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月日

島での生活は思いのほか順調。

お風呂もあるし、食事もとれる。

人は増えないけど……。

 思ったよりも月日が流れるのが早く感じる。

 それだけ充実しているということかしら?

 驚くことも多かったけどね……。

 例えば、今がそう。


「アルシェ、19歳の誕生日おめでとう」


 アルシェの誕生日はいいの。

 それはめでたいことだから。


「アルテナも330歳おめでとう」


 私の誕生日は過ぎてたから黙ってたんだけど、皆が知ったらこうなったのよ。

 驚くことはどこ?私の年齢?……ぶちのめすわよ。


「……複雑な気分よ」

「めでたいことではないか?」


 カイが横から言う。

 めでたいことよ?

 ええ、悪い事ではないわ……。


「皆でケーキを作ってくれたのはいいんだけど……」


 私は目の前のケーキを見る。


「飾りで330って示さなくてもよかったんじゃない……?」


 私のケーキには果実で330と文字が書かれている。

 年齢も気にすることはないんだけど、私だって女性よ?

 ここまであからさまなのは、さすがに酷いわよね?


「アルテナ、嫌だった?」

「うぐっ……そうじゃないわよ」


 アルシェは順調に成長している。

 背も少し伸びたかな。カイの次に背が高い。

 相変わらず、純粋すぎる。


「まぁ、アルシェも悪気があるわけじゃないですから」

「……そうよね」


 純粋すぎて、何が悪いのかがわかっていない。

 色々と教えたんだけどね……。

 基本、のんびりとした娘だから仕方がないのかもしれないけど。

 ちなみに、ライアは来月で22歳。

 22歳か……。


「アルテナさん、どうしたの?」


 ライアは私の視線に気が付いたらしい。

 素直に言っていいものか悩むわね。


「はっきり言っていいのか悩む内容なのよ」

「私達の間でそんな遠慮はいらないですよ。アルテナさんらしくない」

「そう?それじゃ、聞くけど」

「なんですか?」

「ライア、婚期逃してない?」

「え……?」


 反応したのはライアとカイ。

 カイは無言だったけど、言葉に反応していたわ。


「婚期……ですか?」


 ライアは少し目を瞑って考え。


「島に住んでいますから、諦めてますよ?」


 簡単に言った。


「諦めてるってそんな簡単に……」

「それにまぁ、アルシェが娘みたいなものですから」

「私そこまで子供じゃないよ!」

「「子供よ」」


 私とライアの声がはもり、カイは無言で頷いていた。


「そんなぁ……。胸なんか皆よりも大きいのに……」

「……へぇ、そんなこと言うのね」

「……そうですね」

「あ、まずっ……」


 私とライアの低い声を聞いた途端に、アルシェが青くなる。


「逃がさないわ」

「反省しなさい」


 アルシェが逃げ出す前に、木の実ぐらいの大きさの風の魔法が放たれ、アルシェの額に当たっていた。


「……痛いよぉ」

「もう一発?」

「……ごめんなさい」


 アルシェの謝罪で終わり。

 もはや、日常なんだけど、学習しないわね。

 本当に心配だわ。




「話は戻すけど、ライアはそれでいいの?」


 私はライアを連れて家から外へ出たいた。

 カイに聞かせるのはあれだしね。


「話を戻されても困りますけど……」

「だって、重要な事じゃない?」

「それはそうですけど……。今から相手を探すのって、逆に必死に見えて相手が引くと思いませんか?」

「……かもしれないわね」


 この島にいるのは4名。

 私、カイ、アルシェ、ライアだ。

 種族は精霊と魔族のハーフ、龍族、神族、人族。見事に同じ種族はいない。それは仕方がないけど、問題はライアが人族ということ。寿命を考えると人族は短命になる。ライアを除いた三人からするとだけど。


「……ごめんなさい」

「いきなりですね」

「……ごめん。でも、考えると謝るしかできないのよ」

「私は気にしていませんけど?」

「そう……」


 ふと、ライアは島に来なければ人並みの幸せを過ごせたのではないか?と考えてしまう。

 働いている先で出合いがあるかもしれない。そして、結婚すれば子供も生まれて、家族で過ごす日常があるはずだ。それは、いいことよね。

 でも、私が誘ったから、ライアにはそういうことは訪れない。

 これを悪いことをしたと言わずに何というの?


「ねぇ、ライア」

「なんですか?」

「島に来たこと、後悔してない?」

「………」


 ライアが急に黙った。


「やっぱり、返事にこま……」

「アルテナさん、怒りますよ?」

「え?」


 ライアは優しい口調だったが、目は真剣だった。


「私は島に誘っていただけたこと、本当に嬉しく思っています。……本音を言うと、不安でしたけど」

「………」

「私はアルシェのように種族で優れたわけではないですから。考えてくださいよ?私は人族、ただの人ですよ?」

「……ふふ、ただの人があんな精密な技術持ってないわよ」


 思わず、笑みがこぼれた。


「私は昔からできる事だけやっていましたからね。偶然、身に着いた技術です」

「凄いわよ」

「ねぇ、アルテナさん」

「なに?」

「本当はアルシェだけを連れてくる予定だったのですよね?」


 ライアがこちらを真っすぐ見ている。

 正直に言わないと失礼よね。


「そうよ。でも、三人で話しをした時の事、覚えてる?アルシェがいない時の」

「覚えてますよ。衝撃の事実が多くて、忘れもしません」

「あの時にね、ライアも島に連れて行こうって思ったのよ。先にカイに言われちゃったけどね」


 ゆっくりと呼吸を整えてから、続ける。


「私ってさ、生まれが特殊過ぎるし、年齢もあなた達より圧倒的に上じゃない?そんなの言うと、カイなんてさらに上だけど……」

「カイさんは例外ですよ。おとぎ話に出てくるぐらいですから」

「そうね。私って、長生きしてるからさ、色々見てるのよ」

「見ているですか?」

「ええ。人の良い所も、悪い所も沢山ね。ほんと、色々見たわ」

「アルテナさん……」


 ライアが私の名前を呟いていた。


「ライアってさ、いい人だよね」

「なんですか、いきなり?」

「アルシェを助けて、その後も守って働いてとか。普通だとやらない人の方が多いでしょ?」

「そうかもしれませんけど、私は助けたかったですから」

「うん。そこがライアのいい所だと思う。ほんと、眩しいぐらい」


 ライアは周りの人を気遣い、人に優しい性格をしている。

 はっきり言えば、損をする。

 でも、彼女はこの生き方を選んだのだろう。

 私からすると、眩しい。

 だからこそ、そんな彼女が損をするというのが許せなかった。

 ……その原因が私でも。


「カイが作ろうとする島ってね、強くても疎まれる人が住めるようにするって内容なんだよね」

「それですと、私は完全に場違いですよね?」

「ううん」


 私は首を振って否定した。


「あなたは強くて疎まれるとかじゃない。純粋にこの島に必要な人だと思ったのよ」

「ライアはこの島にいても不思議じゃないぐらい、凄いことができる」

「それはよかった」

「……でも、あなたが幸せになれないのが許せない」

「え?」

「ここに連れてきた……誘った私が言うのは、やっぱりおかしいと思うけど。でも、それでも……、ライアが幸せになれないというのが許せないわ。原因は私だけど……」

「そんなことを考えていたんですか?」

「そんなことって!……大切なことでしょ?」

「確かに大切なことではありますけど……」


 ライアは困った顔をしながら。


「アルテナさんって繊細ですよね」


 と言った。


「歳の割に少女っぽいといいますか……」

「……なんですって?」


 思わず、声が低くなったじゃない……。


「あ、ごめんなさい。アルテナさんは私とアルシェよりも長生きなのに、人に慣れていないと言えばいいのでしょうか?」

「まぁね。私自体が珍しいのもあるけど。……家族に散々脅されたから、簡単に人里に行けなかったのよ」

「……アルテナさんが?」


 ぽかんとした表情を見せた直後。


「ふ……ふふ……」


 と、ライアから笑い声が聞こえてきた。

 仕方ないでしょ!私だって子供の時は怖がりだったのよ!

 信じられない?うるさい!


「アルテナさんが……怖がり……ふふ……ダメ、笑うのを堪えるのが無理です………あはは……」


 ライアは暫く、笑い続けていたわよ。

 そんなにも、おかしい事かしら?




「久々に大笑いしました」

「……でしょうね。私は久々に大笑いされたわ」

「もう……拗ねないでくださいよ。アルテナちゃん」

「……怒るわよ?」

「ごめんなさい」


 『ちゃん』はさすがに恥ずかしいわ。


「ライア、島にきてからの方が楽?」

「そうですね……」


 ライアは大陸がある方へ視線を移し。


「大陸より、この島の方が楽なのは間違いないです。ギルドのお仕事も楽しいですが、それなりに面倒ごともありましたから。……マスターとか」

「そんなのもいたわね……」

「ここでは人のしがらみもありませんし。それに、アルテナさん」

「なに?」

「私はとても幸せですよ」

「………」

「大切なアルシェがいて、頼もしい二人がいる。困ったことがあると、皆で助け合う。毎日、とても楽しくて退屈しません。それに……」


 私は本当に酷い事をしたと思う。


「家族と言ってもらえたのも、とても幸せです。他にも……」


 もしかすると、ライアはアルシェよりも白なのかもしれない。


「ほんと、幸せ過ぎて怖いぐらいですよ」


 私は彼女の笑顔に見惚れていた。

 それ故に罪悪感が込み上げてくる。

 けど、ライアは幸せと言ってくれている。

 それでも……。


 『彼女の人生を変えてしまった』

 『日常で得られる幸せを失わせた』


 この様な考えが浮かんでは消えている。

 目の前の女性は笑顔で語り続ける。

 ……自然と涙が出てきた。


「アルテナさん、聞いてますか?って、どうして泣いているんですか!?」

「……気にしないで。ありがとう、とっても嬉しいわ」

「あ、あの!何か悲しませる事でも言いました!?」

「私が思い込んでいるだけよ。……少し、散歩してくるわね」

「は、はい……」


 ライアに背を向けて歩きだす。

 でも、これだけは言いたかった。

 ずるいと言われても。


「あなたが家族で嬉しいわ」

「あ……」


 私はライアの声が聞こえる前に飛び去った。




「ここにいたのか」

「カイ……」


 私は島の傍にある孤島の中心で座っていた。

 ここは日当たりのいい場所なのよ。

 ……もう夜だけど。


「二人が心配している。ライアなんて顔を青くしてたぞ?」

「ライアには悪い事をしたわね」


 上の空ではないけど、元気な返事ができたとは思えない。


「……その様子では簡単には帰れそうにないな」


 そう言って、カイが私の横に座った。


「何があった?」

「何があった……ってわけじゃないんだけどね……。ちょっと、罪悪感よ」

「ふむ……」

「ねぇ、カイ」


 カイなら答えを持っているかもしれない。


「あなたは人の人生を変えてしまったかもしれない……という罪悪感は覚えたことない?」

「ないな」

「そう……」

「それに、考え方が間違えている」

「え?」

「人生を変えたと言ったな?そんなものは普通のことだ」


 カイは平然と言った。


「普通って?人の人生を変えたことが普通ですって!?そんな、ふざけた答えを求めたわけじゃないわ!」


 思わず、立ち上がって叫んでいた。

 私が本気で悩んでいることが普通!?

 なによ!おとぎ話に出てくる英雄にとっては取るに足らない内容ってこと!?


「落ち着け」

「これが落ち着いていられ……」

「説明するから落ち着け」

「……わかったわよ!」


 座りなおした。

 くだらない内容だったら、カイでもぶっ飛ばすからね!


「人というものは、他人と関わった時点で人生が変わる。だから、変えたというのは思い込みに過ぎん」

「……は?」

「単純なことだ」

「ちょ、ちょっとまって!ごめん、よくわかんない!」


 考えていた私の方が悪かったの?

 それとも、カイの考え方がずれているのかしら?


「解りやすく説明してくれない?結論だけ出てるみたいで、解らないわ……」

「アルテナは私と知り合って何が変わった?」

「急ね……。色々変わったわ。考え方、生き方。他にも色々とね。あ……」

「単純ではないか?」

「カイみたいに考えれればね」


 言いたいことは確かにわかる。

 でも、それって少し寂しくない?


「カイは私と知り合えて、何か変わった?」

「そうだな……」


 カイは空を眺めながら。


「私の考えを手伝ってくれるという、稀有な者がいて嬉しかったな」

「それだけ?」

「それだけだ」

「そう」


 カイの方に身体を預ける。


「あなたは寂しくないの?」


 以前、孤独な生き方をしてきたと、聞いたことがある。

 英雄というものは、言葉通りではないとも。


「私にそのような考えが、許されると思うか?」

「思うわよ。あなただって人なのよ?」

「人か……。罪状が大量にありそうだ」

「英雄だもんね。女もより取り見取りだろうし」

「変な考えを持つな……」

「冗談よ」


 やっぱり、少し寂しい。


「カイは誰かを好きになったりしないの?」

「昔はあったかもしれん」

「今は?」


 少し……いや、かなり興味がある。

 聞き逃せない。


「ない」

「……そうよね」


 そう答えると思っていても、少しは期待する。

 少しぐらい距離が短くなって欲しいと思ってしまう。


「そろそろ帰るか」

「……もう少しこのまま」

「仕方がない奴だ」


 私だって、たまには甘えたい。

 少しぐらいなら、許されるよね?




 時間的には夜中になっている。

 でも、私達が住む家には、明かりはついていた。


「ただいま」

「アルテナ―――――!」


 家のドアを開けた直後、アルシェが飛んできた。


「心配したんだよ!」

「ごめん」

「カイも探しに行ったのに遅いし!」

「すまん」

「アルテナさん……」


 ライアが心配そうに私を見ている。


「心配させたわね」

「私も何か悪いことを言ったみたいですから」

「ライアは悪くないわ。私が悪いのよ」

「ですけど……」

「アルテナもライアも喧嘩はダメだよぉ」

「「アルシェ?」」


 アルシェが泣きそうになっていた。


「私達は家族なんでしょ?だから、喧嘩はしちゃダメだよ……皆に心配かけちゃダメだよぉ……」

「アルシェの言う通りだな」


 カイまで、アルシェの方に付いた!?


「別に喧嘩してるわけじゃないわよ?」

「アルテナさんの言う通り、喧嘩はしてないわ」

「だったら、どうして……」

「人は複雑なのよ。家族なら、さらにね」


 涙を流し始めた、アルシェを抱き寄せていると。


「難し事を言われてもわからないよぅ……」


 と、言われてしまったわ。

 難しい事なんて言ったかしら?


「そうね……」


 解りやすい例えって、何かあるかしら?


「アルシェは神族よね?」

「神族だよ」

「じゃぁ、魔族と精霊のハーフの私とは普通に考えると?」

「仲が悪い?」

「そうよ。でも、私とアルシェは仲がいいわよね?」

「うん」

「複雑じゃない?」

「複雑……」

「家族だからって、全て知っているわけじゃないわよね?」

「うん……。アルテナもカイも秘密がいっぱい……」


 そんなにいっぱいはないけど……。

 今は置いておきましょう。


「私、カイ、アルシェ、ライアは皆、家族。家族でも教えてないこともあるわよね?アルシェは秘密があるからって喧嘩するの?」

「しない……」

「秘密があるからって嫌いになるの?」

「そんなので嫌いにならないよぉ」

「だったら、私とライアは?」

「喧嘩してない」

「そういうことよ」

「……わかった」


 ライアは複雑な表情をアルシェに向けているわね。

 私もそんな気分だけど。

 もっと色々教えないとダメね……。


「ライア、ごめんね」

「いえ、私の方こそ、ごめんなさい」

「……また喧嘩なの?」

「違うわよ。最後に、ごめんって言いたかったのよ」

「私もです。アルテナさん、家族で嬉しいと言ってくれて、ありがとう」

「……聞こえてたんだ」

「あんな嬉しい言葉、聞き逃しません」


 ライアは本当に笑顔が似合うわね。




「お腹も膨れたし、あとはお風呂ね」


 夜中にも関わらず、空腹に負け食事を取った。

 皆も取っていなかったらしい。


「お風呂は入りたいですね。アルシェ、こっそり逃げようとしないで」

「え――!こんな時間にお風呂に入ると溺れるよぉ……」

「寝なければいいのよ」


 この島では、お風呂は一つしかない。

 私とカイで作った露天風呂だ。

 混浴じゃないわよ?


「眠くなるに決まってるよぉ……。あ、カイが一緒に入ってくれたら、溺れないで済みそう」

「「!?」」


 私とライアが固まった。


「私を巻き込むな。お前たちの後で入るから、ゆっくりしてくればいい」

「くつろいでくるわ。……覗かないでよ?」

「覗くわけがないだろう」

「残念」


 言葉とは裏腹に、鼓動は正直だった。

 「覗く」と言われると、大慌てだと思う。

 カイになら別にいいんだけ……。なんでもない!


「行きましょうか」

「うん!」

「はい」


 露天風呂までは住んで居る家から少し離れている。

 家の裏に作るのも考えたが、恥ずかしいので止めたわ。

 だから、少し離れた場所に作って、周囲を土の壁で覆っている。


「お風呂だー!」

「こら、アルシェ!服は籠の中に入れなさい!」

「ライアが片付けてくれるからいいの」


 アルシェは服をその場に脱ぎ捨て、かけ湯がある場所へ走っていった。


「あの娘、島に来てから恥じらいが無くなった気がするわ……」

「そうなんだ?」

「……はい。色々と不味いですよね?」

「お風呂場には私達しかいないから大丈夫だと思うけど?」

「あのままだと、そのうち裸で島を歩くかもしれませんよ……」

「それはダメね……」


 ダメを超えているわね。

 カイは男性だし、間違いは起こらないとは思うけど……。


「また教えないとダメみたいです……。大雑把というか、無邪気というか……」

「あなたも大変ね」

「ええ……」


 私も今まで以上に手伝わないとダメね。

 ほんと、忙しいわ。


「二人とも、早くー!」

「はいはい。お風呂も私達も逃げないわよ」

「1000数えるまで上がってはダメですよ」

「ライア、酷いよ!?」




 結局、アルシェは100数えた所で、のぼせて終わったわ。

 私とライアはのんびりとお風呂に入るので時間は自然と長くなる。


「先に家に帰る……」

「……服ぐらい着なさい」

「暑いよー」

「明日からごはん抜きです」

「今すぐ着る!」


 ライアの『ごはん抜き』は洒落にならないのよ。

 前にアルシェが『ごはん抜き』になった時、三日間、水だけだったわ。

 こっそり、おかずを上げようと思ったんだけど、その時に『甘やかすのはダメです』と言われたのは忘れられない。

 ライアでも怒ることはあると。


「それじゃ、先に帰るね」


 着替えを終えた、アルシェはそう言って、家へ向かって走っていった。


「走って転ぶと、またお風呂になるのに……」

「元気ですからね」

「アルシェらしいわね」

「はい」


 少しの間、沈黙が流れた。

 お風呂はゆっくりと入るものだから、不自然な感じはない。


「アルテナさん」

「どうしたの?」

「お願いがあります」

「お願い?別にいいわよ?」

「では、私に何かあった時は、アルシェをお願いします」

「………」


 ライアの目は真剣そのもの。嘘、偽りはない。


「……何かあるの?」

「私の家系……といっても、私が知っている家族ですが、短命なんです」

「ああ、そういうこと。人族は私達と違って、寿命は短いから……」

「35歳なんです」

「35歳って何が?」

「私の家系の平均寿命です」

「!?」


 平均寿命が35歳?

 それって、それよりも長生きもあれば、当然さらに短命もあるわよね?


「……ライア、身体の具合悪いの?」

「今はまだ何もありません。でも、アルテナさんには伝えておきたかったんです」

「どうして私に?」


 ライアは私を真っ直ぐ見たまま。


「アルテナさんが心から信用できる人だからです」

「カイはこのことは?」

「まだ教えていません」

「何か対処方法も知っているかもしれないから、カイと相談した方がいいわね」

「お任せします」

「お任せって、ライアのことなのよ?」

「アルテナさんの方がカイさんと仲がよろしいですから」

「そういう問題じゃないのよ……。私が聞きに行くとき、ライアも一緒に来ること。これは決定事項よ」

「わかりました」


 これは急いでカイに相談するしかないわね。

 改善する方法があるなら、そこからなんとかするしかない。


(ライアの隠し事はとんでもないものね)


 私はこの日、ライアを助けることを決めた。


(家族は大切なのよ)


 種族が違うことで色々な所で差異がある。

 それは皆が納得している。

 それでも、私はできる限りの事がしたい。


「さてと、私達もそろそろ出ないとね」

「はい」


 湯船から立ち上がった時、ライアを抱きしめた。


「アルテナさん!?」

「………」

「あ、あの、私はそういう趣味は……」

「何を勘違いしてるのよ……」

「急に抱きしめられたから、その……」

「バカね。……あなたがここに居るというのを確認しただけよ」

「あ……」

「行くわよ」

「は、はい!」




 何ができるかも、まだわからない。

 助けられるという確証もない。

 私は万能ではないから。


(それでも、この気持ちに偽りはない!)

 種族の差というのが改めてでました。

 ライアの家系というのも島では影響がでるでしょう。




 次回の更新は書き終わり次第となります。

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