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無口な少女と王の本音

 性格が変わったからというのはわかる。

 だがなぁ……。

 年頃の娘が俺の膝の上に座るってのはどうなんだ?

「さて、説明するのは簡単……といえば簡単だが……」

「………」


 ルリは今日も俺の膝の上に座っている。

 場所は王座のある間、つまり謁見の間である。


「あの、色々と聞きたいことがあるのですが……?」

「あー……言いたい事はわかる。俺もなんでこうなってるのか知りたいっていうのもあるが、それよりもっとでかい問題があるんだよ」


 俺はこの間にセシリー、シエラ、レティアの三名を呼んでいた。

 この場に最初からいたのは俺、ルリ、アレイシア、ファリスの四名。

 ファリスにはずっと睨まれたままだ。

 ……親としては少し寂しいけどな。


「王様がボロボロなのも問題だよね?」


 シエラは俺の姿を見て言う。


「それは大した問題じゃない」

「そうなんだ」


 俺の姿というよりは、あちこちに巻かれている、包帯が気になったのだろう。

 ファリスのやつ、本気で斬りかかってきたしな……。


「でしたら、ルリお姉ちゃんの今の状態でしょうか?性格が変わったというのは納得ですけど」

「レティアには朝一番に教えた通りだ。性格もまったく違う。でも、今から話すのはそんなものは軽いと思えるほどの内容だ」

「ルリの性格が変わったのが軽い?」

「……かなり嫌な予感がするよね」

「聞くのが怖いです……」


 三人が少し顔色を青くしている。

 これは言うのが、俺も怖くなってきたな。


「ルリ」

「?」


 首を傾げながら、こちらをルリが見上げてくる。


「向こうでザインと一緒にお茶でも飲んでこい。俺は大事なことを皆に言う必要がある」

「………」


 ルリが首を傾げる。

 言葉にはしないが、「私が居てはダメですか?」と目が語っている。


「いい子だから、向こうで……」

「………」


 ぶんぶんと首を横に振られた。

 子供に戻ってねーかこれ?


「わかったよ。じゃぁ、せめて耳を塞いでろ。かなり、大きな声が上がる。正直に言うと、俺も聞きたくないぐらいだからな……」

「………」


 ルリは軽くうなずくと、耳を手で覆った。

 それでも、聞こえそうな気はするけどな……。


「ルリさん、小動物みたい」

「そうね。それにしても、今回は静かね。この前のは個人的にはあ……いいえ、何でもないわ」

「セシリーお姉ちゃん、顔を赤くしてどうしたのですか?」

「な、なんでもないわよ!」

「とりあえず、簡単に言うぞ」


 俺の言葉に三人がこちらを見る。


「ルリのやつ、家族が好きだというのはわかるのに、人を好きになるっていうのがわからないらしい」

「「「………」」」


 暫しの沈黙の後。


「……え?」

「意味がわからないかも」

「ルリお姉ちゃんは家族の愛情は理解しているけど、人に対する好意……お友達としての好きはわかるとして、この場合は恋愛感情に向けられるような好意が理解できていない……でしょうか?」

「残念なことに、レティアが大正解だ」

「「「ええええぇぇ!」」」


 思った通り、物凄い大声がでたな。

 ルリなんてびっくりして、俺に抱き付いてるし。


「どういうことですか!?」

「私も知りたいよ!」

「私は家族として愛されているだけマシなのでしょうか?……いえ、本音では……」


 思った以上に、ルリに対して恋愛感情持ってるな。

 それに、この国では同性の結婚は別に違法ではない。

 数は多くはないが、その辺りは個人の自由だ。周りが理解力のあるやつらが多いなら、問題ないだろう。そうでない場合は、それなりに色々とありそうだがな。

 なんだよ?俺は国内の恋愛は別に縛り付けるつもりなんてないぞ?

 異性、同性、身分差、そんなものはどうでもいいだろ?……と言いたいが、一部だけは他の場所からの反対意見もあるんでな。

 貴族の男とメイド、これは別に不思議じゃない。ここから娶られる娘もいないことはない。

 貴族と奴隷、個人的には応援してやりたいが、この辺りで他の連中から意見があるんだよ。当然だが犯罪を犯して奴隷になったやつは最初から除外だ。

 簡単にまとめると大きな身分差の時だけ、意見が出る。


(恋愛ぐらい好きにさせてやれよな……)


 過去、この王都にて奴隷の少女を見受けした貴族の青年がいた。一目惚れだったらしい。

 身分差は大きかった。それでも、この青年が出来た人間だったらしく、周囲の誰もが祝福した。しかし、一部の貴族がこれに対して、猛反発。そんなものは認めるわけにはいかないと。

 結果、奴隷であった少女に嫌がらせなどが続き、このままでは青年に迷惑がかかるから身を引こうとした。だが、青年はそれを拒絶し家を捨て、少女と共に外の世界へ飛び出した。


 ここまではいい話だ。

 ここまではな。


 青年の両親は理解力がある人間だった。青年と少女の交際を認めていた。つまり、その青年の家では少女認められていたのだ。だから、飛び出したことに対して、何も言わずに送り出したらしい。

 それでも、黙らないやつはいた。

 『貴族の恥だ』、『前途ある貴族を惑わした罪は万死に値する』と。

 

 そんな時、俺の所に一通の手紙が届いた。

 いや、届いたというのは違うな。ザインが手紙を持ってきた。

 青年の父は守護隊に所属していたらしく、ザインに相談していたようだった。

 俺は手紙の内容を確認し終えると、ザインを連れて、馬で王都から少し離れたところにある村へと急ぎ向かった。


 最悪の事態で終わったがな。

 

 遠目で見つけた時は無事な姿だったが、次の瞬間、少女は矢で射抜かれた。

 それに驚いた青年は少女に駆け寄り、矢から少女を守るために抱きしめた。そこに無慈悲にも無数の矢が降り注いだ。

 手遅れなのはわかった。それでも、僅かでも可能性があるのならと、俺は急いで駆け付けたが、俺が二人の前に辿り着いた時、二人は手をつないだまま絶命していた。


 襲った奴ら?……俺とザインで皆殺しにした。当然だろ?


 王都に戻ってからは、それを命じた奴ら……つまり反発した奴らを一人ずつ調べ上げて、直接命令したものを消した。俺の国に、そんな外道はいらん。

 青年と少女の遺体は俺とザインが乗って来た馬に乗せ、王都まで運んだ。

 助けが間に合わず、すまなかったと謝りもした。

 今でも両親の言葉を覚えている。

 『死での先で共に安らかに暮らしてくれているはずです』と。

 父親はその後、遠征先で仲間を庇い死亡。母親は心労も相当なものだったのだろう、静かに息を引き取ったと聞いた。


 ………俺は自分の無力差を改めて思い知った時だった。


 脱線したな。話を戻すか


「お前ら、ルリの事は恋愛対象として好きなんだよな?」

「当然!」


 シエラが一番最初に答えた。


「それは……はい……」


 恥ずかしそうにセシリーも答える。


「私は家族です。姉を……ルリお姉ちゃんをそういう目で見てはダメなのです。私は一緒に居られれば、それだけで十分幸せなのです」


 レティアも答えた。

 エネディアナの事が無ければ、セシリーとシエラと同様、恋愛対象として見ていたはずだ。

 家族、妹と言っても血は繋がってないからな。妹であることを破棄して動けば……助言するのは止めるか。

 ルリに間違いなく怒られる。


「なら、ルリが理解するまで話し合え。共に行動しろ。あ、強制はダメだぞ?同意の上ならまだ許す。まったく、長達はルリにもう少し色々教えて置くべきだったんじゃないか?」


 まったく、手のかかる娘だよ。


「ねぇ、王様」

「なんだ?」

「王様はルリさんが好きじゃないの?」


 シエラの言葉に、セシリーとレティアがこちらを睨んできた。

 横から、ファリスの殺気もわかる。……今日は斬りかかってくるなよ?


「私もそこは気になるのよ。どう思ってるかぐらいはわかっているけど。昨夜、ルリさんに欲情したぐらいだし?」

「アレイシア!?」


 アレイシアの口撃により、殺気が四つに増えた。

 絶対、わざとだよなこれ……。


「好きを飛ばして欲情したんだ。……やっぱり、女の敵だったんだ?」

「詳しく教えて貰えますか?」

「ルリお姉ちゃんに欲情?……好色王ですか。そうですか……ふふ……ふふふふ……」


 殺気以前に、レティアの笑い方に皆が一斉にそちらを向く。

 わかっている人には、それがとても怖いものだと気が付く。

 怒ったルリと同じ笑い方だからな。


「ルリお姉ちゃんに欲情するような王は……亡き者にした方がいいですね。ええ、そうです。そうしましょう!ふふふ……あははははは!」

「……お前ら、レティア止めろ」

「言われなくとも!レティア、しっかりして!」


 シエラがレティアの肩を掴んで揺さぶっている。


「はぁ……レティア、落ち着きなさい」

「落ち着けません。落ち着くわけにはいきません!このままでは、ゼフィア王が私のお兄ちゃんになるのです!」

「「「………」」」


 レティアの発言に俺も含めて、セシリーとシエラも黙ってしまった。

 いや、確かにそうなるが……考えたこともなかった。


「落ち着きなさい!」


(あぶね……)


 アレイシアの声に本気で驚いた。


「色々と言うのは自由だけど、ルリさんの気持ちはどうなるの?もし、ルリさんが本気でゼフィアのことを好きになったりしたら、あなた達はそれを自分の我儘で拒絶するのかしら?」

「もしも、ルリがそう望んだ時は……王妃様はどうなさるのですか?」

「………」


 ルリが俺を見上げている。

 そうか、驚いた時に手を耳から外したんだったな。


「ルリ、ザインの所にいってこい」

「………」


 またも首を横に振られた。


「頼む」

「………」


 ルリがゆっくりと立ち上がり歩いて行く。

 一度こちらを振り返った。一瞬だけ見えたが、その時の目が少し怖かった。


「さて、この内容だが何もなかったことにして……」

「ゼフィアが選んだのなら、私は反対しません」

「……おい」


 ルリは既にこの場を後にした所だった。


「あなたもこの際、はっきりしなさい。ルリさんをどう思っているのかどうか」

「「「「………」」」」


 セシリー達も揃って頷いている。


「はっきりしろって……なぁ?」

「私達に聞かれても困るよ……」

「そうね。王様がルリをどう思っているのかだし」

「ルリお姉ちゃんを不幸な目にあわせるのなら……」

「ルリお母様になるのでしょうか……?」

「お前ら、言いたい放題だな……」


 王の威厳もあったもんじゃねぇ。

 ルリの事か……。


(俺がどう思っているか……)


 島に居た時には色々あった。

 正直に言うと、ルリが居なければ今の俺はなかったとも言える。

 あいつは俺の恩人であり、妹みたいなものでもあり……長とアルテナに頼まれた大切な娘でもある。

 頼まれたというのは、『何かがあった時』、『ルリが島を出て、俺のもとに来た場合』というものだ。

 だが、ルリが国に来たのは偶然だ。探しても見つからなかった。

 何があったのか?これは未だに、ルリから聞かされていない。解っているのは、島の生き残りがルリだけということだ。


(長やアルテナたちがいて、何故こうなった……)


 ルリが居た魔島の住人は簡単に言うと、その分野の頂点と言っても過言ではない。

 どこかの戦場に介入でもしたら、それこそ戦局が変わる程のものだ。国ぐらい、笑いながら崩せるだろう。

 だが、ルリだけを残して全滅した。

 住んで居たからこそわかる。あり得ないことが起きたのだと。


「ゼフィア?聞いてる?」

「……ああ。すまん」


 やはり、色々と考えてしまう。


「ルリの事か……本音で言うしかないのか?」

「はぐらかすのはなしよ」

「……わかったよ」


 観念するしかないか。


「ルリのことは間違いなく異性として見ているな。なんって言うんだ?妹と思っていたのが、数年ぶりに再会したら、大人の女性になっていた……とかいうやつか?」


 思った以上に恥ずかしいな。


「まぁ、島のこともあるから、極力そういう風には見ないように気は付けてるんだがな……。それでも、あいつの魅力は危険すぎる。ぎりぎり理性が働いてるって感じだ」

「ゼフィア王は妹と思える娘でも夜伽の対象なのですね」

「レティア、その言い方は酷すぎるだろ!?」


 レティアの目の明るさが消えている気がする。


「レティアはおいておくか。でもな、やっぱり家族ってイメージが強いんだよ。……あいつが傷ついた姿を見た時は生きた心地がしなかった。先日の騒動、相手をその場で八つ裂きにしたいぐらいの衝動に襲われたからな。俺も大切なものを失いたくはない。生きて再会できた……それだけで満足したつもりだったが、俺も欲張りなのかもしれん」

「王様、べた惚れ?」

「……小さなルリお姉ちゃんの未来を想像し、今その計画を実行に……」

「レティア、本当に落ち着こうね……」


 セシリーはレティアが暴れないように抱きしめている。


「俺もどうしたらいいのかわからないんだよ。島に居た時に娶るとか言ったら……数分かからずに存在すら消されてるだろうな」

「ルリさんは箱入り娘で収まらず、島入り娘なのね」

「お母様、それはちょっと言い方が変です……」


 箱入りには違いないが。


「俺はルリが好きなんだろうな……」

「やっと、認めたわね」

「はっきりしろって言っただろ?」

「言ったわよ。ルリさんを娶るの?」


 アレイシアの言葉に皆も真剣にこちらを見ている。


「ルリは愛するという意味を理解していない。だから娶るという考えはない」

「何も知らない子供を娶る?下種な貴族みたいね……」


 セシリーの言葉が突き刺さる。


「犯罪みたい……」


 シエラの言葉が追撃できた。


「妹、娘と思う女性を娶る……人としてダメですね」


 ファリスの言葉が痛烈に刺さる。


「ルリお姉ちゃんの血筋を狙った計画的な内容……ルリお姉ちゃんの身体が目当てなだけですね。……死ねばいいです」

「お前ら、本当に言いすぎだ……」

「言われてもおかしくないことを言ってますよね?」

「王様、そういう自覚ないのかな?」

「……お父様、乱心なさったのですか!?」

「下種で幼女時代から粉を掛け今に至る。……やっぱり、生かしておく価値などど……もご!?」

「私も酷い事を言っているのはわかるけど、レティアのは危険すぎるわ……」


 セシリーがレティアの口を手で塞いでいた。

 もごもごと何かを言っているが、何を言っているかは想像したくない。


「あと、お前らは理解してないとは思うが、ルリを娶ったとしたら、相当の覚悟がいるんだぞ?」

「妹と思っていた娘を娶るんだから、当然、覚悟はいるよね?」

「シエラ、覚悟の意味が違う……」

「でも、そうだよね?私達、ファリスは歳が下だけど、娘を娶る……ファリスを嫁にするようなものだよね?」

「わ、私がお父様の嫁!?」


 慌てる娘を横に。


「国によっては血の為に自分の子を一人妻、もしくは旦那にするという場所もあるわね」

「この場でそんな冷静な意見はいらん……」


 冷静過ぎる妻がいた。


「覚悟ってのはルリの戦闘能力を抱えるってことだ」


 その言葉だけで皆、納得がいったようだった。

 ルリ個人の戦闘能力は軽く言っても国家規模になる。魔法が使える状態でな。


「でも、ゼフィア王は、ルリお姉ちゃんと再会したときに王位継承権一位と言いました」

「あの時はルリの戦闘能力が大勢に知られてなかったからだ」

「でも、王様はルリの幸せを願うんですよね?」

「当たり前だ」

「だったら、戦闘能力以前に、その程度抱えてやる!って言えませんか?」

「ぐ……」

「そういうこと」


 シエラが手を叩いた。


「自分より強い奥さんを持つのが嫌だったんだ」

「なるほどです。だから、ルリお姉ちゃんを娶るのに覚悟と言ったのですか。……小者」

「いや、だからな!?あと、レティア!小者って言ったの聞こえてるぞ!」

「私の姉を娶ろうとしているのです。世界を敵に回してやるって言っても問題はないのです」

「どうすりゃいいんだよ……」


 この後も言いたい放題言われたままだった。

 幸せにする自信もある。世界を敵にまわすのも別に構わない。

 だが……。



「ねぇ、クレイ……いえ、ゼフィア。私達に何かあった時、あの娘があなたを本当に慕っているのなら、あなたのお嫁さんとして、あの娘を貰ってくれない?……何よ、その目?不満なの?」


 ただの冗談にしか思えない言葉。


「でも、慕っているだけでというのも、私的には嫌ね。そうだ!どんなことからでもあの娘を幸せにしてあげるって約束できる?私達のことを忘れても大丈夫なぐらい、幸せにする、守ってやるってね」


 アルテナはどこまで先を見据えていたんだろうか?

 そういや、アルテナって島の中で一番、ルリのことを溺愛していたな。


 暫くの間、昔のことを思い出していた。

 今の状態の現実逃避じゃないからな。




「………」


 ゼフィアのお願いだから、その場から出ました。

 今はザインさんを探して、城の廊下を歩いています。


「?」


 少し先からですが、剣戟の音がします。

 気になりますね。見に行ってみましょう。


「………」


 トコトコと廊下を歩いて行く。

 剣戟だけではなく、爆発音も聞こえます。

 何か訓練でしょうか?


「………」


 廊下を歩き続けると、大きな広場に出ました。


「………」


 前に兵隊さんたちと戦った場所とは違う場所です。

 それに、あの時より、凄まじいですね。

 そう思った直後、真横の柱に「ガン!」という音が響きました。


「………」


 剣が刺さってますね。


「剣飛ばされるなよ……って、怪我してないか!?」


 柱の横に私が立っていたのに気が付いた兵隊さんが叫びました。


「………」


 コクコクと首を縦に振って、怪我をしていないことを強調します。


「よかった……。城に居る女性に怪我なんてさせたら、ファリス様に何をいわ……」


 私を見て叫んでいた兵隊さんが、急に顔を青くしました。


「急に黙ってどうしたんだよ?……あぁ、なるほどな……」


 もう一人の兵隊さんも顔を青くしていました。


「?」


 私が首を傾げていると。


「「「「すみませんでした!」」」」


 と一斉に頭を下げられた。

 あまりに突然の事で意味がわからないです。


「………」


 状況がわからないので、広場の中央の方へ行ってみましょう。

 私が近付いていくたびに、周囲の兵隊さん達が怯えているように見えます。

 何かしましたか?


「えっと、ルリアルカ様ですよね?」

「………」


 名前はあっているので頷く。


「本当に怪我はしてませんか?」

「………」


 さらに頷く。


「本当に良かった……」

「?」


 怪我していたら何かあったのでしょうか?

 私が首を傾げていると。


「えっと、あなたに怪我をさせると……ファリス様かザイン様からきついお仕置きがあります」

「………」


 なんですかそれは……。


「……怪我は仕方がないものです。回避できなければ、それは自分の力量が足りないのです」


 小さな声で言うと。


「おっしゃる通りです。我々、王都守護隊、第一部隊は力量がなければなれませんから」

「……剣が跳ね飛ばされたのはどうしてですか?」

「それは、新しいことを試して失敗をしまして……」


 剣を飛ばされたであろう兵隊さんが教えてくれました。


「……何をしたのですか?」

「剣の柄で一撃防いだ後、反撃しようとしたのですよ。ですが、これはダメですね。使い物になりません」

「………」


 私は柱に突き刺さっている剣の元へ歩いて行き、剣を引き抜きます。

 剣は刃を落とした物ですね。重さは普通の剣の重さです。


「………」


 私は右手に剣を下げたまま中央に戻りました。

 剣は逆手で持っています。


「……打ち込んでください」


 と、一言告げます。


「えっと、それは……ルリアルカ様が強いというのは伺っております。ですが、万が一が起きますと……」

「いいから、打ち込みなさい!」

「は、はい!」


 剣を手に取った兵隊さんが静かに構え。


「はぁ!」


 私に向かって切り込んできました。


「………」


 上段からの綺麗な太刀筋です。

 普通の剣技としてはいいものですが。


「なっ!?」


 私は振り下ろされた剣を柄で受け止めました。


「……動揺はよくありませんよ?」


 受け止めた剣を、身体を半回転して流し、兵隊さんの脇腹に私の肘を入れます。


「ぐっ!」


 まともに入った痛みで兵隊さんの動きが一瞬止まるのを確認した後、逆手の状態から斬り上げ、兵隊さんの手首を打ちます。手加減は当然していますよ?


「……まだ終わりませんよ?」

「!?」


 私の声で一気に集中力を取り戻した用ですが、もう遅いです。

 私は切り上げた剣をそのまま、振り下ろして地面に突き刺し、それを軸に体を回転させ兵隊さんを蹴り飛ばし。


「………」


 蹴り飛ばされて転がった兵隊さんに目を向けると、地面に突き刺した剣を引き抜き、前方へ軽く跳躍して投げました。剣は転がり終えた兵隊さんの真横に突き刺さりましたね。


「っ……はぁはぁ……」


 周囲は静かになり、地面に横たわった兵隊さんの息だけが聞こえます。


「……いかがですか?」

「話は聞いていましたが、とんでもない実力です……」


 兵隊さんはどこか、嬉しそうでした。

 


 程なく、模擬戦が始まったのは言葉にするまでもないです。

 ゼフィアの本音が出ました。

 周囲も薄々気が付いているでしょうけど(妻のアレイシアには即バレでした)。


 ただの異性として娶るのなら、ルリでも問題はなかったのでしょう。

 問題はその生い立ちにあります。

 とてつもない強さを持ち、有名になりつつある。

 それを国が身内として取り込むと、周囲は穏やかではないですし。


 ルリの今後はどうなるのでしょう?




 次回の更新は書き終わり次第となります。

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