度では静まりません!


「ルリお姉ちゃんを手に入れる為に、私に襲い掛かってきたのです。簡単にいいますと、私の身体はもう清いものではありません。どこかにお嫁に行くというのは無理でしょうね。ゼフィア王の妾……いえ、血統を守るための母の一人として扱われればよい方でしょうか?あれほど、激しく私を責めたのです。それぐらいの待遇は望みたいですね」

「……このバカ!」


 アレイシア様の叫び声が響きます。

 そろそろ、ゼフィア王の周囲の風も消してみましょう。


「ルリさんは……どこかに隠した可能性はあるわね」

「……なんだ?普通に声が聞こえるな」


 ゼフィア王が転がったまま、声を上げました。


「ゼフィア!ルリさんはどこに隠したの!いいえ、それ以前にレティアになんてことをしたのよ!あなたが行ったことは人間として最低な行為よ!大人しく死んで償いなさい!」

「ちょっとまてよ!?アレイシアだけじゃない、お前ら全員、レティアの策にはまってるんだよ……」


 ゼフィア王の反論がはじまりましたね。

 少し、傍観しておきましょう。


「何がレティアの策よ!これでもかってほど、レティアに酷い事したそうじゃない!」

「俺は何もしてねぇよ!」

「そんな言葉で信じれるわけないでしょ!レティアは清い身体でなくなったと言ったわ。あなた、それでもしらばっくれるのかしら?」


 アレイシア様は相当怒ってますね。

 それに対し、ファリス様は「きゅぅ」と未だ意識がない状態です。


「何もやってねぇ!それが事実だ!」

「男はそれで逃げられると思ったら間違いよ!非道な事をしたのなら、何もしてないと言わせることも可能よね!」

「だから、俺は何もやってない!何故、信じてくれない!」

「あんなに悲痛な声を聞いて、あなたの『何もやってない』って声だけで信じろというのが無理でしょ!」


 アレイシア様の発言のあと。


「……確かに、否定できんな」

「なら認めるということかしら?」

「認めねぇよ。俺は何もしていない」


 平行線というのが妥当でしょう。

 この辺りでいいです。


「ゼフィア王は何もしていません」

「レティア!?」

「私が言っても『被害者』という先入観あるでしょう。ですが、本当に何もありません」

「え、でも……」


 アレイシア様が困っているので。


「私は謀が得意な『エネディアナ』です」

「あ……」


 王妃様も納得したようです。


「言葉だけでは信じられないかと思います。ですので、この場にて衣服を全て脱いで、潔白を証明いたします。ですが、その確認はアレイシア様にお願いしたいです。男性の方に確認されるというのは、いささか抵抗があります。医者の方が男性ならそれは仕方がないですが、この場に医者はいないと思われます。よって、アレイシア様がよいと思います」

「……レティアを信じるけど、念のためね。男どもはさっさと部屋からでなさい!」

「いや、ここ俺の部屋なんだが……」


 ゼフィア王の声は。


「バカはさっさと部屋を出なさい!それとも、あなたも同席しないとまずいことになるのかしら?」


 アレイシア様の声によって、呆気なく却下されたのでした。


「……わかったよ」


 ゼフィア王、背中が少しだけ寂しそうです。

 忘れているかもしれませんが、私はまだ許すとは言ってません。



「さてとこれで部屋の中には私とレティア、気絶してるけどファリスの三人だけよ」


 アレイシア様は部屋の鍵を中からかけていました。

 部屋の扉は蹴破られることはなく、普通に開いたので無事でしたから。


「そうですね。では、少しだけ時間を下さい」


 着ている衣服に手をかける。

 今は簡単なワンピースを着ているので、それを脱ぐと下着だけなのです。

 ワンピースの色ですか?薄い朱色です。

 黒はまだ早いとセシリーお姉ちゃんに止められましたから。


「信じているから脱がなくてもいいのよ?」

「その言葉は私も信じています。ですが、今の私は『エネディアナ』です。そうですね、ある意味けじめみたいなものとでも思ってください」

「わかったわ」

「……どうぞ、支度は終わりました」


 私は座っていた椅子にワンピースと下着を置いて、アレイシア様に向き直りました。


「こうやって見ると、あのバカが手を出さないっていうのも不思議な気分ね……」

「そうですか?」

「傷一つもない綺麗な肌だし、髪もきちんと手入れがされていてさらさら。年齢的にまだ成長が望める身体だから、バカにひっかからないように気を付けるべきよ。まぁ、その美貌のまま成長すると、いくらでも人を操れる気もしなくはないけど。ファリスにもレティアぐらいの可愛らしさがあればねぇ……」


 深くため息を吐きながら、アレイシア様が言いました。

 ファリス様は凛々しい方というイメージがあるので、それでいいと思うのですけど、何かダメなのでしょうか?


「触れるわね」

「はい」


 アレイシア様が私の身体のあちこちに触れていきます。


「若いって羨ましいわね……」

「アレイシア様は若いと思いますけど?」

「年齢だけで言えばまだ若い方かしらね。これでも嫁いだのは成人して直ぐだったから。といっても、候補としては2番目だったのよ」

「2番目ですか?」


 エネディアナの人が1番目という可能性が出てきましたね。

 これは聞いておかないとダメな気がします。


「第一候補の方は私と同じ『エネディアナ』の人だったのですよね?」

「聞いたの?」

「私が隠していることを知っていましたので」

「一度だけその人を見たことがあるけど綺麗な人だったわ」

「アレイシア様も綺麗だと思うのですが?」

「ダメよ。私と比べても全然ダメ。それぐらい綺麗な人だったのよ」


 少し言い方に陰りがあります。

 ですがこれは、違う意味ででしょうね。


「その方は亡くなられたのですよね?」

「そうよ。エネディアナの優秀な血を引く者を外に出すぐらいなら殺してしまえとね」

「理不尽ですね」

「本当に理不尽な話だと思ったわ。でも、そんな理不尽があったから、私はこの国の王妃になれたのよ。あの人が生きていれば、私が王妃になってるなんて想像もつかないからね」


 私が言うのもあれですが、さすがエネディアナと言ったところでしょうか?

 理不尽というのが可愛らしく思えてきますね。


「宜しければ、その亡くなった方のお名前を教えて頂いてもいいですか?」

「ニーナ・エネディアナよ」

「ニーナですか……」


 聞き覚えがある名前です。

 思い出したと同時に、とても腹が立ちました。


「ニーナという方はおそらく、私の母の姉だと思います」

「そうなの!?」


 アレイシアさんの驚きはかなりのものでした。

 私も驚きましたけど。


「母から酷い死を遂げたと私も聞いていますから」

「ちょっとまって!」


 アレイシア様が叫びました。


「酷い死ってどういうこと!?」

「言葉通りです」

「なんで、そんなことに……」

「アレイシア様が言ったように、外に血筋を出すなら殺してしまえ、これは確かに実行されました」

「そうなのね……」

「ですが、それは最後のこと」

「最後……?」


 青い顔をしながら、アレイシア様がこちらを見ています。

 それでも、聞きたいと目が語っていますね。


「後悔しませんか?」

「しないわ。聞くべき話だと思っているから」

「そうですか」


 母から聞いたことを、そのまま伝えましょう。

 『エネディアナ』がどれだけ危険かというのも再認識してもらわないとダメですしね。


「その方は最初に幽閉されました」

「最初に……?」

「婚姻を諦めるようにと言い聞かせるために幽閉したのでしょうね」

「……酷い話ね」

「これはまだ軽い方です。幽閉して、衰弱させたあとにまだ嫁ぐつもりがあるのか、訊ねられたそうです。そして、彼女は嫁ぐと言ったそうです」

「それなのに死んだ……?一体何があったの……?」

「……嫁げない身体にしたのですよ」

「!?」


 アレイシア様の顔色は青を超えて白くなりました。


「それって……」

「衰弱しきった身体で嫁ぐのを拒否した時点で、その場で数名の男に乱暴されたと聞いてます」

「なによ……それ……」

「あと、途中で心が壊れたそうです。そうですよね、乱暴は幾日も続いたのですから……」

「人のする事じゃないわ……」

「私もそう思います。今となっては『エネディアナ』の考え方は酷く気分が悪くなります」

「そう……あの人は心が壊れて、そしてそのまま……」

「続きがあります」


 続きはありますよ。聞くだけでも気分が悪くなるような内容がまだ。


「聞きますか?」

「……聞くわ」

「わかりました」


 私は一度、深呼吸をしてから語りだしました。


「心が壊れたその人はそのまま、さらに幽閉されました。理由は血筋ぐらいは残せるからというものです。人が触れても反応もしない、拒絶もしない。それが都合が良かったのでしょう」

「そんなの酷すぎるわ……」

「確かに酷い話です。ですから母はその姉を、自らの手で殺しました」

「……え?」


 アレイシアさんが固まりました。

 そうですよね。普通ではない話ですから、当然の反応でしょう。


「簡単にいいますと、解放するためにです」

「解放……。ものは言いようね」

「否定はしません。ですが、母は耐えれなかったのでしょう。自分の姉の身に何が起きているのかを知らされても、止める術もなかったらしいですから。母は姉の事を優しくて理想の姉だとおしゃっていました」

「おかしいとわかっているのに、それが止められないなんて……」

「……それが『エネディアナ』なのでしょう。そして、私もまた『エネディアナ』です……」


 少し気分が悪いですね。

 母の姉の話をしたせいでしょうか?

 ……忘れもしません、滅多に会えない母が泣きながら話してくれたことを。


「滅ぶべきして滅んだ国でしたね」

「……祖国をそんな風にいうものじゃないわ」

「滅んで良かったのです。結果でしかありませんが、ルリお姉ちゃんと知り合えました」

「それは確かに良い事になるかもしれないけど……」


 私も生きるのを諦めた身です。

 今、生があることを大切にしないとダメなのはわかっています。


「レティア、最後の確認だけど……」

「大丈夫です」


 最後の確認は呆気なく終わりました。

 もともと何もないですからね。




「ごめんなさいね」

「何がですか?」

「辛い話を思い出させたようで」

「いえ、お気になさらないでくださ……」


 ふと、目の前が回るような感じがしました。

 朝から風邪を引いている感じはなかったです、ですがこれは一体?


「顔が真っ青よ!どうしたの!?」

「いえ、少し気分が悪くなっただけです……」

「無茶をさせたせいよね、本当にごめんなさい」

「いえ、お気にならさらず……」


 私はアレイシア様に抱き留められていました。


「あの……離れて頂けるとお互い助かります」

「そんな真っ青な顔色しているのに、はいそうですかって離れれるわけないでしょ!」

「いえ、気持ち悪くて……吐きそうなのです……」

「無理せずに吐きなさい。堪えてる方がしんどいわよ」

「ですが、この体勢では、アレイシア様に……」

「服の事とかは気にしなくていいのよ。あなたもルリさんと同じで無理をし続けているのでしょう。どこかで身体に負担が来てもおかしくないわよ」

「ごめんなさ……うぅ……」


 私はアレイシア様にもたれ掛かったまま吐いてしまいました。

 『エネディアナ』としての考え方に嫌悪感を持っていたのでこうなったのでしょう。

 途中で気持ち悪くなってきていたのは気が付いていましたが、まさかここまでになるとは思いもよりませんでした。


「落ち着いた?」


 背中をさすられながら、優しく声を掛けられています。


「はい……。もうしわけありません……」


 アレイシア様の着ている服は、私が吐いたせいで見るも無残なものになっています。

 でも、アレイシア様は。


「こんなものは洗えばどおってことはないわ。シミが抜けなければ、その時は雑巾にでもすればいいのよ」


 と、笑いながらいいました。


「……豪華な雑巾です」

「ふふ……そうね。ところで、レティア」

「なんですか?」


 アレイシアさんが真剣な顔をしています。

 何を聞きたいのでしょうか?


「今のあなたは『レティア・エネディアナ』?それとも、ルリさんの妹の『レティア・トゥルー』?」

「今の私は『レティア・トゥルー』です」


 私が断言すると。


「やっぱり、あなたはルリさんの妹がいいわよね」


 そう言って、アレイシア様はその後も私の背中をさすっていたのでした。




「レティアにお願いがあるんだけど、いいかしら?」

「お願いですか?」

「そう、お願い。といっても、本当にそうなるかはわからないんだけどね」

「難しいお願いなのですか?」


 王妃であるアレイシア様でも難しいお願いですか。

 私にお手伝いできるのならいいのですけど。


「早くても来年の話だろうから、そこは気楽にしてくれればいいんだけどね」

「来年ですか?……ますますわからないお願いですね」


 来年の話を今からしないとダメということは、この国に関わることで違いないですね。

 『エネディアナ』の知恵が必要ということでしょうか?

 そうなりますと、私には少し厳しいものがあります。


「えっと……私も言うのは恥ずかしいのだけど……」

「?」

「この先、子供が生まれたら、家庭教師をしてくれないかしら?」

「子供ですか?」


 アレイシア様の子供?


「アレイシア様、第二子が生まれるのですか!?……あ」


 急に体を起こしたので、ふらついてしまい、また抱き留められました。


「危ないわね……」

「ごめんなさい……」

「第二子というか、まだ宿ってもいないんだけどね」

「ということは、これからということですか?」

「そうなるわね。……レティアみたいに幼い子の前で言う話ではないとは思うんだけど」

「私も元は王族です。意味はわかっています」

「それはわかってるんだけど……やっぱり、少し複雑な気分ね」


 クスクスとアレイシア様が笑っています。


「少し贅沢かもしれないけど、娘が二人欲しいのよ」

「ファリス様に妹ができるのですね」

「理想は双子なんだけど、それはわからないから」


 ゼフィア王とアレイシア王妃の間に子がさらに二人も生まれれば、国は安泰でしょう。

 娘なら、婿を取ればいいですからね。


「私はルリさんやレティアのような娘が欲しいのよ」

「それは難しいと思います……」


 私ぐらいなら物事を教え込めば大丈夫と思います。

 ですが、ルリお姉ちゃんは……枠に当てはまらないのでどうしたものか……。


「ルリさんみたいに強くてなんでもできるって意味じゃないのよ?レティアのようなといっても、『エネディアナ』みたいな考え方ができるって意味でもない。簡単に言えば、ルリさんみたいに笑顔がとても似合う娘と、レティアの様な可愛らしい娘が欲しいのよ。あなた達姉妹を見ていると余計にね」

「それなら、なんとかなるかもです」

「だから、子供が生まれた時は色々と教えてあげて欲しいの」

「アレイシア様のお願い、時がくれば私がお手伝いします」

「ありがとう、レティア」


 アレイシア様が静かに立ち上がり手を差し伸べてきました。


「さぁ、お風呂にいきましょう。私とあなたの姿だとさすがにね?」

「はい」


 そう言って、いまだ意識の戻らないファリス様の方を向き。


「ファリス様はどうしましょう?」

「そのままでいいわ」

「それも酷いですが……」

「仕方ないじゃない。目を覚ましてないんだし……それに……」


 アレイシア様は私の手を引きながら。


「残念な娘ってあれはあれで可愛いものよ?」


 といいました。


「ファリス様が可哀そうです……」

「大切にしてるのは本当よ?愛しい娘ですもの。何かあったときは私の命に代えても助けるわ」

「いいお母さんです」

「ありがと。あとレティア、私の事は『様』付けでなくていいのよ?」

「それは無理です」


 私は即答でした。


「そんなに私って堅いイメージなのかしら……?」

「違います。尊敬を込めて『様』を付けているのです」

「それは光栄なことね」

「これからも、姉共々お願いします」

「ええ。私達もよろしくね。ゼフィアはまぁ……」

「色々と見極める必要があります」

「ルリさんの事もあるし、慎重にいかないとダメね」

「はい」


 アレイシア様はルリお姉ちゃんの幸せを願ってくれそうです。

 私も同じなので、非常に嬉しい事でした。




「……ところで、ルリさんは本当に、この場にいないのよね?」

「いませんよ?」

「ルリさんの声!?……レティアも何でもできる気がするわ」

「ルリお姉ちゃんには敵いません」


 この場に居ない、ルリお姉ちゃんの声をまねて、驚かせるのでした。

 レティアの謀でした。

 内容だけで言えば、声のマネと演技だけです。

 ですが、関わる人が人なだけに、周りが見事に大事にしていきます。


 レティアが謀をしている間、ルリ達は何をしているのでしょうか?




 次回の更新は書き終わり次第となります。

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