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魔島の姫の抱えるもの、剣王の思い

 相手が強いのはわかっています。

 慣れ親しんだ家族ですからね。

 でも、譲れないものがあります。

「軽いな……」


 距離を詰め、一気に踏み込んで右の拳を突き出しましたが、簡単に受け止められました。


「大人しくしてくれないか?」


 距離を取るために後ろに飛びのきます。

 本当の意味で本気のゼフィアと対峙するのは、これが初めてです。


「いつも手加減をしていたのですか?」


 ゼフィアが強いのはわかっています。

 お爺様と比べると、どうしても劣りますけど。


「……手加減はしてない」


 ゼフィアは剣を水平に構え。


「ルリが弱くなっただけだ」

「!?」


 私が飛びのいた距離を一気に踏み込んで、薙ぎ払ってきました。


「くぅ……あぁ!」


 避け切ったつもりが、避け切れていなかったようです。

 身体に衝撃が走ると、同時に弾き飛ばされ。


「かふっ!」


 木に叩きつけられました。

 衝撃も凄かったですが、木に叩きつけられたのが痛すぎます。


「「ルリアルカさん!」」


 エスタさんとミーナさんの声が響きますが。


「……黙れ」


 ゼフィアの一言で静かになりました。


「っ……」


 私はこんなにも弱いのですか……。

 強いと言われても、過信をしたことはありません。


「ルリ」

「え?」


 ゼフィアがいつの間にか目の前に居ました。


「今は眠れ」


 地面に横たわったままの私に、ゼフィアは手を振り下ろしました。




「ねぇ、ルーちゃん」


 声が聞こえます。


「ルーちゃんってば!」


 懐かしい声です。レティアよりも幼い声ですけど。


「起きないの?」


 幼い感じなのに、はっきりと言います。


「あの人たち、殺されちゃうよ?」

「……動けないのですよ」

「助けてあげないの?」

「……今の私だと助けれません」


 身体も動かないです。目の前も見えているのかもわかりません。

 助けるという行動すら、無謀に思えます。


「諦めるんだ?」

「諦めたくない……。でも……でも!……今の私だと……助けられない!動きたくても動けないの!助けてあげたくても!……無理なの……」

「そんな、ルーちゃんは嫌い」


 目の前にいるのは小さな女の子。黒に近い蒼い髪の女の子。


「私の大好きな、ルーちゃんは簡単に諦めたりしないよ?」


 私はこの少女をよく知っています。


「ニア……」


 少女の名前はエターニア。

 私が住んで居た島で生まれた、唯一の子供です。


「諦めるの?」

「普段の私なら諦めない……」


 普段の私なら諦めません。


「普段のルーちゃん?」


 ニアが首を傾げました。


「普段のルーちゃんと今のルーちゃんって何が違うの?」


 本当に不思議そうに、ニアが言います。


「……魔法が使えるのが普段の私」

「魔法が使えないのが、普段じゃないルーちゃんなの?」

「そうよ」

「おかしなこと言うね」


 ニアは笑いながら言いました。


「ルーちゃんが思ってる『普段のルーちゃん』も『今のルーちゃん』も、私からしたら同じだよ?もう、笑わせないでよ……あはは」

「違うよ!普段の私はこんなにも弱くない!」


 自分に腹が立ちます。何もできない自分が……大嫌いです。


「ルーちゃんが強いって誰が決めたの?ルーちゃん?それとも家族の皆?あ、今だと妹と親友?」

「皆よ」

「……ルーちゃん、バカになった?」


 ニアは呆れた表情をしています。しかも、ため息までついて……。


「ルーちゃん、お爺ちゃんの言った言葉覚えてる?」

「お爺様の言葉?」


 お爺様はなんて言いました?

 ……思い出せない?忘れてしまった!?

 大好きなお爺様の言葉を……。


「『間違えてはいけない』だよ」

「あ……」


 お爺様は私にいつも言ってくれました。


『何があっても、間違えてはいけない』と『力があっても無くても、間違えてはいけない』と。


「お爺ちゃん、泣くよ?」

「そうね……」


 魔法が使えないから『弱い』というのは間違いです。

 私が『私の普段をこうだ』と思うのが間違いです。

 ……最近の私は間違えてばかり。


「ねぇ、ルーちゃん」

「なに?」

「今のルーちゃんはどう?」


 ニアが嬉しそうに言います。

 答えないとダメですか?仕方がない娘ですね。


「いつもの私」

「うん!」


 本当に嬉しそうに、笑顔を浮かべてます。


「ルーちゃん、あの人を止めてくれるよね?」

「止める。もう間違えないから」

「ありがとう。……ルーちゃんの事になると、本当に皆変わるよね」

「……過保護なのよ」


 守られてばっかりです。本当にいつも……。


「私もそうありたかったな」

「それは……」


 そう……。

 ニアは生きてはいません。

 島の生き残りは私だけ。


「ごめん。困らせるつもりはなかったんだよ?ただ、私も生きていたら、ルーちゃんみたいに大事にされたんだろうなーって」

「ニアは気が付いてなかったの?私も大事にされて育ったけど、ニアもなんだよ?」

「……知ってる。ふ……あはは」

「もう!……あはは」


 大好きな家族のニア。


「いってくるね」

「いってらっしゃい」


 小さいのにしっかりとした……。


「またお話ししようね。大好きな………」




「……夢?」


 長い夢を見ていた気がします。でも、とても大切なことを思い出せました。

 思い出せたのなら、あとは行動あるのみです。

 痛みで悲鳴を上げそうになるのを堪えて立ち上がります。

 私は助けるのです。


「……ルリ?」


 声がした方を見ると、ゼフィアが驚いていました。私とゼフィアとの距離は数歩程しか離れていません。

 時間はほとんど経過していなかったようです。


「助けると言っておきながら、このような結果です」

「そうだな。だから、大人しくしてくれ」

「嫌です」

「……頼むよ」


 そんな悲しそうな顔をしながら言わないでください。


「ゼフィアも自分が間違えていることはわかっているはずです。……家族の皆は私の事になると周りを見なさ過ぎなのです」

「……色々あるんだよ。大人しくしてくれないのなら、また気絶させればいいだけだ。…………お前を傷つけたくないのに、俺は何をやってるんだろうな」

「できますか?」

「ルリの為でもあるからな」


 ゼフィアが距離を詰め、剣の柄をこちらに当てようとしてきました。


「当たりません」


 避ければいいだけです。魔法に頼りってばかりではなく、家族から教えて貰ったことを思い出せばいいだけです。


「な!?」


 私が簡単に避けたので、ゼフィアは驚いています。簡単に気絶させた相手が、いきなり避けるとは思わないでしょうからね。


「これからが本番……私は守るのですよ!」


 忘れていたことを思い出したら、身体が軽いです。

 魔法は使えないままですけど、そんなのは小さなこと。

 ただ、自分にできることをすればいいのです。

 ですから……。


「反撃開始です。覚悟してくださいね?ふふふ……」





(……ほんと、昔と変わらないな)


 ルリは本当に真っ直ぐだ。派手に打ちのめされたのに、気にもしてない。

 ……困ったやつだよ。


「はぁぁぁ!」

「ちっ!」


 ルリが回し蹴りをしてきたのを、ぎりぎり回避する。魔法使えなくてこれかよ……。凄いを通り越して呆れるしか……。

 

「しまっ!?」


 少し考えた間に、ルリが距離を縮め、密着した状態から左の拳を突き出してきた。

 一拍置いてから、衝撃が身体を貫く。吹き飛ばされはしないものの、結構な距離を耐えることになった。


「手加減ないな」

「守るためですから」


 簡単に言う。昔からだが、ほんと凄いやつだよ。


「変わらないな」

「……変わっていました。でも、思い出したのです。……ゼフィアにも話さなければダメなことですが、これはまたいつかです」

「……そうか」


 何故そんなに悲しそうな目をしている?俺に話さないとダメなこと……魔島のことだよな?

 俺にとって大切な何かがあるのか?問い詰めても、話してはくれないよな。


「いつか話してくれるんだよな?」

「はい」

「わかった」


(お前は背負いすぎだ。……ルリには静かに楽しく暮らして欲しいんだよ。その背負ってるものを分けてくれればいいんだ。なのに、お前は……)


 頭を振って、対峙しているルリを見る。


(俺が背負っているものは国か……)


 確かに自分の国は大切だ。家族や民が住む、大切な場所だ。

 外交問題というのもあるが、ルリが入ればそんなのはどうでもいい。俺はこいつを守らなければならん!

 だが、立ちはだかるのは、ルリ本人だ。だから、あの場にいる者達を殺してはいけない。

 ルリが守るといった。つまり、その者達は生きるべき存在だということだ。ルリは無意識だが、そういう判断が鋭いからな。


(だが、ここで外交問題というのが邪魔をする……)


 俺は国を統べる者として、軽くみられるわけにはいかない。ルリたちに軽くあしらわれてるのに今更だと?うるせぇよ!


(ままにならんな……。大切な家族を傷つけないと、守れないという立場というのは……)


「いきます!」

「いちいち言わなくてもいい!」


 ルリが離れた距離から走ってきたと思いきや、上空へ飛び上がり、蹴り落としてきた。

 これは何度も見た。避けるのはたやすい!


「甘いです!」

「なに!?」


 ルリの踵が地面に叩きつけられたのを確認後、ルリに左の拳を叩きつけようとしたが。


「くぅ!」


 ルリは足を地に付けた瞬間に翼を広げ、その場で一回転してこっちを蹴り上げてきた。

 のけぞるように避けた所を音を立てて、ルリの右足が通過した。食らったらやばかったな……。


「まったく、やっかいな娘だよ」

「可愛いではないのですか?」

「ルリはかわい……って、今はそんな会話してる場合じゃねぇだろ!」

「当たり前です!」

「てめ!?」


 ルリが会話の間を利用して追撃してきた。

 ルリ……そんな風に世間に汚れたんだな……。少し泣きそうになったぞ……。

 そう思いつつも、ルリの攻撃を避けて間合いを取る。

 ルリの攻撃は避けるのは可能だが、少しずつだが速度は上がっている。

 決着をつけるなら、早くしないと不味いな……。


「ザイン、そこの三人頼んだぞ」

「お任せを」

「ゼフィア!?」


 ルリが明らかに動揺している。俺はそこまで酷いことしねぇよ……。


「あ、あぁ……」

「こ、こないで!」


 二人の女性から声が聞こえるが無視すればいい。

 ザインは意図はわかっているだろう。

 俺とルリの戦いの余波から、三人を守れということを。


「先ほどは申し訳ありません。ですが、今はここに居させていただきます」

「一体何を!?」

「エーちゃんを殺さないで!」

「そんな真似は致しません。ルリアルカ様に嫌われたくはありませんから。あなた達に被害がでないよう、簡単に言えば護衛みたいなものです」

「クルトにあんなことをしておいて信じれるはずが!」

「私が違えたなら、この首差し上げましょう」

「………わかりました。ミーナ、大人しくしてるのよ」

「は、はい!」


 一連のやり取りは聞こえたが、大丈夫だろう。ルリも安心してくれれば……。


「ゼフィア……」


 おかしい。ルリの様子が明らかに変だ。


「よくもやってくれましたね……」


 ルリが深紅の翼を広げながら、フルフルと震え、こちらに歩いてくるのが見える。

 ……もしかして怒ってないか?


「私との対決中に三人を人質に取るなんて!……許しません……泣いて謝ったって許してあげません!」

「ご、誤解だ!」

「な・に・が・誤解ですか!」


 ルリの踏み込み速度が更に早くなった。ほんとに油断ができなくなったな……。


「私を気絶させてから、皆さんを殺すといいましたよね!」

「……ああ」


 ルリの攻撃を捌きながら答える。


「私が気絶しているのをいいことに、エスタさとミーナさんに手を出そうとは考えていなかったのですか!?」

「なんでそうなる!?そんなことするわけないだろう!」


 そんなの考えてねーよ!てか、そこ聞こえてるぞ!「フェイマス王はそんな性癖がとか」んなことはないし、ルリがさらに怒るから言うな!


「ふぅ……ふぅ……」


 ルリが息を荒げながら、立ち止まった。

 少しはおちつ……!?


「ふぅ……ふぅ………」


 ルリの容姿は正直いってやばい。今は人助けで動いてるから衣服を着てないのはわかる。

 だがそれ以上にやばいのは。


「ふぅ……ふぅ……ふ……ふふふ」


 身体を朱に染めて、熱が入った顔をしていることだ。

 並みの男なら、この表情だけでアウトだろう……。向こうの男、ルリの姿見て、顔が真っ赤じゃねーか……。二人のうちの一人が恋人だったら、あとで修羅場か。気の毒にな。


「ふふふ……あはははは!」


 ルリは翼を大きく広げて、半身で構えた。

 ……なんて楽しそうな顔してるんだよ。島の家族で戦闘好きな奴なんていた……アルテナか!こんなところまで、ルリに影響及ぼしやがって!


「……楽しいですね。ええ、本当に楽しいです。魔法は使えないままですが、戦うことができるのがわかりました。人を守れる力もあるというのもわかりました。いいことが沢山わかったのでとても嬉しく、同時にとても楽しいのです!」

「俺は全然楽しくないけどな……」


 傍からみたら、全裸の天使……いや、羽が深紅だから普通の天使ではないかもしれないが、まぁ、魅力的な女がいる。女のあられもない姿が見れて運がいいと思うやつもいるかもしれないが、対峙している俺にはそんな感想はない。

 ルリは戦う事を本当は嫌う。人を助けるから戦う。ただ、それだけだ。決して好戦的ではない。


「ゼフィアをぶっ飛ばして、皆を守るのです!」


 決して……。

 アルテナ!お前の性格、本当に転写されてねーかこれ!?


「はぁ……。わかった、俺の負けでいい。そいつらには手は出さん。それでいいな?」

「本当ですか?」


 ルリが構えを解いた。


「本当だ。だから……」

「でも、ゼフィアは私を斬らなければならないのですよ?」

「何故そうなる!?」


 俺がルリを斬らないとダメだと?そんなことする必要はない!


「詳しくはまだ話せませんが」


 ルリが目の前に歩いてきた。やっぱり、可愛いなこいつ。健康的に育ったのは嬉しい。……悪い虫が付かないか心配だな。


「私はゼフィアの親類を手にかけています」

「……なんだと?」


 俺の親類?今はアレイシアとファリスしかいないぞ?

 いや、それ以前に、ルリは最近まで俺の親類のことは知らない。

 どういうこ……まさか!?


「島で俺の血を引くやつがいたのか……?」

「はい」

「そんなことはありえん!島で誰かが何かしたのか!?」

「詳しいことはまだ言えません」


 そこまで言いたくないことなのか?

 だが、内容が内容だ……これだけは引き下がれん!


「俺がいない間に何があった!?どうして、俺に隠す!」

「……いつか話します」


 ルリが横を向いた。だが、そうはいかん!


「答えろ、ルリ!」


 ルリを強引にこちらに向かせる。

 ……なに泣いてるんだよ。


「いつか話します」

「答えになってねぇよ!」

「ねぇ、ゼフィア」

「なんだ?」

「私は………あなたになら、殺されてもいいのですよ」


 笑顔でいいやがった。

 俺になら殺されてもいいだと?


「ふざけるな!俺がそんなことするわけねぇだろ!」

「そうですね……」


 ルリが少しずつ離れていく。だが、この違和感はなんだ?


「私はあなたが思っているほど、優しい人ではないとしたら、どうします?」


 ルリから向けられた殺意。

 腕の立つ者の殺気とは比べ物にならない、魔島にいる者がもつ殺気。

 気が付くと、剣を持った左腕が迎撃しようとしている。


「…………私は死に場所を求めているのですよ」


 ルリは俺が剣を振り上げるのを見越して殺気を当ててきた。

 とても優しい笑顔で。

 優しい声で。

 確実にやれる距離で。


「死なせるわけがねぇだろうが―――――――!」


 声が響くと同時に「ゴキッ!」と鈍い音が聞こえ、左腕から鋭い痛みが走る。

 左手首は折れただろうが、気にする必要はない。


「どうしてですか?」


 不思議そうな顔をするな。

 俺がお前を殺すわけがないだろう。

 『お前を守る』のが、島を出る時に長とアルテナとした約束だ。


「どうしてもなにもない!お前は俺に守られてたらいいんだ!死に場所を求めてる?そんなの知るか!そんなものは俺が否定してやる。家族や親友がお前にはいるんだ、そんなくだらない内容は俺が全部認めねぇ!」

「……私の存在理由まで否定するのですね」


 ルリが俯きながら言った。島で暮らしていた時には見せなかった表情。

 一番似合わない表情なんだよ。昔のように明るく、にこにこと笑っていればいいんだ。

 だから、そんなことを言うなよ。


「ああ、否定してやる。お前がいつか、島で起きたことを話してくれた時も否定してやるよ」

「そうですか。でも、私の考えは変わりませんよ?」


 この性格、長とアルテナにそっくりだよ。


「変えてやるよ」

「変わりませんよ?」

「変えてやる」

「変わりません」

「強情だな」

「昔からです」


 二人して笑みがでる。先ほどまで激戦をしていた空気など微塵もない。


「疲れただろ?」

「疲れました。ゼフィアにも襲われましたし」

「誤解を招く言い方するなよ……」

「お家に帰ったら、皆に報告します。ゼフィアに襲われたと」

「いや、それはマジでシャレにならん……」


 まぁ、これはこれでいいのか。

 こいつも成長したんだと思えばそれでいい。よくはないかもしれんが。

 容姿と精神が少し不釣り合いなのは……冗談抜きで、色々と危ういな……。それぐらい、ルリの容姿は目立つ。

 ルリの周りが何とかするか。元王族、宿の主、ギルドマスターの娘と教育者にはちょうどいい。

 ……この三人、ルリにある意味でベタ惚れだったが……大丈夫だろう。


「とりあえず、少し眠れ。明日には帰るぞ」


 考えるのは止めだ。こればかりは、予測がつかん。


「はい。少し休むことにします」


 ルリがこちらにもたれ掛かるように身体を預けてきた。

 って、もう寝てやがる……。


「昔と一緒だな」


 空間に収納していた外交用のマントを取り出して羽織らせる。


「よっと。ほんと、可愛い顔してるのに、やることが派手だな」


 魅力的な娘になったと改めて思う。

 だが、それ以上に……。


『私は死に場所を求めているのですよ』


 報告では聞いていた。

 ルリの目的が信じられなかった。

 普段は影も見せないが、こいつに根付いていやがった。


「何があったんだよ?」


 眠っている、ルリに言う。返事なんか期待してない。


「……私のソファーは……もっと柔らかいの……です………すぅ………」

「……寝言で文句言われるとは思わなかったな」


 こいつは片手で抱え上げれる程軽い。

 それなのに、背負ってるものは……とてつもなく重い。


「……似合わねぇよ」


 ルリは笑っているのが一番だ。


(俺自身、厄介なことを色々と解決してきたが、ルリのは別格か)


 ルリの抱えているものは正直、想像がつかない。この小さい身体に何を抱えているのか。


(周りで解決してやれればいいんだがな。とはいえ、ルリ自身が抱え込むか)


 これからも山積みになるであろう問題はある。解決すればいいだけだがな。


「……お魚……お肉………」

「食事の夢でも見てるのか?まったく、人が心配してるのにな」


 普段でもこれぐらい気楽に過ごしてくれるといいんだがな。

 気楽すぎても困るか……。


「帰ったら、ご馳走食わしてやるよ」


 だが、帰るのは明日だ。今はこの状況の理由を聞かなければならない。

 くだらない理由だったら容赦はしない。


「話を聞きに行くか」


 ザインと他三名のいるところへ向かおうとした時。


「………このお肉……硬いです……」


 ルリが肩に噛みついていた。


「そんなに空腹だったのか……」



 ルリは大きくなっても、どこか子供だと思った。

 ルリの根底はぶれません。

 どこかで変わるかもしれませんが、意思が固いので動いてくれません(頑固です)。


 

 今回はゼフィア視点のお話でもありました。

 作者自身、ゼフィアの事はお気に入りです(扱いが酷いとか言わないでください)。


 抱え込む姫と助けようとする王。

 どちらの意思が強いのか?




 次回の更新は書き終わり次第となります。


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