犯人捜し
こんなことをした不届き者を探さないと。
許すつもりは最初からない。
相手が泣いたらどうする?ですって?
手遅れよ。生きていることを後悔させてあげましょう。
「さてと、準備をしないとね」
私は冒険者の風上にも置けない者を探し出す準備をしていた。
「ルリさん、何か策はあるの?」
ギルド内での事なので、横にはシエラがいる。
シエラも許せない内容らしい。積極的に手伝ってくれる。
「策というほどの事じゃないわ。そうね……」
目を瞑り、状況を考える。
(あの子の怪我は身体の内部だけにダメージを与える技術。今の私では魔法と判断するというのは難しいわね……。魔法の線はシエラにお願いましょう)
打撃ならば、かなり高等な技術だ。最低でも中級冒険者以上。
(変な言い訳を考える中級冒険者以上で確かめて……いえ、ずば抜けた技術を持つ、初級もいるかもしれないわね。買い取り品を持ってくる冒険者を全て当たるしかないわ)
状況的にはかなり手間はかかるが、見逃すことはない。
「シエラは微量な魔力が使われるかどうかだけ確認してくれない?」
「微量な魔力?」
「そうよ。あの子の怪我は魔法で負わせたものなら、本当に最低限の微量な魔力を使う事になるわ」
「それはいいけど……。私はそこまで魔力に反応できないよ?」
「大丈夫よ。自信を持ちなさい」
「わかった」
自信なさそうだけど、引き受けてくれたわね。
シエラなら大丈夫なんだけど。
「買い取る時に肉と毛皮の数が合わない人に注意することね。基本的に注意するのは中級冒険者以上よ」
「中級以上って、上級冒険者の人でもありえるの?」
さすがにシエラが引き気味になっている。
「ええ。本当に残念なことだけどね」
ギルドの受付をするようになって、少しは月日は経過した。
考えたくはないが、島の家族とまではいかないが、皆誇りは持っていると思っていた。
「聞き逃せない会話内容だな」
「ウェイスおじさま」
「お、おじさま?」
明らかに動揺しているがギルドマスターであり、シエラの父のウェイスおじさまがいた。
「おじさまに手伝ってもらえると助かるわ」
「ルリアルカさん、その呼び方は……」
「……お父さん、デレデレし過ぎ」
「い、いや!これはだな……」
シエラが横目で見ながら言う。
「私と同じ歳の子におじさまって呼ばれて喜んでいるんだ」
「そういう風に呼ばれることはないからな。……油断したのだよ」
「……いやらしい」
「ルリアルカさん、最近、娘が冷たくなってきているんだが……」
「愛されている証拠ね」
「ルリさん!?」
一瞬で顔を赤くした、シエラが慌てだした。
父親が好きなことに、そこまで慌てる必要があるのかしら?
「シエラも隠す必要ないじゃない?」
「それは……大好きなお父さんだもん……って、恥ずかしいよ!?」
「そうか……。大きくなっても、そういってもらえるなんて嬉しいものだ」
真っ赤になる娘と感動している父。
いい光景よね。
「最近は妻にも似てきているから、悪い虫が付かないかも心配だな……」
「悪い虫って……」
「これでも心配していたのだよ。シエラのよい所に気が付き始めた男がいないかとな」
「本当に愛されてるわね」
ゼフィアも似たようなことを言っていた気がする。
父親は皆がこのように考えるのかしら?
「当然のことだ。娘を愛していない父親などいない」
「よかったわね」
「ありがとう……?」
シエラが少し困惑気味のお礼を言う。
「今日は気分がいい日だ」
おじさまが、シエラの頭をご機嫌で撫でている。
「う……ぁ……」
シエラの顔がさらに赤くなったわね。
「しおらしい姿もいいものだな」
「シエラはいつも可愛いわよ?」
「違いない。いつも大切な可愛い娘だよ」
おじさまは本当にご機嫌だ。
「そうだ、久しぶりに一緒にお風呂に入るか?」
「お父さん!?」
あら?なかなか楽しい会話が聞けたわね。
「最近は一緒に入ることもないか……」
「ちょうしにのるな―――――!」
シエラが叫びながら、おじさまを蹴り飛ばしたわ。
いい光景が少し台無しね。
「やはり、いい話ではないな」
場所はギルドマスターの部屋。
応接用の椅子に座って、三人で話し合いをしていた。
「ええ。おじさまは心当たりはない?」
「そういうことができる冒険者か……」
腕を組み、思い出すように目を瞑っている。
「……数名いる。だが、タイミングよく、その一人が現れるかはわからん」
「……いるんだ」
シエラは肩を落としてがっかりしていた。
「こういう冒険者に対してはどのような行動を取ればいいのかしら?」
「そうだな……」
「ちなみに、やり過ごすという答えは受け付けないわよ?」
「む……」
私の言葉におじさまの表情が曇った。
思った以上になにかあるのかもしれないわね。
「……できれば、関わってもらいたくなかったんだが、無理そうだな」
「私も本音で言うと、関わりたくないわ。でも、今回の事は見逃してあげない。……殺してもいいわよね?」
「まぁ、それはかまわ……」
おじさまが固まった。
「へぇ……。いいのね」
「いや、今のはなしだ!」
「いいことを聞いたわ。こんな低俗な連中、根絶やしにしてあげる」
「ルリアルカさん、落ち着くんだ!シエラも止めてくれ!」
「……こんな状態のルリさんを止めるの無理だよ」
シエラは諦め気味ね。
「まったく、二人とも本気にしないでよ。今の私は魔法は使えないんだから」
「そうだけど……。ルリさん、体術でも相当強いよね?」
「その辺りの人よりは強いかもしれないわね」
「いや、間違いなく強いだろう……」
ある意味、諦め気味のおじさま。
「しないわよ。……一応」
「今、最後に一応って言ったよね!?」
「ルリアルカさん、やはり……」
「ああ、もう!二人とも気にし過ぎよ!それに、おじさま達、ギルドがもっとしっかりしていれば大丈夫なことじゃないの?」
「それを言われると痛いな……」
冒険者でも誇りはあるはず。
自ら、悪い方に進んでいく者はいないと考えたいわ。
「色々あるのだよ。一般の冒険者から脱落した者は盗賊と変わらないが、問題は貴族が関わる者だな」
「貴族?」
「簡単に言うと、上流階級の人々だ」
「私、貴族は嫌い……」
「シエラ?」
明らかに、シエラが嫌悪感を持っている。
「自分がやったことでもないのに、手柄だけ奪う人が多いんだよ。冒険者がどれだけ苦労しても、最後に少し関わったからって、全部持っていくんだし。無茶苦茶だよ」
「おじさま、貴族ってそこまで酷いの?」
「シエラはその悪い部分の酷いのを見たことがあるからな。当然、いい人物もいる」
「そう……。でも、今日の事を考えると、貴族が関わっている内容はないわよね?」
母親の薬を買うために、稼ぎに出た子供の獲物を横取りするぐらいだし。
……小者でいいわね。
「普通に考えて、ないと思って問題はないだろう。貴族もそこまで暇ではないだろうしな」
「とりあえず、犯人捜しなんだけど……」
横目でシエラを見る。表情的に明るくはない。
いつもの可愛らしい姿が台無しよ。
「おじさまと話し合いたい事があるから、シエラは先に受付で待ってて」
「わかった。……二人きりになったからって、お父さん、ルリさんに変なことしちゃダメだからね」
「するわけないだろう!」
シエラは返事を言わずに、部屋を出て行った。
「シエラにも困ったものだ……」
「いいじゃない。可愛いし」
「それはそうだが……。ルリアルカさん、話し合う内容はシエラの事なのか?」
「違うわよ。……不届きな冒険者の処罰方法よ」
「やはり、争うのか」
「これでも、受付をしているんだから、許せないこともあるわよ」
「ルリアルカさんが受付を始めて、月日も過ぎたな。負担ではないかね?」
父親の様な目で言うのね。
シエラが怒りそう。
「やり始めたころは……怖かったわね」
「怖い?ルリアルカさんから予想もしない言葉が出たな」
「失礼ね。私にだって怖いものはあるわ。……自分自身もね」
「発言と行動が真逆だな。今のルリアルカさんでは仕方がないのかもしれんが……」
「……根底は変わらないわ。今は色々な人と話せるけど、最初は誰も話しかけないでと思ったぐらいよ」
心底うんざりしたように返事をすると。
「今はどうなのかな?」
答えは知っているはずだけど、訊ねられた。
「楽しいわ。無理やり決められた時は、セシリーとシエラを恨んだぐらいなのにね」
「はは……。二人には黙っておく」
「ありがとう。この事、二人が知ったら泣くかもしれないし」
本当に泣かれると困る。
「それじゃ、本題よ。おじさま、この手の人はどうすれば、懲らしめられるのかしら?」
「今回は貴族が関わっていないから、簡単に片付くかもしれないが……無駄に妬みを買う可能性が高いな。ルリアルカさんを付け狙うようになるかもしれないし、妹のレティアに手が向かうかもしれない」
「……レティアに?」
自分でもわかるぐらい、声が変わったのに気が付いた。
「そうだ。レティアだけじゃない、親しい人全てにだ。セシリーとシエラも当然含まれる。さすがにここまでのバカはいないだろうが、王様にも手を出す者もいるかもしれん」
「ゼフィアにも?」
何よそれ?悪い事して勝手に逆恨みされて、周りに被害を出されるの?
生かす価値無いわよね?
「そういう者もいるというだけだ。はっきり言って、今回の内容を考えると小者だとは思うがな。いや、そうであってもらいたい」
「大物が釣れたりしたらどうするのかしら?」
「……最悪、私が潰そう」
おじさまが手を握りしめながら言った。
そういうこともあるのね。
「それはギルドマスターとしての決断?それとも、私達を気遣ってかしら?」
「両方だ」
「そう……」
おじさまが直接ね……。
おじさまは王都から移動は基本的にできない。シエラもいるし、なによりギルドがあるここが家というのもある。
(私が一番ね)
何かあった時は旅に戻ればいい。
レティアは付いてくるといいそうだけど、ゼフィアにお願いすればいいわ。
(流れ着いた者は流れる時がいつかはね……)
「おじさまは手を出しちゃダメよ」
私が適任なのは間違いない。
「だが……」
「私がやるわ」
「ルリアルカさんでも魔法が使えない今では、万が一が起きるかもしれん」
「かもしれないわね。でも、私の方が都合がいいのよ」
「都合?」
「色々とね」
「くれぐれも、無茶はしないよう……ルリアルカさんには無理か」
「酷い言われようね。じゃぁ、先に下に戻るわ」
私はそう言い残し、部屋を出た。
犯人が小者だといいんだけどね。
「……ルリさん、どうしよう?」
受付に戻ると、シエラが困ったというよりも、呆れたという状態になっていた。
「何があったの?」
「犯人がわかったんだけど、それがちょっとね……」
「わかったの?」
「うん。最悪なことに上級」
「上級ね」
私が、答えた直後。
「しかも、これ普通の上級じゃない」
「普通の上級じゃない?もしかして……」
「貴族、御用達」
「……ほんと、最悪ね」
上級というのでも厄介なのに、先ほど聞いたばかりの貴族まで?
「さらに嫌な事が追加だけど」
「まだあるの?」
私まで呆れたくなってきたわ。
「これ、フェイマスで登録されたものじゃないから、他国が主な冒険者なんだ」
「つまり、他の国の貴族のお抱えってこと?」
「うん」
「はぁ……」
思わず、ため息がでる。
これって外交的にも問題になるとは思うけど、その辺りはどうなのかしら?
普通の冒険者同士なら簡単に片付く問題だとは思うけど。
「シエラはおじさまに連絡してきて」
「ルリさんは?」
「私は少し話をしてくるわ。気配的にあれでしょ?」
犯人であろう人物の方へ視線を送る。
「そう。……無茶しちゃダメだよ?」
「わかってるわよ」
シエラが受付から離れて行った。
(本当に親子ね)
「そこの受付」
「何かしら?」
ふと声を掛けられたので、視線を向ける。
声を掛けたのは例の犯人。
「俺はいつまで待たされるんだ?」
「待たせて悪いわね。今日は色々と問題があって、簡単な買い取りも慎重にならないとダメなのよ」
私の声に気が付いた、ギルドに居る人達が僅かに反応した。
「問題?どうせ、ギルドが失敗でもしたんだろ?俺には関係ない」
「ギルドが問題を起こしたわけじゃないわ。冒険者の方が問題を起こしたのよ。おかげで大変よ」
「冒険者なんざ、問題を起こしても普通だろう?」
「その言い方は他の冒険者の方から反感を買うわよ?」
まっとうに活動している冒険者の方が多いのに。
「その程度で絡んでくる奴ぐらいはどうとでもなる」
「大した自信ね。仮にこの場に居る冒険者全員から一斉に攻撃されたらどうするの?」
「ありえないことは想像しても意味がない。それに俺は急いでいる。早く次の街へ移動したいんだ」
「急いでいる人はあなただけじゃないわ。それとも、何か特別なことでもあるの?」
「特別なことはない」
「なら、ゆっくり待ってて。こっちは今、犯人を捜さないとダメなのよ」
少し、揺さぶってみましょう。
「犯人?何か事件でも起こした奴でもいるのか?」
「ええ。子供の獲物を横取りした挙句、大怪我させた冒険者がいるのよ。酷いと思わない?」
「それは酷いな。……犯人の目途は付いているのか?」
(一瞬でも、視線を逸らしたわね)
腕は悪くないのかもしれないけど、精神面が疎かだ。
「一応ね。このギルド内にいるわよ」
「そうなのか?」
「ええ。ほら、目の前にいるじゃない」
「………」
急に黙ったわね。普通は聞き流すと思うけど。
「怪我に気が付いたのはお前か?」
思った以上に釣れたみたい。
「普通にみただけじゃわからないわよね」
「……普通は気が付かないんだがな」
「偶然、普通から少しずれた人がいただけよ。色々と大変だから、大人しく捕まってくれない?」
「捕まる?この俺が?」
笑ってるわね。そこまで腕に自信があるのかしら?
「俺には貴族が付いているんでな。捕まった所で直ぐに外に出られる」
「……そういうこと」
思っていたよりも、下種な人間ね。
「生きているから出られるのでしょう?」
「何がいいたい?」
「生きていなければ、それは叶わない話よねって思っただけよ」
実際、生かしておいて得はないと思う。
「受付風情がやる気か?」
「受付相手に上級冒険者が手を出すの?」
「言うな……。気に入った」
不意に犯人が嬉しそうに笑い出した。
何か笑うようなことあったかしら?
「おまえ、俺の女になれ」
「……どう考えたら、そういう発想になるのかしら?」
呆れるしかないわ。
貴族が関わっている冒険者は全てこんなのかしら?
「楽はさせてやる。こんな場所で働かなくてもいいようにはなる」
「私はこの場所が好きなのよ」
「ただの受付がいいのか?豪華に過ごしたいと思ったりしないのか?」
「興味ないわ。私は毎日普通に過ごせればいいだけよ」
「欲が無いか……。そんなやつが欲を持ったらどうなるか見たくなったな」
「………」
勝手に決められても困るわね。
「なら、私とあなたが勝負して負けたら、あなたのものになって上げる」
「大きくでたな。二言はねーな?」
「ないわよ。あなたが私に勝てるならね」
「楽しいやつだ!嫌でも、ものにしてやる」
ギルド内がざわついてるわね。
仕方がないけど、これしか潰せなさそうだし。
「私が勝った時の事は言ってないわよね」
「ああ。要求なんだ?何でも聞いてやる」
「何でもいいのね?二言はない?」
「ない。俺が負けるわけがない」
「だったら……」
私は微笑みながら言う。
「あなたの命を貰うわ」
「なに!?」
「二言はないのよね?」
「……わかった。俺が勝った時は、お前は普通の扱いはしない」
「ご自由に」
「楽しみだ」
そんなに自信があるのね。
卑劣な上級冒険者の実力、見せて貰わないとね。
「じゃぁ……」
「ルリさん、ちょっと!」
「え?シエラ?って、私を引っ張って、一体なによ?」
「いいから来て!」
「すぐ戻るから、待ってなさい」
「いいから!ほら!」
「ちょっと、放しなさ……って、シエラ、魔法使ってまで!?」
私はそのまま、引きずるように引っ張られていった。
「無理しちゃダメだって言ったよね?」
シエラから物凄く睨まれてるわ。
確かに、無理はしたかもしれないけど。
「大丈夫よ。簡単にやられたり……」
「そういうこと言ってるんじゃない!」
「え?」
シエラが叫んだので、さすがに驚いた。
「ルリさんが魔法を使えなくても強いのは、私も十分わかってるよ!でも、これは違う!」
シエラが机を叩きながら言う。
「万が一だってあるんだよ!?その時のことを考える私の気持ちもわかってよ!普通に考えたら、ルリさんの負けはありえなけど……でも、こういう事をする人が正攻法でくるって保証はないし、大勢の前で公言してるから、無かったことにはできないんだ!」
「……そうね」
少し考えが足りなかったかもしれないわ。
負けることは考えてなかったけど、私を思ってくれる人がどう考えるのか……大切なことを忘れてたわ。
「ごめんなさい。皆にはいつも心配かけるわね」
「……本当に反省してる」
「……してるわよ?」
「どうして、疑問形なの!?」
シエラが詰め寄ってきた。
「私って守るって考えるとダメみたい。助けるってこともだけど。……島での出来事がやっぱり影響してるのかしらね」
「島って、ルリさんが住んで居た場所?」
「そうよ。内容は言わないわよ?」
「ずるい……」
「私にも言いたくないことはあるのよ」
いつかは話すと思うけど、今は話す時じゃないと思うしね。
「今回は無茶させてもらうわ。こういう不正も減るようになるかもしれないし」
「ルリさん、『今回』じゃなくて、『いつも』だよ……」
「えぇ……」
「え!?」
シエラが驚いている。
嬉しそうにとても驚いている。
「ルリさん、普段のルリさんに戻ったの!?」
「残念、私のままよ」
「こんな状況でからかうなんて酷い……」
「ごめんごめん。でも、やっぱり普段の私がいいのかしら?」
今の私は私であって、私ではない。
言葉遊びじゃないわよ?
私の『元』がいて、反転酒というもので『変わった私がいる』ということだから。
つまり、今の私も『ルリアルカ』ではあるけど、どこかで消えてしまう。
偽りの存在ではないけど、本物ではないから。
「全部」
「全部?」
この返事には少し驚いたわ。
「どんなルリさんでも、大好きなルリさんには違いないから」
「そう……」
あまりにも嬉しい言葉だったので、シエラを抱きしめていた。
「ル、ルリさん!?」
「ありがとう。こんな私でも好きになってくれて」
「こんな私でもって、ルリさんだよ?」
「そうね。ねぇ、シエラ」
「なに?」
「この一件が終われば、二人で出かけましょうか」
「え?二人でって……デートって思っていいの?」
嬉しそうな、恥ずかしそうな、どちらともつかない表情で、シエラが答える。
「デートかしらね。でも、この件が終わってからよ?」
「わかった!そうとなったら、早く片付けないとね」
「げんきんねぇ……」
幸せそうなシエラを後ろから眺める。
(私も酷いことを約束したわね。確かに約束は簡単だけど、私は今も何度も変わっている、そして変わった性格は『元』とはまったく違うらしいわ)
つまりはこうだ。
私は反転酒が原因で何度か性格が変わっている。
ゼフィアが持っていた反転酒だけが酷い影響を出す物なのか?私の体質がそれに合いすぎたのか?
こればかりはわからない。
それでも……。
(明日、今の私が消えているかもしれない。なんて、言えないわよね)
今の『助けるという意思』はもとをたどれば『本当の私』の影響なのは間違いない。
それでも、今のこの意思は私のものだ。これだけは『私』か『次に現れるかもしれない、別の私』に譲るつもりはない。
(だから、この問題だけはなんとしても、私が片付ける)
私が持った『守りたい、助けたい』という感情。
これだけは、お願いだいから、私のままで片付けさせて。
それが、私が居た証になるから。
気が付けば、更新するのに一カ月以上かかっていました……。
書いている私もびっくりです。
年末、体調不良もありますが、またいつもと同じペースで書いていければいいなと思っております。
読んで下さる皆さま、また楽しんでくれると幸いです。




