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ルリアルカと様々な武具

 沢山の武具があります。

 島の家族のおかげで、目の前の物は全て扱えます。

 特殊な武具も扱えますよ?

「………」


 私の目の前には短剣、普通の剣、長剣、刃の幅が広い大剣、槍、斧、槍と斧がくっついたような……戦斧というのでしょうか?それと、最後に背の高い大人ぐらりの大きさの剣があります。


「宜しければ、ルリアルカ様に稽古をつけてもらいたいのですが」


 私の前に、先ほど蹴り飛ばした兵隊さんが来て言いました。


「………」

「申し遅れました。私はヒューズと申します。そうですね……簡単に申しますと、王都守護隊第一部隊の部隊長をやっております」

「………」


 隊長はファリスですよね?その下にザインさん。

 目の前の方は第一部隊の部隊長さん?

 ……あれ?


「詳しい説明は聞いたことはありませんか?」

「………」


 説明は聞いたことはないので、コクコクと頷く。


「王都守護隊、全体の隊長はファリス様、補佐としてザイン様がいます。ファリス様が隊長になられる前はザイン様が隊長をしておりました。また部隊は五部隊まであり、ルリアルカ様が港で遭遇したのは第二部隊となります」


 全部で考えると結構な人数ですね。

 でも、先にすることがあります。


「……様はやめてください。私は王族ではありません」

「いえ、ルリアルカ様はこの国においても大切な方でございますから」

「……さんです」

「いえ、様です!」

「……さんでないと嫌です」

「様です!」

「……稽古にお付き合いしませんよ?」

「ルリアルカさん!」


 折れてくれました。

 私の勝利です。……様は慣れないのです。




「……どのような稽古なのでしょう?」


 稽古と言ったものの、どうすれば良いのかわかりません。


「簡単に言えば、模擬戦でしょうか?最初は一対一で、最後は実践的に乱戦です」

「……乱戦ですか?」

「はい。ルリアルカさん対守護隊ですね」


 真顔で言われました。

 私は一人なのに、相手は……五十人はいますよ?


「……いじめる?」


 思わず声に出ました。

 人数差が凄まじいです。私は苛められるとしか思えません。


「ご冗談を。……以前の戦いから考えると、これぐらいは容易いでしょう?」

「……以前ですか?」


 私が頑張らないとダメなのですね。それも全力でです。


「………」


 こくりと頷くと。


「ルリアルカさんが稽古つけてくれる!気合入れろよ!」

「「「「おお!」」」」


 一斉に雄たけびが上がりました。


「あと、回復魔法の使える者は常に待機しているのでご安心を。……まぁ私たちがお世話になりそうですが」


 後半は聞き取れなかったです。


「………」


 頑張りましょう。


「?」


 私が笑顔になると、周囲の人の顔色が悪くなるのがわかりました。

 何もしていませんよ?




「………」


 どうしましょう?

 目の前に並んでいる武器を見て考えてしまいます。

 使えない物があるから悩んでる?いいえ。武具は一通り使えますよ?


「………」


 じーっと、短剣を見つめる。

 それに気が付いた、短剣を持つ兵隊さんが反応する。


「………」


 槍を見つめる。

 今度は槍を持った兵隊さんが反応します。

 これは私の方が獲物ですよね?


「………」


 長剣を手に取りました。


「早速、出番ですか」


 長剣を持っていたのはヒューズさんでした。

 他にも数名いますが、真っ先に前に出たのが、ヒューズさんですね。


「………」


 右手で剣を持ち、半身で構えます。剣を持っている方が後ろですね。

 構えと言っても、斜め後ろに刀身を向けているだけですが。


「………」


 ヒューズさんも剣を構えました。こちらは両手で持っています。

 正しい構え……というのでしょうか?その言葉がぴったりな気がする構え方です。

 少しの間、静寂が流れ。


「行きます!」


 という、掛け声と共に、ヒューズさんがこちらに向かって走ってきました。


「………」


 上段からの剣が振り下ろされます。

 受け止めても大丈夫ですけど、ぎりぎりで回避しましょう。


「紙一重で回避とは、さすがに余裕ですか!」


 振り下ろされた剣が跳ねるように、横薙ぎをします。

 余裕と思われ続けるのも嫌なので、これは受け止めましょう。


「……簡単に防がれますか」


 受け止めている状態から、さらに力が加えられたのがわかります。

 私の身体が一瞬だけ、持ち上がりましたからね。

 その一瞬の隙を付いて、ヒューズさんが身体を回転させて蹴りを放ってきました。


「はっ!」


 回し蹴りを避け切った直後に追撃の斬撃がきます。

 勢いが付いているものは、そのまま受けるとダメなのです。

 受け流すように、こちらの剣を傾けます。


「!?」


 斬撃に違和感を覚えたので反応が少し遅れました。

 斬撃は右手だけ、片腕で斬りかかったものでした。

 普通はこのまま振り下ろして終わりのはずですが。


「――――!」


 ヒューズさんは息を吸い込むと同時に、剣を振り下ろす状態から投げ下ろし、地面に刺さる直前で左手で剣を受け、そのまま切り返してきました。

 はっきり言って、無茶な攻撃です。


「………っ」


 直撃はしませんが、支えきれずにバランスが崩れました。

 勢いのままにヒューズさんが足払いを行い、それを後方に飛ぶようにして避けます。

 追撃に鋭い突きが来たので、さらにもう一回後方に回転しながら飛んで避けます。


「まだまだぁ!」


 突きの後、私の着地点に目掛けて剣を投げつけてきました。

 着地の方が僅かに早かったので、右側に飛んで避けます。

 ヒューズさんも私に合わせてこちらに踏み込んできました。


「……無茶な速度で付いてくると大怪我しますよ?」

「なっ!?」


 ヒューズさんの移動速度はかなりのものでした。身体強化が得意なのでしょう。

 ですが、慣れていない速度だとしか思えません。

 あれだけはっきりとした剣の軌道がぶれてますからね。


「……段階を踏んだ方がいいです」


 踏み込みに合わせて、ヒューズさんの胴へ左で拳を打ち込み。


「ぐぅ!……忠告は感謝しますが、まだ!」


 倒れこむ身体を無理やり起こすと、バランス崩しますよね?

 それを利用して、打ち込んだ拳をそのまま、真上に振り上げて顎を打ちます。


「……連続攻撃というのは、相手も利用すれば効果は大きいのです」


 一瞬でも意識を手放したら、それは致命的になります。

 のけぞった状態のヒューズさんに足払いをし、身体が浮いた所へ……いつもの私なら、蹴り飛ばすのでしょうね。ですが、今回は稽古でした。少し違うものにしましょう。

 ……鬼?……酷い言われようです。……苛めたくなりますよ?


「……こういうのも連撃の手段です」


 手に持っている剣をその場に突き刺すと同時に、宙に浮いたヒューズさんを掴み、そのまま巻き込むように地面に向けて投げ、ヒューズさんの目の前に拳を止めました。


「……いかがでしょう?」

「……はぁ、勝てないのはわかってましたけど、ここまでとは。少し自信を無くします」

「……強くなるためには自信の数回無くしてもいいのです」

「本当に容赦ないですね」


 ヒューズさんに手を伸ばして、身体を起こさせます。


「ありがとうござ……え?」

「……頑張りましたね。いいこです」


 ヒューズさんを抱きしめて頭を撫でます。

 飴と鞭?……飴なら私が欲しいです。え?言っている意味が違う?


「あ、あの、ルリアルカさん……?」

「……ふふ」


 思った以上に、撫で心地が良かったので、声が出てしまいました。


「その、そろそろ放していただけると……」


 ヒューズさんの声は周囲からの声で埋まりました。


「頑張って撫でて貰えるなら、俺もやるぞ!」

「部隊長だけずるい!」

「女性の胸に顔を埋めてるなんて最低です!」

「まってください!私は抱きしめられてる方ですよ!?」

「……ザイン様に報告しないと」

「それだけは待ってくれ!……あ」


 慌てて、ヒューズさんが離れようとして、私を押しのけた結果。


「………」


 ヒューズさんが私の胸を鷲掴みにしていました。


「……女性の胸を無暗に掴んではダメですよ?」

「も、もうしわけ……」


 ヒューズさんが言い終える前に。


「この女の敵!」


 回復魔法を担当している人でしょう。杖でヒューズさんを殴り倒しました。

 どこか見覚えがありますね。

 

「ルリちゃんも簡単に男を抱きしめたりしない」


 見覚えがあるはずです。

 上級冒険者になった女性でした。


「頑張った相手を褒めるのはいいことだけど……さっきみたいな目に遭うのはちょっとね……」

「……どうしてここにいるのです?」

「あ、私?今日はここで回復魔法で治療するお仕事」

「……納得です」


 倒れている、ヒューズさんを見てみると、起きてくる気配がありませんね。

 杖で全力で強打されると、さすがに痛いですから。


「……あの、ヒューズさんの治療も」

「仕方ないか……」


 ヒューズさんに回復魔法をかけた後。


「私は向こうで待機してるけど、ルリちゃんも無茶しないでね。……強いとは聞いたことあるけど、でたらめな強さよね」


 去り際に酷いことを言われた気がします。


「………」


 ヒューズさんは他の兵隊さんに広場の隅に連れていかれてました。

 ……次は何を使いましょう?

 武具を見つめると、その武具に対応する兵隊さんが反応するのは変わりません。

 乱戦にもなると聞いていますし。


「………」


 左手で短剣を掴む。

 短剣を持った兵隊さんが前にでたので。


「………」


 右手で普通の剣を手に取りました。

 周囲が一気に騒がしくなりましたね。


「これって……」

「いや、でも両手に持ってるし……」


 相談しているような声が聞こえたので。


「……乱戦ですよね?」


 と声を掛けると、周囲は納得したようです。


「乱戦とわかっていても、ルリアルカさんみたいな女性相手だと……」

「ファリス様ならいいのか?」

「そうは言ってないが……」


 という、相談がまた聞こえたので。


「……戦場では女も子供も関係ありません」


 左手を前に右手を後ろに下げ。


「……生きる努力をした人が生き残るのです」


 静かに言いました。


「……あなた達は生き残れるのですか?」

「い、一気にかかるぞ!」


 その声を合図に集団が突っ込んできました。

 ……挑発し過ぎ?……自信とは折るものなのです。

 ……お爺様が昔、よく言っていましたよ?




「………」


 剣戟が鳴り響いた直後、目の前の兵隊を弾き飛ばす。

 剣だと斬るように、槍だと払い、幅が広い剣では悪い夢としか思えないように、振りかぶって弾き飛ばしました。


「………」


 乱戦で相手が多数いたとしても、それは短期的に一対一に持ち込めば、乱戦ではなく、一対一なのです。

 現在、一撃一殺というのが適切なのでしょう。武器には刃がないため、弾き飛ばすか、叩き伏せるかで終わります。回復魔法を使う人達が大慌てなのは言うまでもなくですが。


「ルリちゃん、少しペース落として!私達の魔力もだけど、兵隊の回復が追い付かない!」


 弾き飛ばされた兵隊は、回復してもらった直後、私に向かって走ってきます。


「………」


 そうは言われましても、兵隊さんは治療が終わると一直線にこちらに向かってくるんですよ?

 同じ人を何度弾き飛ばしたかなんて、もう覚えてません。


「はぁ!」


 気合を込めて振り下ろされた剣を左手で持っていた長剣で受け流し、そのまま回転して、右手に持っている槍で相手の胴を薙ぎ払う。槍はそのまま地面に突き刺し、傍にあった斧を右手で掴み、別の方向から来ている兵隊さんの足元付近へ投げつける。


「しまっ!?」


 足元で突き刺さった斧でバランスを崩したのを確認すると、空いた右手で戦斧を掴み、引きずるように走る。


「させるかぁ!」


 途中で斬りかかってきた兵隊さんを、逆手に持ち替えた長剣で受け止め、状態が均衡した瞬間に長剣を傾け、相手が重心崩すと同時に戦斧を手放した右手の拳を胴を打ち付け、そのまま潜るように肩を相手の胸に当て、さらに踏み込んで弾き飛ばす。

 少し時間を取られたので、バランスを崩していた兵隊さんは構え直していた。


「………」


 私は長剣を地面に突き刺し、戦斧を両手で後ろ側に先がくるように構える。いかにも『薙ぎ払います』と言わんばかりの構えです。

 相手が動こうとした瞬間、私はそのまま、相手に向かって突っ込む。


「大きく振りかぶったものより、剣の方がはるかに……な!?」

「………」


 戦斧は使わず、その場に落とし、相手が振り下ろした剣を白刃取りにし。


「……持っている武器を使うとは限りませんよ?」


 両手で掴んだ状態から、左に手を返して、剣を奪うと同時に飛び上がり、右足の甲で相手の頭を蹴り、さらに回転して、左の踵で追撃をする。意識を刈り取るには十分です。


「?」


 気が付くとタイミングを合わせたように周囲が囲まれていました。


「あわせていくぞ!」


 その声を合図に一斉に斬りかかってきます。


「………」


 囲まれた周囲を抜けるには一転突破しかありません。

 突破するのは……前方に幅の広い剣があるところですね。


「……ふふ」


 少し、酷いことが思い浮かびました。

 これは乱戦です。こういうこともあると、教えないといけません。

 行動に移しましょう。


「……すぅ」


 息を吸い込み、前方の兵士さんに向かって。


「!?」


 翼を広げて、一気に踏み込み、反応できない速度で肘うちを打ち込む。


「はやす……ぐぁ!」


 囲いを突破した速度を維持したまま、羽ばたいて剣の元へ飛び去り、剣を両手で引き抜き。


「……ふふふ」


 上空へ飛び上がってから、一斉の斬撃があった場所へ急降下します。

 派手な音と共に地面が割れ、回避した兵隊さん達が青ざめるなか。


「……あはは!」


 私は無慈悲に兵隊さんたちを剣で弾き飛ばすのでした。

 ……楽しんでる?……隙を見せるのが悪いのです。




「ルリちゃん、そこまで!お願いだから止まってー!」


 上級冒険者の女性から声が上がりました。


「………」


 その声を聞くと同時に、攻撃を止めます。

 周囲は……死屍累々という言葉が似合うかもしれません。


「回復が間に合わないの!というか、そこの兵隊たちより、私達の方が疲弊が凄いのよ!」

「?」


 そう言われ、回復魔法が使える人達を見ると、突っ伏して倒れていたり、うなされていたりしますね。


「わかってくれた?」

「………」


 コクコクと頷きます。

 改めて、兵隊さんたちを見てみると、倒れてはいるものの、どこか満足そうな顔をしていました。


「私も少し休むわ。ルリちゃんは……息すら切れてないわね」


 ダメージを受けていませんから、そこまで呼吸は荒くなることはありません。


「本当に素晴らしい技量です」

「………」


 声の方を向くと、ザインさんが居ました。

 お茶の招待ですよね?おやつでも大歓迎ですよ?


「以前、追い込まれた兵よりも練度は高いですが、ルリアルカ様相手では変わらないようですね。……今後は少し厳しくしないといけませんか」


 ふと、思い出しました。

 私はまだ一度もザインさんと戦ったことがないことを。


「………」


 じーっと、ザインさんを見る。

 笑顔でこちらを見ています。


「……しょう」

「どうしました、ルリアルカ様?」


 いつも、はぐらかされていましたからね。

 好奇心が勝ってしまいました。


「……一戦、交えましょう」

「ずっと避けていたのですがね……」


 私の冷めた声に、ザインさんは諦めたようでした。


「わかりました。一戦、交えましょう。手加減は……してくれなさそうですね」

「?」


 私の顔を見て、ザインさんは何か感じとったみたいです。


「そんなにも嬉しそうに笑顔を浮かべている人が手加減するとは思えません」

「………」


 笑顔は良い事なのです。

 私は戦闘狂ではありませんよ?




 私達は広場の中央に移動しました。

 私は片手に長剣を、ザインさんは腰に下げていた長剣を武器として持っています。

 ちなみに、私が使っていた、色々な武具は周囲に刺さったままです。


「ルリアルカ様はこの場にある全ての武具が扱えるのですよね?」

「………」


 コクコクと頷く。


「乱戦で扱っていましたし、ルリアルカ様は周囲の武具も使用可能で行いましょう。私はこの剣です。場合によってはもう一つ剣がありますので、そちらを使います」

「………」


 ザインさんはもう一つの剣といいました。

 ですが、腰に下げている剣は一本しかありません。

 つまり、見えない場所にあるといことです。


「……ふふ」


 声が出ます。

 目の前のザインさんは、空間魔法に武具をしまえる。

 魔法によっては、ゼフィアよりも強いはずです。


「始める前から、少々怖いですね。……ルリアルカ様の笑顔はやはり危険です」


 ザインさんが剣を構えました。

 私は右手で下げるようにして構えます。


「「………」」


 お互い呼吸を整え、少し間を置き。


「……いきます」


 私は小さく呟き、駆け出したのでした。

 ルリとザインが遂に戦う事となりました。

 

 あまり話さないのに、戦闘による好奇心が強い、ルリはどう戦うのでしょう?




 次回の更新は書き終わり次第となります。


 今回はまとめ方により、少し短くなっております。

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